京急2000形電車
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京浜急行電鉄の2000形電車(2000がたでんしゃ)は、1982年(昭和57年)12月に営業運転を開始した通勤形電車(元優等列車用車両)。
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[編集] 概要
快速特急(現・快特)用に使用していた旧600形の後継車両として製造された。
[編集] 性能
- 最高速度130km/h(営業運転時120km/h)。
- 起動加速度3.0km/h/s、減速度は常用最大3.5km/h/s、非常4.0km/h/s。
- 歯車比は4.21と京急の車両の中で最も低く、高速性能を確保している。
[編集] 制御装置
界磁チョッパ制御を採用し、800形と同様に3両分12個の主電動機を1台の主制御器により制御する。主電動機出力は端子電圧250V時120kW。抵抗制御の段数は直列15段、並列8段である。
[編集] 編成
8両編成と4両編成の2種があり、それぞれ6編成、合計72両が製造されている。
8両編成は3両1群の電動車ユニット2つの間に付随車を2両挟んでいる。4両編成の場合には、先頭車を必ず電動車とする京急の方針に則り、電動車ユニット3両の中間に制御回路を引き通した付随車を1両挟み両先頭車を電動車としている。車種構成は、8両編成が浦賀方からM1c-M2-M3-Tu-Ts-M1-M2-M3c、4両編成が同じくM1c-M2-T-M3cである。
車両番号は4桁で表され、1桁目は系列を表す「2」、2桁目は編成両数を表し、8両編成が「0」、4両編成が「4」である。3桁目は編成番号を表し1から付番する。4桁目は編成内の位置を表し、浦賀方から1~8となっている。それぞれの編成については浦賀方先頭車の番号から「2011編成」「2421編成」などと呼ぶ。
[編集] 外観
前照灯は中央上部に1灯、側面客用扉は片引き戸方式といった、従来からの伝統的京急デザインを打ち破り、前面窓下に降りて尾灯と一体化したケーシングに収められ、2灯を装備した前照灯や京急としては初の採用となる両開き式の客用扉など画期的なデザインを採用した。車両前面には非貫通式で左右非対称の大型の窓ガラスを採用し、腰部で「く」の字型に折れたスピード感あふれる先頭部デザインとともに、京急のフラッグシップトレインとして意匠が凝らされた。この先頭部デザインは、800形では採用されなかったものをリファインしたものと言われている(雑誌『鉄道ファン』に掲載された記事による)。
外板塗装は、赤い車体に窓回りを白とした当時の800形の塗装を踏襲したが、本形式の登場後はこの塗装が「優等列車用」(当時)とされたため、800形は赤地で窓下に白帯の他の一般通勤車と同一のものに変更された。
なお京急で初めて、連結器に電気連結器付き密着連結器を採用している。
[編集] 内装
2扉オールクロスシート車両で登場した。クロスシートは扉間で集団見合い形、車端部はボックス式に配置されたほか、出入口付近に折りたたみ式の補助座席が備えつけられ、混雑緩和に役立った。なお、運転台後部のみはクロスシートではなく、800形に準じたロングシートが配置された。
乗車券のみで乗れる車両(京急ウィング号の品川駅乗車時を除く)ながら、車内設備のよさは乗客から好評で、1983年(昭和58年)、鉄道友の会ブルーリボン賞を受賞した。
[編集] 格下げ改造
後継のクロスシート車2100形が登場したことにより、2000形は快速特急(現・快特)を中心とした運用から退き、一般通勤車両への格下げを行った。
その際、以下の理由により、3扉ロングシート(車端部はクロスシートのまま。補助座席も存置)に改造された。また、側面の塗装も、優等列車塗装から赤一色に窓下の白帯が1本の塗装(通称・一般車塗装)に変更された。
- 快特運用を中心に使用されたため、車歴の浅い車ながら走行距離が伸び、足回りの老朽化が懸念されたこと
- このためラッシュ時中心に使用することになったが、ラッシュ時にはクロスシート車の使用できる運用が限られること
- ロングシート化により、古い通勤形車両(旧1000形や700形)の淘汰が可能になること
2100形の増備につれて格下げ改造が進み、最後まで残ったオリジナル車両(2051編成)も、2000年(平成12年)8月27日のラストランを最後に全て改造された。
しかし、改造後、羽田空港方面への快特増強にともない、2100形と足並みをそろえられる3扉車が少数な為、実際には2100形と2000形との併結で快特に多数運用されている。
[編集] 一般通勤車両化後の改造等
- 4両編成の場合、空気圧縮機が1台しか搭載されておらず、故障した場合運行不能となるので2003年12月から2004年1月頃にかけて浦賀寄り先頭車に旧1000形の廃車発生品の空気圧縮機を搭載した。
- 近年行先表示器の字幕を白地・英語併記のものへ変更している編成も存在する(8連→2011編成・2021編成・2051編成、4連→全ての編成)。この他、白地・英語併記のものと従来の黒地・英語表記なしが混在する編成もある。また、黒地幕でも旧幕(新町や文庫などの駅名省略表記)や新幕(神奈川新町・金沢文庫などの正式駅名を表記)が編成中に混在する。
- 最近はバリアフリー対策で転落防止用外幌の設置が進められている。
- 2005年度から座席モケットの傷みが著しくなってきたため、全座席のモケットの張替えが進められている。モケットの材質や色はロングシート部分は新1000形や1500形更新車と、クロスシート部分は600形のシートモケット張替え3編成目以降と同じである。
[編集] 現在の運用
- 前面が非貫通で、先頭車の車体長が浅草線相互乗り入れ協定より長く、前面に非常用貫通路がないため運用は品川以南の自社線内のみに限定されており、品川以北の東京都交通局(都営地下鉄)浅草線などへの乗り入れはできない。しかし、かつて一回だけ泉岳寺駅に乗り入れたことがあるという。
[編集] その他
- 2011編成は、運用開始当初はワイパーの向きがほかの編成と異なっていた。しかし、ロングシート化改造が行われた際に向きが揃えられた。
- 1985年10月16日から「さわやかアップ京急運動」の一つとして、2011編成により車内に京急沿線の幼稚園・小学校の園児や児童および各サークルが描いた絵画や写真などを展示する「さわやかギャラリー号」の運行を開始した。1997年11月には2011編成が3扉ロングシート化改造のため2061編成に変更となったが、1999年3月31日をもって終了となった。1995年まで存在した夏季ダイヤには「ミュージックトレイン」となり、車内には出演歌手のPRポスターを展示するため、「さわやかギャラリー号」としては運行を休止していた。また後述の京急創立90周年の際には特別塗装となったこともあった。
- 1988年から1991年まで、京急創立90周年を記念して8両編成2本(2011編成・2041編成)に特別塗装がされた。2011編成は「さわやかギャラリー号」の特別塗装車として、2041編成は横浜博覧会のマスコット「ブルアちゃん」が描かれた「ファンタジックトレインみらい号」として(1990年の相模湾アーバンリゾートフェスティバル1990開催中には「SURF'90号」として)運行した。デザインは久里洋二による。なお1989年1月7日の昭和天皇崩御の際は先頭車前面に喪章を貼付して運転された。
- ロングシート化は基本的に京急車輌工業(現・京急ファインテック)自社工場にて施工されたが、2011編成のみ東急車輛製造で施工された。そのため車内構造が若干異なる。
- 2002年から、冷房装置が1500形更新車などが装備するCU71-EG1に交換された。現在は全車交換済みである。
- 1991年、北総開発鉄道北総・公団線(当時)が全通し、4社局相互直通運転が開始された際に、住宅・都市整備公団所有(現在は千葉ニュータウン鉄道所有)の2000形電車が本形式と形式が重複することとなった(都営浅草線を介して相互直通運転を行う社局の間には、乗入れ先で車両番号を重複させないため、付すことのできる番号の範囲が協定により定められている)。だが、乗入れに先立ち、住宅・都市整備公団2000形を9000形に改称したことにより、重複は解消した。
- 格下げ改造時に取り外されたクロスシートは、京急車輌工業の工場一般公開時に販売されたほか、アメリカ海軍横須賀基地の送迎用バスに使われたものも存在する。
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