DC-10 (航空機)
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DC-10は、アメリカ合衆国の航空機メーカーマクドネル・ダグラス(1996年にボーイングと合併)が、アメリカン航空の要望にこたえて作った、ワイドボディの三発式ジェット旅客機。ダグラスとマクドネルが合併(1967年)する以前の1966年に開発を開始したので名前は「DC」のままである。1970年に初飛行、1971年8月に運航を開始した。
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[編集] 機体概要
ベーシックタイプの-10型、航続距離を延長しセンターメインギアを追加した-30型や-40型、操縦システムを後継のMD-11と同じものに近代化改修したMD-10がある。また、貨物型のほかに、軍用機として空中給油機KC-10のバリエーションがある。
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1972年に運航を開始したロッキードL-1011 トライスターとは、同じ市場を狙って激しく競合する機体であったため、戦争さながらの販売競争が繰り広げられ、各国の航空会社や政府首脳に賄賂がばら撒かれた。また、度重なるダンピングと壮絶な値下げ競争によって、ロッキードともども経営が極度に悪化する事態となった。結局、この勝負は1981年にロッキードが旅客機部門から撤退することによって、DC-10が勝利を収めた。しかし、この時期にエアバスが成長し始め、新技術をふんだんに採用したA300やA310を続々と投入した。このため、陳腐化したDC-10は入れ替わるように1989年に生産終了となり、新形式のMD-11の開発が急がれることとなる。総生産機数は446機にのぼった。
アメリカン航空やユナイテッド航空、ヴァリグ・ブラジル航空などの世界中の大手航空会社に導入され、日本では、日本航空(JAL、現日本航空インターナショナル)が-40型を東南アジア線や南回り欧州線などの国際線と国内線に、日本エアシステム(JAS、現日本航空インターナショナル)が-30型をホノルル線やシンガポール線、ソウル線などの国際線を中心に使用し、一時期は国内幹線(東京・羽田―福岡、東京・羽田―札幌・千歳)にも飛ばしていたが、旧JASのDC10-30は、アメリカ合衆国のノースウエスト航空に売却された。
1979年にはアメリカン航空のロサンジェルス行き191便がシカゴのオヘア空港を離陸した直後に墜落する事故を起こした。墜落した機体は、マクドネル・ダグラス社の予想もしない仕方で整備が行なわれていた。正しいオーバーホール手順では、エンジンを外してからパイロンを取り外さなければならない。だが、効率向上を狙ってフォークリフトを使ってパイロンにエンジンが付いたまま外したのでパイロンに亀裂が入った。この損傷のために、飛行中に、左翼の第1エンジンがパイロンもろとも脱落し、エンジンから供給されていた油圧が抜けてしまった。そのため、翼前面の高揚力装置が左側だけ格納されてしまい、左主翼だけが失速。高度600フィートから左に急速に沈下し、回復不能の姿勢に陥り、離陸から31秒後に墜落した。死者273人に及ぶ、このような大惨事を起こしたため、原因が判明するまで一時運航停止を余儀なくされた。
[編集] バージョン
DC-10はいくつかのバージョンが生産された。
- DC-10-10
- 1970年から生産された、1971年8月に運用が開始された最初のバージョン。もともと、アメリカ大陸を横断できる航続距離をもつよう設計された。このバージョンの主要な顧客はアメリカン航空とユナイテッド航空である。このDC-10-10型機が搭載したエンジン、GE製CF6-6は、後にCF6ファミリーとして成功する民間用ターボファンエンジンの最初のタイプだった。日本では1990年代前半までコンチネンタル・ミクロネシア航空が、サイパン・グァム線に使用していた。
- DC-10-30
- 1972年から生産が開始された長距離型で、最多生産型でもある。エンジンはCF6-50。さらに、航続距離を伸ばしたER型も生産され、カナディアン航空(現・エアカナダ)やタイ国際航空、スイスエア(現・スイスエアラインズ)が長距離路線に導入した。
- DC-10-30F
- DC-10-30の貨物型。ワールド・エアウェイズなどが導入した。
- DC-10-40
- 1972年から生産された。エンジンはP&W製JT9D。発注したのはノースウエスト航空と日本航空のみ。当初は-20として開発されたが、ノースウエスト航空がマーケティング上-40が好ましいと判断したため、名称が変更された。日本航空の-40型のうち国内線仕様機は、最大離陸重量の関係上国内線運航では不必要となるセンターギアは装備されず、外観は-10型と同じに見える。
- DC-10-15
- 1979年から生産が開始されたこの型は、DC-10 スポートとしても知られる。高温地帯や高地の空港で運用するために設計され、CF6-6よりも推力の大きなCF6-50が搭載された(高温地帯や高地では空気密度が小さいため推力が小さくなる)。7機だけが標高2400メートルのメキシコシティをハブ空港とするメキシコの航空会社、アエロメヒコ航空とメキシカーナ航空向けに制作された。
- KC-10 エクステンダー
- 1981年から生産が始まった、軍用の空中給油機。アメリカ空軍がKC-135の老朽化と機体数不足から発注し、DC-10-30をベースとして制作された。燃料タンクを設置するためにすべての下部貨物ベイを改造する改修が施されたが、KC-135と違って貨物ベイ全体が燃料タンクというわけではない。これは貨物ベイ全体を燃料タンクにすると、重くて飛べなくなってしまうためである。
マクダネル・ダグラスは後にMD-11という機体を製作する。マクダネル・ダグラスを吸収したボーイングが、DC-10の操縦システムをMD-11と同様のものに近代化改修したタイプがMD-10であり、乗員の型式限定はMD-11と共通のものとなった。これによって、FedExのようにDC-10(MD-10)とMD-11を運用する航空会社は両機種に対応したパイロットを確保できることとなった。
このことは、エアバス陣営とのシェア争いのうえで重要な意味を持つ。
[編集] 機体データ (DC-10-30)
[編集] 概要
- 初飛行: 1970年7月29日 (DC-10-10)
- 乗員: パイロット2名、航空機関士1名
- 旅客数: 250 - 380 名
- 全長: 55.5 m
- 全幅: 50.4 m
- 全高: 17.70 m
- 翼面積: 367.7 m²
- 重量: 121,198 kg
- 最大離陸重量: 263,085 kg
- エンジン: GE製 CF6-50A ターボファン × 3
- 推力: 218 kN
[編集] 性能
- 巡航速度: 982 km/h
- 航続距離:: 12,055 km
- 巡航高度: 12,000 m (39,400 ft)
[編集] 日本のDC-10
[編集] 日本の航空会社
[編集] 日本航空
日本航空が1976年から-40型を導入し、南回りヨーロッパ線やアンカレジ経由ニューヨーク線、東南アジア路線の他、センターギアをはずして国内幹線に使用した(DC10-40D)。また、そのサイズから皇族、政府関係者の外遊の際の特別機・続行機(トラブル発生時の時の代行機として2機体制をとっていた)としてもよく利用された。日本航空の子会社のJALウェイズや日本アジア航空でも一時期使用されたが、2005年10月31日をもって全機退役した。
[編集] 日本エアシステム
日本エアシステムも国際線進出の際の主力機として1988年より-30型を導入し、シンガポールやホノルル、ソウル線などに使用した他、一時期は国内幹線(東京・羽田―福岡、東京・羽田―札幌・千歳)にも飛ばし、子会社のハーレクインエアーが国際線チャーターに使用したが、2000年3月をもって全機退役した。
[編集] ミネベア航空
ミネベアの子会社のミネベア航空もボーイング707に変わる主力貨物・従業員輸送機材として貨客混載型の-30CF型を1995年から運行していたが、2002年の同社の清算に伴い運行を終了した。日本で最後まで残ると思われていたが、結局、先に引退を表明した日本航空の機材が最後に残った。
[編集] 乗り入れ航空会社
大韓航空、タイ航空、ガルーダ・インドネシア航空、シンガポール航空、フィリピン航空、ビーマン・バングラデシュ航空、アリタリア航空、UTAフランス航空、AOMフランス航空、KLMオランダ航空、サベナ・ベルギー航空、スイス航空、スカンジナビア航空、フィンランド航空、ノースウエスト航空、カナダ太平洋航空、ヴァリグ・ブラジル航空、ニュージーランド航空など多数の外国航空会社が日本乗り入れ機材として使用した。
2005年11月現在はノースウェスト航空とフェデックス、アエロフロート(貨物便)の一部の便で使用されるのみとなったが、その後現在DC-10を使用する定期便を唯一運行するノースウエスト航空のDC-10もA330、747-400に置き換えられることになった。
[編集] 主な事故
- トルコ航空DC-10パリ墜落事故 - 全日空が発注キャンセルした機体が起こした事故(ロッキード事件も参照のこと)
- アメリカン航空191便墜落事故
- ユナイテッド航空232便不時着事故
- 福岡空港ガルーダ航空機離陸事故
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- ボーイングのページ(英語)