フランス料理
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フランス料理(フランスりょうり)とは、16世紀にイタリアよりもたらされた、当初はフランスの宮廷料理だった献立の総称。フォン[1]をベースにしたソースの体系が高度に発達していることが特徴で、各国で外交儀礼時の正餐として採用されることが多い。
狭義としてはこうした正餐に用いる厳格な作法にのっとったオートキュイジーヌ(haute cuisine)と呼ばれる料理を指す。もちろんフランスの各地方には一般庶民に親しまれている特徴ある郷土料理も数多くあり、広義には高級料理だけでなくこうしたフランスの伝統料理全般も含める。
日本のマスコミニケーションメディアでは単に「フレンチ」とよばれることもある。
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[編集] 歴史
現在のフランス料理の原型は、ルネサンス期のイタリアから、当時フランスの王であったアンリ2世と婚姻したカトリーヌ・ド・メディシスとその専属料理人によってにもたらされたと言われ、ブルボン王朝の最盛期に発達した。
それに伴い、ハプスブルク家により、ロシア、ドイツなどの宮廷に広まった。また、フランス革命以後、宮廷から職を追われた料理人たちが街角でレストランを開き始めた事から、市民の口にも入るようになった。
19世紀に入り、アントナン・カレーム、ユルバン・デュボワが出てフランス料理を改革した。例えば、それまで多くの料理を同時に食卓に並べていたのを改め、一品ずつ食卓に運ばせる方式を採用した。これは、寒冷なロシアで料理を冷まさず供するため、フランス料理の料理人が工夫したものがフランスに逆輸入されたといわれ、ロシア式サービスと称される。
フランス料理は、イタリア料理、スペイン料理、トルコ料理、モロッコ料理など歴史的にヨーロッパ・北アフリカ・西アジア料理の影響を受けてきた。1970年代以降は、日本料理の影響を受け、食生活の変化から新鮮な材料にあまり手を加えない健康的なヌーベル・キュイジーヌという料理の傾向が見られる。
料理法の発達とともに、食器、作法なども洗練され、味の良し悪しを批評する食通と呼ばれる職業も生まれ、19世紀前半に、ブリア・サヴァランが美食文学の伝統を確立した。星の数でランク付けをする、ミシュランなどのガイドブックがよく知られている。
[編集] 食事作法
フランス料理のコースでは、料理の出る順番が決まっている。
- オードブル
- オードブルの前にアミューズ・ブッシュ(amuse bouche、小前菜)が出されることもある。
- スープ
- 魚料理
- 肉料理-1 家畜肉か獣肉か家禽類の肉を、煮込むか焼いた物
- 肉料理-2 肉料理1で出たものを除く1品
- 口直し ソルベまたはグラニテ
- 肉料理-3 肉料理1・2で出たものを除く1品の料理と合わせてサラダ
- チーズ
- ここで別室へ移動、もしくはテーブルの整理
- デザート
- デザート前のメニューを食べ終わるとプティフール(petit four、小さな焼き菓子)と温かい飲み物(エスプレッソ、紅茶など)が供される。
代表的なマナーは以下の通り。
- ナプキンは全員が着席してメインのゲストが手に取ってから他の人は使用する。途中で中座するときはナプキンを椅子の上に置く。
- ナイフやフォークなどは外側から順に使う(複数テーブルに並んでいる場合)。
- とりあえず皿へナイフ・フォークを置く場合は、八の字の形にする。
- 食べ終わったら、ナイフは刃を内側にして、フォークと共に先を上にして皿に並べておく。
[編集] フランス料理の派生
[編集] フランス各地方の料理
これらの地方料理は高級レストランなどに限らず一般家庭でも親しまれているものである。
- プロヴァンス料理
- プロヴァンス地方の料理。南イタリア料理と同じくトマトやオリーブオイルを多く用いる他、エルヴ・ド・プロヴァンス(herbes de Provence)と呼ばれる当地独特のハーブを多く調合したものを用いる。地中海に面したマルセイユなどの町ではブイヤベースなどの魚料理も多い。ガルディアン・ド・トロなど、ごく一部の地域のみに伝わる伝統料理もある。
- バスク料理
- バスク地方もプロヴァンスと同じくトマトの使用量が多いが、同様にトウガラシも多く用いられる。カタロニアやスペイン料理にも近い。
- ラングドック料理
- ラングドック地方はガチョウ料理が多く、ガチョウの肝であるフォアグラや、セップ茸(cèpe、ヤマドリタケ)、アルマニャックなどが用いられる。
- アルザス料理
- アルザス地方の料理。シュークルート(ザワークラウト)、クグロフなどドイツ料理の影響が強く、国境のライン川を挟んで反対側の黒い森地方の料理にも似ている。
- ピカルディー料理
- ピカルディーやノール県は北部国境を接するベルギー料理の影響を受けている。アンディーヴ(endive、チコリー)のグラタンなど共通するメニューもある。ビールやジャガイモも用いられる。
- ノルマンディー料理
- ノルマンディーは北大西洋に面しており、モン・サン=ミシェル付近では潮風に吹かれた牧草で育てた子羊の肉が名物とされる。シードルの産地でもあり、リンゴを用いた味付けも多い。バターや生クリームの使用量も多い。
- ブルターニュ料理
- ブルターニュは冷涼な気候のため作物は不作とされる。ソバ粉のクレープ(ガレット)が有名であるほか、ケルト系のブルトン文化が料理にも残っている。
- オーヴェルニュ料理
- オーヴェルニュ地方
- ブルゴーニュ料理
- ブルゴーニュはフランスの家庭料理を代表するブッフ・ブルギニョン(bœuf bourguignon、牛肉の赤ワイン煮込み)発祥の地でもある。
- ロワール料理
- ロワール地方はロワール川沿いの白ワインの産地であり、白ワインを使った魚料理が特徴的である。
- サヴォア料理
- サヴォア地方は山岳地帯でスイス国境に近く、フォンデュ・オ・フロマージュ(チーズフォンデュ)やラクレット(raclette)など乳製品を多用した料理が多い。
[編集] 近現代において新たに生まれた料理
- ヌーヴェルキュイジーヌ
- フランス料理と中国料理を掛け合わせた料理である。ヌーヴェルシノワとも呼ばれる。
[編集] 副食品
フランスワインとフランスチーズには各地方や細かな地域ごとにさまざまな特徴があり、AOCをはじめとするさまざまな規格で品質が保証されている。フランスのほとんどの地域においてワインが飲まれている。ワイン以外の酒では、ノルマンディー地方のシードルおよびその蒸留酒であるカルヴァドス、アルザス地方のビールが挙げられる。
フランスパンもまたフランスの食卓を特徴付ける重要な位置を占めている。代表的なバゲットのほか、田舎風を意味するパン・ド・カンパーニュ(pain de campagne)、全粒粉を用いたパン・コンプレ(pain complet、アルザス地方に多い)、ライ麦を用い生牡蠣などに添えられるパン・オ・セグル(pain au seigle)などが挙げられる。
[編集] フランス料理のレストラン
[編集] ガイドブック
タイヤ会社ミシュランが出すガイドブック「ギド・ミシュラン」のレッド・ガイド(ギド・ルージュ)はフランスにおけるレストランの指標に大きな影響力を与えており、フランスに限らず日本(2007年より)を含めた世界の各都市のホテル・レストランガイドを出版している。
ゴー・ミヨのレストランガイドも同様に有名である。
[編集] 店舗形態
- 高級レストラン
- 上述のように厳格な作法を持ち正式なコースを出すオートキュイジーヌ。
- ガストロノミー gastronomie
- ビストロ bistro
- 大衆的な雰囲気を持つ食堂。食事作法なども高級レストランのように厳しく求められるものではない。
- ブラッスリー brasserie
- ビアホールやブルワリーを意味する場合とアルザス料理を出す店の意味に分かれる。前者は普通のカフェやバーがブラッスリーを名乗っている場合も多いが、後者はある程度の高級感を備えた店もある。
[編集] 日本の代表的なフランス料理店
グランメゾン
- アピシウス
- コート ドール
- シェ イノ
- シェ 松尾
- ジョージアンクラブ
- ジョエル ロブション
- トゥール ダルジャン
- ひらまつ
- オテル ドゥ ミクニ
- レカン
- ロ ア ラ ブッシュ
- ロオジェ
- マキシム ド パリ
ビストロ
- 北島亭
- レスプリ・ミタニ
- ル・マンジュ・トゥ-
[編集] 脚注
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