JR九州883系電車
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883系電車(883けいでんしゃ)は、九州旅客鉄道(JR九州)の交流特急形車両。1994年(平成6年)から1997年(平成9年)にかけて導入した。
JR九州883系電車 | |
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リニューアル塗色車(別府駅にて) | |
起動加速度 | 2.2km/h/s |
営業最高速度 | 130km/h |
設計最高速度 | 130km/h |
編成定員 | 334人(普)+15人(グ)=349人※7
222人(普)+15人(グ)=237人※5 |
全長 | 21700(20500)mm |
全幅 | 2850mm |
全高 | 3580mm |
編成重量 | 264.3t※7 188.6t※5 |
軌間 | 1067mm |
電気方式 | 交流20000V(60Hz) |
編成出力 | 190kW×12=2280kW※7 190kW×8=1520kW※5 |
制御装置 | VVVFインバータ制御 |
ブレーキ方式 | 発電ブレーキ、電気指令式ブレーキ |
保安装置 | ATS-SK |
備考 | (普)は普通車、(グ)はグリーン車を示し、※7は7両編成、※5は5両編成のデータ。 |
目次 |
[編集] 車両解説
九州地方の高速道路に対する競争力強化のために、特急「にちりん」用として1995年(平成7年)4月20日から正式営業運転を開始した。最高速度を130km/h(7両編成の速度種別はA48)とし、カーブの多い線形にあわせて振り子式車両としたことで博多~大分間の所要時間を20分ほど短縮した。車両デザインは787系に引き続き、水戸岡鋭治主宰のドーンデザイン研究所が手がけている。
1995年にはグッドデザイン商品に選定され、1996年(平成8年)にはブルーリボン賞およびブルネル賞を受賞した。
以下、主に製造時点での構造について記述する。
[編集] 車体
車体は軽量ステンレス製で、前頭部のみ普通鋼製となっている。近未来的でダイナミックな車体形状が特徴的で、車体の裾絞りが角張っているのが特徴である。
1994年製の1次車から1997年製の4次車があり、フロントパネルの構造にそれぞれ違いがあるほか、4次車(5両編成)では編成ごとに前面の色が違うのが特徴である。
[編集] 台車・機器
台車は空気ばね式・ヨーダンパ付き・振り子機能(空気式制御付自然振り子)付きのボルスタレス台車DT402K(電動車)、TR402K(制御車・付随車)である。振り子機能により、曲線区間において本則+30km/hでの走行と、大幅な運転時間短縮を実現した。
制御方式はJR九州の特急形電車としては初の東芝製GTO素子によるVVVFインバータ制御が採用された。ブレーキは発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキとなっている。また定速制御も備えている。
M-TAユニット方式を採用し、制御電動車のクモハまたは電動車のモハと、パンタグラフや主変圧器を搭載する付随車のサハでユニットを組む。ユニットを構成する車両間は半永久連結器を装備するが、他は密着連結器である。
パンタグラフは落成当初は下枠交差式だったが、2000年(平成12年)に全車885系と同一のシングルアーム式に交換された。また、パンタグラフ台は架線追随性を高めるために台車直結の支持台上に設置され、台車の振り子の動作に連動して傾斜する(このため、パンタグラフを備えるサハ883形のこの部分はデッドスペースとなっている。885系や、先に営業運転を開始していた東日本旅客鉄道(JR東日本)のE351系も同様)。
[編集] 車内設備
室内の座席は、グリーン車・普通車とも、動物の耳をイメージした形状の可動式ヘッドレストを採用し、「楽しさ」を表現したものとなっている。振り子車ということで、座席脇に赤玉のついた取っ手が設けられた。787系に装備されていたグリーン車のオーディオサービス機器は廃止された。
普通車の車内中央部には「センターブース」と称される空間が設けられた。ここは前後がガラスで仕切られ、向かい合わせで固定された座席の間に固定式の大型テーブルが設けられている。787系のボックスシートの流れを汲んでいるが、センターブースの座席も若干リクライニングすることが可能である。
グリーン車の座席は革張りで、フットレストを装備。リクライニングは電動となっている。B席が無く、A+CDの3列配置となっており、定員は15名である。
[編集] 外観
- かつては全編成にフェンダーミラーが装着されていたが、2005年8月にAO6編成がリニューアル出場以来、順次フェンダーミラーが撤去された。
- かつてはひさしにチューブ式LEDテールライトが存在したが、2004年11月2日夜、とある編成のどちらか片方の先頭車のひさしが走行中に何らかの飛来物に絡まれて吹飛ばされるトラブルが起きてしまい、数日間行方不明になってしまった。その直後トラブル再発防止に向けた原因究明のため、急遽全車からひさしが取外された。2005年2月末~3月初旬にひさしが復活したときには、チューブ式LEDテールライトが廃止され、溝で刻まれた3分割スタイルもなくなり、多数のボルトで固定された構造へ変更された。
[編集] 運転設備
787系等と同様の、左手操作横軸マスコンと右手操作縦軸ブレーキレバー(常用7段+非常)を備えている。また、MON3と同様の乗務員支援モニタ(音声による停車駅接近予告機能付)も備えている。
[編集] 製造・配置
7両編成5本、5両編成3本の計50両が日立製作所で製造された。全車が大分鉄道事業部大分車両センター(分オイ)に配置されている(現業機関の再編に伴う区所名の変更については後述)。
[編集] 運用史
- 1994年(平成6年)
- 1995年(平成7年)
- 1996年(平成8年)
- 1997年(平成9年)
- 1999年(平成11年)
- 12月1日 所属区所名が「大分鉄道事業部大分運輸センター」に変更される。
- 2000年(平成12年)
- 2003年(平成15年)
- 2005年(平成17年)
- 3月22日 リニューアル改装車が登場。第1号はAO8編成。リニューアルの内容については後述する。
- 2006年(平成18年)
- 3月18日 所属区所名が「大分鉄道事業部大分車両センター」に変更。
- 12月 5両編成のリニューアル改装完了。最終はAO7編成。
- 2007年(平成19年)
[編集] 改造(リニューアル改装)
1次車の登場から10年以上経過したこともあり、2005年(平成17年)3月からリニューアル改装が開始された。主な内容は以下のとおりである。
- 車体外部は、ステンレス無塗装から九州の東海岸をイメージした濃いメタリックブルー塗装に変更した。
- 車端転落防止用外幌を設置した。
- インテリアを、885系と同様の白色化粧板とフローリング(グリーン室除く)に変更した。
- センターブースを廃止し、通常の回転式リクライニングシートを設置した。
- 1号車全席(グリーン、普通席とも)にコンセントを各席横の窓下の壁面に1口設置した。座席を回転させる時は前後にずれるため差替が必要である。
- 座席表地を張替えた。
- ヘッドレスト背面にチケットホルダーを設置した。
- 窓かまちにテーブルを設置した。
- ドアチャイムを設置した。
- コモンスペースにはガラス仕切を設置した。これは2007年(平成19年)3月実施の完全禁煙化に向けた喫煙ブースの準備とみられている。
2007年(平成19年)2月現在、AO2編成が小倉工場にてリニューアル入場中である。このうち、AO3・5編成は車体側面の形式・番号標記も旧・日本国有鉄道(国鉄)書体(スミ丸ゴシック)となっており、水戸岡デザイン特有の「数字もしくは文字を1字毎に四角形で囲む」標記ではない。ただしリニューアル前後に関係なく、車体妻面の検査標記等は全車が国鉄書体である。また最初にリニューアルを受けたAO8編成のみ一部にステンレス切抜文字が使用されていたが、その後の要部検査で他編成と同様の銀色テープに変更された。あと、クロハ882-6のみ、リニューアル入場時にヘッドライトがHID方式へ変更されたが、現在は従来車と同様ハロゲンタイプに戻されている。
[編集] 使用列車
[編集] 現在使用されている列車
- (「ソニックにちりん」→)「ソニック」
2007年3月時点で、定期列車として「ソニック」以外に使用された実績は無い。ただし、始発・終着駅は博多・大分だけでなく小倉(多客期のみ)、柳ヶ浦(2007年3月改正までは中津)も該当し、前述したが2000年~2003年には佐伯発着列車への運用もあった。また、AO1~5編成とAO6~8編成の運用は分離されているが、土曜・休日はそれぞれの1運用が交換されている(ソニック15・37・57・8・30・52号 AO6~8編成→AO1~5編成、ソニック9・31・53・2・24・46号 AO1~5編成→AO6~8編成、いずれも2007年3月現在)。
[編集] その他
- 多客期の臨時列車「ハウステンボス」81・82号に、5両編成に減車の上使用された実績がある。
- 前面パネルは取替可能な構造である。そのため、人身事故などで正面パネルを大破した際は、取替品が完成するまで応急措置としてパネルを外して運転したこともある。ちなみに、2007年2月現在、クロハ882-4のみ左右両パネルを取り外されている。
- 2000年12月~2003年1月にかけて、踏切衝突事故対策として各編成の検査入場時に順次前面排障器(スカート)下部にバンパーが装着された。ただし、AO8編成に関しては、2002年5月の大型連休直後の検査入場の際には、その後の2002 FIFAワールドカップ観客輸送に伴う輸送力増強で十分な日数を確保できなかったため、2003年1月に臨時入場した際に装着された。
- 本形式は通常の新型電車とは異なり、雑誌でのイラスト公開はされず、1994年8月26日、博多駅での除幕式で衝撃デビューを飾った。博多駅までの回送時には、先頭部分は黒いカバーで覆われているという徹底ぶりであった(当時の「鉄道ダイヤ情報」誌でも、カバーがかかった状態の写真が投稿されていた)。
- ブルーリボン賞授賞式を形式にちなみ、平成8年8月3日としたのは本形式が唯一。
[編集] 編成および運用
2007年3月(改正後)現在の編成及び運用は、以下のとおりである。「AO」の「A」は883系、「O」は大分車両センター所属を示す記号である。
[編集] AO1~5編成
- 7両編成。2007年2月現在、AO2編成にて最後のリニューアル工事が始まったばかりである。
- 登場時、運転室ブロック部は全車水色一色だったが、登場次によって前面パネルの形状が異なる。
- 「ソニック」12往復(うち1往復は柳ヶ浦発着の103・104号。)に充当。
- AO6~8編成の代走にも充当。通常期は100番台のM-TAユニットを脱車した5両編成とした上で代走するが、多客期は7両編成のまま代走する。
- 滞泊は、柳ヶ浦駅が1編成のみである。
- 編成
- AO-1(クロハ882-1+サハ883-201+モハ883-201+サハ883-101+モハ883-101+サハ883-1+クモハ883-1)
- AO-2(クロハ882-2+サハ883-202+モハ883-202+サハ883-102+モハ883-102+サハ883-2+クモハ883-2)
- AO-3(クロハ882-3+サハ883-203+モハ883-203+サハ883-103+モハ883-103+サハ883-3+クモハ883-3)
- AO-4(クロハ882-4+サハ883-204+モハ883-204+サハ883-104+モハ883-104+サハ883-4+クモハ883-4)
- AO-5(クロハ882-5+サハ883-205+モハ883-205+サハ883-105+モハ883-105+サハ883-5+クモハ883-5)
[編集] AO6~8編成
- 5両編成。全編成リニューアル済。
- 登場時は前面パネルの色が編成毎に異なっていた(AO6:シルバー、AO7:黄、AO8:黒)。ただし、形状は3次車と同じ。
- このグループのみ、クロハ882形にも空気圧縮機が装備されている(3次車まではサハ883形のみ。)。
- 「ソニック」8往復に充当。
- 予備編成が無いため(3編成配置3運用)、検査時などは1編成予備があるAO1~5編成が100番台M-TAユニットを脱車し、5両編成として代走。
- また、多客期には小倉~大分間の臨時「ソニック」に充当される。この時本来の運用は、座席数増のためAO1~5編成が7両編成のまま、及び885系SM1~7編成が代走する。
- 滞泊は、竹下駅(博多運転区)が1編成のみである。
- 編成
- AO-6(クロハ882-6+サハ883-206+モハ883-206+サハ883-6+クモハ883-6)
- AO-7(クロハ882-7+サハ883-207+モハ883-207+サハ883-7+クモハ883-7)
- AO-8(クロハ882-8+サハ883-208+モハ883-208+サハ883-8+クモハ883-8)
[編集] 関連商品
[編集] 関連項目
- JR九州の在来線車両 (■国鉄引継車を含む全一覧 / ■カテゴリ) ■Template ■ノート
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