ザビ家
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ザビ家(ザビけ、Zabi Family)は、「ガンダムシリーズ」のうち、アニメ『機動戦士ガンダム』にはじまる宇宙世紀を舞台にした作品に登場する、架空の人物の一族。ジオン公国の中枢を担う一族である。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] ザビ家直系の人物
ザビ家の人間は画面に登場した人物以外にも多数存在するとされるが、通常は以下の7人を指す。
[編集] デギン・ソド・ザビ
デギン・ソド・ザビ (Prince Degwin Sodo Zabi,U.C.0017年~0079年12月30日) は、アニメ『機動戦士ガンダム』の登場人物。(声:テレビ版永井一郎、映画I藤本譲、映画III・特別編I/III柴田秀勝)
TV版登場話数:第10話~12話・37話・38話(シャアの回想)・40話~42話
ジオン公国公王でギレンらの父。放映開始時の年齢は62歳。ジオン・ズム・ダイクンの死後ジオン共和国に公国制を敷き、独裁を強めたが、その後実質的に隠居した状態になっていた。政治的には穏健派の立場を取り、急進的なギレンと対立する。乗艦はグワジン級戦艦1番鑑グレート・デギン。
彼にはギレン・ザビ総帥(大将、長男)、サスロ・ザビ(次男/三男)、ドズル・ザビ中将(三男/次男)、キシリア・ザビ少将(長女)、ガルマ・ザビ大佐(四男)の5人の子がいる(テレビ版の準備稿ではミハル・ザビという娘もいた)。妻はナルス・ザビ(ナリスとする説あり)だが子の母親に関しては諸説ある。なお、サスロ・ザビ、ナルス・ザビに関しては一年戦争前に死亡しているため『機動戦士ガンダム』には登場しない。
かつてはジオン・ズム・ダイクンと盟友関係にあり、0058年のジオン共和国宣言時には地球連邦軍駐留部隊の切り崩しに尽力した。また、連邦軍に対抗するために、共和国宣言時に成立したジオン国防隊を0062年にジオン共和国軍に昇格させ、軍事力の強化に努めた。このようなデギンの軍事路線はダイクンにとって認め難いことだったが、連邦へ対抗するために容認せざるを得なかった。(なお、安彦良和の漫画作品『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、連邦政府との軍事衝突も辞さずという強硬な態度をとっていたのはむしろダイクンの方で、デギンは非戦派であったという新解釈が採られている。)
だが、0067年の連邦政府のコロニー自治権整備法案が廃案となると、両者の対立は強くなり、0068年にダイクンは急死してしまう。これはデギンとギレンによる暗殺とするのが一般的である。ジオン共和国初代首相であった病床のダイクンにより次期首相に指名され(これには、この先起こるであろうダイクン派とデギン派の抗争を避ける為に、後継者にデギンを指名したと言う説と、「自分を暗殺しようとしたのはデギンだ」と教えようとしたダイクンの行動をデギンが巧妙に利用したとの説がある)2代目首相となると、ダイクン派(旧ジオン派)を粛清して全権を掌握し、0069年8月15日に公国宣言を行い、ジオン公国初代公王に就任した。しかし、ダイクン暗殺の報復として次男サスロが車に仕掛けられた爆弾テロにより暗殺(ジンバ・ラル謀略説、キシリア謀略説あり)され、さらに妻ナルスがガルマを産んだ際に死亡してしまい、デギンは徐々に憔悴していく。また、ダイクンを打倒して頂点に立ってしまったことで功成り名を遂げた後の虚無感に襲われるようになり、全権を子供達に譲り政治的に隠居した状態になってしまった。その後、長男ギレンは軍事独裁路線を推し進めるが、デギンはこれをよしと思わなかった。また、同じく軍事独裁路線をとる長女キシリアも好ましく思っていなかったようである。
0079年1月3日、ジオン独立戦争、後の一年戦争が始まったが、デギンにとってのこの戦争の目的はジオン公国を地球連邦と対峙し得る完全な独立国家とする一国ジオニズム主義を認めさせることにあった。しかし、ギレンは当初これを認めていたものの、後に完全に地球連邦を征服した上での、選ばれた優良種たるジオン国民による全人類の管理・運営を目的とするようになった。そのためギレンにとって父デギンは寧ろ邪魔な存在になっていく。
デギンは上記のような経緯から猛々しい性格のギレンやキシリア、ドズルを疎み、素直で優しい四男ガルマを溺愛していたが、ジオン独立戦争が予想外の長期にわたり、ガルマは戦死してしまう。デギンはその一報を聞いた際に持っていた杖を使者の前で取り落としてしまう失態を犯すほどの衝撃を受けた。デギンはガルマの密葬を望んだが、ギレンは国葬として戦意高揚に利用し、両者は対立を深めていく。これ以降、デギンはギレンの独裁を抑えるため、ギレンとキシリアの政治的対立を防ぐために、首相のダルシア・バハロに命じ、密かに連邦との講和を図った。
その後、ソロモン陥落に際し三男ドズルまでも失うが、ガルマの時とは対照的に「ドズルにしてもっともなことであるよ」と冷ややかなコメントを発し、ギレンを激怒させる。ギレンによる軍政が数百万人を超えるコロニー住民の強制疎開にまでエスカレートし、ソーラ・レイを使用した強引なア・バオア・クー最終決戦を目論んだ時点で亡国の危機感を強め、ギレンを中世紀の独裁者アドルフ・ヒットラーになぞらえ「ヒットラーの尻尾」と揶揄している。なお、この後の台詞がTV版では「ヒットラーは敗北したのだぞ」から、劇場版『めぐりあい宇宙編』では「ヒットラーは身内に殺されたのだぞ」と史実(愛人エヴァ・ブラウンと共に自殺)と食い違うものに改変されていたが、その後キシリアにギレンが暗殺されたことを考えると、この台詞はギレンの末路をより的確に言い表していたものといえよう(政治活動家だったデギンがヒットラーの末路について無知だったとは考え難く、息子ギレンに対して「お前のことを快く思っていない奴は身内の中にもたくさんいるぞ」ということをあえて史実を無視する形でヒトラーを引き合いに出して言いたかったのかもしれない)。
最終決戦の直前に至り、自ら講和を進めるために独断で旗艦グレート・デギンに乗り込みレビル将軍が率いる地球連邦軍の主力・第一艦隊との接触を図る。だが、タイミングずれの和平に出向く老いた父へ見切りをつけたギレンは、グレート・デギンの存在を承知の上でソーラ・レイの発射コースをゲル・ドルバ照準に最終設定する。宇宙世紀0079年12月30日作戦時間21:05、指示通りゲル・ドルバ照準で発射されたソーラ・レイの直撃を受け、公王デギンは敵将レビルと共に光の渦の中に呑み込まれて最期を遂げた。
小説版ではソーラ・レイの標的として狙われたのがキシリアとなっており、既に傀儡と化していたデギンはギレンに存在を無視されていたのと自ら和平交渉に向かうような目立つアクションを起こさなかったことが幸いし、無事に生き残っている(その代償として劇中では何の見せ場も無く影も薄いが)。
なおTHE ORIGINではデギンは戦争による膨大な犠牲と連邦とジオンの国力差を懸念して、開戦前より強硬に戦争に反対していたとの解釈が採られている。その後デギン本人がレビル奪還作戦の手引きをし、恩を売る形で彼に和平を働きかけて欲しいと願っていた。が、そのレビルから恩を仇で返す形で戦争継続の声明を出されたとき彼は激しく憤り、その憤怒ぶりは、本来デギン自身は前線に参加して欲しくないと思っていたガルマに対して「徹底的に連邦を叩け」と発言したほどであった。
ちなみにゲーム『ギレンの野望』においてはジオン編の全モード(ジオン公国、正統ジオン、新生ジオン、ネオジオン、アクシズ)をクリアすると特別編として「デギンの憂鬱」というシナリオを体験できる。これはザビ家の内輪もめであり、キシリアの正統ジオン、ガルマ・ドズルの新生ジオンにジオン軍が別れて三つ巴の戦いを繰り広げるという設定になっており、まさに父親のデギンが頭を抱えそうになるシナリオと言える。
[編集] ギレン・ザビ
ギレン・ザビ (Gihren Zabi,U.C.0044年~0079年12月31日) は、アニメ『機動戦士ガンダム』の登場人物。(声:田中崇(現:銀河万丈))
TV版登場話数:第11話・12話・37話・39話~42話
ジオン公国の総帥にして階級は大将。デギン・ソド・ザビ公王の長男。放映開始時の設定上の年齢は35歳。190cmの長身。少年時代から政治に参加し、デギン・ザビの隠退後は、事実上、ジオン公国の最高指導者(総帥)となっていた。ガンダムの世界において、彼の政治思想・世界観は巨大な影響力を持ち、次代にまで波及していった。乗艦は不明(グワジン級戦艦グワデン説あり。ただしグワランなどにも坐乗していたことがあるらしい)。
青年時代に父デギンと共に、ジオン・ズム・ダイクンの指導する革命に参加。デギンの隠退後は、ジオン公国の全権を掌握し事実上の最高指導者として君臨する。IQ240の天才で沈着冷静であるが、非情かつ高慢。雄弁家でもあり、アジテーターとしても超一流で持てる才能を遺憾なく発揮していた。宇宙世紀0071年サイド3国民のエリート意識・優秀さと選民思想の色合いが強い著書「優性人類生存説」を発表。多くの者は否定したが、連邦政府に不満を持っているサイド3国民からは熱狂的支持を受けた。デギンの反対を押し切り、国民の戦意高揚のために末弟ガルマ・ザビの国葬を強行したところにもそれが現われている。ニュータイプに対しては、それほど深い理解や共感を持つことは無く、あくまで政略・戦略のために「木星帰りの男」シャリア・ブルなどを起用している。戦争をジオンの勝利に終わらせた後、自らが地球圏を管理・運営しながらゆっくり人類のニュータイプへの覚醒を待つつもりでいた。
彼の政治思想は、一種の理想主義、選民思想である。スペースノイドは選ばれた民であり、更にその中の優良種がジオン国民であると狂信した。ギレンは総帥の立場にあったが、主に政治に専念することが多く、軍事については弟ドズル・妹キシリアに任せていた。しかし、ジオン独立戦争・一年戦争開戦当初の電撃作戦や地球侵攻作戦、最終ア・バオア・クー戦の発案はギレンであり、その指揮もギレンが執った。サイド3(ジオン公国)以外のスペースコロニーに対する毒ガス攻撃、そのコロニーを質量弾として地上に落下させる「ブリティッシュ作戦」により、地球総人口の半数を死に追いやった。このような大量虐殺作戦の立案には、地球環境の保全には選民による支配が必要であり、増えすぎた人口は調節されなければならないという思想が背景にある。地球圏は選ばれた民により支配されなければならないとする考えは、後のティターンズ指導者ジャミトフ・ハイマンなどにも多大なる影響を及ぼしている。が、彼に匹敵するスケールや政治ビジョン、カリスマ性を兼ね備えた指導者は以後も現れていない。
父デギンからは、「ヒットラーの尻尾」と評され、その政治的方向性を危惧されていた。また、妹のキシリア・ザビとは政治的に競合する立場にあり、反目し合っていた。尤も、ギレンは自らの才能と政治思想に絶対の自信を持っており、妹キシリアなど歯牙にもかけていなかった。彼女が裏であれこれ画策するのをかなり自由にさせていたのも、軽視していた証左であろう。
宇宙要塞ア・バオア・クーにおいて最終決戦を目論むが、父デギン公王は事態を憂慮し独断でグレート・デギンを発進させて連邦軍との和平交渉に赴く。タイミングずれの和平交渉へ出向いた老いたる父を完全に見限ったギレンは、敢えて父を囮に使う形でグレート・デギンの進路こそレビル将軍が率いる連邦軍の主力・第一艦隊の進攻コースと読む。そして和平交渉が妥結する前に事を決しようと予定を大幅に前倒し、ソーラ・レイをゲル・ドルバ照準に最終設定して作戦時間21:05に発射を指令、レビル将軍もろとも父デギンまでも謀殺している。しかし、ゲル・ドルバ線上からグレート・デギンの識別信号が確認されたとの報告を受けてギレンが父を殺したと知ったキシリアにより、宇宙世紀0079年12月31日、「父殺しの男」としてア・バオア・クー攻略戦の作戦指揮中に射殺された。この時、キシリアを軽蔑していた彼は同じ作戦室で彼女に背中を向けており、銃口を向けられた時ですら「冗談はよせ」と一笑に付したが、結局その余裕が仇となったのである。
なお、小説版では最終決戦時に宇宙要塞ア・バオア・クーではなく、サイド3のズム・シティで作戦指揮を執っている。ア・バオア・クーを囮にして味方をも巻き込みつつマハルのソーラ・レイを放って政敵キシリアをもどさくさ紛れに亡き者にせんとするなどTV版を更に超える極悪ぶりが目立っていた。とは言え、妹キシリアを過度にライバル視して大仰な暗殺を企む辺りは、TV版における超然とした風格に比べ器量では大きく見劣りする感は否めない。最期はシャアやカイ・シデンらニュータイプを引き連れたキシリアにズム・シティへ乗り込まれ、彼女の「ビーム・ライフル」で射殺される。
その死後も、彼を熱烈に信奉する集団によって、動乱は続いた。宇宙世紀0083年には、エギーユ・デラーズ率いるジオン軍残党勢力デラーズ・フリートが決起し、コンペイトウ(ソロモン)宙域で挙行された観艦式の核兵器による襲撃に続いて地球へのコロニー落とし(星の屑作戦)を決行した。(『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』) また、0088年の第一次ネオ・ジオン抗争においては、ネオ・ジオン(アクシズ)勢力内のグレミー・トトがギレンのクローンを標榜している。(『機動戦士ガンダムΖΖ』)
なお、女性関係は希薄であったらしい。妻がいたとされるが不仲であったという。公の場には姿を現しておらず、記録も全く残っていない。秘書のセシリア・アイリーンと愛人関係であったとする説もあるが、詳細は不明である。なお、クラウレ・ハモンとも愛人関係にあったとする説もあるが、これは小説版から来た設定である。
膨大な人命を奪った一年戦争を引き起こし、「悲しみを怒りに変えて立てよ、国民!」「我ら選ばれた優良種たるジオン国国民」「敢えて言おうカスであると!」「神の放ったメギドの火に、必ずや彼らは屈するであろう」「共に戦おう、勝利の日まで!」等、国民を巧みな弁舌で扇動した事でアドルフ・ヒトラーと並ぶ独裁者と称されている。監督である富野はアフレコの際に声優の田中崇(銀河万丈)へ「ヒトラーのように喋ってくれ」と注文をつけたらしいのでヒトラーをモデルに描いたのはほぼ確実であろう。実際、「ぴあMOOK 愛と戦いのロボット 完全保存版」に掲載された読者アンケートにおける「一番極悪な悪役・敵役は?」の項目で、ダントツの1位に選ばれている。尤もこの結果には『機動戦士ガンダム』という作品自体の知名度が大きく影響しており、ギレンの人気の高さもそれに付随したものとも言える。いずれにせよ、ギレンが日本のアニメを代表する悪役スターの一人である事は確かである。またゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』シリーズでその名をタイトルに冠されている事実からもその人気の程が窺える。
因みに、TV版のリアルタイム放送時にはザビ家一党の中で唯一人だけ安彦良和作画の回に登場していない上に、出番は序盤と、(安彦の病気による離脱で作画が粗い)終盤のみということで単なる悪役キャラの域を出ず、当時のシャア人気に比べれば然して突出した人気は無かった。今日のカリスマ的キャラクター人気を確立しえたのは、ひとえに劇場版3部作(第1作と第3作)のお蔭であろう。先ず第1作を締め括るクライマックスが、TV版を更に強化したガルマ国葬演説ロングバージョンだったのは実に大きかった。劇場の巨大スクリーンに映し出されるこの演説で総帥のカリスマに瞠目し、とどめに第3作『めぐりあい宇宙編』で安彦良和による渾身の新規作画で描かれる総帥の勇姿の数々に改めて魅せられたファンは数多いものと推察される。
なお、彼がガルマ国葬やア・バオア・クー防衛戦時の演説で、国民・将兵・信奉者を鼓舞する為に叫んだ言葉「ジーク・ジオン(Sieg Zeon)」は、かつてヒトラー率いるナチスのスローガンであった「ジークハイル(Sieg Heil:ドイツ語で「勝利万歳」の意)」に因んだ物である。特にガルマ国葬での演説は劇中でも屈指の名シーンの一つで、彼の人気の一因となっている。OVA『機動戦士ガンダム第08MS小隊』第1話のラストに於いても(新規作画・銀河万丈による新録で)挿入され、話題を集めた。
[編集] キシリア・ザビ
キシリア・ザビ (Kycilia Zabi,U.C.0055年?~0079年12月31日) は、アニメ『機動戦士ガンダム』の登場人物。(声優:小山まみ(現:小山茉美))
TV版登場話数:第11話・12話・18話・24話・36話・39話~43話
ジオン公国軍突撃機動軍司令。階級は少将。デギン・ソド・ザビの長女。放映開始時の年齢は推定29~34歳(かつて24歳という資料もあったが、劇中ではそのきつい風貌に加えて、28歳のドズルに「姉貴」「姉上」と呼ばれていること等により、この年齢設定は放送当時からファンに疑問視されている)。ギレンとは政治的に、ドズルとは軍事的に対立していた。乗艦はグワジン級戦艦グワジンあるいはグワリブ。末弟のガルマに対してはガルマが自分への忠誠心を見せるため利用していたようである。
常にマスクをしているが、戦場で血の臭いを嫌悪しているからとも、かつて父デギンによる、ジオン・ズム・ダイクン暗殺を嫌悪し女を捨てたからだとも言われる。公式には放射能焼けを防ぐためとされている。
近年の漫画「THE ORIGIN」では、ジオン黎明期から政争に明け暮れた冷酷な野心家としての面が目立っている。次兄サスロを暗殺したと思われる描写がなされている、キャスバルを粛正するために宇宙船ごと爆破する(キャスバルは替え玉を立てて難を逃れたが)など枚挙すれば暇がない。また、作中(特に過去編)の彼女はテレビ版と若干髪型が異なっている。 一方、ホビージャパン刊行の漫画誌コミックジャパン(1997年11月27日の創刊一号で廃刊となった)に掲載された、ジョニー・ライデンを主役にした漫画では、彼は以前少女時代のキシリアに助けてもらったことがあり、ジオン軍パイロットとして志願するきっかけになった憧れの女性だったように描かれている。そのストーリーの性格上、顔が安彦良和氏の漫画版「THE ORIGIN」や従来のTVシリーズのようなきついオバサン顔ではなく、マスクをした美女といった感じに美化されて描かれていた。のちに「ガンダムパイロット列伝 蒼穹の勇者達」としてコミックス化され、収録されているがこれも絶版である。
若いうちから政治に目覚めており、軍事力や政治ルートなどを独力で確立する必要があったが、10歳も年上である兄ギレンと対峙するためには正攻法では困難であった。そのためか、モビルスーツやニュータイプなど新しいものに目をつける傾向が見られる。大佐時代の宇宙世紀0078年10月には、モビルスーツ戦の利点を説いて宇宙艦隊を重視していたドズルと対立し、両者とも軍籍を離脱するとまで発言した。結局ギレンの調停が入り、ジオン公国軍はドズルの指揮する宇宙攻撃軍とキシリアの指揮する教導機動大隊をベースとした突撃機動軍に分裂することとなった。なお、一年戦争中にも戦略海洋諜報部隊の本拠となるキャリフォルニアベースの取り扱いについてドズルと対立。ドロス級大型輸送空母ドロワ(ただし未完成)を譲ることによりドズルの譲歩を得ている。
兄ギレンと政治的に反目する過程で、自己の政治勢力を拡大することに腐心していった。月の裏側、グラナダ基地を根拠地とし、末弟ガルマ・ザビ旗下の北米方面軍によって北米大陸を押さえる一方、そのガルマの死を怒る弟ドズルによって左遷されたシャア・アズナブルを登用しマッドアングラー隊(大西洋潜水艦隊)を預けたり、腹心マ・クベ大佐を地球に派遣して、中央アジア(オデッサ)を中心に鉱物資源を採掘させるなどした。サイド6の中立化政策も彼女の発案とされている。ニュータイプに対しても一定の理解があった模様で、フラナガン機関を創設したが、政治力を強化するための手段としか考えていなかったとするのが一般的である(少なくともシャアはそのように考えていたようだ)。
シャアとは、彼がジオン・ズム・ダイクンの息子キャスバルであった時に「幼い頃に遊んでやった」間柄でもあり、その正体を見破るが、彼の目的がザビ家打倒からジオニズム実現へと移行しているとの言質を取った上で、逆に自分の懐刀として使うことを伝える。兄ギレンが父デギンを謀殺したことを知ったためこれを機に、ア・バオア・クーの戦いのさ中である宇宙世紀0079年12月31日、宇宙要塞ア・バオア・クーの司令部でギレンを射殺。総司令となるが、戦況は皮肉にもこの間の指揮系統の一時的な混乱を機に逆転、ジオン軍の敗色が濃厚となる。トワニング将軍に後を任せ、ザンジバル級機動巡洋艦(艦名はズワメルとする説がある)で脱出を図るが、翻意したシャアが発進寸前だったザンジバルのブリッジに向けて放ったバズーカの直撃によって死亡。幼いキャスバルの聡明さを愛していただけに、シャアには最後まで信頼を寄せていた様で政治的計算の他にも期待するところが大きかったようである。最期の瞬間、自分に銃口を向けるシャアを確認した時の表情は驚愕に充ちたものだった。一方、小説版ではランバ・ラルとハモンより受けた警告に従ってア・バオア・クーの宙域を直ちに離脱したことにより、ソーラ・レイの直撃を辛くも逃れる。怒りに燃えてシャアやカイ・シデンらペガサスクルーと共にズム・シティへ乗り込み制圧、追い詰めたギレンをシャア専用リック・ドムの掌上から「ビーム・ライフル」で射殺し、直後に変心したシャアによって掌上から振り落とされ墜落死している。
一年戦争当時の地球では、彼女の死をもってザビ家とジオン公国は崩壊したと見られていた。
なお、自身の戦略上部下であるマ・クベに特別な計らいをする事が多かったため同人誌ではキシリア&マ・クベの組み合わせを推す者が少なくない。月刊ガンダムエースに連載中の機動戦士ガンダムさんの作中で呼ばれた為か一部ファンからは紫ババァと親しみを込め(?)呼ばれている。
ゲーム「ギレンの野望」では選択肢により彼女を指導者とした「正統ジオン」をプレイすることが可能。ニュータイプに積極的に興味を示していた劇中の設定が反映されニュータイプ部隊が最初から使用可能。
[編集] サスロ・ザビ
サスロ・ザビ (Sasro Zabi) は、アニメ『機動戦士ガンダム』にて設定上存在する人物。ジオン公国デギン・ソド・ザビ公王の次男(三男説あり)。年齢等詳細は不明(宇宙世紀0068年没説あり)。
アニメ『機動戦士ガンダム』作中には登場せず一年戦争時には既に死亡していたため、長い間人物像は不明であったが、安彦良和の漫画作品『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』にてようやくその姿が描かれた。ビジュアルとしては、兄弟の中で最も父デギンに風貌が似ている。それによると、彼はムンゾ国民運動部長としてマスコミを牛耳り、世論操作などを行っていた(ランバ・ラル曰く、「仕事は出来てデギンやギレンに重宝されていた」という)。しかしジオン・ズム・ダイクンの葬儀の際、テロにより乗車を爆破され暗殺された。同行していたドズルはサスロを守れなかったという念からガルマを溺愛し、顔の傷もその時に出来たものであるという説もある。劇中では彼に怨恨を抱いたキシリアの仕業と思わせる描写がなされているが、マスコミ操作により世間ではザビ家と対立するジンバ・ラルの謀略と思われていた。
彼の設定はアニメの準備稿に存在したものの、劇中にはその名は存在せず、世間一般には小説版で初めて名前が登場した。また一説には安彦良和のキャラクター原案のラフスケッチが一部ファンに流出し、そこから生まれたキャラクターともいわれる。後のギレンとドズルの原型となるらしいスケッチ画が残る。
[編集] ドズル・ザビ
ドズル・ザビ (Dozle Zabi,U.C.0051年~0079年12月24日) は、アニメ『機動戦士ガンダム』の登場人物。(声:テレビ版・映画I長堀芳夫(現:郷里大輔)、映画III・特別編I/III玄田哲章)
TV版登場話数:第2話・3話・11話・12話・33話・35話・36話
ジオン公国軍宇宙攻撃軍司令で階級は中将。身長210cmの巨漢。デギン・ソド・ザビの三男。放映開始時の年齢は28歳。次男説があり、その説によれば、親ダイクン派(旧ジオン派)によると思われる爆弾テロの際に弟サスロを守れなかった(ドズルとサスロは同じ車に乗っていたとされている)ことから自らを三男と名乗るようになった(一方、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では元から「サスロ兄」と呼んでいる。)とされ、顔にテロで負った傷痕を残したのもその戒めだといわれている。なお、軍服の肩のトゲは単なる威嚇用であるとも、いざという時には着脱可能なチャクラム状の武器になるとも、従来のロボットアニメに於ける”力押しタイプの悪役デザイン”の名残であるとも、マニア間でも諸説あるが未だ明確な結論は出ていない(シャアのマントや仮面の例に漏れず、ジオンの重要人物の服装等には独特のものがある)。安彦良和の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、一年戦争以前はジオン士官学校校長をしていたとされている。ここでは彼の妻ゼナは校長時代の生徒であったと描かれている。
彼は妾の子であるとするのが通説で、キシリアを姉と呼ぶのもそのためだとする説がある。そのせいか父デギンからはあまり愛されていなかったようだ(ドズルの死に対してデギンは「ドズルにしてもっともなことであるよ」とギレンですら憤るコメントしか残さなかった。漫画版『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』ではさらに酷く、ガルマが士官学校の生徒達と蜂起した「暁の蜂起事件」の際、ドズルには殆ど責任はないにもかかわらず『図体ばかりでかい能無し』などと罵られた上にガルマ達の責任を全て負う形で士官学校校長の座を辞任させられている。)。乗艦はグワジン級戦艦グワラン(小説版ではガンドワ)、一時はムサイ級軽巡洋艦ファルメル(ファルメルはシャアに譲渡する目的で竣工され、実際は将官用ムサイ級カスタム軽巡洋艦ワルキューレとも。)。搭乗したMSはドズル・ザビ専用ザクIIというもので、両肩に刺がつき、カーキベースの金縁模様、ザクトマホークはランバ・ラル専用ザクIと同じ大型タイプといかにも高級カスタム機といった風情を持っている。しかし、これは設定上の話で、彼の専用艦船やMSはアニメ本編には登場していない。TV版第11話と映画版Iでは、ガルマの葬儀に出席するためにズム・シティに帰還する際、一般型のムサイに乗艦し、ズム・シティをムサイ艦橋から観察して、戦時下なのに何の補強工事も施されていないことを嘆いた。サイド1の空域に建設された宇宙要塞ソロモンに駐留する。妻のゼナとの間に愛娘ミネバがいる。ザビ家の中で政治に長けたギレンやキシリアがいる一方で、彼は政治にあまり関与せず、純粋な武人として振舞っており、部下の信望も篤い。また愛妻家としても知られており、妻子に深い愛情を注いでいた。
当初はモビルスーツを軽視していたものの、一週間戦争の戦果によりそれを認めるようになった(だが、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では従来説と異なり、モビルスーツの開発を主導したとされている)。以後は司令官としてだけに留まらず、自らザクIIF型(S型説もある)を改修した専用機を操り前線に出向くこともあった。もちろんこれはポーズに過ぎないが、前線兵士の士気高揚において大いに効果を上げた。
母ナルスの面影を強く残す末弟ガルマを溺愛しており、彼の能力を高く評価して、ドズル自身も使いこなすような将軍になれと言う程その成長を楽しみにしていた。それ故ガルマの戦死後には、ガルマを守りきれなかったとしてシャアを左遷させ(彼自身はシャアの処刑を主張していたが、デギンの裁定で左遷となった経緯がある)、仇討ち部隊としてランバ・ラル隊を地球に派遣している。また、左遷の後キシリアに登用されたシャアを牽制するために、サイド6に寄港したホワイトベースに対して、コンスコン少将指揮下の機動部隊を派遣している。
地球連邦軍のチェンバロ作戦(ソロモン攻略戦)が開始される前にギレンへ援軍を要請するが、ソロモンに送られてきたのは試作モビルアーマー「ビグ・ザム」1機のみという厳しい状況であった。ビグ・ザム1機で2~3個師団にも相当するはずと豪語するギレンに対し「戦いは数だよ、兄貴!」と思わず不満をぶつけている。宇宙世紀0079年12月24日、ティアンム提督指揮の連邦軍によるソロモン攻略戦が始まると、参謀ラコックが提案していたキシリアへの救援要請を「国中の物笑いの種になるわ」と意地を張って拒否したのが結果的に命取りとなる。地球連邦軍の量産MSジムやボールを初めて本格的に実戦投入した熾烈な攻撃や、新兵器ソーラ・システムによる被害の大きさを目の当たりにして、もはやソロモンを支えきれないと判断したドズルは妻子を脱出させた後に遺憾ながらソロモンの放棄を命令し、自らビグ・ザムに搭乗して出撃。残存兵力撤退の時間稼ぎのために連邦艦隊の中心部へ単機特攻をかける。
ドズルの操るビグ・ザムは強力な磁界(Iフィールド)を張り巡らせて長距離ビーム砲をものともせず、大型メガ粒子砲により地球連邦軍のティアンム提督のマゼラン級旗艦『タイタン』を撃沈させ、拡散ビーム砲の斉射によって連邦軍のサラミス級戦艦やモビルスーツをあっと言う間に多数撃破した。これらの圧倒的とも言える戦果に自信を得たドズルは「ビグ・ザムが量産化の暁は連邦なぞあっと言う間に叩いてみせるわ!」と嘯(うそぶ)いた。
しかし、Iフィールドジェネレーターによるバリアシステムの弱点を見抜いたスレッガー・ロウは、自らが操縦するGファイター(映画ではコア・ブースター)とアムロ・レイの操縦するガンダムを合体させ、Gアーマーで攻撃が有効となるギリギリまで接近しての突撃をかける。この捨て身の特攻によりスレッガーが犠牲になるも、ビグ・ザムはガンダムのビームサーベルで撃破され、遂に猛将ドズルも戦死する。その直前に単身、ノーマルスーツ姿で自動小銃(ジオン制式採用の無反動ライフル)を手にし「やらせはせん、やらせはせんぞ~!」とガンダムに向けて発砲しているが、アムロはドズルの背後に立ち昇る悪鬼のような人間の情念を目の当たりにし戦慄している(これはテレビ版の描写で、映画では悪魔の様な影(目も口もある)ではなく、もっと黒い霧の様な、情念を象徴化した存在のものに描き直されている)。
小説版でもTV版と同様にMAビグ・ザムで出撃し、ガンダムとの戦闘後にもやもやと黒い霧状のオーラを浮かび上がらせつつノーマルスーツ姿で「やらせはせん!」と発砲して戦死する。が、TV版との大きな相違点が幾つかある。先ず戦場がソロモンではなくコレヒドール宙域(ソロモンとア・バオア・クーの中間点)であること、次いでスレッガーは戦死しないこと(小説版の彼は一年戦争を生き延びている)、死に際に彼の脳裏に浮かんだ妻の名がゼナではなく「ナルス」となっていること等である。
ザビ家の中でも策略家であったギレンやキシリアとは異なり、もっぱら現場第一主義だったドズルに対する評価は戦略的視野に欠けた司令官として批判されがちである。しかし一方で、誰よりも前線の兵士の事を考えていた彼の元にはシン・マツナガ、シャア・アズナブル、アナベル・ガトー、ランバ・ラルなど多くのエースパイロットが集まった。彼のスペースノイドに対する悲願はやがて妻ゼナとの間に生まれた娘ミネバに託され、歴史を動かすことになる。
『THE ORIGIN』では温情家の部分が強調され、ブリティッシュ作戦の犠牲者やルウム戦役での僚艦撃沈に涙する姿が描かれている。またゲーム『ギレンの野望』ではルウム戦役で捕虜になった敵将のレビルに敬礼するシーンもあり、律儀な一面もあったようである。
[編集] ガルマ・ザビ
ガルマ・ザビ (Garma Zabi,U.C.0059年~0079年10月4日) は、アニメ『機動戦士ガンダム』の登場人物。(声:森功至)
TV版登場話数:第5話~10話(ビデオレターや回想シーンを除く)
ジオン公国軍地球方面軍司令。階級は大佐(機動戦士ガンダム THE ORIGINでは少将)。デギン・ソド・ザビの四男。放映開始時の年齢は20歳。乗艦はガウ攻撃空母。
ジオン公国の士官学校を首席(実際は次席であり、主席のシャアがガルマに花を持たせ譲ったとも言われているが定かではない)で卒業しており、またジオン公国の御曹司、そして美男子という事でジオン国民の人気も高く、父デギンや兄ドズルからもその将来を嘱望されていた。基本的に優しくナイーブな青年で、疑うことを知らず人を信用し過ぎる面があり、士官学校に進んだ彼を父デギンは心配していたようである。その性格を表すかのように、ガルマには神経質に右手で前髪をいじる癖があった。そういった意味で、ギレンの国葬演説を聞いていたシャアが呟いた名台詞「坊やだからさ」はガルマの人柄を簡潔にして端的に言い表しており、その評価は正に正鵠を射たものと言えよう。
また、シャア・アズナブルとは、士官学校以来の「親友」である(シャアに無線で裏切りを告げられるまでガルマ本人はそう信じていた)。
一年戦争ではジオン公国軍の地球方面軍司令官として北米に拠る。実質的に地球方面軍は姉キシリア率いる突撃機動軍の麾下であり、彼はあくまで名目上の司令官でしかなかった。またその権限も実質的にジオン地上軍第2軍(北米方面軍)司令官程度の物に限定されている(但し、北米は豊富な工業力と食料地帯を有する上に南米の連邦軍本部ジャブローを牽制する要地でもあった)。司令官でありながら、戦闘機(専用ドップ)に搭乗することが多く(降下作戦にはザクIIFSに搭乗したという説がある)、前線に出撃する事も多かった(しかしこの事は、他のジオン将校や国民から「親の七光り」扱いされることを嫌うため自ら功を挙げるためである)。また、占領地として赴いたニューヤークの前市長エッシェンバッハの愛娘、イセリナとは結婚を誓い合うほどの恋仲であった。
ホワイトベースが北米大陸を抜け、太平洋に出ようとするアニメ第10話(宇宙世紀0079年10月4日)に於いて、ガウ攻撃空母を主力とする部隊を率いてホワイトベースを攻撃に向かうが、シャア・アズナブルの裏切りにより、囮となってあらぬ方向へ誘導するガンダムを追跡し、無防備な背後をさらした瞬間に真後ろから待ち伏せしていたホワイトベース及びその艦載モビルスーツ等の総攻撃を受けてしまう。
その際、シャアから「君の生まれの不幸を呪うがいい」と裏切りを告げられ愕然とする。嘲笑するシャアの声が響く中、ガウ攻撃空母の舵を自ら取り180度回頭させてホワイトベースを道連れにすべく特攻をかけるも間一髪でこれをかわされ、地上に墜落し戦死する。脳裏にイセリナを思い浮かべつつ叫んだ彼の最期の台詞「ジオン公国に栄光あれ」はガンダム作中でも印象的なものの一つである。
この時、ガウにガンダムを追跡させ、ホワイトベースの正面へ移動するよう仕向けた(ホワイトベースの策を見破った上で乗らせた)のはシャアであったが、その事実は表には出ていない。しかし、シャアはガルマを守りきれなかった責任をドズルに問われ、左遷(予備役編入)されている。
ガルマの葬儀は国威発揚・戦意高揚のための国葬として、ギレンによって大々的に利用された。しかし、父親であるデギンは、身内のみでの密葬を望み、国葬に難色を示していた。ザビ家内で誰からも好かれていたガルマの死は、葬儀にも現れたようにザビ家内の各個の対立を深くする結果となってしまった。
第11話ではガルマと恋仲であったイセリナが、ガルマの部下であったダロタと共に敵討ちに向かう姿が描かれている。その後、仇討ち部隊としてドズル麾下のランバ・ラル隊が地球に降下し、ホワイトベース追撃の任務に当たることになる。
小説版では、シャアの謀略によってではなくガウ攻撃空母で木馬(ペガサス)へ馬鹿正直な正面攻撃を敢行したために、シャアが止めるのも間に合わずメガ粒子砲の直撃を食らって呆気なく戦死という描写がなされている(それでもシャアは守りきれなかった責任を問われ左遷)。
放送当時その容姿から女性ファンに対して、シャア・アズナブルと並ぶ人気があり、アニメ第10話の放送後カミソリ入りの手紙がサンライズに送りつけられたというエピソードまである。
安彦良和の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では「ガルマ編」のみならず、「過去編」に於いてもシャアに強烈なライバル心を抱き、事ある毎に張り合おうとする彼の姿が非常に生き生きと描かれており、実際かなりの紙数を割いている点からも作者にとってかなりお気に入りのキャラであることが窺える。
バンダイのゲーム『ギレンの野望』ではIFシナリオの一つとして、彼が戦死せず兄ドズルやランバ・ラルらを部下に従えイセリナに見守られながら「新生ジオン」の総司令官として立つ『ガルマの栄光~新生ジオン編~』を楽しむことができる。ここでの彼は髪をポニーテールに後ろで束ねており、以前の甘さを払拭しようとイメージチェンジを図っているフシがあるが、ゲーム内での発言内容は依然として甘さが抜けていないようである。因みにIFシナリオの中では割と高めの難度と言える。
[編集] ミネバ・ラオ・ザビ
ミネバ・ラオ・ザビ (Mineva Lao Zabi,U.C.0079年9月2日~?)は、アニメ『機動戦士ガンダム』、『機動戦士Ζガンダム』、『機動戦士ガンダムΖΖ』の登場人物。
(声:テレビ版Ζ・ΖΖ伊藤美紀、劇場版Z:平本亜夢)
宇宙世紀0079年9月2日、ドズル・ザビとゼナ・ザビとの間に、おそらくソロモン内で一人娘として誕生。異論を差し挟む余地など一切無く母親似。ザビ家の中で唯一生き残った人物。
『機動戦士ガンダム』において、第35話・36話に登場。ソロモン陥落時には未だ赤子であったが、母ゼナと共に脱出に成功。バロム大佐によって月のグラナダへ送り届けられた後、母に連れられアクシズへと逃れる。
『機動戦士Ζガンダム』及び『機動戦士ガンダムΖΖ』では、彼女はザビ家の正統後継者として祭り上げられ、歪んだ教育を受けるようになっていく。シャア・アズナブル(当初、皇室警護官としてミネバの養育にあたっていた)は彼女が普通の少女として育つ事を望んでいたが、摂政となったハマーン・カーンと対立し、アクシズから逃れるように地球圏へ潜入する。
宇宙世紀0087年、彼女はアクシズ(ネオ・ジオン)の名目上の君主として地球圏へ帰還し、グリプス戦役、第一次ネオ・ジオン抗争(ハマーン戦争)に介入する。ハマーンの戦死によって紛争が終結したのち、本物のミネバは既にシャアによって連れ去られ、それ以降は替え玉が立てられていた事が発覚した。しばらくはスウィートウォーターでシャアに匿われていたとされるが、第二次ネオ・ジオン抗争後の彼女の消息は不明である。
ニュータイプとしての素質があることを思わせる描写があったが、パイロットや実験体として利用されることはなかった(政治的利用はされていたが)。これは、数多いニュータイプ・強化人間の不幸な顛末を鑑みると、表舞台から去ったことはあるいは幸せであったかもしれない。
なお『劇場版機動戦士ZガンダムIII星の鼓動は愛』では、グリプス戦役終戦と共に勉学のため、サイド3経由で地球に降下している。
その後の成長したミネバが登場する漫画作品はあるが、いずれもガンダムシリーズの正史には含まれていない。また、2006年末より雑誌ガンダムエースで連載が始まった宇宙世紀0096年を舞台とした小説『機動戦士ガンダムUC』に登場するヒロイン・オードリー・バーンがミネバの成長した姿ではないかという声もあるが、ストーリーが始まったばかりで推測の域を出ない。
[編集] その他の人物
[編集] ナルス・ザビ
ナルス・ザビ (Naliss Zabi) は、アニメ『機動戦士ガンダム』にて設定上存在する人物。
ガルマ・ザビを産んだ際に死亡したため、アニメ『機動戦士ガンダム』には登場しない。小説版でその名前が判明したが、講談社の書籍『機動戦士ガンダム公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS』ではナリス・ザビとされる。ガルマだけでなく、サスロやドズルの母とする説もある。
[編集] ゼナ・ザビ
ゼナ・ザビ (Zenna Zabi,U.C.0059年?~0081年) は、アニメ『機動戦士ガンダム』の登場人物。(声:テレビ版角谷美佐、映画III塚田恵美子、特別編III金野恵子)TV版登場話数:第35話・36話
ドズル・ザビの妻でミネバ・ラオ・ザビの母。名はゼナ・ラオ・ザビとも。
夫ドズルと互いに強く愛慕っており、連邦軍による攻略戦が間近という極めて危険な時期に、本国サイド3で娘と共に夫の無事を祈るのではなく、何故か宇宙要塞ソロモン内で娘ミネバや侍女らと共に暮らしていた。ドズルが「ソロモンは難攻不落」と部下へアピールするために見栄を張って駐留させていたという説もあるが、些か不自然である。戦況の悪化に伴ってドズルに促されミネバを連れて脱出。ソロモン救援に急行していたグラナダのマ・クベ艦隊と出逢うも、冷酷なマ・クベに危うく脱出艇を見捨てられかける。同乗していたバロム大佐の諫言もあって何とか救出されたものの、このタイムロスはソロモンの陥落を決定的にし、夫ドズルも敵主力へ単機特攻をかけ壮烈な戦死を遂げてしまう。救出に喜んだのも束の間、愛する夫の戦死を察し涙に暮れていた。その後、バロムによって無事にグラナダへと送り届けられた。
ミネバを連れてアクシズに逃亡後、宇宙世紀0081年、心労により病死した。マハラジャ・カーンの長女(ハマーン・カーンの姉)とする説もあるが、現在では別人とされ、マハラジャの長女はドズル・ザビの妾とするのが一般的である。
安彦良和の漫画作品『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』ではガルマやシャアの士官学校同期生ゼナ・ミアとして登場し、ガルマとシャアを首謀者とする士官学校生蜂起事件に際してドズルに銃を突きつけ釘付けにするという重要な役割を担った。この事件によって責任を問われ士官学校校長を解任された傷心のドズルから「子を産んでくれまいか」とプロポーズされるエピソードが紹介されている。
北爪宏幸の漫画作品『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』では、ソロモン陥落後は親子でア・バオア・クーに滞在していたがシャアと共に脱出、アクシズに逃れる。当時14歳の少女だったハマーン・カーンは彼女に女性としての理想像を見いだしており、彼女の死に涙する姿が描かれている。
[編集] 隠し子、あるいはクローン説がある人物
アニメ『機動戦士ガンダムΖΖ』による設定では、ギレン・ザビは自身のクローニング実験を積極的に行っていたとする説があり、特に、自らの精子とニュータイプの女性の卵子との人工授精による試験管ベビーを作る実験を行っていたとされる。
- グレミー・トト
- デギン・ソド・ザビの隠し子であるという説と、デギンの人工授精児あるいはクローンであるという説、ギレン・ザビと「ニュータイプの素質がある女性」との間に生まれた人工授精児あるいはクローンでプルたちとは異母兄弟であるという説、単に大義名分を掲げるためにザビ家の血を引く者を僭称した説がある。本人はデギンの息子であると信じていたようであり、ハマーン・カーンに対して反旗を翻した。
- なお、アニメ制作時の設定ではギレンの人工授精児説が真実であるとされていた。
- ランス・ギーレン、ニー・ギーレン
- ギレン・ザビの人工授精児あるいはクローンであるという説があるが、グレミーやプルと比べて信憑性が低いとされるのが一般的である。設定の初出はゲーム『SDガンダム GGENERATION』シリーズの攻略本ともいわれるが、それよりも以前から噂はあったようである。
- エルピー・プル、プルツー
- ギレン・ザビと「ニュータイプの女性」との間に生まれた人工授精児という説がある。グレミー・トトとは異母兄妹であるとされる。また、グレミー麾下のニュータイプ部隊の人員もみな姉妹かクローンであるといわれている。
- なお、アニメ制作時の設定では皆ギレンの人工授精児でニュータイプであるが、洗脳のために強化人間のような兆候を見せているとされていた。
[編集] 設定の変遷
『機動戦士ガンダム』の企画初期段階『フリーダム・ファイター』においては、敵は「ジオン帝国」という異星人の全体主義国家という設定であった。これは『宇宙戦艦ヤマト』のガミラス帝国に似た設定である。その後企画は『ガンボーイ』を経て『ガンボイ』へと改められ、ここで『ガンダム』とほぼ同じような、人工都市衛星のひとつが「ジオン公国」を称するという形になる。「ザビ」という家名が出てくるのもこのあたりで、デギンに相当する「ギムロ・ソド・ザビ」や、ギレンに相当する「ガムロ・ザビ」といった名前が現れる。企画が『機動戦士ガンダム』として確立するあたりではデギンとその子供たちの設定が出そろうが、この段階では「ミハル・ザビ」という17歳の末娘がいるとされている。彼女の設定は最終的に没となったが、実際の作品中ではミハル・ラトキエというファーストネームが同じ少女がジオンのスパイとして登場している。
[編集] 参考文献
- 日本サンライズ「機動戦士ガンダム 記録全集」(全5巻) 1980~1981年
- 講談社「ガンダム者 ガンダムを創った男たち」 2002年 ISBN 4-06-330181-8
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