絵画商法
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絵画商法(かいがしょうほう)とは、悪徳商法の一種であり、法外な値段で絵画を売りつける悪質なキャッチセールスである。繁華街で絵はがきなどを配って通行人を公然と勧誘する様子から、主に勧誘員をエウリアン(「絵売り」と「エイリアン」の語呂合わせ)と呼ぶ。
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[編集] 概要
絵画商法を行っている絵画販売会社は、下記の繁華街などに画廊を構え、下記の作家らによる海洋や生物を描いた絵画やイラストレーション・人気アニメーターによるオリジナルイラストなどの原画や版画を展示している。画廊の前にはエウリアンと称される勧誘員(女性の場合が多い)が、通行人に声を掛けて画廊に招き入れ、絵画を法外な価格で売りつけるという手口である。長時間拘束し、強引に売買契約を結ばせることもある。
こうした絵画販売会社では、シルクスクリーンなど版画を原価より何十倍も高い価格で売りつけることもある。しかもこれらの版画は、多くの場合、画家自身の制作したオリジナル版画ではなく、業者によるデジタル写真製版の大量複製であるため、事実上は「額縁付ポスター」あるいは「インテリア商品」というべきものであり、通常の画廊では美術品としては認められていない。美術オークションなどでも、版画ではなく「インテリアアート」に分類される。
資産価値を目当てにしてこのような絵画を購入させられた客は、絵画を売却しても支払った金額を回収する事も出来ず、長期のローンに苦しむ場合が多い。また違法としりつつローン契約の手続きを行う、ローン会社の責任も大きい。インターネットオークションにはこうして購入した版画が多数出品されているが、5万円以上で落札されればよい方である。なお、70万~100万円もあれば、ピカソやシャガール、ウォーホル、キース・ヘリングなど有名かつ人気の高い作家の比較的安い版画を買うことができてしまう。第二次大戦以降現在までの作家のほとんどの版画は、国際的な評価の高いオリジナル版画の作品でも、それ以下の価格で手に入る。
稀にではあるが、販売員の言うことを全て鵜呑みにしてしまう客も存在し、何度もこのような絵画を購入してしまう人もいると言われている。また、被害者は、当然ながら絵画や技法等に対する知識は乏しく、積極的に話しかけてくれた異性の販売員や、原画を描いているアニメーターや画家に釣られて入ってきた人が多く、彼氏や彼女が不在で恋愛経験の少ない者や単身で寮生活をしている者、社会との接触の少ない職業(自衛官や看護師など)で被害が多いとも言われている。
[編集] 手口の例
画廊の前には必ず1~2人の勧誘員が立っており、絵はがきなどを通行人に配る。そして絵はがきを受け取った通行人に、「絵画に興味はあるか」「そこに見える○○ショップ、○○会社の横(所)に○○の絵が見えますよね」「展示会をしているからぜひ見ていってほしい」などと言って画廊の中に引き入れる。この段階で立ち去ろうとすると「怪しい者(会社・業者)では有りません」「違うんです、違うんです」と言って呼び止めようとする。
勧誘員に引き入れられ、画廊の玄関の受付カウンターで、氏名、自宅と勤務先両方の住所と電話番号を書かされる。そして、画廊の展示スペースに通すと、普通に絵を見せる様にしながら「この中でどの絵が一番好きか」などと客に質問をし、客が質問に答えると、選んだ絵の担当者と称する販売員と交代する。
この新しく現れた販売員は客に「アンケートを書いて欲しい」と頼み、客を画廊の奥にあるイスに座らせる。そのイスは大抵仕切りで囲われた場所にあり、さらに客の周りを囲むようにして版画を掛けたイーゼルを並べるなど逃げられない様にする。
その上で、客に対して絵を書いた画家のプロフィールの説明をしながら、「絵を買うと生活が豊かになる」「あなたならこの絵をどういった場所に飾るか」「高額な絵画となると高額所得者の人達が買うと思われがちだが、意外とうちの店では20代~30代の方々が買っていく。1枚買うと2枚3枚と買っていく方も多い」「特殊インクを使用し、色合いがほとんど劣化せず半永久的に長持ちするので、何十年何百年経っても価値がある」「ここにある絵は必ず値が上がる」「この画家の絵画を選んでくれたのは担当者としてとてもうれしい」「あなたは月々○万○千円なら何に使うか。又は何を買うか」「高額な値段だけに確かに割高感があるが、分割払いなら一日当たりわずかな負担で絵が手に入る」「この絵を選んで頂いたあなたの担当にぜひなりたい」「絵に興味はないか、一枚買ってほしい」「あなたにだけは特別に100万円の所を70万円にする」などと、熱心に説明しながら強引に絵を売ろうとする。
大抵の客は、高額の版画を買う気など無いまま入ってきているが、拒否し立ち去ろうとしても店員はなかなか話を止めず、中には丸め込まれて「豊かな生活」を信じて買ってしまう者もいる。あくまで拒否する者は、買うと言うまで画廊の中に閉じ込められ、場合によっては5時間以上監禁された事例もある。
また画廊の中に長時間監禁されるだけでなく、「お前のせいで時間を無駄にし、絵を売るノルマが達成できなかった。責任をとって一枚必ず買え」などと威圧的な言葉遣いで脅迫される事まであり、その結果、ローンを組むなどして売買契約を結んでしまう場合が多い。
[編集] 対処方法
- 街頭でチラシや絵はがきを配っているが、これらを受け取らず、話にも応じないで無視するのがよい。
- 被害にあった場合は、消費者センターに相談する。
- クーリングオフが可能である。
- 客が画廊からの退去を妨害されて契約させられた場合は、消費者契約法による契約取消が可能である。
- クーリングオフ期間内であれば、クーリングオフの方が簡単である。退去妨害を理由に契約取消を主張すると業者からの反論が予想されるが、クーリングオフの場合は期間内であれば無条件・理由不問で解約できる。
- 販売員に取り囲まれて、半監禁状態に置かれ、長時間外に出してもらえないような場合は、便宜的に契約して外に出て、即刻、クーリングオフをするという手段もある。
- 被害者が男性である場合には、「女性店員に付いていき、言うままに金を出した。下心があったのだろう。」との邪推から、周囲の者や、ときには救済団体の女性担当者などから白眼視されることもある。そのために、被害者本人が窮状を訴えられず、泣き寝入りしてしまいがちである。しかしその場合でも一時の恥や屈辱を忍んでも上記の行動を取るべきである。
- クーリングオフの期間を過ぎていても、(購入させた絵画の発送をわざと遅らせ、クーリングオフ期間を過ぎてから自宅などに届けることも普通に行われるので、本人が後悔したり、家族が気づくのも、実際には、クーリングオフ期間を過ぎていることが多い)、消費者センターや弁護士等に相談すれば、多くの場合解決するので、泣き寝入りはしない方がよい。
[編集] 主な活動地域
[編集] 取り扱っている主な作家
絵画商法で取り扱うことが多い作家である。これらの作家は、絵画商法の業者と結託しているわけではない。 若者受けをする画風で売りつけやすいことから取り扱っていることが多い。
他、漫画家・PCゲーム原画家・イラストレーター
- ヒロ・ヤマガタ
- アルフォンス・ミュシャ
- ニッサン・インゲル
- ピート・ウィルキンソン
- ジャン・カールスザン
- キモ
- デイビッド・グローバー
- シム・シメール
- デイル・ターブッシュ
- ミッシェル・バテュ
- マーティロ・マヌキアン
- マルコ・マヴロヴィッチ
- イレーヌ・メイヤー
- クリスチャン・リース・ラッセン
- ジョン・ラッテンベリー
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 偽版画WORLD -にせはんがワールド- - まとめサイト
- 絵のある生活? - まとめサイト