GODZILLA
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『GODZILLA』(ゴジラ)は、1998年のアメリカ映画。東宝との提携により、ハリウッドで製作された特撮映画である。製作会社はトライスター。監督はローランド・エメリッヒ。主題曲をジミー・ペイジが担当し大ヒットした。
正しくはGOZILLAと表記すべきだが、畏怖すべき怪獣としてのイメージを出すためにあえてGODにしてGODZILLAと表記されているといわれる(補足:元祖ゴジラの原作者・香川滋の他作品に登場したトカゲの怪物「ジラ」に、神の称号をあたえ、GOD-ZILLAとされた。元祖ゴジラの海外公開の際に命名され、それに準じたものである)。
ゴジラを着ぐるみ主体では無くではなくCGでの描画を多く使用する(なお全身が見えにくいところでは着ぐるみも併用され、大小の様々な模型も使われたので、「フルCG」というのは誤り。これは他のハリウッド映画モンスターにも言える)など、全編にわたってVFX技術を駆使して制作された作品。ゴジラの外見はまったく違うが、鳴き声だけは同じ。日本のゴジラシリーズにおける世界観とは共通点がない。
第19回ゴールデンラズベリー賞において最低リメイク賞、および女優のマリア・ピティロが最低助演女優賞を受賞した。
なお、2作目が製作される予定ではあったが、以降の動向は皆無である。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] ストーリー
南太平洋で日本のマグロ漁船が何かに襲われ沈没する。その後近海の島々で巨大な生物の物と思われる足跡が見つかる。大西洋でも漁船が襲われ、その航路を辿っていた生物学者のニック・タトプロス達はその生物の正体が長年フランスが行っていた核実験の影響により異常進化したイグアナ類と考えた。その矢先、アメリカの大都市ニューヨークに巨大生物が出現し、住民はパニックに陥る。
[編集] 評価
怪獣概念への理解の違いから、肝心のゴジラを日本映画での「怪獣」(生物を超えた不死身のモンスター)としてではなく、突然変異による超巨大トカゲ(イグアナ類)と解釈して描写した。そのため、従来のイメージを崩しているとして日本とアメリカのゴジラ映画ファン(ゴジラ映画はアメリカでも劇場公開されているが、それよりもゴジラ映画はTVで繰り返し放映されていたため見て育ったアメリカ人は結構いる)の評価は低いものとなった。
その一方で、ゴジラ映画としての色眼鏡を捨てて、モンスター映画(またはアニマルパニック映画)として評価した場合、非常にリアルであり、高く評価する声も少なくない。だが、それは「ゴジラ映画である必然性がない」という事の裏返しでもあるとする声がある。
ゴジラは「フランスの核実験によって生まれ、アメリカ軍と戦う」という設定に変更されており、撮影に際してアメリカ軍のバックアップがあった事により、本来のゴジラシリーズの原点である第五福竜丸事件を反省していないという議論も一部にある。
冒頭でゴジラに襲われる日本漁船の乗組員は中国人と混同した相変わらずのステレオタイプな描かれ方だが、ドイツ人である監督のエメリッヒは同じ事を主要キャストのアメリカ人にも行っていて、キャンディを口にするヒロインのいかにも頭の悪そうな描写や、甘党で無能のニューヨーク市長、ヘマばかりする軍曹など、主人公のタトプロス以外でヒロイックな活躍をするアメリカ人は殆ど出て来ない。むしろゴジラの駆除の為に大活躍するのは、自国の恥辱を消す為に奮闘するジャン・レノ扮するフィリップ率いるフランスの特殊部隊である(尤もクロワッサン代わりのドーナツやアメリカンコーヒーに不満を漏らすフィリップの描写など、彼等もステレオタイプの例外ではない)。エメリッヒの前作「インデペンデンス・デイ」(ハリウッドでの地位確立の為に意図的にアメリカ礼賛の映画にしたと思われる)に比べると、この作品では消費大国アメリカをカリカチュアした要素が多分に含まれている。
[編集] 製作の背景
アメリカの映画会社・トライスターはシリーズ化できる映画を求め、『ゴジラ』に注目した。東宝からゴジラの使用権を買い、ハリウッド版ゴジラの製作は1992年頃決定した。日本でもニュースになったが、完成までが難航した。というのは、当初トライスター側は、「ゴジラの製作権をすべてトライスターが買い取り、東宝には今後一切ゴジラを作らせない」という驚愕の条件を提示したからだ。もちろん、こんな条件に東宝側が首を縦に振るわけなく、日本のキャラクターでは破格の『ギャラ』をもらい、ハリウッドに出演したという形になった。その際、東宝からは以下の条件が提示された。それは、モスラ、ラドン、キングギドラの三怪獣と、スタッフの貸し出しは行わないというものであった。監督候補にはジェームズ・キャメロン、ティム・バートン、ヤン・デ・ボンなどの名が挙がっていた。この中でもゴジラファンとして有名なヤン・デ・ボンは監督として正式に決定し、ゴジラのデザインや脚本も作られている。幻となってしまったヤン・デ・ボン版のゴジラのデザインは日本のゴジラにかなり似ており、ストーリーは宇宙からやってきた怪獣とゴジラが対決するというものだった。しかし、製作費が掛かりすぎるとして降板させられる。
そんな中、『インデペンデンス・デイ』を製作していたローランド・エメリッヒが新しい監督としてオファーされた。エメリッヒは何度か断ったが、全く新しいゴジラのデザインを見せられ、監督する事に決める。彼は第1作『ゴジラ』(1954年版)の製作者たちが現代のSFX技術を持っていたらどのような映画になったかと考えて作ったという。又、1954年版にあったゴジラが電車を咥えるシーンや、『ゴジラ』(1984年版)に登場する、ビルにあいた穴からスーパーXがゴジラに攻撃するシーンをそれぞれアレンジして映画に挿入している。
ハリウッド版ゴジラのデザインはパトリック・タトプロスによるもの。中途半端にアレンジを加えるとオリジナルに失礼だと考え、全く新しいデザインにしたという。このゴジラのデザインはあらかじめ東宝のゴジラ製作者たちに見せられた。彼らはデザインがあまりにも違いすぎるためショックを受けた(日本で一般公開された際も日本のファンを絶句させ、賛否両論となった)が、それでもハリウッドの作るゴジラ映画を見てみたいと考えて許可した。その際、ハリウッド版のゴジラの背びれは2列だったが、東宝側の注文によって日本のゴジラと同じ3列にされた。デザイナーの「タトプロス」の名前は映画の主役(マシュー・ブロデリック)の名前にもなった。
[編集] 日本版「ゴジラ」との違い
- イグアナが巨大化した新種の生物という設定。外見はイグアナにはそれほど似ていない。むしろ動き・姿勢なども含め、映画『ジュラシック・パーク』に登場するティラノサウルスによく似ている。
- 鳴き声をあまり出さないが、この鳴き声は日本のものと共通している。
- 体の大きさを製作者が日本に来た際マスコミが尋ねると、「日本人はなんでそんなことを気にするんだ?'」と逆に尋ねられたという。これに象徴されるように、劇中でのゴジラの大きさは統一されているようには見えない(ゴジラの顔がタトプロス博士と近付いた際、顔の長さは博士の身長にほぼ同じであったが、他の場面ではゴジラが全長5メートルほどの戦闘ヘリを一口で食べるという描写があった)。また、公開時ニューヨークには「自由の女神より大きく、20階建てのビルに匹敵する」と描かれた看板が立てられたが、これでは正確な数値は不明である。
- 身軽で、480km/hというハイスピードで走る(だが、フィルム上ではあまり表現されていない部分がある)。物語中盤では、その脚力を生かして戦闘ヘリから逃れるシーンで速さが演出されているが、終盤ではタクシーに全く追いつけないという失態がある為、今一つそのスピードを実感できない点もある。
- 日本版ゴジラの特徴である放射熱線を吐かない。炎を吐いているように見えるシーンもあるが、既に燃えているものに吐息(パワーブレス)を吐く事で炎を増大させているという設定。
- 無性生殖によって卵を一度に大量に生む(200個程度か)。全てが同時に孵化。生まれた子供の大きさは人間より少し大きい程度。『ゴジラvsメカゴジラ』に登場したベビーゴジラと違って、性格は凶暴である。この怪獣はたしかに不死身とは言いがたいが、一体でも残っていれば一度に大量に繁殖し数年で人類を滅ぼす脅威を秘めている事をタトプロス博士は語る。
- マグロ(魚類)を食べる(ちなみにイグアナは基本的に草食)。
- 日本のゴジラがミサイルなどの通常兵器では倒せない無敵さを誇るのに対し、ハリウッド版のゴジラはミサイル数発の直撃で死ぬばかりか、アサルトライフルの射撃で傷を負う(日本のファンから一番批判される点でもある。通常兵器で倒せないからこそ歴代のゴジラ映画ではゴジラを他の怪獣と戦わせる、超兵器を開発する、火山の火口や雪原に誘き寄せて落としたり生き埋めにする、といった作戦を立てていたのであって、通常兵器で倒せるのならばゴジラを登場させる必要はないと言える。プロデューサーの富山省吾は、アメリカにおける怪獣とは「乗り越えるべき存在」、日本においては「畏怖すべき存在」であるという価値観の違いが現れたと述べている)。
[編集] 日本版ゴジラ映画での扱い
- 『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001年)では、「アメリカにもゴジラと似たような巨大生物が出現したが、日本の学者は同類とは認めていない」という設定になっている(劇中の冒頭で、防衛軍の隊員の台詞で言及される)。
- 『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)には「ジラ」(ZILLA)の名称(『GODZILLA』から「GOD(神)」を抜いたネーミング)でこのハリウッド版ゴジラが出演、X星人に操られてシドニーを襲撃する。身長:90m、体重:不明(身軽なのでゴジラよりかなり軽そうである)、必殺技:ハイジャンプキック。「1997年にニューヨークを襲った怪獣と似ており共通点もあるが真偽は不明」という設定である。劇中ではX星人の2番目の刺客としてシドニーでゴジラと戦い、一度はゴジラの熱線をジャンプで躱してゴジラに体当たりしようとしたが、ゴジラの尻尾ではじき飛ばされ、オペラハウスの上に落下したところを熱線を受けてオペラハウスごと爆発した。その登場時間はわずか数秒であった。その直後に、X星人はハリウッド版ゴジラがマグロを主食としていた事を揶揄するような台詞(後に北村龍平監督はローランド・エメリッヒへのメッセージだと告白している)を吐く。
- 又、『ゴジラ FINAL WARS』に登場したジラ以外の怪獣は公開中にX星人も含めソフビ・ガシャポン・食玩などで全て商品化されたのに対し、ジラだけは公開中には商品化されず、放映から1年近く経ってからやっと食玩で商品化された。
- 『ゴジラ FINAL WARS』の公開に合わせて、第1作から『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年)までの全作品を収録したDVD-BOX(製造時期の都合で後からの発売となった『FINAL WARS』は、統一デザインによるジャケットのみを先行収録)が発売されたが、本作は収録されていない。ただし『ウルトラマン』等も海外製作の作品をカウントしていない。
[編集] スタッフ
- 監督:ローランド・エメリッヒ
- 製作:ディーン・デブリン
- 製作総指揮:ローランド・エメリッヒ、ウテ・エメリッヒ、ウイリアム・フェイ
- 共同製作総指揮・プロデューサー:ロブ・フリード、ケイリー・ウッズ
- 共同製作:ピーター・ウィンザー、ケリー・バン・ホーン
- 脚本:ローランド・エメリッヒ、ディーン・デブリン
- 原案:テッド・エリオット、テリー・ロッシオ、ディーン・デブリン、ローランド・エメリッヒ
- 撮影:ウエリ・スタイガー
- プロダクションデザイナン:オリバー・スコール
- 編集:ピーター・アマンドソン、デビッド・J・シーゲル、A.C.E.
- 衣裳デザイナー:ジョセフ・A・ポロ
- 音楽:デヴィッド・アーノルド
- "GODZILLA"デザイン:パトリック・タトプロス
- 視覚効果スーパーバイザー:フォルカー・エングル
- 視覚効果プロデューサー:テリー・クロティオー
- デジタル効果プロデューサー:スティーブン・T・プーリ、フィオナ・ブル
- デジタル効果スーパーバイザー:スティーブン・T・プーリ、ジェローム・チェン
- SFX:クエスチョン・マーク・FX、セントロポリス・スペシャル・エフェクツ、メカニカル・エフェクツ・ウェアハウス
- VFX:ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス
[編集] キャラクター
- ニック・タトプロス(マシュー・ブロデリック)
- 生物学者(専門はミミズ)
- オードリー・ティモンズ(マリア・ピティロ)
- 駆け出しのジャーナリスト、ニックの元彼女
- ビクター・パロッティ(ハンク・アザリア)
- 通称アニマル、オードリーの仕事仲間で恐妻家
- フィリップ・ローチ(ジャン・レノ)
- 保険会社調査員(実はフランスのエージェント)
[編集] サウンドトラック
サウンドトラックも日本のオリコン、アメリカのビルボードで共にTOP5にランクインする大ヒットとなった。
日本ではサウンドトラック収録曲の中でもジャミロクワイの曲がプロモーションされたが、アメリカではザ・ウォールフラワーズの曲がプロモーションされた。また、エンディングに使われたパフ・ダディとジミー・ペイジによるレッド・ツェッペリンの名曲、カシミール のカバー曲の録音は、インターネットを使いニューヨークで歌うパフ・ダディにジミー・ペイジがロンドンからギターを被せるという、当時では珍しい方法をとり話題となった。
日本のアーティストからはL'Arc~en~Cielの『浸食 ~lose control~』が提供されたが、劇中での使用箇所をクローズアップしてもなお聴き取りにくいほどであったため、うたばんでL'Arc~en~Cielがゲストとして登場した際に取り上げられた。ちなみに、L'Arc~en~Cielのメンバー4人ですら初見で聴き取る事は出来なかった。
[編集] アニメ版
[編集] 概要
映画の続編として『ゴジラ ザ・シリーズ』 (Godzilla: The Series) のタイトルでテレビアニメシリーズが作られ、FOXテレビで放送された。
アニメ版は映画のラストで一つだけ残った卵から新たなゴジラが孵化するが、その場に居合わせたタトプロスを親だと刷り込みされてしまい、彼が率いるチームと共に様々なモンスターと戦っていくという内容。こちらは形こそそのままだが、熱線 (?) を吐いたり体が頑丈だったりとゴジラらしくはなっている。
日本でもディレクTV(1999年12月~2000年2月)や日本映画専門チャンネルで放送された(余談だが、「日本」「映画」専門チャンネルで海外のアニメが放送されたため、一部で物議を醸した)。
[編集] キャスト
- ニック・タトプロス:堀内賢雄 / 英:イアン・ジーリング
- モニク・デュプレ:山田美穂 / 英:ブリジット・ベイコー
- エルシー・チャップマン:小林優子 / 英:チャリティ・ジェームズ
- メンデル・クレイブン:福田信昭 / 英:マルコム・ダネール
- ランディ・ヘルナンデス:伊藤栄次 / 英:リノ・ロマノ
- ナイジェル:高瀬右光 / 英:トム・ケニー
- トニー・ヒックス:西村知道 / 英:ケビン・ダン
- オードリー・ティモンズ:田中敦子 / 英:パジェット・ブリュースター
- フィリップ・ローチ:菅生隆之
- キャメロン・ウインター:大塚芳忠 / 英:デビッド・ニューサム
[編集] スタッフ
- 製作総指揮:ローランド・エメリッヒ、ディーン・デブリン、リチャード・レイニス
- 日本語版演出:春日一伸
- 翻訳:村治佳子
- 調整:高橋慶美(浜松町スタジオ)
- 制作:吉富考明(ニュージャパン・フィルム)
- プロデューサー:土田耕太郎、岩橋康平(東宝)
[編集] エピソードリスト
- ゴジラ誕生(前編)
- ゴジラ誕生(後編)
- ヒート・チーム、結成?
- 俺も男だ、クレイブン!
- キャメロン・ウィンターの陰謀
- 雨のち雨
- 海底7千メートルの真実
- 電波怪獣クラックラー
- 巨大ミツバチの巣
- 鳥神ケツァルコアトル
- ランディは甘いものが好き
- 危険な湖
- ゴジラ、日本上陸!
- シロアリ退治
- モンスター・バトル(パート・1)
- モンスター・バトル(パート・2)
- モンスター・バトル(パート・3)
- キャメロン・ウインターの逆襲
- 決死圏!ゴジラの体内
- ゴジラとおしゃべり!?
- 結婚式の鐘が鳴る
- 核ミサイル、発射10秒前!
- 鉱山の少女メグ
- 偽者は、誰だ!
- リアルロボットvsゴジラ
- 謝肉祭のバラード
- 夢の億万長者!?
- 眠れる獅子
- 見えない敵を追え
- 怪獣サーカス
- メタモルフォシス~変態~
- 恐怖の生物兵器
- 絶体絶命
- ツイスター
- 美しきゴジラ信者
- 未来への旅
- 恋の行方
- エリア51
- モンスター・ツアー
- ゴジラを救え
以上は日本での放送順である。
[編集] 関係有り?
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