コイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
?コイ | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() コイ(中央は錦鯉) |
||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||
Cyprinus carpio L. 1758 | ||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||
Common carp, Koi |
コイ(鯉・英名Common CarpまたはKoi・学名Cyprinus carpio L.)は、コイ目・コイ科に分類される魚。急流でない川や池などに生息する淡水魚である。英語ではCarpの他に、錦鯉をKoiと述べる場合がある。
目次 |
[編集] 特徴
外見はフナに似るが、頭や目が体に対して小さく、口もとに2対の口ひげがある。体長は 60 cm 程度だがまれに 1 m を超すものもいる。飼育されたり養殖されてきた系統の個体は体高が高く、動きも遅いが、野生の個体は体高が低くスマートな体つきで、動きもわりあい速い。
もともとは中央アジアあるいは黄河水系のいずれかが原産とされるが、環境適応性が高く、また重要な食用魚として養殖、放流が盛んに行われたために現在は世界中に分布している。欧米でもドイツなどでは盛んに養殖され、食用の飼育品種も生み出されているが、コイを食べる文化が定着しなかった北アメリカに移入されたものは在来の生物を圧迫するにまでなっており、侵略的外来生物として環境問題となっている。
なお日本のコイは大昔に中国から移入された「史前帰化動物」とされたこともあったが、琵琶湖など各地に野生のコイが分布し、第三紀の地層から化石も発見されていることから、やはり古来日本に自然分布していたとされた。その一方で、先述のように猟師や釣り人などから、養殖され、放流もよく行われている体高の高いコイと、琵琶湖などの湖や四万十川のような大きな河川に見られる体高が低いコイの性質が著しく異なることが古くから指摘されて、後者は野ゴイと呼ばれて前者の系統で野生繁殖しているものと区別されており、研究者の間でもこのことに注目する者も少なくなかった。21世紀になってコイヘルペスの流行で捕獲しにくい野ゴイの死体が多数得られたことから、これを用いて遺伝子解析した研究が2006年になって報告された。それによると、外来の体高の高いコイと野ゴイは種レベルに相当する遺伝子の差があることが報告され、日本列島在来の別種として新種記載の必要性も指摘されている。
頭が大きい方が雄で頭が小さい方が雌。
[編集] 生態
川の中流や下流、池、湖などの淡水域に生息する。飼育されたコイは流れのある浅瀬でも泳ぎまわるが、野生のコイは流れのあまりない深みにひそんでおり、産卵期以外はあまり浅瀬に上がってこない。滝を登るということがよく言われるが、コイはジャンプが下手で滝を登ることはない。ただし小型の物は2m程度の高さまでジャンプすることがある。
生命力は極めて強い、長寿であるのはさることながら、汚い水でも平気で生きられる程の環境適応能力があり、しかも水から上げてしばらく水の無いところで置いていても、他の魚に比べて長時間生きられるようである。
食性は雑食性で、水草、貝類、ミミズ、昆虫類、甲殻類、他の魚の卵や小魚など、口に入るものならたいていなんでも食べるほどの悪食である。口に歯はないが、のどに咽頭歯という歯があり、これで硬い貝殻なども砕き割ってのみこむ。さらに口は開くと下を向き、湖底の餌をついばんで食べやすくなっている。なお、コイには胃がない。
産卵期は春から初夏にかけてで、この時期になると大きなコイが浅瀬に集まり、バシャバシャと水音を立てながら水草に産卵・放精をおこなう。一度の産卵数は50万-60万ほどもある。卵は付着性で水草などにくっつき、数日のうちにふ化する。稚魚はしばらく浅場で過ごすが、成長につれ深場に移動する。魚にしては長寿の部類で、平均20年以上、まれに70年を超す。鱗の年輪から推定された最長寿命記録は220年だが、これは信憑性が疑問視されている。 コイとフナの雑種(コイフナ)が発見されている。
[編集] 文化
黒以外のコイを色鯉(イロゴイ)、特に赤い鯉を緋鯉(ヒゴイ)、特に観賞魚として色彩や斑点など、体色を改良されたものを錦鯉(ニシキゴイ)という。特に錦鯉にはその模様によって多くの品種があり、紅白、大正三色、昭和三色、黄金、浅黄などがある。錦鯉は飼育用として人気が高く、斑点模様、色彩の鮮やかさ、大きさ、体型を価値基準として高額で取引されている。また、鱗が大きくて部分的にしかないドイツゴイも移入されている。また、錦鯉は日本の国魚である(錦鯉の項を参照)。これに対して、ふつうの黒色のコイは烏鯉(カラスゴイ)または黒鯉(クロゴイ)、特に野生のコイはノゴイとよばれる。なお飼育型のコイは尾びれの下半分が赤く染まっているものが多く見られる。
コイは飼育だけでなく、川やダムなどに放流されることも多い。コイは体が大きくて見栄えがするため、「コイが住めるほどきれいな」水域という趣旨で自治体レベルでの放流もよく行われる。しかし、コイはもともと汚染に強いので、「コイがすんでいる=きれいな水」ではない。市街地の汚れた河川を上から眺めれば、ボラと放流されたコイばかりが目につくということが多々ある。しかもコイは各種水生生物を貪欲に食べてしまうので、往々にして河川環境の単純化を招く。生物多様性の観点からすれば、もともとコイがいない水域にコイを放流するのは有害ですらある。
釣りの対象魚としては、日本の湖沼河川においてバスフィッシング、ヘラブナ釣りなどに並んで人気のある魚で、釣り場では置き竿を林立させている光景が良く見られる。鯉はやはり大きく育つ点に釣魚としての魅力があり、その強力な引きに醍醐味がある一方、中小型はビギナーでも楽しめる。狙い方は練り餌を用いた吸い込み釣りや、ぶっこみ釣り、浮き釣りが基本だが、まれに多魚種狙いであたることもある。餌は甲殻類やミミズ、タニシ、そしてサツマイモや、マッシュポテトに小麦粉を加えた練り餌など、バリエーションは多彩である。竿やリール、糸などは強力なものが必要だが、高い道具は必ずしも必要ではない。しかし、専門に狙っていくとやはり高級な道具を使ったほうが良い。基本的に回遊している鯉を待ち伏せるような「待ち」の釣りなので、のめり込んだ人は夜どおし狙うことも多い。稀にルアーでも釣れることがある。
中国では、「鯉が滝を登りきると龍になる登龍門という言い伝えがあり、古来尊ばれた。その概念が日本にも伝わり、江戸時代に武家では子弟の立身出世のため、武士の庭先で端午の節句(旧暦5月5日)あたりの梅雨期の雨の日に鯉を模した鯉幟(こいのぼり)を飾る風習があった。明治に入って四民平等政策により武家身分が廃止され、鯉幟は一般に普及した。現在ではグレゴリオ暦(新暦)5月5日に引き続き行なわれている。
プロ野球の広島東洋カープの球団名は、広島城の異名・鯉城(りじょう)にちなむ。
[編集] 食材
コイは生命力が強い魚で、滋養があるとされ、妊婦などの栄養補強にもよいとされる。
食材としてのコイは、福島県からの出荷量が最多である。
捕獲したコイはきれいな水を入れたバケツの中に半日-1日程入れて泥を抜かないと泥くさい。捌く時は濡れた布巾等で目を塞ぐとおとなしくなる。
ただしコイの胆嚢(苦玉)は苦く、これをつぶすと身に苦味が回る。そればかりか胆嚢には毒性があり、摂食すれば下痢や嘔吐を引き起こす事がある。反面、視カ低下やかすみ目などに効果があるとされ、鯉胆(りたん)という生薬名で錠剤にしたものが販売されている。
日本では鯉こく(味噌で煮込んだ汁)、うま煮(切り身をさとう醤油で甘辛く煮付けたもの)、甘露煮にしたり、さらには洗いにして酢味噌や山葵醤油を付けて食べる。また、鱗を唐揚げし、スナック菓子のように食べることもある。中華ではから揚げにしてあんをかけて食べる。
中欧や東欧では古くからよく食べられており、特にスラヴ人にとっては聖なる食材で、ポーランド・チェコ・スロバキア・ドイツなど、西スラヴ人の定住した地域では伝統的なクリスマスの夕食にはコイが欠かせない。東欧系ユダヤ教徒の魚料理「ゲフィルテ・フィッシュ」の素材としても、コイがよく用いられた。しかし北米では、コイは水底で餌を漁るために泥臭いとして敬遠されており、釣り(遊漁)の対象魚とはされても食材として扱われることは極めて稀である。
[編集] 錦鯉
錦鯉はコイを観賞用に品種改良されたもので、日本では古くからポピュラーな観賞魚として親しまれている。近年は国内だけでなく海外での需要も大きくなっており、多くの錦鯉が海外へと輸出されている。
- 参照:錦鯉のページ
[編集] 関連項目
- 魚の一覧
- 観賞魚
- まな板 - まな板の鯉
- Nishikigoi Information Directory