野球漫画
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野球漫画(やきゅうまんが)は、漫画のジャンルのひとつであり、野球をテーマとした漫画、野球を物語の重要な要素とした漫画を指す。一般的にはフィクションであるが、プロ野球をテーマとする場合、チーム名や選手、それに優勝したチームについては現実に合わせることもある。
目次 |
[編集] 概要
日本において野球は最も人気のあるスポーツのひとつであり、過去から現在に至るまで漫画のジャンルとして大きな位置を占める。野球の持つ特徴としても、チームプレイによる集団の人間関係、主人公の努力による成長、ライバルとの勝負、肉体の力強さやスピード感など、少年漫画との相性がよい。一方で、少女漫画や成人向け漫画では、ほとんど見られないジャンルでもある。
野球はチームプレーだけでなく、投手と打者のように一対一の勝負の要素もあり、野球漫画もアプローチが豊富である。少年漫画、学園漫画としての作品、大人の仕事としての野球を描いた物、忍者漫画や格闘技漫画の要素を取り入れて「個人対個人の勝負」をメインにした作品や、魔球や必殺打法を駆使したSF的な物、バット職人を中心にした作品、球界再編で注目されたプロ野球のビジネスを扱った漫画、娯楽に徹した爆笑漫画など、多種多彩である。その一方で、一人で多くの敵を討ち取るという図式のため、ほとんどの野球漫画の主人公は投手である。
「魔球」と言えば今では『巨人の星』が有名だが、『巨人の星』以前にも魔球漫画はあった。『ちかいの魔球』と『黒い秘密兵器』である。ただ、この2作の頃は野球選手の動きをアニメで再現するのは困難と考えられ、アニメ化はされていない。魔球漫画のアニメ化は『巨人の星』で実現する(野球漫画ではないが、同じく「魔球」を描いたバレーボール漫画の『サインはV!』と『アタックNO.1』が実写とアニメになっている)。今では『タッチ』と『逆境ナイン』も実写となっており、時代の流れを窺わせる。
梶原一騎は人間の成長、勝負と友情と愛情、師弟の絆を描く作家で、それは多数の格闘技漫画だけでなく、『夕やけ番長』や『愛と誠』のようなスポーツ漫画以外の作品まで含む。「野球」はその中の表現法の1つに過ぎない。『巨人の星』も、まず、人間成長漫画であって、「巨人軍」や「野球」は後でついてきた。また、梶原が格闘技ファンであるせいか、『巨人の星』も主人公とライバルの「個人の勝負」が中心で、特訓も人知れず独りでやるか、あるいは一対一という場合が多い。『新・巨人の星』(1976)でようやくチームの勝敗や勝率争いが重視されるようになっている。
水島新司は『巨人の星』を痛烈に批判したようで、梶原一騎の『巨人の星』に対抗して魔球が出ない作品を描こうとしたらしい。「ドリームボール」と「さとるボール」も既存の変化球の応用である。しかし、『黒い秘密兵器』の荒唐無稽さと比べれば『巨人の星』も現実的になった方で、水島漫画はその延長線上とも考えられる。また、『大甲子園』に到る前の初期『ドカベン』は建前上、「学園コミックス」で、最初は柔道漫画だった。また、「土佐丸高校」、「吉良高校」、「弁慶高校」の面々など高校生離れしている(高校生を扱った漫画では、設定だけ読者に近い「高校生」で、実質は任侠映画や時代劇に近い世界というような物が多く、『魁!!男塾』の「3号生」などその極端な例である)。
事実上の「格闘技漫画作家」が描いた「野球漫画」と、事実上の「野球漫画家」が描いた「学園(高校生活)漫画」の良し悪しは簡単には決められない。
少年野球、高校野球、プロ野球、いずれも舞台として魅力に富み、それぞれ多数の作品がある。野球漫画の一覧は、野球を扱った作品一覧を参照のこと。
[編集] 野球漫画の歴史
- 『父の魂』(貝塚ひろし) - バット職人の漫画から野球漫画になった。
- 『黒い秘密兵器』(1963年、一峰大二) - 同じく『巨人の星』以前の魔球漫画。魔球は「秘球」と呼ばれ、ボールが黒くなったり光ったり上下2段に分かれて分身するなど、後の『巨人の星』や『侍ジャイアンツ』はむしろ地味に見えるほど。野球を舞台にした忍者漫画と言える。
- 『背番号0』(寺田ヒロオ)
- 『巨人の星』(1966年、梶原一騎・川崎のぼる) - いわゆる「スポ根(スポーツ根性)」ものとして、野球漫画のみならず、日本の漫画という枠組みでも代表的な作品。少年からプロ野球に至る主人公の成長、魅力的なライバルとの関係に加え、「魔球」を有名なものとし、以後の作品に大きな影響を与えた。「大リーグボール養成ギプス」、「父親の卓袱台ひっくり返し」、「木の陰から見守る姉」など、パロディ的扱いも含めて広く知られている。
- 『侍ジャイアンツ』(1971年、梶原一騎・井上コオ) - 『巨人の星』の「魔球」を更にパワーアップしたような奇想天外な作品。アニメ版の方が痛快な印象。本作に登場する「魔球」は、実際にはほとんどがボークである。
- 『ドカベン』(1972年、水島新司) - 高校野球漫画の代表的な作品。主人公チームだけでなく、多数のライバルチームにも魅力的なキャラクターを配し、物語に広がりを与えている。長期に渡る連載で、続編『大甲子園』、『ドカベン (プロ野球編)』などへも続いている。作者の水島新司は、他にも有名な野球漫画を多数発表しており、野球漫画の第一人者と言われる。
- 『プレイボール』(1973年、ちばあきお) - キャプテンの人気を受けての続編的な作品。
- 『あぶさん』(1973年、水島新司) - プロ野球を舞台とする、一般向け(大人向け)漫画。主人公チーム以外に、実在のプロ野球のチームと選手が多数活躍し、プロ野球ファンにとって楽しめる作品。実世界と時間が同じであるにもかかわらず、30年以上に渡る長期連載である。
- 『すすめ!!パイレーツ』(1977年、江口寿史) - プロ野球の落ちこぼれ球団をメインとしたギャグ漫画。『1・2のアッホ!』とともに、野球ギャグ漫画というジャンルを確立した作品。
- 『がんばれ!!タブチくん!!』(1977年、いしいひさいち) - 阪神タイガース選手(当時)の田淵幸一をモデルとした主人公の4コマ漫画。ギャグ漫画であり、その他のキャラクターにも実在のプロ野球選手をデフォルメして配置している。内容は野球の試合などにとどまらず、キャラクターの言動で笑いにつなげている。野球4コマ漫画の開祖とも言える。
- 『タッチ』(1981年、あだち充) - 野球部の高校生が主人公であるが、野球が全てではなく、あくまでも高校生活の一部であるような扱いとした作品。漫画としても、野球が全てではなく、ジャンルとしては「学園漫画」や「青春漫画」と言ってもよいかもしれない。スポ根に代表されるいわゆる硬派の野球漫画とは違い、ある種のいい加減さも含んだ主人公が読者の共感を得、人気作となった。
- 『甲子園の空に笑え!』(1984年、川原泉)- 「花とゆめ」に掲載された少女漫画。それまでの野球漫画を読みなれた読者からするとあまりにも異質な作品である脱力系とでも呼ぶべき作品。女性監督広岡真理子率いるあまりやる気のない田舎の高校野球部が周囲の勘違いの中あれよあれよと言う間に勝ち上がっていく様の中に独特の面白さがあり、凡百の作家ではない川原泉の才能が光っている。また、本作には女性だけのプロ野球球団メイプルズの監督に広岡真理子が指名される「メイプル戦記」という続編が存在する。本作に登場する理屈っぽい亀山(似た選手)や新庄(に似た選手)が時代を感じさせる。
- 『県立海空高校野球部員山下たろーくん』(1986年-1990年、こせきこうじ)- 週刊少年ジャンプの黄金期を支えた高校野球漫画。週刊コミックバンチにて『株式会社大山田出版仮編集部員 山下たろーくん』など続編も連載された。
- 『かっとばせ!キヨハラくん』(1987年-1994年、河合じゅんじ)-西武ライオンズをモデルとした球団「西部(せいぶ)ライアンズ」に所属するキヨハラ(清原和博がモデル)を主人公とした少年向き漫画。月刊コロコロコミックで連載された。その後、後編として「ゴーゴー!ゴジラッ!!マツイくん」や「モリモリッ!ばんちょー!!キヨハラくん」も描かれた。
- 『ミラクル・ジャイアンツ童夢くん』(1989年、石ノ森章太郎) - 小学生がプロ野球で活躍する話。
- 『H2』(1992年、あだち充) - 2人のヒーロー(Hero)、国見比呂(Hiro)、橘英雄(Hideo)と2人のヒロイン(Heroine)古賀春華(Haruka)、雨宮ひかり(Hikari)。Hの頭文字を持つ4人の高校3年間を描いた青春野球漫画。あだち充らしく、野球を媒体に、恋愛、友情などをテーマにした青春物語。アニメ化、実写ドラマ化された人気作品。
- 『やったろうじゃん!!』 (1991年- 1996年、原秀則) - 表向き甲子園を目指す新設私立高校の高校野球マンガだが高校野球界の暗部にも焦点をあてている。
- 『ササキ様に願いを』(1993年-1999年、2004年みずしな孝之) - 横浜ベイスターズ(当時)の選手で、“守護神”と称される佐々木主浩を主人公とした4コマ漫画。上述の『がんばれ!!タブチくん!!』と同様に、実在のプロ野球選手を登場人物とし、性格や外見的特徴を大きくデフォルメして描いている。実際に野球界で起こった出来事などもネタとして取り入れていた。連載は佐々木がメジャーリーグに移籍した1999年まで続き、2004年に佐々木が横浜に復帰すると期間限定で復活した。単行本も第6巻+1巻まで発行されるなど人気のある作品となった。
- 『ストッパー毒島』(1996年-1998年、ハロルド作石)-日本のプロ野球、特にパ・リーグを題材にした作品。架空のキャラクターと実在の選手とのマッチングが絶妙で、プロ野球ファンから高い支持を得ている。
- 『スカウト誠四郎』(2001年-2003年、三田紀房) - 広島東洋カープの新米スカウト誠四郎を主人公にした作品。同作者の甲子園へ行こう、クロカンと同時期にイブニングにて連載された。野球漫画に未だ可能性が眠っていることを示したが打ち切り。
- 『Mr.FULLSWING』(2001年-2005年、鈴木信也) - 高校野球を舞台にして「スポ根」をネタにしたギャグ野球漫画。
- 『おおきく振りかぶって』 (2003年-、ひぐちアサ) - ジャンルとしては正統派に分類されるが、主人公である投手の弱気で卑屈といったこれまでの野球漫画の主人公においてまず考えられない性格やスポーツ心理学・各選手の感情の起伏などといったメンタル面に特に比重を置く事などから「全く新しいタイプの野球漫画」と評される。
- 『ラストイニング』 (2003年-、原作・神尾龍、監修・加藤潔、作・中原裕) - 主人公を監督にする事により試合だけでない高校野球の裏側を描いた作品。独自の練習方法や主人公の野球哲学など全体的に理論的かつ現実的でリアリティに優れるのが特徴。
- 『新約「巨人の星」花形』 (2006年-村上よしゆき) - 『巨人の星』の現代版リメイク。原作主人公の星飛雄馬のライバル・花形満の視点で描かれた作品。