ゴジラvsキングギドラ
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『ゴジラvsキングギドラ』(ゴジラたいキングギドラ、または、ゴジラ ブイエス キングギドラ)は1991年に公開された日本映画で、ゴジラシリーズの第18作である。東宝創立60周年記念作品でもある。1991年12月14日公開。観客動員数は270万人。キャッチコピーは「世紀末、最大の戦いが始まった」。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] 作品の特徴
昭和ゴジラシリーズの人気怪獣であるキングギドラと1972年公開のシリーズ第12作『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』以来19年ぶりの対決。もともとは宇宙から来た怪獣という設定だったキングギドラだが、この映画ではドラットという未来のペット3体が放射能によって合体、巨大化して生まれた怪獣として登場する。そのため、宇宙怪獣ではない。ゴジラはこの作品中で、前作の体長80mから100mに巨大化した。
登場する怪獣はゴジラ、キングギドラ、メカキングギドラ。主要襲撃地点はラゴス島、福岡、札幌、広島、瀬戸大橋、東京(新宿)。特に新宿では、当時完成したばかりの東京都庁を舞台にバトルを展開(そして破壊)。大きな話題となった。
16年ぶりにゴジラシリーズの音楽を伊福部昭が担当し、ゴジラのテーマ曲が前面に押し出された。
物語は、タイムトラベルをして過去に行きゴジラ誕生の歴史を変えようとするなど、ゴジラシリーズの中でも意外性に満ちている。また、ゴジラが放射能を浴びて怪獣になる前の「ゴジラザウルス」という恐竜も登場、ゴジラ誕生の秘密が明らかになっている。
特にこの作品は東宝特撮で初めてタイムトラベルがストーリーの鍵となっている事が最大の特色であるが、タイムパラドックスに矛盾が多く、その点において批判も多い(後述)。後々このタイムトラベルストーリーは、大ヒット映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ』の影響だと関係者は語っている。
さらに言えば地球連邦政府が存在している以上、主権国家は存在しないはずなのに各国間に力の差があるとか、日本の領土が増えたなど、政治的にもおかしなところがある。とはいえ、この地球連邦を現在の国際連合に置き換えて考えれば(何故名称が違うのかという疑問は置いておいて)理解できなくもない。劇中描写から考えれば、第二次世界大戦後の日本のように資本主義社会の競争力がそのまま残って軍事力が骨抜きにされてしまった(軍事力が自由に使えれば牽制が出来たのであろう)と解釈するのが妥当である。DVDの大森一樹のコメントによれば、23世紀の日本の増長や一企業の原子力潜水艦の所有などは、当時バブル経済真っ只中の日本がどこまで肥大化するかわからないことに対する不安と警鐘の意味合いがあったという。この映画は核を捨てながら、核の力にすがって滅びた「未来人」(ウィルソン・グレンチコ)と「日本人」(新堂)の物語である。これまでのシリーズで語られてきた「反核」から更に進めて「人間は核を捨てても再び求める」という悲観的な真実を描く事にこそ意味があったのだ。
そしてこの作品は、そのスピード感によって多くの観客にそういった矛盾を考えさせなかった。よくある「劇場を出てから気づいた」という具合であり、前述のスタッフの狙いは当たった訳である。
なお、この作品ではシリーズで唯一のゴジラが涙を流すシーンが登場する。
[編集] ストーリー
1992年、突如東京上空に巨大なUFOが飛来した。後日、富士山麓に着陸したUFOからメッセージが届き、中からウィルソン、グレンチコ、エミーと名乗る3人の人物が姿を現す。彼らは23世紀の地球連邦政府の者であり、21世紀に復活したゴジラによって、世界が壊滅的打撃を被る前にゴジラを抹殺する目的でやって来たのだという。
彼らはノンフィクションライターである寺沢健一郎が著書『ゴジラ誕生』という本の中で記した、「ラゴス島という島に生息していた一匹の恐竜ゴジラザウルスが、1954年のビキニ環礁の核実験によりゴジラへと変異した」という仮説を証明し、そこから恐竜を別の場所に移動させてゴジラを誕生させないようにするという計画を立てた。
未来人のエミー、アンドロイドのM-11と共に寺沢、三枝美希、大学教授の真崎らも1945年のラゴス島へと赴き、戦時中の日本軍部隊(新堂靖明指揮)をアメリカ軍から救った一頭の恐竜を目撃する。恐竜は未来人達の手によって、ベーリング海へとワープされる。これでもうゴジラが誕生することはない・・・
しかし、寺沢達が1992年に戻って来ると、ゴジラの代わりにキングギドラが出現したと聞かされる。その裏には未来人の陰謀があった・・・
[編集] スタッフ
[編集] キャスト
- エミー·カノー:中川安奈
- 寺沢健一郎:豊原功補
- 三枝未希:小高恵美
- TVディレクター:時任三郎
- 森村千晶:原田貴和子
- 土橋竜三:小林昭二
- 池畑益吉:上田耕一
- 真崎洋典:佐々木勝彦
- ウィルソン:チャック・ウィルソン
- 藤尾猛彦:西岡徳馬
- 林田首相:山村聰
- 新堂靖明:土屋嘉男
- ゴジラ:薩摩剣八郎
- キングギドラ:破李拳竜
[編集] タイムパラドックスの矛盾に対する批判と作り手の意図
公開当時から劇中において、ゴジラ誕生の事実を過去にさかのぼって無かった事にしたにもかかわらず、何故かみんなゴジラの存在や、それに伴う数々の出来事を覚えているなど矛盾点が目立つといった点は批判の的になっており、トンデモ本で著名なSF作家の山本弘は、この作品を「タイムトラベルの約束事が理解できていない人間が書いた脚本」と言及したりもしているが、この矛盾がないとこの物語自体が成り立たない・・、つまり消えた歴史を人々が忘れたら日本政府の服従も脅迫も出来ないという事実がある(何故かそれを指摘する意見を聞かないのだが)。実際には、川北紘一特技監督が「細かい矛盾を勢いで進める映画だと思った」とコメントしているように、製作スタッフは分かってやっていたのである。富山プロデューサーも未来の人間が時を越えてバブル期の日本を侵略しに来るというプロットの面白さを優先したのである。ただし、件の脚本も手がけた大森一樹監督は台詞の一部をカットして明らかにおかしい部分に一応対処したそうである。
[編集] 余談
一部台詞で23世紀でもソ連があることになっているが、劇場公開と同時期にソ連が崩壊してしまった。当然修正は間に合わず、そのまま使われている。
また、避難する住民のシーンでは一部過去の作品が使用されている(「vsビオランテ」での大阪のシーンの一部が福岡のシーンに組み込まれたり、1984年公開の「ゴジラ」での新宿のシーンの一部が札幌のシーンに組み込まれていた)。
キングギドラが破壊した中京の石油コンビナートは元々、ゴジラが上陸して壊す予定の東京湾のコンビナートのセットだったらしく途中で変更したとみられる。
予算の都合でビルが爆散するシーンの一部は石膏板に引き伸ばしたビルの写真を貼ったものを爆破しているが、件のギドラの引力光線のカットは映画のヒット後に新たに作られたテレビの宣伝でもオンエアされるほど出来が良く、言われなければわからない程である。