JR西日本683系電車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
683系電車(683けいでんしゃ)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)と北越急行が保有する交直流特急形車両。681系の後継車両として2001年(平成13年)から導入を開始した。
JR西日本683系電車 | |
683系2000番台「しらさぎ」 米原駅にて |
|
営業最高速度 | 130 km/h 160 km/h (8000番台) |
---|---|
設計最高速度 | 160 km/h |
編成定員 | 536名 (0番台 9両編成) 466名 (2000番台 8両編成) |
編成重量 | 347.3t (0番台 9両編成) 310.9t (2000番台 8両編成) |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 交流 20,000V(60Hz) 直流 1,500V |
出力 | 245kW / 基 |
歯車比 | 1 : 5.22 |
制御装置 | VVVFインバータ制御(IGBT素子) |
ブレーキ方式 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ、抑速ブレーキ |
保安装置 | ATS-Sw,P |
目次 |
[編集] 車両概要
[編集] 681系との相違点
- 車体を普通鋼製からアルミ合金製に変更した。
- VVVFインバータ制御装置は半導体素子をGTOからIGBT方式へ変更した。
- 主電動機出力は681系の220kWから、245kWに増強した。
- 付属編成は両側の先頭車を貫通構造に変更し、付属編成を2本増結した最大12両編成が可能となった。
- 先頭車前面の前照灯・尾灯形状を変更した。
- 電動車の基礎ブレーキ装置を踏面ブレーキに変更した。ただし160km/h運転する8000番台のみ681系同様のキャリパ式ディスクブレーキとしている。
- 運用の中心となる富山以西では160km/h運転の予定が当面ないことから、8000番台を除き前述のブレーキ変更により最高速度を130km/hに変更した。ただし160km/h運転に対応した設計はなされており、準備工事に留めてある。
- 1号車先頭部の連結器カバーを簡素化。
- 側面窓は681系の連続構造とは違い、独立構造とした。窓間を黒色塗装することで連続窓のように見せている。
- 乗降扉にドアチャイムを設置する。これは207系や223系と同一である。
- デッキと客室を仕切るドアを自動ドアからタッチセンサ式に変更した。
- 客室両端にある情報案内表示器を8色カラープラズマから3色LEDに変更。
- グリーン車各座席の液晶テレビは設置していない。のちに681系グリーン車も撤去した。
- 腰掛の色は681系とは反対になっており、偶数号車がグレー、奇数号車がワインレッドである。
なお、車両単位での681系との混結は出来ないが、編成単位では681系との相互連結を可能とした。
[編集] 全番台の共通点
- 側面種別表示器の字幕書体は「サンダーバード」、「ユニバーサルエクスプレス」といったJR西日本管内完結の営業運転列車にはオリジナル仕様のものがあるが、「はくたか」、「しらさぎ」等は、黒地にゴシック体の白文字あるいはその逆となっている。
[編集] 番台区分概説
大きく分けて、JR西日本保有で「サンダーバード」で運用する0番台、同じくJR西日本保有で「しらさぎ」で運用する2000番台、北越急行保有で「はくたか」で運用する8000番台がある。
製造メーカーは川崎重工業・近畿車輛・日立製作所・日本車輌製造・新潟トランシス(8000番台の艤装のみ)である。
2003年に実施した特急「しらさぎ」の485系の置き換えのため大量に車両が投入され、2006年時点でのJR西日本・北越急行両社の合計車両数は162両である。JRグループ発足後設計・製造された特急車両では、特急「あずさ」等に用いられる東日本旅客鉄道(JR東日本)E257系に次ぐ車両数となっている。
[編集] 0番台
特急「雷鳥」で使用している485系の置き換えを目的に製造した。6両編成(基本編成、T21~26)6本(36両)、3両編成(付属編成、T31~36)6本(18両)の計54両が金沢総合車両所に在籍する。編成記号はT(ThunderbirdのT)。 2001年(平成13年)3月3日ダイヤ改正に向け、すべての「スーパー雷鳥」を置き換える形で、基本編成4本、付属編成4本を導入した。翌2002年にはJR西日本持ちの「はくたか」で運用していた485系8両編成2本を681系に置き換えるため、基本・付属2本を追加導入し、「サンダーバード」用681系の基本・付属2本を「はくたか」に転用した。
車体側面には681系T編成と同様に「THUNDERBIRD」と表記したエンブレムを配している。
[編集] 編成
- 基本編成 <6号車・クモハ683-1501 - 5号車・サハ682-1 - 4号車・サハ683-301 - 3号車・モハ683-1001 - 2号車・サハ682-2 - 1号車・クロ683-1>-T21編成
- 付属編成 <9(12)号車・クハ683-701 - 8(11)号車・モハ683-1301 - 7(10)号車・クハ682-501>-T31編成
[編集] 運用
特急「サンダーバード」で運用している。多客期には12両(基本6両+付属3両+付属3両)編成での運転することもある。この他、七尾線の「おはようエクスプレス・おやすみエクスプレス」、東海道本線(琵琶湖線・JR京都線)米原~大阪間で運行する「びわこエクスプレス」にも使用する。681系との併結も可能で、同系との併結も多く見られる。
[編集] 2000番台
[編集] 「しらさぎ」用編成
「しらさぎ」・「加越」で使用していた485系の置き換えを目的に製造した。2003年(平成15年)3月15日に名古屋~富山間の「しらさぎ」4往復で営業運転を開始、同年6月1日に「しらさぎ」の残り4往復を、同年7月19日に「加越」用の全ての485系を置き換えた。5両編成(基本編成、S01~12)12本60両、3両編成(付属編成、S21~29)9本27両)の計87両が金沢総合車両所に在籍する。編成記号はS(ShirasagiのS)。
車体側面には白鷺のイラストを添えた「SHIRASAGI」のエンブレムを配している。投入当初はエンブレムの上部に小さく「Shirasagi Kaetsu」と表記したが、「加越」の列車愛称が消滅した2003年10月以降に消去した。
客室窓の下部の帯は「サンダーバード」用T編成の青一色と異なり上側は青、下側をオレンジ色とした。オレンジ色のラインに関してはJR西日本では「『サンダーバード』との誤乗車を防ぐために入れた」「名古屋に直通するイメージをあらわす」としている。またこのオレンジ色はJR西日本のサブコーポレートカラーともされ、「ひかりレールスター」用700系7000番台や321系・帯色変更後の207系でも採用している。
その他、0番台T編成との差異は下記の通りである。
- グリーン車に喫煙コーナーを設けてドア位置を変更し、この関係で車両形式をクロ682形としている。
- グリーン車の一部座席にパソコン用の電源を設置した。これは「ひかりレールスター」用700系7000番台の「オフィスシート」と同一である。
- 編成組成は逆向きで、クロ682形を富山・名古屋方に連結する。
- 基本編成はT編成からサハ(付随車)1両を抜いた5連とした。
- 付属編成のドア位置を変更した。
[編集] 「サンダーバード」増結用編成
2005年(平成17年)には「サンダーバード」増結用に2000番台3両編成を4本(R10~13)、計12両が落成している。方向転換(S編成とは向きが逆)を行ってT編成との整合性を取っている。また、車両番号はS編成からの連番になっている。全車が近畿車輛で製造されている。
ドア位置をS編成と同じにすることで、6号車(9号車)富山・和倉温泉方と7号車(10号車)大阪方でこれまで不便だった乗降をスムーズにしている。車体側面の帯色はT編成と同一である。
[編集] 編成
左側を名古屋・富山方、右側を大阪・米原方とする。
- 基本編成 <1号車・クロ682-2001 - 2号車・モハ683-3401 - 3号車・サハ682-2201 - 4号車・サハ683-2501 - 5号車・クモハ683-3501>-S01編成
- 付属編成(S) <6(9)号車・クハ682-2701 - 7(10)号車・サハ683-2401 - 8(11)号車・クモハ683-3502>-S21編成
- 付属編成(R) <9(12)号車クモハ683-3522 - 8(11)号車・サハ683-2410 - 7(10)号車・クハ682-2710>-R10編成
[編集] 運用
S編成は特急「しらさぎ」で運用する。米原発着は5両編成、名古屋発着は原則8両編成(基本5両+付属3両)であるが、多客期には最大11両(基本5両+付属3両+付属3両)で運転することもあり、米原駅で分割併合を行う。この他、東海道本線のホームライナー「ホームライナー大垣」・「ホームライナー関ヶ原」にも使用している。「サンダーバード」用の車両が故障した際、その代走にS編成を充当した事例もあった。
R編成は特急「サンダーバード」で運用する。7~9号車に連結すると自由席のドア位置が変わり、駅での案内が混乱するので、和倉温泉発着の10~12号車に連結することが多い。
また、大阪方にS編成の基本編成、金沢方にT編成の基本編成を連結した11両編成で団体列車を運転したことがある。
[編集] 8000番台
北越急行が所有する。特急「はくたか」で使用していた東日本旅客鉄道(JR東日本)の485系3000番台での運用を置き換えるために製造した。車両愛称は681系2000番台と同じ「Snow Rabbit Express」である。2005年(平成17年)3月1日に営業運転を開始した。ノックダウン生産であり、新潟トランシス製(車体は川崎重工業製)。基本編成6両(N03)、付属編成3両(N13)が各1本、計9両が在籍する。書類上の所属は北越急行・六日町運輸区であるが、保守整備は681系2000番台と同じくJR西日本に委託しており、金沢総合車両所で一括して整備している。付属編成の先頭車は0番台、2000番台と同様の貫通構造である。最高速度は160km/hで、683系では唯一160km/h運転を行う編成である。160km/h運転に対応するため、ブレーキ系統が強化されており、電動車では省略されていた681系電動車と同様の車輪ディスクブレーキが復活した。
付属編成の乗降扉位置は既存編成との整合性を取るために変更せず、6号車と7号車の間には乗務員用の扉しかない。
[編集] 導入の経緯
前記のJR東日本所属485系3000番台の運用を置き換えるにあたっては、「汎用型」E653系の改良もひとつの手段ではあった。しかし、「はくたか」の運行区間のうち自社線内となるのは、直江津~犀潟間および六日町~越後湯沢間と非常に短いこと、交流区間の電源周波数が自社区間と異なること(※)、ほくほく線での最高160km/hの高速運転には車両側に高速性能や気密構造が要求されること、仮にJR東日本が車両を新造した場合、北陸新幹線開業後に他線区に転用することがほぼ確実であることなどに鑑み、JR東日本が車両をしかも1編成だけ開発するのは不合理との判断がなされ、北越急行が置き換える車両を受け持つことになった。北越急行としては、北陸新幹線開業後の採算悪化に備え早めに収入を上げるという判断も働いた。
- ※JR東日本の交流電化は50Hzだが、北陸本線梶屋敷駅以西に乗り入れるためには60Hz対応設備を要する。なお、E653系は60Hz区間も走行できるので問題はない。
[編集] 編成
- N03編成 <6号車・クモハ683-8501 - 5号車・サハ682-8001 - 4号車・サハ683-8001 - 3号車・モハ683-8301 - 2号車・サハ682-8002 - 1号車・クロ683-8001>
- N13編成 <9号車・クハ683-8701 - 8号車・モハ683-8001 - 7号車・クハ682-8501>
[編集] 運用
特急「はくたか」で運用している。以前は485系が旧11・14号に限定して運用していたが、当番台が営業運転を開始して以来、681系W編成4本、同系2000番台N編成2本と完全に共通運用となった。また使用車両に関する問い合わせが多いことから、編成運用計画一覧を北越急行ホームページにて公開している。付属編成は両側とも貫通構造になっているが、その構造を利用した12両編成での運用や付属編成2本を連結する運用はない。
[編集] その他
- 0番台と2000番台はNゲージ鉄道模型として関水金属(KATO)から市販されている。
- 2006年4月1日から6月30日まで実施した、東日本旅客鉄道(JR東日本)・東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本)共同の「Japanese Beauty ホクリク」キャンペーンに合わせて、すべての先頭車に「Japanese Beauty ホクリク」ステッカーを貼付した。
[編集] 関連項目
- JR西日本の在来線車両 (■国鉄引継車を含む全一覧 / ■カテゴリ) ■Template ■ノート
- 国鉄485系電車
[編集] 外部リンク
カテゴリ: 西日本旅客鉄道 | 北越急行 | 鉄道関連のスタブ項目