ザクII
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ザクII(ザクツー、ZAKU II)は、アニメ『機動戦士ガンダム』をはじめとするガンダムシリーズのうち、宇宙世紀を舞台とする作品に登場する、架空の兵器。ジオン公国軍の量産型モビルスーツ(MS)である(型式番号:MS-06)。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 機体解説
初の制式量産型MS、ザクI(型式番号:MS-05、通称旧ザク)の性能をさらに向上させたのが本機である。一年戦争の序盤戦において大艦巨砲主義を引きずる連邦軍に壊滅的な打撃を与え、ジオン軍の快進撃の立役者となった。宇宙世紀の戦争におけるMSの優位性を決定づけた機体である。
主に動力伝達系統の改良や稼働時間の向上がなされ、この機体をもってジオン公国軍は地球連邦軍に戦争を挑む事を決意した。この機体は汎用性が高く、オプション武器・装備も多彩で、様々な作戦環境に合わせてカスタマイズされた機体のバリエーションも多く作られている。
主要武装は専用の120mmマシンガン(ザク・マシンガン)もしくは280mmバズーカ(ザク・バズーカ)を装備し、また対艦船用近接兵器のヒートホークも装備する。さらに左肩に棘付きのショルダーアーマーを装備しており、格闘時にタックルなどに利用することができる。
一年戦争中の生産機数は、ザクIを含めて約8,000機といわれ、これは両軍を通して最高である。一説に約3,000機とする説もあるが、これはF型のシリーズ全体の生産数と同じであるため、誤認であると考えられる。ただし、ジオン公国軍が生産したMSの総数を約4,000機とする資料もある。
その優れた設計と絶大な戦果によって後のMSに多大な影響を与える事になる。特に機動性を重視した設計や、固定兵装を持たず様々なオプション装備で汎用性を確保する等のコンセプトは後のMSのスタンダードとして定着してゆく事となる。また、人型の兵器による白兵戦が宇宙世紀の戦争形態となる事を決定付けた機種でもある。
戦争序盤は連邦軍を圧倒したザクIIだったが、後に連邦軍がガンダムとその廉価版であるジムを開発すると旧式化が否めなくなり、戦争終盤では連邦のMSに圧倒されるようになってしまった。
[編集] 武装
- 120mmマシンガン
- 主にザクが使用していたことから通称「ザク・マシンガン」と呼ばれる主要携帯兵装であるマシンガン。薬室上部のドラムマガジンと呼ばれる円盤型弾倉から給弾される。ザクI登場時に開発されていた105mmザク・マシンガン(型式番号:ZMP-47D)や120mmザク・マシンガン(型式番号:ZMP-50B)の発展型でありドラムマガジンは水平型に改められている。型式番号は「ZMP-50D (M-120A1) 」、「ZMC38III」、、MMP-78」などいくつものパターンがあり、細部の仕様もそれぞれ異なり、これは生産会社や工場によるバリエーションであるとされる。開発時には敵機として宇宙艦艇や宇宙戦闘機を想定していたため、破壊力を重視した榴弾や徹甲榴弾を使用する。また、宇宙での運用が前提となっていたため、射撃時の反動を軽減するため砲弾の初速は比較的抑えられている。そのため、地球連邦軍がMSを実戦投入すると低い貫通力という問題点が浮上することとなった。
- M-120A1
- 最も広く使用されたタイプ。開発を請け負ったジオニック社の社内開発コード「ZMC38III」の番号も広く知られており、「ZMC38III M-120A1」と併記することが多い。単発と連射を切り替えることが出来る。ザク・デザートタイプの「M120AS」に発展した。装弾数は332発。
- ZMP-50D
- 型式番号から分かるとおり、ザクIのザク・マシンガンの直系タイプ。ドラムマガジンが右にオフセットされている。装弾数は100発。
- MMP-78
- 前期型と後期型があり、後期型ではグリップの取り付け位置とグレネードランチャー、オプションで対空弾と下から装填される専用箱型マガジンが追加されている点が異なる。MMPとはモビルスーツ・マシンピストルの略である。
- 280mmバズーカ
- 通称「ザク・バズーカ」と呼ばれるザクI用バズーカの発展型。元々対艦用に開発されたバズーカであり、核兵器の使用が前提であった。南極条約の締結後は核兵器の使用ができなくなり威力が落ちたため、さまざまな改良型が開発されることとなり、ドムのジャイアントバズに発展した。口径は240mmとする説もあり、複数のバリエーションがあったものと考えられる。H&L社製。(型式番号:H&L-SB25K)
- ヒートホーク
- ザクI用ヒートホーク(型式番号:HEAT HAWK Type3)の発展型。斧の刃部分から高温を発し敵の装甲を焼き切る格闘兵器。当初は対艦船用近接兵器であったが、後に地球連邦軍がMSを開発すると、対MS用にも転用された。グフやザクIでも装備している姿が見られる。ルタチタニウム製のガンダムのシールドを叩き割るなど、まともに食らえばガンダムといえど無事では済まない威力を持つ。両刃にした「ヒートトマホーク」等、バリエーションも非常に多く、生産形態は明確ではない。一般的なザクII用ヒートホークの型式番号は「HEAT HAWK Type5」。後のグリプス戦役で地球連邦軍のハイザックが改良型ヒートホークを使用している事から、ビーム兵器主体の時代になってもある程度の有効性は認められていたようである。
- シュツルム・ファウスト
- 使い捨ての大型弾頭ロケットランチャー。名前を直訳すると「突撃鉄拳」。F2型とFZ型、また『機動戦士ガンダム MS IGLOO』ではシャア専用機が使用したが、それぞれ形状が異なる。F2型やシャア専用機が使用したタイプは第二次大戦でドイツ軍歩兵の使用した携帯無反動砲パンツァーファウストを大型化したような形状である。そのパンツァーファウストの発展型であるパンツァーファウスト3は単なる無反動砲ではなく弾頭がロケットブースター付きとなっており、シュツルム・ファウストでも同様のようである。特にザク用という訳ではなく、ドムなど他のMSでも使用できる。
[編集] 劇中での活躍
アニメ『機動戦士ガンダム』では、第1話からほぼ全編にわたって登場している。宇宙世紀史上初めてMS同士の戦闘を行ったのはガンダムであり、ザク(ザクII)なのである。しかし、劇中中盤まではホワイトベース隊に、終盤では連邦軍MS隊に次から次に撃破されていくシーンが哀愁を漂わせている。
アニメ『機動戦士ガンダムΖΖ』ではネオ・ジオンが、自軍の戦力として使用している。その時点ではかなりのロートル機であり、敵機と遭遇する確率の低い哨戒などの任務に使用されていた。39話で運悪くガンダム・チームと交戦することを余儀なくされた部隊は新鋭機のΖΖガンダムの前にことごとく全滅させられてしまう。基本性能に変化はないが、コクピットはリニアシートに換装されている。また、宇宙空間に放棄されて浮遊していたザクIIがアーガマに回収され、その当時破損していたΖガンダムの頭部の代わりに、緊急的に先に回収したザクIIの頭部を取り付けて出撃した場面もある。この時の機体は便宜上「Ζザク」と呼ばれる。
アニメ『∀ガンダム』では、ルジャーナ・ミリシャによってザクIとザクIIに容姿が大変似ている機械人形が多数発掘され、「ボルジャーノン」と呼ばれ活躍している。一部の登場人物からは「ザク」とも呼ばれた。
[編集] 設定の変遷
モビルスーツ ザク | |
所属 | ジオン公国軍 |
建造 | ジオン公国 |
頭頂高 | 17.5m |
重量 | 74.5t |
出力 | 55000Hp |
地上走行速度 | 85km/h |
装甲材質 | 超硬スチール合金 |
武装 | 専用マシンガン バズーカ ヒートホーク |
主な搭乗者 | ジオン公国軍一般兵士 |
最初のTVシリーズに登場するMSの公式設定は非常に少なく、特にジオン側のモビルスーツで当初から具体的なカタログデータが設定されていたのはザクだけであった(右表参照)。従っていわゆる「リアルな設定」の大半は、後に書かれたムックの記事や模型化・商品化の際に設定された、アニメのスタッフが直接関わっていない非公式のものである。ただし、「作品中で映像化された段階で公式」とするサンライズのルールにより、後に公式となった設定もある。(ムックのタイトルに『公式~』とあっても、実際は外部の編集スタジオにより公式・非公式設定が混同されて書かれたものもあり、注意が必要である。)例えば「ザクII」という名称は『ガンダムセンチュリー』(1981年発行)が初出であり、CMなどに使われたことはあるが、映像本編において使われたことは現在のところ一度も無い「非公式設定」となる(「II」はローマ数字の2)。もっとも、旧ザクの呼び方の一つ「ザクI」は公式となったため、その流れで「ザクII」も公式名称と拡大解釈することもできる。またジオニック社がザクを製作したという設定も『ガンダムセンチュリー』が初出であるが、こちらは後に映像作品で使用され「公式設定」となっている。
ザク・マシンガンの水平な円盤型弾倉はデグチャレフDTやアメリカン180といった現実世界の銃を思わせるが、デザインに特定のモチーフは無い。しかし雑誌企画『ガンダム・センチネル0079』でデザインの大幅なリファインが行われ、現実世界の銃であるXM-177サブマシンガンをモチーフにしたような形状となった。また、プラモデル「1/100 マスターグレード 量産型ザク」商品化の際にもリファインが行われたが、この時は微妙な形状やパーツのレイアウトの変更に止まっている。後にそれぞれMMP-78、ZMP-50、そして『機動戦士ガンダム』第1話からほぼ全編に渡って登場するオリジナルのものにM-120A1の型式番号が与えられ、全て「ザクマシンガン」と呼ばれるが別形式であると設定された。これらの詳細は「U.C. ARMS GALLERY]商品化の際に追加されたものである。
なお今のところ、ザクマシンガンの公式設定はTVアニメ放映時からあった口径が120mmであること、砲弾の装薬が薬莢式であること、フルオート射撃が可能なこと、また『0083』登場のMMP-78でグレネードランチャーや箱型弾倉の使用が可能になったことくらいであり、後は全て後付の非公式設定である。
また、『機動戦士ガンダム』劇中で地上のみに登場したクラッカー及び3連装ミサイルポッドは『MSV』において陸戦型ザクIIの武装であると設定されている。
[編集] 備考
ザクのメカニックデザインは大河原邦男、設定書のフィニッシュワークは安彦良和による。当時は敵側のメカが玩具化されることはなかったため、スポンサーの制約を受けず、自由にデザインすることができた。大河原は当時のほかのアニメと同じく、1話で消えるやられメカだと思ってデザインしたという。名称は「雑魚」と、軍隊の「ザクッザクッ」といういわゆる軍靴の音を組み合わせたもの。
[編集] バリエーション
- MS-P06 試作型ザクII
- MS-06A 先行量産型ザクII
- MS-06C 初期量産型ザクII
- MS-06F 量産型ザクII(中間生産型)
- MS-06F-2 後期量産型ザクII
- MS-06FZ 最終生産型ザクII(ザクII改)
※これ以外のバリエーションについては、ザクシリーズのバリエーションを参照。
[編集] 先行量産型ザクII
先行量産型ザクII(せんこうりょうさんがたザクツー)は、プラモデルを中心とする企画『モビルスーツバリエーション』に設定上存在する、ジオン公国軍の量産型MSである。第一次量産型とも呼ばれるほか、型式番号からA型とも呼ばれる。(型式番号:MS-06A)
[編集] 機体解説
ザクIの問題点を改修し、最初に完成したザクIIである。元々はザクIの改良型 (MS-05C) として設計されていたが、大幅な改良が行われたため新たに「MS-06」の型式番号が与えられることになり、名称も「ザクII」となった。宇宙世紀0077年8月に量産が開始されたが、キシリア・ザビの提言により近接戦用武装が取り入れられることとなり、宇宙世紀0077年9月からはC型ザクIIに移行した。ただし初期量産型の生産が一定の軌道に乗るまでの半年間は同時に生産されていたという。
初期量産型との大きな違いは、右肩のシールドと左肩のスパイクアーマーがなく、ザクIと同じ球形のアーマーを両肩に装備していたことである。また、コクピットの開閉方式も異なっていたようである(旧型は中央正面にハッチがあり、パイロットがコンソールを乗り越えて乗り降りするため、モニターが汚れやすかった)。機体の塗装パターンは当初ザクIのものをそのまま使用していたが、後にザクII独自のものに変更された。
[編集] 備考
初出は『ガンダムセンチュリー』。その後『MSV』で詳しく設定され、SDガンダムのガチャポンシリーズにおいて初めて画稿が起こされた。
[編集] 初期量産型ザクII
初期量産型ザクII(しょきりょうさんがたザクツー)は、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する、ジオン公国軍の量産型MSである。先行量産型、初期生産型、初期型、前期型、核武装型とも呼ばれるほか、型式番号からC型とも呼ばれる。(型式番号:MS-06C)
[編集] 機体解説
先行量産型(A型)に次いで宇宙世紀0077年9月に試作機が完成。直ちに量産が開始されたザクIIであり、ジオン公国軍の一年戦争開始時点における主力であった。いずれは連邦軍もMSを配備する可能性を想定し、A型に近接戦能力がないことを不安に思ったキシリア・ザビの提言により、右肩のシールドと左肩のスパイクアーマーが装備された。さらに、携行武装としてヒートホークが追加されることとなった。
核攻撃を前提とした機体で、コクピット周辺に対放射線防護措置がとられていたが、後に南極条約によって核兵器の使用が禁止されるとデッドウエイトとなると判断され、耐核装備を外した量産型(F型)に移行していった。
頭部に隊長機を表すブレードアンテナが装備されている機体もあるが、通信機能が付加されている場合と、単なる飾りである場合がある。
[編集] パーソナルカスタム機
- シャア・アズナブル(中尉)専用機
- 一週間戦争で搭乗した機体。塗装パターンは赤。
[編集] 劇中での活躍
一年戦争開始時にはまだF型はほとんど前線に出ていないという設定であるため、アニメ『機動戦士ガンダム』冒頭のコロニー落としの場面に登場するザクはC型ということになる。
ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』シリーズにはシャア専用機が登場。ブレードアンテナはまだない。ただしこれはゲームオリジナルアレンジという扱いであり、後に制作された映像作品『機動戦士ガンダム MS IGLOO』に登場した際にはブレードアンテナが付いていた。(サンライズの公式設定では、ブレードアンテナの無いシャア・アズナブル専用機は存在しないとされている)
漫画『MS戦記 機動戦士ガンダム0079外伝』にはフレデリック・ブラウン搭乗機が登場。ただし、劇中ではF型と呼ばれている。左肩のスパイクアーマーが黄色で塗装されている。SDガンダムのガチャポンのシールに描かれているのはこの機体である。
[編集] 備考
設定の初出は『ガンダムセンチュリー』。その後『モビルスーツバリエーション』で詳しく設定された。
[編集] 量産型ザクII
量産型ザクII(りょうさんがたザクツー)は、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する、ジオン公国軍の量産型MSである。前期型、中期型とも呼ばれるほか、型式番号からF型とも呼ばれる。単純にザク、あるいはザクIIと言った場合は本機の事を指すことが多い。(型式番号:MS-06F)
[編集] 機体解説
量産型ザクII(F型) | |
型式番号 | MS-06F |
所属 | ジオン公国軍 |
建造 | ジオニック社 |
頭頂高 | 17.5m |
本体重量 | 58.1t |
全備重量 | 73.3t |
ジェネレーター出力 | 951kW |
スラスター総推力 | 43,000kg |
センサー有効半径 | 3,200m |
装甲材質 | 超硬スチール合金 |
武装 | 120mmザク・マシンガン 280mmザク・バズーカ ヒートホーク ミサイルランチャー クラッカー |
主な搭乗者 | ジオン公国軍一般兵士 |
初期量産型(C型)は耐核装備が施されているため重量が重く、機動性に難があった。そのため耐核装備を外したF型の研究・開発が行われており、一年戦争以前から一定数が生産されていた。一年戦争初期は主に後方支援として配備されていたが、南極条約の締結後は本機が主力となり、一年戦争中はジオン、地球連邦両軍を通じて最も多く量産された。その完成度の高さから、後に誕生する全てのMSの基本となっている。
生産時期や工場の違いによりさまざまなマイナーバージョンがあり、また、さまざまなパーソナルカスタム機も存在する。さらに、多くのバリエーションのベースとしても使用されており、サブタイプは枚挙にいとまがない。
初期量産型同様に、頭部に隊長機を表すブレードアンテナが装備されている機体もあるが、通信機能が付加されている場合と、単なる飾りである場合がある。
[編集] パーソナルカスタム機
-
- ドズル・ザビ専用量産型ザクII
- 『モビルスーツバリエーション』に登場。もっとも有名なF型のカスタムタイプで、身長2mを超す巨漢であるドズル・ザビ中将が乗れるようにコクピット容積を大型化し、通常の物よりも大型のヒートホークを装備している。また機体の淵に金色のエングレービングが施されている。ドズルは本機に乗って前線に赴き、兵士たちを鼓舞した。実戦に遭遇したとする記述もある。
『モビルスーツバリエーション』ではF型とされているが、EBシリーズなどではS型とする記述もある。また、ヒートホークには明確な設定画がないため、解釈はその時々によって異なる。ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』シリーズのムービーによれば、ルウム戦役の際にすでに実戦配備されている。 - アナベル・ガトー専用機
- サンライズ発行のカレンダー『ANAHEIM ELECTRONICS GUNDAM HISTORY 2002 CALENDAR』に登場。前腕部の形状が通常のものと異なるが、工場の違いによるバリエーションとされている。塗装パターンはグリーンとブルー。
- ジョニー・ライデン専用機
- ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』シリーズに登場。塗装パターンは赤(クリムゾンレッド)。
- シン・マツナガ専用機
- ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』シリーズに登場。肩のスパイクアーマーと頭部に白い装飾が施されている。
[編集] マイナーバージョン
-
- 中間生産型
- 『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』のプラモデル「1/144 MS-06FZ ザクII改」に登場。F型とFZ型の中間にあたる機体。F2型とは別の機体である。
[編集] 備考
設定の初出は『ガンダムセンチュリー』。その後『モビルスーツバリエーション(MSV)』で詳しく設定された。元々は南極条約の締結後に開発されたという設定であったが、バリエーションが増えるに従い徐々に前倒しされていった。アニメ『機動戦士ガンダム』に登場するザクのほとんどは本機か陸戦型ザクIIということになる。
『MSV』ではF型は後期生産型と記述されているが、これはA型、C型に対して後期に生産されたタイプという意味であり、当時、後期量産型ザクII (MS-06F-2) 及び最終生産型ザクII (MS-06FZ) の設定が存在しなかったためこの様な名称となっている。
[編集] ザクII FS型
ザクII FS型(ザクツー FS型)は、プラモデルを中心とする企画『モビルスーツバリエーション』に登場する、ジオン公国軍の量産型MSである。指揮官用カスタムタイプ・ザクIIカスタムなどとも呼ばれる。(型式番号:MS-06FS)
[編集] 機体解説
ガルマ・ザビ専用機としてよく知られる機体である。従来のF型と大きく異なる点は頭部に4門のバルカン砲を装備したことで、S型が開発されるまでは主に中隊長に配備されていた。ブレードアンテナは標準装備であり、通信機能も強化されている。また、F型ではあるが陸上用ザクII並の地上適正能力もある。
なお、ガルマ専用機はパーソナルカラーのブラウンで塗装されていた。
[編集] 備考
元は大河原邦男による劇場版のポスターなどのイラストから。『モビルスーツバリエーション』ではバリエーションとして扱われているが、元々のイラストではシャア専用機なども描かれており、単なるイラスト上の演出でしかなかった。ハイグレード・ユニバーサルセンチュリーシリーズでプラモデル化された際に、設定もいくつか追加されている。
[編集] 後期量産型ザクII
後期量産型ザクII(こうきりょうさんがたザクツー)は、OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場する、ジオン公国軍の量産型MSである。後期型、後期生産型とも呼ばれるほか、型式番号からF-2型(F2型)とも呼ばれる。(型式番号:MS-06F-2 (MS-06F2) )
[編集] 機体解説
統合整備計画の影響を受けたザクIIの後期生産型で、対MS戦を考慮され再設計されている。完全に統合整備計画に則っているわけではないが、細部が改修され、一年戦争終結後も地球連邦軍やジオン公国軍の残党によく用いられた。
[編集] 劇中での活躍
OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』では、一年戦争の勝利によって、ジオン公国軍から地球連邦軍に押収された機体が砂漠専用のベージュに機体色を変更され、仮想敵機として模擬戦に用いられたりしていた。アナベル・ガトーによるトリントン基地奇襲に対し、チャック・キース等がこのザクに搭乗し応戦した。デラーズ・フリートを始めとするジオン公国軍残党でも主力として用いられ、本機の胴体と腕部を利用したドラッツェなどのバリエーションも存在した。
[編集] 備考
メカニックデザインはカトキハジメ。『ガンダム・センチネル0079』に登場するカトキ版ザクIIをアニメ用にリファインしたもの。F型とFZ型の中間になるようデザインされている。
[編集] 最終生産型ザクII
最終生産型ザクII(さいしゅうせいさんがたザクツー)は、OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場する、ジオン公国軍の量産型MSである。ザクII改(ザクツーかい)、ザク改(ザクかい)、最終型とも呼ばれるほか、型式番号からFZ型とも呼ばれる。(型式番号:MS-06FZ )
[編集] 機体解説
最終生産型ザクII(FZ型) | |
型式番号 | MS-06FZ |
所属 | ジオン公国軍 |
頭頂高 | 17.5m |
本体重量 | 56.2t |
全備重量 | 74.5t |
ジェネレーター出力 | 976kW |
スラスター推進力 | 24,500kg×3 3,000kg×2 |
センサー有効半径 | 3,200m |
装甲材質 | チタン・セラミック複合材 |
武装 | ヒート・ホーク MMP-80マシンガン ハンドグレネード×3 シュツルム・ファウスト |
主な搭乗者 | バーナード・ワイズマン |
統合整備計画の適用により生産された機体で、実戦データを元にして武装を含めて全面的に改修してありカタログスペック上はゲルググ並み、実際の性能はドム並みともジム・コマンド並みともといわれる。特にスラスター総推力はF型の70%増しとなっているが、搭載する推進剤の量は変わらないため、稼働時間は逆に半分に減少している。戦争末期の出現であり生産数が少なく、実戦投入されることもあまりなかった。装備する新型銃90mmマシンガンは120mmに比べ口径は小さいが、対MS戦を考慮し装弾数と集弾率の向上が図られている。これらの改良によりこの最終生産型ザクは、連邦のジムに対し「後れを取ることは無くなった」とされている。また、一定時間ではあるが脚部推力を生かしてドムのようなホバリング走行を行うことができた。
統合整備計画の実施時期には諸説あるため、FZ型の開発時期もはっきりしていない。一般的には一年戦争末期の生産とされているが、試作機は一年戦争中期の時点で完成していたようである。一年戦争初期にはすでに存在していたとする説もあるが、極初期の試作型であるか、F型の中期生産型を誤認したものであろう。
[編集] 武装
-
- 90mmザク・マシンガン MMP-80
- MMP-78ザク・マシンガンに代わる新型。大きく前期型と後期型に分かれる。以前より小口径になっており、速射性と命中率がアップしている。給弾方式が下部からの箱型弾倉に変更され、小型化により持ち運びが容易になった。ただし、前期型には120mmのものもあったようである。『0083』でF2型やゲルググマリーネが装備する後期型は、現実世界の銃であるMP40サブマシンガンを映画プロップ風に改造したような外見になった。
[編集] 劇中での活躍
バーナード・ワイズマンが本機に搭乗。OVA第1話では故障によりサイド6のリボーコロニーに不時着し、アルフレッド・イズルハに出会ってしまう。
最終話ではクリスチーナ・マッケンジーの搭乗するガンダムNT-1と戦い、相討ちになった。相討ちとはいえ、映像作品としてはガンダムと名の付くモビルスーツを撃破した唯一のザクである。
劇中では、新兵であるバーニィとアルがコロニー内に不時着したFZ型を、ジム系MSの残骸から調達したジャンクパーツを用いて修理できたことから、統合整備計画の合理性と、地球連邦軍と工業規格が統一されていることが伺える
[編集] 備考
メカニックデザインは出渕裕。OVAの作品解説に書かれている通り、元々は1980年代風にリメイクされたザクIIという設定であり、初代『機動戦士ガンダム』に登場したザクと同じものという設定であった。しかしプラモデルの商品展開の都合により別の機体という設定となってしまった。だがOVAのスタッフが製作した画集『MS ERA 0001~0080 ガンダム写真集』には開戦当時からこの機体が登場しているため、これをそのまま認めるには一年戦争初期から存在しないとおかしなことになる。後に出渕裕は2000年頃のインタビューで、このデザインはさすがにやりすぎだったと発言したことがある。
[編集] 指揮官用ザクII
指揮官用ザクII(しきかんようザクツー、ZAKU II COMMANDER TYPE)は、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する、ジオン公国軍の指揮官用量産型MSである(型式番号:MS-06S)。
シャア・アズナブル少佐が搭乗した機体が最も有名であり、シャア専用ザクの名で知られシャアザクと略される事も多い。主に中隊長以上の士官が使用したため、中隊長用、士官用などとも呼ばれるほか、型式番号からS型とも呼ばれる。
[編集] 機体解説
指揮官用ザクII(S型) | |
型式番号 | MS-06S |
所属 | ジオン公国軍 |
建造 | ジオニック社 |
頭頂高 | 17.5m |
本体重量 | 56.2t |
全備重量 | 74.5t |
ジェネレーター出力 | 976kW |
スラスター総推力 | 51,600kg |
装甲材質 | 超硬スチール合金 |
武装 | 120mmザク・マシンガン 280mmザク・バズーカ ヒートホーク 他 |
主な搭乗者 | シャア・アズナブル |
F型を元に指揮官やベテランパイロット用に推力を30%増すなど細部が改修された機体である。ただし、燃料タンクの増設は行われていないため、稼働時間は短くなっている。また、指揮官用に通信能力を強化するため、ブレードアンテナが標準で装備されている。
指揮官はパーソナルカラーに塗装することを許されており、その中で特に有名なのが、シャア・アズナブル少佐が搭乗した機体である。シャア専用機は赤い彗星の名の通り全身を赤系統(淡いピンクとワインレッド、ただしHGUCではワインレッドではなく茶色等、キットによっては細かな差も見られる)で塗装している。
[編集] 劇中での活躍
シャア・アズナブルは、そのたぐいまれな操縦能力でザクIIの性能を限界まで引き出し、一般機(F型)と指揮官機の違いがあるとはいえ、「通常の3倍のスピード」と恐れられたほどの速さで専用機を乗りこなした。
テレビ版にはシャア専用機以外の指揮官用ザクIIは登場しないが、劇場版IIIには、ア・バオア・クーの戦いにおいて部下の量産型ザクIIを岩の外に押し出し自分は要塞内に退避したが、その直後に飛び込んできたミサイルによって撃破された指揮官用ザクIIの姿が確認されている。塗装は量産機と同じグリーンである。
他にア・バオア・クー防衛ラインにおいて量産カラーの機体と戦列を組み出撃するシャア専用機に似た赤い機体の姿が見られるが、画像が小さ過ぎてこの機体がS型かは不明である。
[編集] 備考
メカニックデザインは大河原邦男。設定の初出は『ガンダムセンチュリー』。性能などに関する設定は後付けであり、劇中においては他の量産型ザクと特に区別されていない。
「通常の3倍のスピード」というのはあくまでもシャアの操縦技術によるものであるという設定であった。従って今日的解釈では「通常の3倍ぐらいに思えるスピード」というのが正しい(まともに機動性を3倍の尺度で解釈すると、本機は機動性のみガンダムすら遙かに凌駕するスーパーモビルスーツになってしまう)シャアは2本のスティックで自在に操っているので、他のエースパイロットでは扱えない。
その他、「小隊巡航速度の3倍」という解釈なら「通常の3倍の速度」という表現はそのまま成り立つという解釈も出来る。劇中でもシャアのホワイトベース接近時のレーダーオペレーションでの会話のみに使用されていた言葉であり、レーダーで小隊単位での速度観測を「通常の速度」(小隊の移動速度は通常の軍隊で言うなら予め一定の定められた速度で移動するものである)とするなら、シャアの行う単独での全速突貫がその機体の特殊性と相まって数値的に小隊巡航速度の3倍の値で移動しているのが通例だったとするなら特に不思議な言葉ではない。
[編集] ザク(小説版)
原作者富野由悠季執筆の小説『機動戦士ガンダムI』『機動戦士ガンダムII』『機動戦士ガンダムIII』に登場する「ザク」は、外見は基本的にアニメその他のF型を踏襲するが、以下のような違いがある。
- 頭頂高が16mである(これはガンダムも同様)。
- マニピュレーターの人差し指先端にレーザートーチ(バーナー)が装備され、建材や敵機の薄い装甲(ガンダムの顔面など)等を焼き切ることができる。
- 制式塗装がグリーン系ではなく、白褐色である。
- 有重力下でバックパックのスラスターを使用してジャンプした場合、その最高高度は800mほどと設定されている。
[編集] 参考文献
- みのり書房「月刊OUT」別冊『宇宙翔ける戦士達 ガンダムセンチュリー』(1981年発行。2000年、樹想社より再販)ISBN 4-87777-028-3
- バンダイ「模型情報」別冊『モビルスーツバリエーションハンドブック』第1集(1983年発行)
- 講談社 ポケット百科シリーズ32『機動戦士ガンダム モビルスーツバリエーション 1 ザク編』(1984年発行)ISBN 4-06-107782-1
- バンダイ「模型情報」別冊『ヒストリー・オブ・モビルスーツ』(1984年発行)
- ホビージャパン『ガンダムウェポンズ MS-06R ザクII編』(1995年発行)
- 講談社『機動戦士ガンダム 公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS』(2001年発行)ISBN 4-06-330110-9
- サンライズ『ANAHEIM ELECTRONICS GUNDAM HISTORY 2002 CALENDAR』(2002年発行)
[編集] 関連項目
ガンダムシリーズ (カテゴリ) | ||
シリーズ一覧: | ガンダムシリーズ一覧 - ゲーム作品一覧 - SDガンダム | |
世界観: | 宇宙世紀 - 未来世紀 - アフターコロニー - アフターウォー - 正暦 - コズミック・イラ - SDガンダム | |
ガンダムシリーズの映像作品 | ||
テレビシリーズ: | 機動戦士ガンダム - Ζガンダム - ガンダムΖΖ - Vガンダム - Gガンダム - ガンダムW - ガンダムX - ∀ガンダム - ガンダムSEED - SEED DESTINY - SDガンダムフォース | |
OVA: | 0080 - 0083 - 第08MS小隊 - Endless Waltz - MS IGLOO - SEED STARGAZER - SD外伝 ジークジオン編 - - GUNDAM EVOLVE | |
劇場版: | 逆襲のシャア - ガンダムF91 - G-SAVIOUR - GUNDAM THE RIDE - グリーンダイバーズ - SD外伝 聖機兵物語 | |
ガンダムシリーズの劇中項目 | ||
劇中項目一覧: | 人物一覧 - 機動兵器一覧 - 艦船及びその他の兵器一覧 - 用語一覧 | |
テンプレート |