松永浩美

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

松永浩美（まつながひろみ、男性、1960年 9月27日- ）は、福岡県北九州市八幡西区出身で八幡東区育ち（当時は八幡市）のプロ野球選手。ポジションは三塁手。右投げ両打ち。

[編集] 来歴・人物

小倉工業高校では外野手兼控え投手であった。1978年に高校を中退し、ドラフト外で阪急に入団するが、野球協約に触れたため選手登録ができず、練習生兼用具係を経て1979年に正式な選手となった。持ち味の俊足を生かしてスイッチヒッターに挑戦、1981年に一軍に初出場、打数は少ないものの打率は.326を記録。以降、阪急・オリックスにわたってチームの主軸打者として活躍。1985年には38盗塁で盗塁王を獲得。1988年、高沢秀昭との首位打者争いで敬遠作戦に遭い、11打席連続四球、10打席連続敬遠四球、1試合4敬遠四球（ダブルヘッダーで2試合連続）の日本記録となる。松永は最終打席で怒りのあまり、到底届かない敬遠のボール球を振りにいき空振り三振。1991年にも僅差で首位打者を逃した。

1993年、読売ジャイアンツのV9野球論を展開する土井正三監督との確執もあり、野田浩司とのトレードで阪神タイガースに移籍。同年、3試合連続先頭打者本塁打の世界記録を樹立した。しかし、度重なる故障などから「甲子園は幼稚園の砂場」という暴言を吐いたと報じられ、1994年にFA権を行使して、地元・福岡に本拠地をおく福岡ダイエーホークスに移籍した。移籍1年目こそ打率.314と結果を残したものの、その後は満足のいく成績を上げることができず、1997年に現役を引退。プロでは打率3割を通算7回、サイクルヒットを通算2回記録した。引退後、MLBのオークランド・アスレチックスの入団テストを受け、プレシーズンゲームに出場するが、27打席ノーヒットなどの不振で入団は実現しなかった。その後はプロ野球マスターズリーグの福岡ドンタクズに参加し、毎年高い打率を残している。整った打撃フォームと長打も狙える従来に無かったタイプのスイッチヒッターとしてファンからも人気が高かった。

[編集] エピソード

前述の「甲子園は幼稚園の砂場」発言は、『元・阪神』によればスポーツ紙によって作られたもので本人の発言ではない。実際の発言は、グラウンドキーパーに対して盗塁を増やすため堅くして欲しいと注文を付けたが、この方がよいと言われたと答えたあとで、記者に「砂場ぐらい軟らかいの?」と「いや、そんなには」と笑っただけだという。当時の阪神は機動力のある選手が少なく、せめて敵に盗塁されにくいようにと意図的に柔らかめにグラウンドを整備していたのだという（現在は俊足の赤星憲広がいるため、固めに作られているらしい）。松永はグラウンド整備に注文を付けただけであり、甲子園そのものを冒涜したのではないのである。
1993年オフに導入されたFA制度で、初めて権利行使をした選手である。
通算6回の1試合左右両打席本塁打は日本記録である（その後、北海道日本ハムファイターズのフェルナンド・セギノールが2006年 9月9日の対オリックス戦で通算6回目の左右両打席本塁打を記録し、松永の記録に並んだ）。
1993年、阪神在籍時に一旦は背番号2を付けていたが、1991年～1992年に阪神に在籍していた高橋慶彦がケガをして引退したため、縁起が悪いという理由で自分を鬼（02）のように強くと縁起をかつぎ、背番号を02番に変更した。0番、00番以外に0で始まる背番号を付けたのは日本プロ野球の公式戦に出場した選手で唯一。なお、現在では規定の変更により支配下登録選手は00・0～99番以外は付けられなくなった。
現在はプロ野球マスターズリーグ・福岡ドンタクズの主砲としても活躍しており、 2006年 11月25日の試合で通算2000本安打を達成。マスターズリーグ及び名球会から、「名誉会員」として大々的な表彰を受けた。
2006年 6月、埼玉県三郷市に「松永浩美ベースボールアカデミー」を設立。後輩の鮎川義文と共に小・中学生を対象としてプロ野球選手の育成に乗り出した。

[編集] 略歴

身長・体重：180cm 78kg
投打：右投両打
出身地：福岡県北九州市八幡東区
血液型：AB型
球歴・入団経緯：小倉工高中退 - 阪急球団職員 - 阪急（1978年 - 1992年） - 阪神（1993年） - 福岡ダイエー（1994年 - 1997年）
プロ入り年度・ドラフト順位：1978年（ドラフト外）
FA取得・行使：1993年（1回目・行使移籍）
英語表記：MATSUNAGA
守備位置：三塁、外野

[編集] 背番号

87 （1978年）
48 （1979年～1982年）
8 （1983年～1992年）
2 （1993年）
02 （1993年6月29日～）
3 （1994年～1997年）

[編集] 年度別成績

表中の太字はリーグ最多数字

年度	チーム	試合	打数	得点	安打	二塁打	三塁打	本塁打	打点	盗塁	犠打	犠飛	四死球	三振	打率（順位）
1981年	阪急	73	92	15	30	1	1	2	15	4	1	0	12	10	.326
1982年	阪急	128	398	58	94	13	4	12	44	21	11	1	41	57	.236（30）
1983年	阪急	122	427	58	120	23	7	21	74	20	5	5	56	40	.281（21）
1984年	阪急	125	458	84	142	24	6	19	70	21	4	3	60	57	.310（6）
1985年	阪急	130	481	94	154	26	1	26	87	38	1	3	87	70	.320（6）
1986年	阪急	130	492	80	148	31	3	19	75	20	1	1	73	88	.301（10）
1987年	阪急	114	393	59	114	22	2	11	45	9	2	1	48	64	.290（8）
1988年	阪急	130	473	78	154	27	3	16	77	11	0	5	73	52	.326（2）
1989年	オリックス	124	470	106	145	30	3	17	60	14	2	0	101	78	.309（3）
1990年	オリックス	128	518	103	147	26	4	21	70	26	1	2	81	120	.284（11）
1991年	オリックス	130	484	74	152	22	10	13	76	20	1	6	77	81	.314（2）
1992年	オリックス	118	473	72	141	34	4	3	39	15	2	2	63	70	.298（4）
1993年	阪神	80	303	51	89	16	0	8	31	3	0	4	31	70	.294
1994年	ダイエー	116	477	74	150	20	4	8	55	8	2	2	60	73	.314（4）
1995年	ダイエー	87	320	28	76	13	2	3	21	5	3	1	39	61	.238
1996年	ダイエー	66	207	19	45	12	1	3	13	3	5	2	22	48	.217
1997年	ダイエー	15	24	6	3	1	0	1	3	1	2	0	8	7	.125
通算成績	---	1816	6490	1059	1904	341	55	203	855	239	43	38	933	1046	.293