蟲師
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蟲師 | |
---|---|
ジャンル | 伝奇 |
漫画 | |
作者 | 漆原友紀 |
出版社 | 講談社 |
掲載誌 | アフタヌーンシーズン増刊 月刊アフタヌーン |
発表期間 | 1999年 - 連載中 |
巻数 | 既刊8冊 |
その他 | 隔月連載 |
テレビアニメ | |
監督 | 長濱博史 |
キャラクターデザイン | 馬越嘉彦 |
アニメーション制作 | ART LAND |
製作 | 『蟲師』製作委員会 |
放送局 | フジテレビ系列・BSフジ |
放送期間 | 2005年10月 - 2006年3月 未放送6話:2006年5月 - 6月 |
話数 | 全26話(地上波未放送6話) |
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『蟲師』(むしし)は、漆原友紀による漫画、およびそれを原作としたアニメ作品。「月刊アフタヌーン」(講談社)において1999年から隔月連載中。単行本はアフタヌーンコミックスから第八巻まで刊行されている。
平成15年度文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞、2006(平成18)年度(第30回)講談社漫画賞一般部門受賞、文化庁日本のメディア芸術100選マンガ部門選出。
2005年10月よりフジテレビ系列で、全26話でテレビアニメ化された。2007年3月に監督大友克洋・主演オダギリジョーによる実写映画が公開された(蟲師 (映画)を参照)。
目次 |
[編集] 概要及びあらすじ
本作のタイトルにも入っている「蟲」(むし)は作者の創作であり、我々が一般的に知っている「虫」所謂「昆虫」ではない。「蟲」とは、我々の世界でいえば幽霊や妖怪のような存在がそれにあたるが、作者はそれらの怪異を、一般人には見えない「蟲」という存在の生命の営みから起こる現象と捉え、霊能力者を「蟲師」(むしし)という「蟲」専門の医者、かつ研究者、退治者とすることで、これまでに存在した怪談や霊現象を取り扱った物語とは異なる新たなストーリーを創り出している(但し作中世界においても幽霊等の概念は存在する)。
時代設定については、作者自身特に設定はされていないそうだが、イメージは「鎖国を続けた日本」、もしくは「江戸期と明治期の間にある架空の時代」といった所との事。ゆえに作中においては、登場人物は主人公を除いて全員和装をしており、登場する風景も日本の原風景を思い起こさせるようなノスタルジックなものとなっている。
また、画風は一般的な漫画とは異なり、毛筆を使用したような特徴のある線で描かれており、独特の画風である。筆絵調の画風はアニメ版には受け継がれていない。
物語の語り方として、必ず人物の回想を用いる点が特徴的である。しばしば、回想の中の人物がさらに回想を始めるといった二重の回想まで行われている。その為描かれる世界はギンコが行動する時間や行動範囲に限らず、伝聞による時間・世界を描くことを可能にし、短い物語の中でも驚くほどの深みを与えている。
本作は、「蟲師」である主人公ギンコが「蟲」により引き起こされる様々な謎を解き明かしていく物語であり、基本的に一話完結で物語が構成されている。
[編集] 登場人物
本作は、基本的に一話完結で物語が構成されているため、少数の人間とギンコを除いて各話ごとに登場人物が異なる。そのため、以下は作中におけるギンコの関係者という意味合いで記している。
- ギンコ
- 本作の主人公で蟲師。幼少時、母に連れられ行商の旅をしていたが、災害にあい母を失って行き倒れた所を女蟲師ぬいに救われた縁から蟲師となる(幼名・ヨキ)。蟲を呼び寄せてしまう体質をもっているため、一カ所に留まることは出来ず、蟲の研究をしながら常に旅をしている。人々が和装をしている本作においては珍しく、一人洋装をしている。白髪、緑眼、左目は義眼が入っている。性格は常に冷静で、感情的になることは少ない。また、蟲を屠る事を前提とする蟲師の多い中、蟲と共存したいという考えを持つ。
- 化野(あだしの)
- とある海辺の里の医者。ギンコの知り合い。蟲に関するもの、しないもの関係無くとにかく珍しいものが好きで収集している。その趣味が仇となり、時たまトラブルも起きる。ギンコもよく蟲に関する曰くつきのものを売りつけては路銀を稼いでいる。人徳は結構ある。
- 狩房淡幽(かりぶさ たんゆう)
- 狩房家の四代目筆記者。筆記者とは、全ての生命に死をもたらす強力な「禁種の蟲」を体内に封じている者のことであり、狩房家に数世代に1人生まれる。蟲を屠った話を書物に書き記すことで代々少しずつ「禁種の蟲」を封じる力を持ち、その役目に一生を費やす。筆記者は、その証しとして身体の一部に墨色の痣を生まれ持つ。痣のある部位は自由に動かすことが出来ない上、筆記の際に痣から生じる痛みに耐えなければならない。蟲師が、蟲を只々屠る事に疑問を感じていた中、ギンコに出会い「蟲が人や動植物と共存する理想の世界」を抱き始める。
- 薬袋たま(みない たま)
- 狩房家付きの蟲師。遥か昔、狩房家の先祖の身体に禁種の蟲を封じた最古の蟲師一族の者。狩房文庫を管理している。淡幽の乳母のような存在。
- イサザ
- 光脈筋を追って流れ歩くワタリの者。光脈筋の変動や蟲に関する情報を蟲師に売ることで生計を立てている。ギンコを子供の頃から知る人物。
- 兎澤綺(とざわ あや)
- ウロ守。代々ウロ繭を作り、管理してきた兎澤一族の当代。自身の不注意により行方の知れなくなった双子の姉、緒(いと)を探し続けている。
- ぬい
- 女蟲師。親を失い行き倒れていたギンコ(当時の名はヨキ)を拾い蟲師としての基本を教えた人物。ギンコ同様蟲を呼び寄せる体質。
- 薬袋クマド(みない くまど)
- 最古の蟲師一族・薬袋家の現当主。薬袋家に時折現われるという「何かが欠落した者」であり、感情表現に乏しい。
[編集] 用語
- 蟲(むし)
- 「みどりもの」とも呼ばれ、この世のあらゆる生命よりも命の源流に近いもの。「生」と「死」の間、「者」と「物」の間にいるもの。人の中には見える者と見えない者が居るが、稀に全ての人間に見える種類も存在する。その生態は未だ謎が多く、専門の蟲師であっても先ず怪異の原因である蟲を探し出し、研究しながら解決策を模索する事の方が多い程。その姿形等は多種多様で、動植物型のものやどちらともつかないもの、虹や火など自然現象に近いものまで様々で、姿形は違えど実際の生物と全く同じ性質を持ったものすらいる。
- 蟲師(むしし)
- 蟲に関するあらゆる事件を取り扱う、蟲専門の医者、退治者、研究者。ギンコのように旅をしながら仕事をするものと、一箇所に定住し仕事をする者がいる。基本的に個人営業だが、蟲師間での情報交換など横の繋がりはある。世間的にはあまり知られていない職業。
- 光酒(こうき)
- 光り輝く命の水。酒。その正体は蟲であるとも、蟲になる前の姿であるとも言われ、遥かな地の底、真の闇の中を水脈のように流れ移動しており(光脈)、これが近づいた土地(光脈筋)は緑豊かに栄え、遠ざかると枯れる。蟲師の仕事にも多く使われ、蟲師間でも高価で取引されている。蟲にとっても人にとっても何よりも美味とされる。
- ワタリ
- 蟲が見えるがために、住んでいた場所を追い出された者達が最後に行き着く集団。光脈を追って常に移動しており、行く先々で集めた光脈筋に関する情報や蟲に関する噂を売る事を生業としている。ゆえに蟲師とは繋がりが深い。
- 狩房文庫(かりぶさぶんこ)
- 狩房家代々の筆記者が蟲師から蟲を屠った話を聞き取り収めた書物。そこに記された一文字一文字全てに禁種の蟲を少しずつ封じている。莫大な量があり、その全てが狩房家別邸、地下洞窟内に建てられた多数の蔵へ収められている。蟲師にとって指南書と言えるこれらの閲覧許可を得るためには、狩房家へ協力し蟲を屠った話をしなければならない。
- ウロ繭
- ウロという蟲と、二匹の蚕が作った一つの繭(玉繭)の性質を利用し手紙を届ける通信方法。代々、兎澤一族によって管理されてきた。全国を流れ歩く蟲師同士の連絡手段。ウロが穴を広げてしまうため、数年おきに新しいものと取り替える必要がある。
- ヌシ
- 光脈筋にある山の精気を抑え、統制している存在。眠っている時ですら、山の全てを把握する。ヌシになるものは産まれつき体に草が生えている。人間がこれを務めるには、「ヌシの術」を使うが、人がヌシを務めるのは相当辛いという。
- 妖質(ようしつ)
- 五感以外のものを感じる感覚を補うもの。量の多寡はあっても誰もが持つ。これの多い者は蟲が見えるが、人によっては眠っていたり、突然覚醒することもあれば突然失うこともある感覚。
- 蟲の宴
- 蟲が人に擬態し客(人間)を招くといわれる宴。この中では蟲達から光酒の入った杯が渡されるが、これを飲み干すと生物としての法則を失い、蟲になってしまう。
- 蟲煙草(むしたばこ)
- 蟲が封じ込められた煙草。他の蟲に纏わり付く性質を持っており、通常の煙草のように吸い、煙状で吐き出すことにより、ほんの短時間ではあるが蟲を捕縛することが出来る。
[編集] 単行本収録目録
[編集] 第1巻
- 緑の座(みどりのざ)
- 緑豊かな山の中、一人暮らす少年は描いたモノに命を宿す『神の筆』(かみのひだりて)を持つという。噂を聞いた蟲師ギンコは調査のため、少年のもとを訪れるが……。
- 柔らかい角(やわらかいつの)
- 雪深い山里へ、耳に巣食う蟲の治療に出向いたギンコ。治療後、村長から村人とは異なる症状を訴える『角の生えた孫』の治療を依頼されるが……。
- 枕小路(まくらのこうじ)
- 『百発百中の予知夢を見る男』のもとを訪れたギンコは、その夢の正体を蟲であると指摘、夢から覚めなくなる危険性を話し、予知夢を抑える薬を渡す。約1年後、男の住む町へ出向いたギンコは、住む者もいなくなり荒れ果てた村に、ただ一人暮らす男の姿を見て立ち尽くす。男に何があったのか……。
- 瞼の光(まぶたのひかり)
- 『光に当たると目が激しく痛む病にかかった少女』。どの眼科医にも見放され、光遮る蔵の中で暮らす少女が瞼の内に見るものは、真の闇の中、光る河とその対岸に座る片目の男……。
- 旅をする沼(たびをするぬま)
- 奥深い山を越える途中、ギンコは『移動を続ける謎の沼と、それと行動を共にする緑(あお)い髪の少女』に出会い、興味を持つが……。
[編集] 第2巻
- やまねむる
- 旅の途中、通りかかった『光脈筋の山の異変』に気付き調査をはじめたギンコは、人でありながら山のヌシを務める老人に出会う。調査の中、山の異変と老人(ヌシ)との関係に気付いたギンコは行動を起こすが……。
- 筆の海(ふでのうみ)
- 『代々その身の内に禁種の蟲を封じてきた狩房家』。その四代目筆記者として過酷な運命と向き合う娘、狩房淡幽(かりぶさ たんゆう)。禁種の蟲に蝕まれ動かぬ脚を引きずりながら、別邸にこもり日々禁種の蟲を封じる呪を書き続ける淡幽と、蟲を寄せ付ける体質から常に流れ歩き続けるギンコ。全く正反対の性質を持つ二人の静かな心の交流……。
- 露を吸う群(つゆをすうむれ)
- 周囲を海に囲まれた断崖の岩島。痩せた土地を細々と耕し、かつかつの暮らしをする島民の心の支えは、代々島の頭首一族に現れる『毎日生き死にを繰り返す生き神』の存在だった。島の少年に生き神の謎の解明を依頼されたギンコは、生き神に巣食う蟲に着目する……。
- 雨が来る虹がたつ(あめがくるにじがたつ)
- 『奇妙な虹』に憑かれた父親を持つ男は、病に臥せった父のため虹を採る旅に出た。雨宿りに立ち寄った木の下で男に出会ったギンコは、奇妙な虹の正体を蟲だと教え、虹探しに同行する。長く辛い旅を続けた末、虹を見つけた時、男の心の内に宿るものは……。
- 綿胞子(わたぼうし)
- 婚礼の最中、輿入れで通った森の中、『綿帽子にポツリ付いた緑のシミ』。それが全ての始まりか…。一年後、男の妻が生んだ赤子は人の姿を持たない緑の塊。驚く両親の目の前から、それはヌルリと床下へ消えた…。更に一年、一度は諦めた己の赤子は床下より産まれる…。人の姿をもって…。更に半年、また産まれる。更に半年、また…。増え続ける子供たちと、その子供の身体を突然蝕み始めた見覚えある緑のシミ。助けを求める両親にギンコが示す残酷な現実……。
[編集] 第3巻
- 錆の鳴く聲(さびのなくこえ)
- 鉄に留まらず木、石、土、人まで『なんにでも付く錆』に蝕まれた村。その原因解明と治療の為、村へと呼ばれたギンコは病の起こり始めた年に生まれた、何も話さない少女に注目するが……。
- 海境より(うなさかより)
- 二年半前、奉公先の娘と駆け落ちの途中に起こしたつまらぬ諍い。仲違いをしたまま乗った船、もやの中に『海を泳ぐ蛇の群れ』を見た男は怪異に出会う。流れ着いた浜辺で、後悔の中男は今も帰らぬ娘を待ち続ける。男の話に心当たりを感じ調査を始めたギンコは、男にある提案を持ち掛ける……。
- 重い実(おもいみ)
- 『天災に見舞われるたび、村人一人の命と引き換えに必ず豊作になる』という奇妙な村。その話に蟲師最大の禁じ手である『ナラズの実』の存在を感じとったギンコは村の祭主のもとへと向かう……。
- 硯に棲む白(すずりにすむしろ)
- 悪戯で、里医者化野の収集品を納めた蔵へと入り込んだ子供達が見つけたものは、『蟲の化石で作られたといわれる妖しの硯』。その晩、子供達は突然「体温を奪われる病」に襲われる。治療に出向いた先で、子供の悪戯を知り事態を悟った化野はギンコに助けを求める。調査を開始したギンコは硯の出所を突き止めるが……。
- 眇の魚(すがめのうお)
- 母親と行商の旅をしていた少年ヨキは、崖崩れに遭い母親を失う。一人さ迷い歩いた末に深い深い森の中で行き倒れたヨキを助けたのは、『白髪、隻眼の女蟲師ぬい』だった。元より行き場の無いヨキはぬいの元にとどまり蟲師としての知識や思考を教えられるが、森とぬいにはヨキの知らない秘密があった……。蟲師ギンコの原点を辿る物語。
[編集] 第4巻
- 虚繭取(うろまゆとり)
- 放浪の旅を続けるギンコの『ウロ繭に届いた自分宛ではない一通の文』。「まだ続けてたのか‥。」行方不明の双子の姉を探すその文を手に、ギンコはウロ守兎澤綾のもとへと向かう……。
- 一夜橋(ひとよばし)
- 山間に架かるつり橋から落ちた少女。到底助からぬ高さだったにも関わらず、少女は谷底から自力で歩いて戻る。しかし少女は心を無くしていた。『谷戻り‥』里の者は噂する。治療に呼ばれたギンコは、少女の身体に蟲を見る。少女に何があったのか…。また里に伝わる『一夜橋(ひとよばし)』の伝説とは……。
- 春と嘯く(はるとうそぶく)
- 『毎年冬になるとどこからか採ってきた春の山菜を抱え春まで目覚めぬ眠りに付く弟。』冬の凍て山に難儀したギンコが一夜の宿を頼んだ民家。肩を寄せ合うように生きる姉弟が抱える誰にも言えない秘密、『春まがい』の謎にギンコが挑む……。
- 籠のなか(かごのなか)
- 旅の途中、脚を休めた竹林でギンコが出会ったのは、『竹林に囚われた男と、人と白い竹の間に産まれた男の妻。』。どうやっても竹林から出る事のかなわない男の夢は、家族3人でふもとの村に戻る事……。男の願いを受けてギンコは白い竹を調査するが……。
- 草を踏む音(くさをふむおと)
- 『毎年、五月雨(さみだれ)降る頃山へとやって来る奇妙な集団』。蟲が見える地主の息子は、集団に属する少年イサザと知り合う。光脈を追い放浪し続ける事の定められた「ワタリ」の少年と、決められた場所に定住し続ける事の定められた少年…。互いに違う地点に立ち、違う価値観を持ちながらも、互いが互いを羨みながら、少年時代のひと時を共に過ごした彼らが歩んだ道は……。
[編集] 第5巻
- 沖つ宮(おきつみや)
- 『生きているうちに沈んだ者を、望月の晩、命の種へ変えて吐き出すという“竜宮の海淵”』。吐き出された種を飲めば沈んだ命を「生みなおす」ことが出来るという…。噂を聞いて島へと赴いたギンコは村で、父に懇願され死病に犯された母を「生みなおした」という女に出会う。成長するにつれ、生前の母をなぞるように行動しはじめた娘に戸惑う女は、ギンコに真相の解明を依頼する。果たして『生みなおし』の真実は……。
- 眼福眼禍(がんぷくがんか)
- 娘の盲目を治すため、蟲師の父が持ち帰った『幻の蟲』。それは、娘に初めての光と、見えることの喜びを与えたが…。
- 放浪の途中、街道筋の宿場町でギンコは、見える眼(まなこ)を閉じ、路上で蟲の話を弾き語る奇妙な女に出会う。ギンコが来ることが視えていたという女の頼み、「私の目玉を山に埋めてくれ。」とは一体…。視える幸せ、視えない幸せ……。
- 山抱く衣(やまだくころも)
- 骨董商がギンコに差し出した1枚の羽織は、『羽裏(羽織の内側)に描かれた山画から時折煙を立ち上らせる』という。一昔前に名を馳せた天才絵師の筆だというその羽織から蟲の気配を感じ取ったギンコは、絵の題材になっている絵師の故郷へと向かう。一枚の羽織が織り成す、絵師と山の物語……。
- 篝野行(かがりのこう)
- 開墾の途中掘り出された『溶岩石から生えた一本の草』。村中の誰もが気にしなかったその草は、周囲の草木を枯らしながら瞬く間に山を覆いつくし村へと迫る。新種の蟲の噂を聞き調査にやってきたギンコは、村の蟲師が解決策として下した決定「山を焼き払う事」に疑念を抱き反対するが……。
- 暁の蛇(あかつきのへび)
- 一昨年前の春を境に、『眠ることを忘れた女』はそれに伴なって、あらゆる物事を忘れ始めた。団子、蟹、くしゃみ、自分の妹…。女の息子から助けを求められたギンコは、その謎を解明し対処法を教えるが…。忘れたい記憶…忘れられない記憶……。
[編集] 第6巻
- 天辺の糸(てんぺんのいと)
- 『蒼天より垂れる白い糸、掴んだ娘は虚空に消えた…』。山越えの途中ギンコは、樹の頂上に座り込む、記憶を失った娘を拾う。娘はギンコの協力で村へと帰るが、怪異に出会った事で蟲の領域へと引きずられていた。戸惑う娘の恋人に対し、娘を人に戻す為ギンコが示す方法とは……。
- 囀る貝(さえずるかい)
- 海辺に生きる少女が貝を拾い耳にあてがう。そこから聞こえる調べは波の音…のはずだった。ヒトは弱い生き物だ。生きるためには助け合わねばならない。恐れや怒りを相手にぶつけたところでそこからは何も生まれはしない。生きるために本当に必要なこと、それを教えてくれる話……。
- 夜を撫でる手(よるをなでるて)
- 夜の山中に漂う『腐臭の混じった光酒の匂い』を辿ったギンコはその先で、異様な殺気を放つ人影に行き当たる。翌朝、山を抜けた先の村で人影の正体である男と出会ったギンコは、その殺気の正体が光酒の腐敗したモノ、『腐酒(ふき)』であることを見抜き治療することを提案するが…。酔ってはならない酒に酔う男の見るものは……。
- 雪の下(ゆきのした)
- 冬の湖、ほんの一時目を離した隙の事故により妹を失った少年は、未だその死を受け入れきれずにいた…。
- 「雪蟲」類の研究に雪降る山里へとやって来たギンコは、旅籠の娘から『希少種の雪蟲に憑かれた少年』の話を聞き、少年の元を訪れる。蟲に憑かれた事から寒さを感じず、暖の一切を受け付けることの出来なくなった少年の身体に痛みを診てとったギンコは治療を進めるが…。凍えた身体…凍えた心…凍えた記憶……。
- 野末の宴(のずえのうたげ)
- 父の造る酒は美味かった…。名杜氏であった父を目指し精進を続ける男は、ついに『黄金色に輝く見事な酒』を造ることに成功する。深い喜びと共に酒を片手に父のもとに帰る夜の山中、酒のもたらす酩酊の中で男は異形の生物を見る。誘われるままに生物を追った男の行き着く先は、奇妙な集団の不思議な宴……。
[編集] 第7巻
- 花惑い(はなまどい)
- 春。変わらぬ旅の道すがら、桜の名木見物にやって来たギンコは『蟲に憑かれ八十年もの間、若さを保っているという女』に出会う。蟲に憑かれた影響から視覚、聴覚の大部分を失った女と桜の関係に興味を持ったギンコは、代々女の世話をしているという庭師の男に話を聞くが……。
- 鏡が淵(かがみがふち)
- 旅の途中、脚を休めた山中で『蟲に憑かれ影を抜かれた娘』を見かけたギンコは、娘と蟲の存在が入れ替わる危険性を教え治療を始めるが…。生きる意志を失った娘と生きた力を欲する蟲…生きた存在を賭けた静かな心の闘争……。
- 雷の袂(いかずちのたもと)
- 『五年の間に四度も雷に打たれた少年』。その原因が蟲にある事を教え治療を申し出たギンコだが、子の大事に反応の薄い家族をいぶかしむ。我が子を愛せぬことに悩む母親、愛されぬことに悩む子…。悩みのすれ違いが生み出す更なるすれ違い…。
- 棘の道(おどろのみち)《前編・後編》
- 狩房家に代々仕える蟲師「薬袋(みない)家」。最古の蟲師一派であるこの一族からは、時折『何かが欠落した者』が出るという。知己・狩房淡幽より、山の異変調査に出向いた薬袋家当主・クマドの手助けを頼まれたギンコは、共同捜査を開始するが…。蟲師となる事の宿命付けられた一族ゆえに背負う過酷な運命…深い業……。
[編集] 第8巻
- 潮わく谷(うしおわくたに)
- 冬の最中にも関わらず、季節外れの実りを付ける見事な棚田を造る男は、『幼少時より眠ることなく働き続けている』という‥。雪積もる山中で、怪我にうずくまっていた所を男に助けられたギンコは、男が蟲に寄生されている事に気付き、その危険を説こうとするが…。己の守る者のため、身を削り働く男の人生は、蟲の仕業か‥男の意志か……。
- 冬の底(ふゆのそこ)
- 晩冬。光脈筋の山を越える途中、山々が春に目覚める声を聞いたギンコは、その中にあってただ一座『冬眠を続ける山』に閉じ込められる。事情を探るため山のヌシを探す中、「冬眠」の理由に気付いたギンコは「山の死期」を診立てるが‥。諦めを促すギンコに対し、ヌシが示す答えとは……。
- 隠り江(こもりえ)
- 少女が、抜け殻のように意識を失う時。
- 離れた互いを思う気持ちが、時に意識を通わせる…。
- 日照る雨(ひてるあめ)
- 今日も雨を告げて回る女。数奇な過去と運命を背負い、流れ行くさまは雲のごとく。
- 踏み入れれば雨が降り行く。女の流れぬ涙が、雲無き空から雨を呼ぶ…。
- 泥の草(どろのくさ)
- 死者は沼地に置いて葬る慣わしのある村で、奇妙な病が蔓延する。
- 言い伝えを信じなかった一人の男は、弟が山へ帰るのを見た。
[編集] アニメ
全26話の放送。第20話までは2005年10月から2006年3月の間、フジテレビ・関西テレビ・東海テレビ・北海道文化放送・テレビ新広島・テレビ西日本で放送された。第21話以降の6話はDVDのみでの発表予定だったが、好評を受けて2006年5月から6月の間BSフジで放送された。更に地上波のみの視聴者に向けて、東京、大阪、名古屋、札幌、広島、福岡の六都市で「蟲の宴」と題したDVDの第五集収録分(21話~26話、地上波未放送分)の試写会が7月から8月にかけて行われた。また、2006年10月から2007年3月にかけて、BSフジにて、全26話が改めて放送された。ただし、先述の経緯から、21話~26話については、実質再放送である。
2006年3月25日、東京国際アニメフェア第5回東京アニメアワード・テレビ部門優秀作品賞を受賞。また、美術監督の脇威志が美術賞を受賞した。
監督の長濱博史はさまざまなインタビューにおいて「原作に忠実であることを心がけた」と繰り返し語っている。マンガ作品がアニメ化される際には、多くの場合、原作にはあったエピソードが削られたり、逆に原作にはないエピソードが追加されたりといった修正がされるが、アニメ『蟲師』では全くといっていいほど変化がない。「原作と同じ」ということは当然のことのようではあるが、漫画「蟲師」のような独特の雰囲気・空気感を味とした作品において、原作の持つ魅力を損なわずにアニメ化したことは高く評価されている。
また、作画に関して回によっては作画監督5人や助監督2人など、テレビアニメ作品としては稀といえる程力が入っている。
提供ジングルが流れる際に使われた楽器は、インドネシアの楽器でアンクルン。また、これもインドネシアの楽器、ガムランが使われた際にも、単に効果音ではなくインドネシアの伝統を参照してリズムトラックが考えられていたり、今世紀に入ったアニメ作品ではまれなほど極めてアジア色が強い。
[編集] スタッフ
- 企画:片岡義朗、松本慶明、高谷与志人
- 製作:中山晴喜、清水賢治、鈴木篤志
- 監督・シリーズ構成:長濱博史
- 脚本:伊丹あき、桑畑絹子、山田由香
- キャラクターデザイン・総作画監督:馬越嘉彦
- 美術監督:脇威志
- 撮影監督:濱雄紀
- 音楽:増田俊郎
- 音楽プロデューサー:牧野幸文
- 音響監督:たなかかずや
- 音響制作:デルファイサウンド
- OP・EDディレクター:菅原一剛
- 制作管理:石黒昇(アートランド)
- 制作プロデューサー:渡辺秀信
- 制作協力:ADK
- プロデューサー:田村孔亮、大泉浩之、稗田晋
- アニメーション制作:ART LAND
- 製作:『蟲師』製作委員会(マーベラスエンターテイメント、エイベックス・エンタテインメント、スカパー・ウェルシンク)
[編集] メインキャスト
[編集] 各話ゲストキャスト
[編集] オープニング曲
- 「The Sore Feet Song」 Ally Kerr
[編集] 小説
映画版「蟲師」を基にノベル化したもの。著作は辻井南青紀。「常の闇」「禁種の蟲」「阿と吽」「虹の蛇」「書庫の闇」「銀蟲」の一話完結の六部構成。映画版を基にしているので原作とは違う設定や追加設定があり、矛盾点も入っている。時代は今から100年前に確定され、場所によっては電気が通っている描写がある。
[編集] 商品情報
単行本
- 蟲師(1) - 2000年11月22日発売 ISBN 4-06-314255-8
- 蟲師(2) - 2002年2月22日発売 ISBN 4-06-314284-1
- 蟲師(3) - 2002年12月20日発売 ISBN 4-06-314312-0
- 蟲師(4) - 2003年10月23日発売 ISBN 4-06-314332-5
- 蟲師(5) - 2004年10月22日発売 ISBN 4-06-314361-9
- 蟲師(6) - 2005年6月23日発売 ISBN 4-06-314381-3
- 蟲師(7) - 2006年2月23日発売 ISBN 4-06-314404-6
- 蟲師(8) - 2007年2月23日発売 ISBN 4-06-314442-9
小説
- 小説蟲師 - 辻井 南青紀 (著), 漆原 友紀 (著) 2007年2月発売 ISBN 4-06-373300-9
関連本
- 蟲師Official Book - 2006年1月23日発売 ISBN 4-06-372117-5
CD
- 「蟲師」The Sore Feet Song /CW:蟲宴 - 2005年10月21日発売 MJCD-23010
- 「蟲師」オリジナル・サウンドトラック 蟲音 前 - 2006年3月24日発売 MJCD-20053
- 「蟲師」オリジナルサウンドトラック 蟲音 後 - 2006年6月23日発売 MJCD-20061
DVD
- 蟲師 其ノ壱 - 2006年1月25日発売 AVBA-22501
- 蟲師 其ノ弐 - 2006年3月29日発売 AVBA-22502
- 蟲師 其ノ参 - 2006年3月29日発売 AVBA-22503
- 蟲師 其ノ肆 - 2006年5月31日発売 AVBA-22504
- 蟲師 其ノ伍 - 2006年5月31日発売 AVBA-22505
- 蟲師 其ノ陸 - 2006年7月26日発売 AVBA-22506
- 蟲師 其ノ漆 - 2006年7月26日発売 AVBA-22507
- 蟲師 其ノ捌 - 2006年9月27日発売 AVBA-22508
- 蟲師 其ノ玖 - 2006年9月27日発売 AVBA-22509
- 蟲師 初回限定特装版 第一集 - 2006年1月25日発売 AVBA- 22485~6
- 蟲師 初回限定特装版 第二集 - 2006年3月29日発売 AVBA-22487~8
- 蟲師 初回限定特装版 第三集 - 2006年5月31日発売 AVBA-22489~90
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- 蟲師 初回限定特装版 第五集 - 2006年9月27日発売 AVBA-22493~4
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