京急2100形電車
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2100形電車(2100がたでんしゃ)は、京浜急行電鉄の電車(優等列車用車両)。1998年(平成10年)3月28日に営業運転を開始した。車体はアルミニウム合金製で全長18m、片側2扉構造である。
京急本線・久里浜線を運行する快特で使用されていた2000形の後継車として製造され、8両編成10本(80両)が在籍する。京浜急行電鉄の創立100周年を記念し、21世紀へ向かう車両として、「2100」の形式称号が与えられた。
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[編集] 内装
料金不要の特急車両として上質なサービスを提供している。室内はオールクロスシートで、ドア間は京急で初採用となる転換クロスシート、車端部は4人掛けボックスシートである。空港連絡列車に使用することを考慮し、ボックスシートは座面を上げて荷物置場にできる構造となっている。座席はノルウェー・エクネス社製(車端部ボックスシートと補助座席は日本製)、座席表地はスウェーデン・ボーゲサンズ社製である。
転換クロスシート部は座席を向かい合わせで用いないことを前提に間隔を詰めており、シートピッチは850mm。営業運転中は一方に向きが固定され、乗客による座席の転換はできない。座席の転換は空気圧による一括転換式を採用しており、始発駅で車掌のスイッチ操作により進行方向へ座席の向きを合わせる。終着駅に到着した際は、到着ホームでそのまま折り返す場合も降車扱いの後ドアを閉め、座席の方向転換を終えた後に乗車扱いをする措置がとられている。導入直後、座席の向きを無理やり変えようとした乗客が座席を破損させる事例が生じたため、現在は座席の枕カバーに「イスの向きは変えられません」と表示している。
転換クロスシート採用は関東の料金不要列車では数少ないもので、着席客からは好評を得ている。しかし、座席に掴み手がつけられているもののつり革はドア周辺を除いて設置されておらず、通路も狭いため立ち客からの評判はよくない。また肘掛と掴み手の形状は2次車増備時に改良され、その後1次車も仕様を統一した。
2109と2133の2編成では無線LAN による車内映像配信実験が行われており、天井部分に1両あたり2基(4面)の液晶ディスプレイ「トレビジョン」が設置されている。放送内容はNHKニュース・京急沿線情報など。音声は FM波で車内に送信されており、携帯ラジオで聞くことができる。周波数はFM88.0MHzである。なお、この液晶ディスプレイを装備する編成の運行予定は京浜急行電鉄の公式ページに掲載している。
2007年2月に座席モケットの傷みが著しくなってきたため、2101編成のそれが張り替えられた。座席の柄は従来と同様である。なお、これと同時に補助椅子使用不可ランプが2173編成と同じタイプに交換された。
[編集] 外装
車体外板は赤、窓回りをアイボリーに塗装している。先頭車の前面形状は600形がベースになっている。2157編成は600形606編成と同様に車体全体を青く塗装し「KEIKYU BLUE SKY TRAIN」の第2編成として2005年6月11日に営業運転開始した。4次車は前面デザインの大幅な変更が行われる計画があったが、様々な事情から断念している。
先頭車正面窓下アイボリー塗装のワイパーカバーには形式名 (2100) がスリット状の打ち抜き文字で表現されている。これは分割併合時にスリットを通して連結器を見通せるようにしたためである。当初はワイパーカバーに車両番号が表示されていたが、1998年秋に全編成とも形式名『2100』に表示を統一。ただし2172号が事故でワイパーカバーを破損した際、2101号が『2100』のカバーを貸与し、その後しばらくは落成時の『2101』表示で運用していた。各先頭車正面の車両番号表示は1999年まで非常扉側尾灯ケース上に銀色シールで4桁とも表示(書体は旧1000形に近い)していた後、2000年登場の3次車からは非常扉側窓下に黒色で下2桁を表記し(国内航空会社の航空機の前脚の蓋に機体番号の下2~3桁が記入されているのを模倣したものと思われる)、全編成がこの仕様で統一された。書体はワイパーカバーの形式名表示に合わせている。
600形で採用したLEDは経年変化による照度低下が激しく、また電球の寿命も延びたことから尾灯、急行灯および戸閉灯が2灯の電球となった。尾灯と急行灯の位置は4次車で逆転し、それ以前の編成も変更した。方向幕は字幕式で地色は当初黒であったが、その後全車ローマ字表記を入れた白地に変更した。2101・2109編成は白幕が細字になっている。
[編集] 運用
原則として自社線内折り返しの快特として三崎口・京急久里浜~品川・泉岳寺間を運転、平日夜間は「京急ウィング号」として運用される。また朝は特急にも使用されるほか、1日に早朝の1本のみ羽田空港駅への乗り入れ(三浦海岸発の快特)ならびに急行としての運用(同列車の折り返し品川行)がある。立席定員が少なく乗降に時間が掛かるため、女性専用車が設定される朝ラッシュ時最混雑時間帯の上り列車には使用されない。
当初はエアポート快特へ投入する計画があったため地下鉄線乗り入れに必要な非常用貫通扉を装備するが、2扉クロスシートという構造から東京都交通局が浅草線への乗り入れを拒否しており、現在に至るまで自社線内のみでの運転にとどまっている。このため、8両編成12本96両の製造計画に対して10本80両が落成したところで製造は終了した。それでも、この非常用貫通扉が装備されている事を生かし、先代の2000形では不可能だった、泉岳寺乗り入れを実現。泉岳寺で、西馬込方面発着の浅草線列車に接続する。
[編集] 性能
- 設計最高速度 130km/h(営業運転時120km/h)。
- 起動加速度 3.5km/h/s。定加速度領域が広く、当形式のみ、もしくは新1000形との編成では起動から1分以下で120km/hまで加速する。
- 減速度は常用 4.0km/h/s、非常時 4.5km/h/s。
- 1時間連続定格出力 190kW。1:1 というMT比で高速性能と高加速度を両立するため、高出力の電動機が用いられている。
[編集] 電装品
ドイツ・シーメンス社製の GTO素子「SIBAS32(シーバス32)」による VVVFインバータ制御で、これは東日本旅客鉄道(JR東日本)E501系、E2系にも採用されている。発車時の電動機およびインバータ装置から発する磁励音が音階に聞こえることが特徴だが、回生ブレーキの失効速度が8~6km/h前後と高いこともあり、5~3km/h前後であるE501系と異なり停車時の音階は聞こえない。
この変調音はくるりの楽曲『赤い電車』、『ガロン』(シングル『青い空』に収録)『ガロン〈ガロ~ンmix〉』(アルバム『図鑑』に収録)や SUPER BELL"Z の楽曲『MOTOR MAN 京浜急行VVVF』(シングル『MOT(e)R MAN vol.3』に収録)などで効果音として使われているほど、京急といえばこの音というイメージが強い。鉄道車両・船舶の俗称も参照。
空気圧縮機はドイツ・クノール - ブレムゼ社製のスクリュー式を採用した。
[編集] 編成
4M4Tの8両編成で、4両 (2M2T) で1ユニットを組み、車種は浦賀寄りから Muc - T - Tp - Mu - Ms - T - Tp - Mscである。制御装置は電動車に各1台、パンタグラフはシングルアーム式のものが付随車 (Tp) に各2基搭載。補助電源装置(静止形インバータ)は Tp車に、空気圧縮機は制御電動車 (Muc,Msc) に搭載される。
号車は浦賀寄り先頭車が1号車、品川寄り先頭車が8号車である。車両番号は浦賀寄りから 2101 - 2102 - ・・・ 2108 とされ、第2編成は 2109 - ・・・ - 2116、第3編成は 2117 - ・・・ - 2124 と編成を通した連番としている。また、それぞれの編成は浦賀寄り先頭車の車両番号を用いて「2101編成」などと呼ぶ。
[編集] イベント列車
- 2001年7月20日には、横須賀市にある「hide MUSEUM」(現在は閉館)の開業1周年を記念して、品川から汐入まで「hideミュージアム号」を運行した。
- 2001年7月28日には、7月20日から9月2日まで開催した「デジモンスタンプラリー」に合わせて、「京急親子デジモントレイン」という貸切列車を運行した。
- 2001年9月22日から10月31日まで、ソニー・コンピュータエンタテインメント製作の「トロと休日」とのタイアップ企画「みさき一日フリーきっぷキャンペーン」の実施に合わせて「トロ号」を運行した。
- 2004年7月17日から8月31日まで、アニメーション映画「ファインディング・ニモ」とのタイアップ企画として、「ファインディング・ニモ」ラッピング電車を運行した。ラッピング電車は、「ファインディング・ニモ」のDVD・ビデオソフト発売のPRであり、1号車から8号車へ向かうと「ファインディング・ニモ」の物語として読める仕掛けとなっていた。また、3・5号車では車内映像放送が行われており、ファインディング・ニモのPR映像も放送していた。
- 2005年6月下旬から7月14日まで「KEIKYU BLUE SKY TRAIN」(2157編成)にて事前に募集した新1000形『羽田第2ターミナルPR電車』と600形『KEIKYU BLUE SKY TRAIN』の写真や絵画を車内で展示した。
- 2005年11月下旬から1月にかけて、KEIKYU BLUE SKY TRAIN は600形と同様『レインボートレイン』として虹のラッピングを貼付して運行されていた。詳細は600形を参照。
- 2006年7月17日から8月20日頃まで、日産自動車、横浜F・マリノスとタイアップして、KEIKYU BLUE SKY TRAIN は『BLUE SKY TRAIN NISSAN/F・MARINOS号』として運行された。車体には、日産の社名ロゴや横浜F・マリノス所属選手の写真などがラッピングされた。これは『京急線横浜駅新ホーム完成』『2009年日産本社のみなとみらい地区への移転を中心とする日産神奈川プロジェクト』『7月19日から再開するJ1リーグでの横浜F・マリノスの活躍の祈念』など、横浜市のPRを目的とするものであった。
- 2006年12月8日頃から2007年1月中旬頃まで、2006年12月16日~2007年1月14日(元日は除く)に開催された「たまごっちスタンプラリー」に合わせ、2109編成は側面に「たまごっち」のキャラクターが描かれたラッピング電車として運行された。