三江線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
三江線(さんこうせん)は、島根県江津市の江津駅から広島県三次市の三次駅に至る西日本旅客鉄道(JR西日本)の鉄道路線(地方交通線)である。
江津~三次間を江の川に沿って結ぶ陰陽連絡路線として建設されたが、全通が1975年8月31日と遅く、すでに地域間流動が高速道路に移行していたため、陰陽連絡線としてよりも地域住民の足としての側面が強くなった。
同じ県内の木次線の出雲横田~備後落合間と並んで超閑散路線であるため、たびたび廃線話が上がるが、沿線の反対もあり現状維持の状態である。今後の利用状況や不意の災害などによっては特に利用の少ない区間(浜原または石見川本~口羽)の部分廃止も含めて廃線話が再燃するのではないかと言われている。
目次 |
[編集] 路線データ
- 管轄(事業種別):西日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者)
- 区間(営業キロ):江津~三次 108.1km
- 軌間:1067mm
- 駅数:35駅(起終点駅含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:なし(全線非電化)
- 閉塞方式:
- 江津~浜原間 特殊自動閉塞式(軌道回路検知式)
- 浜原~三次間 自動閉塞式(特殊)
- 最高速度:
- 江津~浜原間 65km/h
- 浜原~口羽間 85km/h
- 口羽~三次間 65km/h
※三次駅を除き西日本旅客鉄道米子支社浜田鉄道部の管轄である(三次駅は同広島支社三次鉄道部の管轄)。
[編集] 運行形態
普通列車のみの運転で、全線を通して運転される下り2本、上り1本の列車のほか、江津~浜原間、浜原~三次間などに区間運転列車がある。区間運転も含めて上下線計18本が運行される(夜と翌朝の江津~石見川本間の区間便は土曜と日曜に運休)。全便ワンマン運転を実施している。一部の列車は長谷駅を通過する。
なお、2006年7月に起きた豪雨災害の影響で浜原駅以北はバス代行になっていて、江津本町・千金駅は経由しない。全線の復旧、運行再開は2007年6月中旬頃の見込みである[1]。
全列車が浜田鉄道部のキハ120形気動車による1両編成での運転であり、一部の列車にはトイレがないため、長時間の乗車には注意が必要である。車内にはゴミ箱が設置されている。これは都市部の路線では見られないため、観光などで訪れた人を驚かせている。
JR西日本によると平日の利用客は1日平均約400人だという。
[編集] 歴史
[編集] 三江線→三江北線
- 1930年(昭和5年)4月20日 - 三江線 石見江津(現在の江津)~川戸間が開業。川平駅、川戸駅開業。
- 1931年(昭和6年)5月20日 - 川戸~石見川越間が延伸開業。石見川越駅開業。
- 1934年(昭和9年)11月8日 - 石見川越~石見川本間が延伸開業。因原駅、石見川本駅開業。
- 1935年(昭和10年)12月2日 - 石見川本~石見簗瀬間が延伸開業。乙原駅、石見簗瀬駅開業。
- 1937年(昭和12年)10月20日 - 石見簗瀬~浜原間が延伸開業。粕淵駅、浜原駅開業。
- 1949年(昭和24年)11月15日 - 田津駅、鹿賀駅開業。
- 1955年(昭和30年)3月31日 - 三江南線開業に伴い、三江北線に改称。
- 1958年(昭和33年)7月14日 - 江津本町駅、千金駅、竹駅開業。
- 1962年(昭和37年)1月1日 - 木路原駅開業。
- 1967年(昭和42年)4月1日 三江北線 明塚駅開業。
- 1970年(昭和45年)6月1日 - 石見江津駅を江津駅に改称。
- 1972年(昭和47年)7月11日 - 三江北線 明塚~浜原間が集中豪雨災害で不通に。
- 1974年(昭和49年)12月29日 三江北線 明塚~浜原間が復旧。
[編集] 三江南線
- 1955年(昭和30年)3月31日 - 三江南線 式敷~三次間が開業(旅客営業のみ)。式敷駅、船佐駅、粟屋駅、尾関山駅開業。
- 1956年(昭和31年)7月10日 - 信木駅、所木駅開業。
- 1963年(昭和38年)6月30日 - 口羽~式敷間が延伸開業(旅客営業のみ)。口羽駅、郷比良駅、作木口駅、香淀駅開業。
- 1969年(昭和44年)4月25日 - 長谷仮乗降場開業。
[編集] 全通以後
- 1975年(昭和50年)8月31日 - 浜原~口羽間が延伸開業(旅客営業のみ)し全通。三江北線が新規開業区間と三江南線を編入し三江線に改称。沢谷駅、潮駅、石見松原駅、石見都賀駅、宇都井駅、伊賀和志駅開業。
- 1982年(昭和57年)11月7日 - 江津~浜原間の貨物営業廃止。
- 1987年(昭和62年)4月1日 - 国鉄分割民営化により西日本旅客鉄道が承継。長谷仮乗降場を駅に格上げし長谷駅開業。
- 1989年(平成元年)12月16日 - 一部列車でワンマン運転開始。
- 2006年(平成18年)7月18日 - 豪雨により夜から運転を見合わせ。以後、豪雨の影響により、沿線38ヶ所で土砂崩れが発生。江津~三次駅間全区間が運休(2006年10月12日、復旧工事に着手)。
- 2006年(平成18年)7月23日 - バスとジャンボタクシーによる代替輸送を開始。
- 2006年(平成18年)12月15日 - 浜原~三次間運転再開。
- 2007年(平成19年)6月中旬 - 全線復旧予定。
[編集] 駅一覧
- ●:停車、▲:一部の列車が停車
駅名 | 営業キロ | 普通 | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|
江津駅 | 0.0 | ● | 西日本旅客鉄道:山陰本線 | 島根県 | 江津市 |
江津本町駅 | 1.1 | ● | |||
千金駅 | 3.4 | ● | |||
川平駅 | 7.0 | ● | |||
川戸駅 | 13.9 | ● | |||
田津駅 | 19.3 | ● | |||
石見川越駅 | 22.3 | ● | |||
鹿賀駅 | 25.8 | ● | |||
因原駅 | 28.9 | ● | 邑智郡川本町 | ||
石見川本駅 | 32.6 | ● | |||
木路原駅 | 34.6 | ● | |||
竹駅 | 37.6 | ● | 邑智郡美郷町 | ||
乙原駅 | 39.8 | ● | |||
石見簗瀬駅 | 42.7 | ● | |||
明塚駅 | 45.0 | ● | |||
粕淵駅 | 48.1 | ● | |||
浜原駅 | 50.1 | ● | |||
沢谷駅 | 53.8 | ● | |||
潮駅 | 59.6 | ● | |||
石見松原駅 | 62.8 | ● | |||
石見都賀駅 | 68.4 | ● | |||
宇都井駅 | 74.8 | ● | 邑智郡邑南町 | ||
伊賀和志駅 | 78.2 | ● | 広島県 | 三次市 | |
口羽駅 | 79.7 | ● | 島根県 | 邑智郡邑南町 | |
江平駅 | 83.2 | ● | |||
作木口駅 | 84.9 | ● | |||
香淀駅 | 89.7 | ● | 広島県 | 三次市 | |
式敷駅 | 93.3 | ● | 安芸高田市 | ||
信木駅 | 95.1 | ● | |||
所木駅 | 97.0 | ● | |||
船佐駅 | 98.4 | ● | |||
長谷駅 | 100.6 | ▲ | 三次市 | ||
粟屋駅 | 103.1 | ● | |||
尾関山駅 | 106.1 | ● | |||
三次駅 | 108.1 | ● | 西日本旅客鉄道:芸備線 |
[編集] エピソード
- 紀行作家の宮脇俊三は三江線全通の前に、新幹線連絡列車として浜田駅~岡山駅間を山陰本線・三江線・芸備線・福塩線・山陽本線経由で運行する急行「ごうかわ」のダイヤを作成したが、実際には急行どころか、全通後しばらくは全線を直通する列車すらなかったという。ただし、1988年から1994年まで臨時列車ではあるが、浜田駅~広島駅間を山陰本線・三江線・芸備線経由で運行する急行「江の川」(浜田駅~三次駅間は快速扱い)が運行され、宮脇の構想はルートが違うものの現実のものとなった。
- かつて臨時快速として江津~口羽間に「SL江の川」が数回運転されたことがある。C56形160号機が牽引し、最後尾にディーゼル機関車が連結されていた。