ゴジラvsデストロイア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『ゴジラvsデストロイア』(ゴジラたいデストロイア、または、ゴジラ ブイエス デストロイア)は1995年に公開された日本映画で、ゴジラシリーズの第22作である。1995年12月9日公開。観客動員数は400万人。キャッチコピーは「ゴジラ死す」。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 概要
ゴジラが41歳の生涯を閉じた作品として話題を呼んだ。最終回にふさわしく1954年の第1作『ゴジラ』へのオマージュ色が濃く、タイトルクレジットが現れる画面で初代ゴジラ(もしくは'84ゴジラ)の鳴き声が使用されたり、第1作ゆかりの人物やエピソードが多数登場する平成VSシリーズの完結編。冒頭から体内の核エネルギーが暴走して赤く光り輝くゴジラの姿(バーニングゴジラ)が強いインパクトを与え、ゴジラと新怪獣デストロイアの激闘はゴジラ最期の対決にふさわしいもので、クライマックスのメルトダウンで地上から消滅するゴジラの姿は涙無くしては観られない感動の名シーンとされている。そのため、ゴジラファンが「ゴジラの葬式」なるイベントを出したことがあった程である。さらに、エンディングのスタッフロールの背景はそれまでに作られたゴジラシリーズ作品の映像が使われているほか、音楽は有名なゴジラのメインテーマを筆頭に据えた伊福部昭による「SF交響ファンタジー第1番」をアレンジしたものになっており、「最終回」に彩りを添えている。
4年後にはまた新たなシリーズが再開されているが、往年のゴジラファンの中には『ゴジラ2000 ミレニアム』以降の作品をゴジラと認めない者も少なからず存在する。
理由としては、ゴジラ本来のテーマである「核」・「環境破壊」といった人間によるエゴイズムへのアンチテーゼが後作には表面的に見られないこと、一貫した作品・シリーズに対する共通したテーマ性が薄く、当時の流行に合わせた作風が数多く見受けられること(ただし、この要素は昭和期からのシリーズ全体にも見られる)、またゴジラ作品の元を作り上げ、第一作から本作までプロデューサーとして常にリードし、シリーズの方向性に決定力を与え続けた田中友幸が1997年に亡くなったことでシリーズ映画としての「ゴジラ」が終焉を迎えたのではないかと考えられることなどの理由が挙げられる。ゆえに「核」の申し子・ゴジラの最期を悲劇的に描いた本作がシリーズ最終作にはふさわしいと見ている(とはいえ、パンフレットで田中は「ゴジラはまたいつかスクリーンに帰ってきます」と明言しており、この時点でシリーズが『休止』であることを再三訴えていた)。
しかし、映画評論家や昭和中期のゴジラファンの中には、ゴジラvsキングギドラ以降から本作までの光線を駆使した戦闘場面、「核」「反戦」「環境破壊」のメッセージのセリフに拒否反応を示す声もある。どちらの評価も初代ゴジラの神聖視・特別視に根ざす部分もあり、賛否両論の激しい要因となっている。しかし、その一方で初代ゴジラの反戦、反核メッセージは、その時代を単に反映させたにすぎない、環境問題に関しても当時の時代性という物であった(もっとも、環境問題をちゃんと語れたのは平成モスラ3作の方であったが)。田中友幸は本来ゴジラは、一般市民を楽しませるための娯楽作として活劇として製作しており、そこに時代性としてのテーマを盛りこむという手法を取っていたと見るべきだろう(余談だが、内省的なテーマに関して近年拒絶する風潮があり、刹那的なマニア層に特に強いようではある)。
この作品は1954年のシリーズ第1作から製作に携わっていた田中友幸の遺作となっており、また、音楽の伊福部昭もゴジラシリーズ最後の作品となった。
登場する怪獣は、ゴジラ、ゴジラジュニア、デストロイア。本作のゴジラの鳴き声は前作までと違い、甲高い鳴き声の中にうめき声のようなものが強調されている。
主要襲撃地点は、香港、東京(羽田空港、有明)。また、ゴジラは愛媛県の伊方発電所に接近したが寸前で阻止され、四国上陸は果たされなかった。
ゴジラの体内で暴走する核エネルギーを沈静させるために冷凍系の兵器で武装した自衛隊の新兵器、「スーパーX3」が活躍した。なお、この作品で敵怪獣にとどめを刺したのはゴジラではなくこのスーパーX3率いる自衛隊の冷凍兵器部隊である(当初はゴジラがとどめを刺す案であったが変更されている)。
デストロイアの幼体群が等身大の人間と戦うため、その演出にはハリウッド映画の『エイリアン2』や『ターミネーター2』、『ジュラシック・パーク』からの影響が見られる。尚、デストロイア幼体と戦うのは(劇中で説明はないが)警視庁の特殊部隊SUMPであるが、これは当時この組織に相当する実在の組織の特殊急襲部隊(SAP、翌1996年にSATとして正式に発足した)が公になっていなかった為、架空の組織を設定したという事情による。
観客動員数は400万人、配給収入は20億円と『ゴジラvsモスラ』に続き、平成作品では2位の興行成績を残した。なお、1998年7月にテレビ放映された際にも12.9%という高い視聴率を獲得している。ちなみに、同時期に放送された大ヒット作『ジュラシック・パーク』の視聴率が13.0%だったので、ハリウッドの大作なみの人気を獲得しているといえよう。
[編集] ストーリー
バース島が消滅し、ゴジラとリトルゴジラが姿を消した。香港に赤いゴジラが出現し、赤い熱線を吐きながら香港の町を蹂躙していった。バース島消滅は、その地下の高純度の天然ウランが熱水に反応した結果の爆発であり、その影響を受けたゴジラは、いつ核爆発を起こしてもおかしくない状態であった。
同じ頃、東京周辺において異変が発生。東京湾横断道路で工事用パイプが消滅し、しながわ水族館では魚が突然骨と化した。その原因は、かつてオキシジェンデストロイヤーを使用してゴジラを死滅させた時、海底に眠っていた古生代の微小生命体が無酸素環境下で復活し、異常進化を遂げた恐るべき生物・デストロイアであった。デストロイアは人間大の大きさとなって警視庁の特殊部隊SUMPを襲い、更には自衛隊の攻撃に対して集合、合体し、40メートルの巨大生物と化して東京を破壊した。
御前崎沖に、ゴジラより小さい、ゴジラジュニアと呼ぶべき怪獣が出現した。それは行方不明となっていたリトルゴジラが、天然ウランの影響を受け成長した姿であった。バース島を失ったゴジラジュニアは、自らの故郷であるアドノア島へ帰ろうとしていたのだった。
ゴジラは、伊方原子力発電所を襲撃しようとした際にスーパーX3の放ったカドミウム弾を受け、体内の核分裂が制御されたため、核爆発の危機を免れる。しかし、今度は体内の温度が1200度に達した時にメルトダウンが発生する事が判明、地球が灼熱の星と化してしまう危機が訪れる。もはやゴジラを倒せるのは、オキシジェンデストロイヤー=デストロイアしかいない。ゴジラとデストロイアを戦わせるため、ゴジラジュニアを囮としてデストロイアに向かわせる作戦が提案されるが・・・
[編集] スタッフ
[編集] キャスト
- 伊集院研作:辰巳琢郎
- 山根ゆかり:石野陽子
- 山根健吉:林泰文
- 山根恵美子:河内桃子
- 三枝未希:小高恵美
- 麻生孝昭(Gフォース司令官):中尾彬
- 黒木翔(自衛隊特殊戦略作戦室特佐):高嶋政宏
- 国友満(G対策センター長官):篠田三郎
- ゴジラ:薩摩剣八郎
- デストロイア(完全体):播谷亮
- デストロイア:柳田英一
- ゴジラジュニア:破李拳竜
- ※第1作のヒロインである山根恵美子を演じた河内桃子が41年ぶりに同じ役で出演している。
- ※本来なら国友満役を細川俊之が演じるはずだったが急病により途中降板している。
- ※黒木役は当初『ゴジラvsビオランテ』同様高嶋政伸が演じる予定であったが、スケジュールの予定が付かなくなったために実兄である政宏が演じている。
[編集] その他
劇中に「朝日ソノラマ版『ゴジラvsスペースゴジラ』」を意味すると思われる「ISBN 4-257-76457-0」が出ている。 また、シリーズ第1作『ゴジラ』のオマージュとして河内桃子やオキシジェンデストロイヤーの再登場の他にも、オープニングが海上を走るカット(第一作目でも同じようにして物語が始まる)、臨海副都心にデストロイアが出現した際に伊集院が警察官に「生命の保証はできませんので、お通しする事は出来ません!」と言われるシーン(『ゴジラ』では山根博士がゴジラ上陸の際、防衛隊員に同じセリフを言われる)が存在する。
本作の初期案は、初代のゴジラの生体エネルギーが幽霊のようなゴーストゴジラとして出現しゴジラと戦い、ゴジラは倒されるが、ゴーストゴジラはジュニアによって倒される、というものだった。実体のない怪獣という見せ方としては面白い見せ方も考えられた、元々ゴジラのバリエーションが割と成功していた為企画されたのだが、やはり3作もゴジラとゴジラのバリエーション怪獣(メカゴジラとスペースゴジラ)が戦う作品が連続するのはよろしくないということで没案となっている。
ゴジラのメルトダウンとデストロイアに相当するバルバロイという新怪獣が登場する企画は川北組の某氏が考えたとされ、川北サイドからゴーストゴジラ案に対抗する形で出されたとみられる。
vsモスラまで参加した大森一樹は、ゴジラで描ける事がある限りは参加するとしていたが、今回川北、大河原両氏に口説かれ、ゴジラの死を描く事に賛同し参加を決めた。プロットのやり取りは大森が海外にいてもなお、FAXによって続けられた。
大森一樹は阪神淡路大震災にて被災した事で、火災鎮火のために冷凍レーザーを考案したそうである。