MD-11
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マクドネル・ダグラス MD-11
ヴァリグ・ブラジル航空 MD-11型機
- 用途:旅客機
- 製造者:マクドネル・ダグラス社(現ボーイング社)
- 運用者
- フェデラルエクスプレス
- ルフトハンザ・カーゴ
- ユナイテッド・パーセル・サービス
- KLMオランダ航空
- 初飛行:1990年
- 運用開始:1991年
マクドネル・ダグラス MD-11(McDonnell Douglas MD-11、エムディー・イレブン)はマクドネル・ダグラス(現ボーイング)製の三発式大型ジェット旅客機である。マクドネル・ダグラス社が最後に製造した大型旅客機でもある。
目次 |
[編集] 機体概要
1970年代に就航したDC-10を近代化した機体である。改良点としては、胴体の延長 (5.66 m) ・ウィングレットの装着・コクピット内の改良(グラスコックピット化)などがなされた。エンジンはDC-10と同じく、主翼下に2基、垂直尾翼の基部に1基の計3基搭載している。図面で見ないと分からないことが多いが、重心位置の変更により、DC-10と比べて水平尾翼が大幅に小型化されているのも特徴である。1990年1月に初飛行。1991年から運用を開始。旅客型のほか、貨物専用型、貨客混載のコンビ型なども生産された。
[編集] 販売成績
総生産数は約200機で、現在は貨物機で使われている割合が多く、マクドネル・ダグラスがボーイングに吸収された後の2001年2月に、販売成績が思わしくないことと、ボーイング社のB777 と競合することなどから生産が中止された。わずか10年しか製造されなかった。
販売成績が伸び悩んだ理由は、機体が出来上がり飛行試験が始まると空気抵抗が予想以上に大きく、またエンジンの燃費が予想以上に悪かったこと、さらには機体重量が予定を大幅にオーバーしてしまいユーザーとなる航空会社を満足させられなかったこと、より経済性の高いエアバス社の A340 やボーイング社の B777 が登場したためである。これらの機材の登場により、多くの航空会社は MD-11 の発注をキャンセルしたり、保有している機材を売却をしてこれらの機材を購入したり、保有はするが旅客機ではなく貨物機として運航するということが相次いだ。 マクドネル・ダグラスは地道に改良に取り組んで最終的には当初の計画通りの性能を実現したが、ついにその信頼と業績を回復することはできなかった。
現在は、旅客機としての役目を終えた機体の多くが貨物会社に売却されて貨物機に改造され活躍している。旅客機としては不人気でも、貨物機としては、胴体の幅が大きいことと3発エンジンのため貨物搭載量が多いことから使いやすいので需要が旺盛である。しかし一方では、このことが旅客機としての活躍期間を縮めてしまったという声もある。
[編集] 一般的な要目
MD-11 | MD-11-F | MD-11-C | MD-11-ER | |
---|---|---|---|---|
乗客数(1クラス) | 410 | - | - | - |
乗客数(2クラス) | 323 | - | 204 | - |
最大離陸重量 | 602,555 lb (273,314 kg) | 630,500 lb (285,990 kg) | 620,350 lb (283,700 kg) | 630,500 lb (285,990 kg) |
航続距離 | 12,633 km | 7,242 km | 12,392 km | 13,408 km |
就航マッハ数 | 0.87 (約1050km/h) | |||
全長 | 61.21 m (200 ft 10 in) | |||
翼幅 | 51.66 m (169 ft 6 in) | |||
全高 | 17.60 m (57 ft 9 in) | |||
エンジン | P&W PW4460 ターボファンエンジン 267 kN (60,000 lbf) × 3、またはP&W PW4462 ターボファンエンジン 276 kN (62,000 lbf) × 3、またはGE CF6-80C2D1F ターボファンエンジン 274 kN (61,500 lbf) × 3 |
[編集] 導入した航空会社(一部)
- 日本航空
- 大韓航空
- 中華航空
- 中国東方航空
- タイ国際航空
- アリタリア航空
- KLMオランダ航空
- フィンランド航空
- フィリピン航空
- スイス国際航空
- デルタ航空
- アメリカン航空
- フェデラルエクスプレス
- ユナイテッド・パーセル・サービス
- ヴァリグ・ブラジル航空
- VASP航空
- カーゴイタリア
[編集] 日本におけるMD-11
日本の航空会社では日本航空 (JAL)がJ-birdの愛称で10機を運行し、各々に日本の野鳥の名称をつけており、ウイングレットに野鳥のイラストが描かれていた。しかし経済性の問題などにより中距離路線仕様から退役し、先輩機であるDC-10よりも早く2004年10月12日の香港発成田行き730便(JA8582)を持って全機退役した。全機がアメリカのユナイテッド・パーセル・サービスに売却され、貨物機に改造され活躍している。
運航機 | 機体記号 | 型式 | 製造番号 | 愛称 | 登録年月日 | 退役年月日 |
---|---|---|---|---|---|---|
1号機 | JA8580 | MD-11 | 48571/552 | エトピリカ | 1993/11 | 2002/9 退役(現N272UP) |
2号機 | JA8581 | MD-11 | 48572/556 | ヤイロチョウ | 1993/12 | 2002/7 退役(現N271UP) |
3号機 | JA8582 | MD-11 | 48573/559 | タンチョウ | 1994/3 | 2004/10/12 退役(現N279UP) |
4号機 | JA8583 | MD-11 | 48574/566 | イヌワシ | 1993/8/11 | 2003/5 退役(現N273UP) |
5号機 | JA8584 | MD-11 | 48575/568 | ヤンバルクイナ | 1994/9/13 | 2003/6 退役(現N274UP) |
6号機 | JA8585 | MD-11 | 48576/574 | クマタカ | 1995/4/4 | 2002/11 退役(現N270UP) |
7号機 | JA8586 | MD-11 | 48577/583 | コウノトリ | 1994/4/11 | 2004/8/4 退役(現N278UP) |
8号機 | JA8587 | MD-11 | 48578/588 | ノグチゲラ | 1995/6/28 | 2004/5 退役(現N277UP) |
9号機 | JA8588 | MD-11 | 48579/599 | オジロワシ | 1996/4/3 | 2003/10 退役(現N276UP) |
10号機 | JA8589 | MD-11 | 48774/610 | ライチョウ | 1997/3/ | 2003/7 退役(現N275UP) |
旅客機では、1990年代にはアメリカン航空やデルタ航空、大韓航空やタイ国際航空、マレーシア航空など多数の航空会社が定期乗り入れ機材として運航したものの、2007年2月現在では、フィンランド航空が中部国際空港と関西国際空港に乗り入れるのみとなっている。
貨物機ではユナイテッド・パーセル・サービスやフェデラルエクスプレスなどが日本へ乗り入れている。