田中正造

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田中正造

田中正造生家

田中正造（たなかしょうぞう、1841年 12月15日（天保12年11月3日） - 1913年 9月4日）は、明治の代議士。当選6回。足尾銅山鉱毒事件の運動で有名。幼名、兼三郎。

[編集] 略歴

[編集] 正造の生涯

当時の下野国小中村（現在は栃木県佐野市小中町）生まれ。名主の家ではあったが、田中本人によれば村では中流でそれほど裕福ではなかったという。父の跡をつぎ小中村名主となり、幕末から村民らと領主である高家六角家に対して政治的要求を行っていたが、これが元で明治維新直前の1868年に投獄され、翌年出所。1870年、江刺県花輪支庁（現在の秋田県鹿角市）の官吏となった。翌年、上司の木村新八郎殺害の容疑者として逮捕されたが、無実だったらしく、1874年に釈放され、小中村に戻った。帰郷後は、1876年まで、隣の石塚村（現在の佐野市石塚町）の造り酒屋蛭子屋の番頭をつとめた。幕末に大沢カツと結婚しているが、その結婚の年については諸説ある。
1878年、区会議員として政治活動を再開。栃木新聞（現在の下野新聞）が創刊されると、翌年には、同紙編集長になり、紙面上で国会の設立を訴えた。
1880年、栃木県議会議員。当時県令だった三島通庸と議会で対立し、過激な自由民権運動に参加したとして1885年、逮捕されるが、三島が異動し栃木県を去ると年末に釈放された。
1882年4月、立憲改進党が結党されると、その年の12月に入党。1886年、県会議長。
1890年、第1回衆議院議員総選挙に初当選する。この年、渡良瀬川で大洪水があり、鉱毒の害により稲が立ち枯れる現象が流域各地で確認され、騒ぎとなった。田中は帝国議会でも当初は立憲改進党に属した。
1891年鉱毒の害を視察し、第2回衆議院議会で鉱毒問題に関する質問を行った。1896年にも質問を行い、群馬県邑楽郡渡瀬村（現在の群馬県館林市）の雲龍寺で演説を行った。
1897年になると、農民の鉱毒反対運動が激化。東京へ陳情団が押しかけた。当時このような運動には名前がついておらず、農民らは「押出し」と呼んだ。田中は、さらに国会質問を行ったほか、東京でも演説を行った。農商務省と足尾銅山側は予防工事を確約、実際に着工されるが、効果は薄かった。
川俣事件記念碑

1900年 2月13日、農民らが東京へ陳情に出かけようとしたところ、途中の群馬県邑楽郡佐貫村大字川俣村（現在の明和町川俣）で警官隊と衝突。流血の惨事となり、農民多数が逮捕された。これを川俣事件と呼ぶ。この事件の2日後と4日後、田中は国会で事件に関する質問を行った。これが「亡国に至るを知らざれば之れ即ち亡国の儀につき質問書」で、日本の憲政史上に残る大演説であった。2日後の演説の途中で当時所属していた憲政本党を離党した。当時の総理大臣山縣有朋は答弁を拒否した。この年、川俣事件公判の傍聴中、あくびをしたところ、態度が悪いとして官吏侮辱罪に問われ、裁判にかけられた。
1901年10月、田中は議員を辞職した。しかし活動はやめず、主に東京のキリスト教会などで鉱毒に関する演説をたびたび行った。なお、川俣事件は仙台控訴審での差し戻し審で、起訴状に担当検事の署名がないという理由で1902年に公訴棄却という判決が下り、全員が釈放された。
1901年12月10日に足尾鉱毒事件について明治天皇に直訴した。これには失敗したが、東京市中は大騒ぎになり、号外も配られ、直訴状の内容は広く知れ渡った。直訴状は、幸徳秋水によるものに田中が加筆修正したものと伝えられる。田中は即拘束されたが、政府は単に狂人が馬車の前によろめいただけだとして不問にすることとし（田中本人の言及による）、即日釈放された。当時、田中は死を覚悟しており、釈放後、妻カツ宛に、自分は（12月）10日に死ぬはずだったという意味の遺書を書いた。直訴直前、迷惑がかからないようにと、カツに離縁状を送っているが、カツ本人は離縁されてはいないと主張している。
1902年、川俣事件公判の際にあくびをした罪で重禁固40日の判決を受け服役。このとき聖書を読み、影響を受けた。この後の田中の言葉には、「悔い改めよ」など、聖書の引用が多い。ただし、改宗はしなかった。
同年、渡良瀬川下流に貯水池をつくる計画が浮上。建設予定地となっていた埼玉県川辺村・利島村の反対運動に参加。計画は白紙になった。
1903年には栃木県下都賀郡谷中村が貯水池になる案が浮上。田中は1904年7月から実質的に谷中村に住むようにした。同年、栃木県会は秘密会で谷中村買収を決議。貯水池とする工事がはじめられた。
1906年、谷中村議会は藤岡町への合併案を否決。栃木県は、谷中村は藤岡町へ合併したと発表。谷中村は強制廃村となるが、田中はその後も谷中村に住み続けた。
1907年、政府は土地収用法の適用を発表。村に残れば犯罪者となり逮捕するという脅しをかけ、多くの村民が村外に出たが、田中は強制破壊当日まで谷中村に住み続け、また、強制破壊後も死ぬまで住み続けた。
1908年、政府は谷中村全域を河川地域に指定。1911年、旧谷中村村民の北海道常呂郡サロマベツ原野への移住が開始された。

[編集] 正造の最期

土地の強制買収を不服とする裁判などがあり、この後も精力的に演説などを行ったが、自分の体が先行き長くないことを知ると、1913年7月、古い支援者らへの挨拶まわりに出かけ（運動資金援助を求める旅だったともされる）、その途中の8月2日、足利郡吾妻村下羽田（現在の佐野市下羽田町）の支援者庭田清四郎宅で倒れ、約1ヵ月後に同所で客死した。下野新聞によれば、死因は胃ガンなど。

財産はすべて鉱毒反対運動などに使い果たし、死んだときは無一文だったという。死亡時の全財産は信玄袋1つで、中身は書きかけの原稿と新約聖書、鼻紙、川海苔、小石3個、日記3冊、帝国憲法とマタイ伝の合本だけであった。なお、病死前の1月22日に、小中の邸宅と田畑は地元の仮称旗川村小中農教会（現在の小中農教倶楽部）に寄付していた。邸宅は現在、小中農教倶楽部が管理している。

雲龍寺で、9月6日に密葬が行われ、10月12日に佐野町（現在の佐野市）惣宗寺で本葬が行われた。参列者は数万人ともいわれる。

田中の遺骨は、栃木・群馬・埼玉県の鉱毒被害地計6箇所に分骨された。このため、墓は6箇所にある。なお、このうち1箇所は1989年に公表されたもので、それ以前の文献では5箇所とされていることがある。