JR東日本E231系電車
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E231系電車(E231けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の直流一般形電車。
JR東日本E231系電車 | |
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近郊形仕様(2006年1月17日撮影) | |
起動加速度 | (MT比2:3)2.5km/h/s |
営業最高速度 | 120km/h |
設計最高速度 | 120km/h |
減速度 | 4.0km/h/s(常用最大)
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編成定員 | 先頭車137(6000・8000・8500) /141(800)/143(0・500)/中間車156(800)/162(Others)/グリーン車90 |
全長 | 20,000mm |
全幅 | 2,950mm |
全高 | 3,980mm |
編成重量 | 1両あたり25t(T車)/29.8t(M車)/36.1t(グリーン車編成1両あたり) |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V |
編成出力 | 760(2M3T)/1,520(4M6T)/2,280(6M5T・6M9T・6M4T) |
駆動装置 | TD継手式平行カルダン駆動方式 |
制御装置 | VVVFインバータ制御(高周波パルス幅変調方式) |
ブレーキ方式 | 電気指令式,回生ブレーキ |
保安装置 | ATS-SN(宇都宮・東海道・常磐線用),ATS-P(宇都宮・東海道・総武・東西・常磐線用),D-ATC(山手線用) |
目次 |
[編集] 概要
老朽化及び陳腐化が進んだ103系・113系・115系・201系・205系の置き換え用として、2000年(平成12年)3月から投入された。
省エネルギー化と生産コスト、メンテナンスコストの大幅な削減を目的にJR東日本が1990年代に開発した「新系列車両」の技術に加え、運行制御システムへの新機軸の採用により、その後の鉄道車両の開発にも大きな影響を与えた。JR東日本と東急車輛製造が共同開発し、東急車輛の他に川崎重工業や自社の新津車両製作所でも製造されている。
運用路線は首都圏近郊区間全域に拡大しており、2007年現在ではJRグループで同一系列の最多配置両数に達している。
車両のデザイン開発は、GKインダストリアルデザインが担当している。
この形式の開発により、JR東日本は平成18年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰(対策技術導入・普及部門)を受けた。理由は、省エネ化及びリサイクル可能部品の多数使用、さらに他社での技術採用(後述)により、鉄道業界全体の省エネなどに貢献しているとする点である。
さらに、この形式及びNEトレインの開発・導入によって、JR東日本は「省エネ車両の継続的導入と世界初のハイブリッド鉄道車両の開発・導入」という理由により、第16回地球環境大賞の文部科学大臣賞を受賞した。
[編集] 主な性能
[編集] 機器構成
本系列は、従来の通勤形電車・近郊形電車の区分を統一した一般形電車として設計され、その動力性能は歯車比7.07、最高速度120km/h、起動加速度2.5km/h/s(500・800番台は除く)である。VVVFインバータ機器の性能向上と主電動機の強化(高回転に対応した設計のMT73型の採用)により、近距離用の通勤形電車である209系(歯車比7.07、最高速度110km/h、起動加速度2.5km/h/s)と同等の加速力を維持しつつ、中距離電車用の近郊形電車であるE217系(歯車比6.06、最高速度120km/h、起動加速度2.0km/h/s)と同等の最高速度を達成している。
ブレーキ方式は電気指令式空気ブレーキと電力回生ブレーキを組み合わせた方式で、モーター付き車両では停止寸前まで電力回生ブレーキが使用可能な他、空気ブレーキの遅れ込め制御も併用している。また、山手線用の500番台と東西線直通用の800番台は純電気ブレーキにも対応している。
台車は209系と同じく軸梁式のボルスタレス式のDT61/TR246系が採用されている。E217系と同じくヨーダンパはグリーン車にのみ取り付けられており、普通車は取り付け準備のみである。
集電装置にはシングルアーム式パンタグラフ(PS33B型)が採用され、折り畳み高さは全車3,980mmに統一されており、中央本線の狭小トンネル区間の走行が可能である。
E231系では、車両に搭載される機器の制御方法がそれ以前に製造されていた車両系列とは大きく異なり、非常ブレーキなどを除くほぼすべての機器の制御をTIMS(Train Information Management System)と称する情報管理システムを通じて行っている。通信のインターフェイスには、RS-485(伝送速度2.5Mbps)を用いている。TIMSは、高速データ通信技術を用いて列車の動力制御、室内設備、保守点検などを1つのシステムとして統合管理するもので、機能別に独立していた従来の制御系統・電気配線を大幅に簡素化し、製造コストの削減を達成した。また、各機器の自己診断機能や動作履歴の記録機能などによる車両の点検作業の自動化・迅速化など点検・保守作業の簡略化も同時に実現している。また、保安機器では緊急停止装置と緊急列車防護装置を標準装備している。
[編集] 車体設備
E231系は、車体形状や装備の違いにより、通勤タイプと近郊タイプの2つに大別できる(詳細は後述)。基本設計は共通であり、量産効果による車両製造コストの低減を図っている。
車体は軽量ステンレス製で、前面部にはFRP(ガラス繊維強化プラスチック)が用いられている。側窓には緑色に着色されたUV(紫外線)カットガラスを採用しており、中央部の広窓も1枚固定窓から非対称2分割開閉式となったことが、209系500番台との識別点である。車体構造はE217系や209系500番台に準じたもので、近郊タイプだけでなく通勤タイプにも2,950mmの広幅車体を採用している。但し、例外として800番台車は2,800mm幅である。また、床面高さはレール面から1,165mmに低減され、さらに靴擦り部分を傾斜させ、先端部の高さを1,150mmとした。これにより、ホーム(1,100mm)との段差解消と低重心化が図られている。
車体形状は製造した車両メーカーにより細部に差異が生じている。これは各車両メーカーが得意とする加工方法で車両の製造を行えるように若干の仕様の相違を許容しているためで、前述の量産効果に加えて車両製造コストの低減に寄与している。具体的には、近郊タイプ及び800番台では車体妻面部の処理・縦雨樋の形状・ドア横の柱の処理・内装の素材などが異なっている。また、長期間に亘り製造が行われているため、同一のタイプ・番台においても製造時期により細かな仕様の変更が行われている。
[編集] 車内設備・放送
車内設備では、ドア上部には209系・E217系・E233系・E501系・E531系と同様のチャイムを採用している。また、客室内にはLEDやトレインチャンネルと呼ばれる液晶ディスプレイによって運行情報などを表示するシステムがあり、LED方式の場合、1段タイプと2段タイプの2タイプ存在するが、共通点として次駅案内が表示され、漢字→ローマ字→カタカナの順に表示される。
- (例、「次は新橋」→「Next Shimbashi」→「次はシンバシ」)
この他、近郊タイプ、常磐線タイプ、500・800番台においては自動放送が行われている。音声は、日本語を三浦七緒子、英語をクリステル・チアリがそれぞれ担当している。
[編集] 標準車両としての応用・改良
E231系は、JR東日本のみならず首都圏の鉄道事業者でも今後の車両開発における標準車両の1つとして重視されており、既に相模鉄道の10000系、東京急行電鉄の新5000系、東京都交通局(都営地下鉄)の10-300形,京浜急行電鉄の新1000形(6次車)などE231系の設計を基本とした私鉄・地下鉄車両も登場している。JR東日本も、自社の新津車両製作所において他社局向けの生産を行っており、既に相模鉄道と東京都交通局向け車両の一部を製造している。
JR東日本でも、E231系の技術をベースとした新系列車両が登場している。2005年から2007年にかけて常磐線中距離電車用として交直流一般形電車E531系を順次投入しており、さらに2006年12月26日からは、E231系の後継車両であるE233系が中央快速線・青梅線・五日市線などに投入されている。E233系は2007年秋より京浜東北線・根岸線に209系の置き換えとして、2008年夏頃より常磐緩行線に203系、207系900番台の置き換えとして投入される予定である。また、連接車体を採用した次世代型のE331系の開発も進められ、2006年3月に量産先行車(京葉車両センター所属)が落成し、京葉線や外房線などでの走行試験を約1年間行った後、2007年3月18日より営業運転を開始している。
香港・九広鉄路のSP1900形も、E231系の技術を基にしている。
[編集] 系統別概説
[編集] 通勤タイプ
[編集] 概説
全車両がロングシートの座席構成を持つ仕様である。主電動機の制御装置としてIGBT素子(IPMパッケージ)を用いた3レベルVVVFインバータ(三菱電機製)を使用している。ドアエンジンは電気スクリュー軸駆動式の採用が基本であるが、松戸車両センターに新製配置された車両についてはリニアモーター式を採用している。
この系統に属する他社局向けの派生車としては、前述の相鉄10000系や都営10-300形・10-300R形が該当している。
[編集] 900番台
1998年10月に東急車輛製造とJR東日本新津車両製作所にて新製されたE231系の試作車で、登場当初は209系950番台と称していた。三鷹電車区に10両編成1本が配置されている。
1992年の901系(→209系900・910・920番台)を嚆矢とするJR東日本の新系列電車の開発は、209系とE217系によってその基礎を確立したが、共に登場後5年以上が経過したため、その間の技術進歩を採り入れた「第2世代」車両の試作車として製造された。
車体の基本的な構造は同時期に生産されていた209系500番台とほぼ同一であるが、「概要」でも記したが制御・動力系は一新され、列車情報管理システムTIMSと新しい動力系装置が採用され、E231系の技術的基礎を確立した。900番台のVVVFインバータ装置は、試作車という意味合いもあって、三菱電機製の3レベルインバータ(後に通勤タイプで採用)と日立製作所製の2レベルインバータ(後に近郊タイプで採用)の2種類が1ユニットずつ搭載され、1編成で2種の異なる起動音がインバータ装置及びモータから発生するのが特徴である。
その他の特徴としては、側面窓は209系500番台と同じタイプで開閉可能なのは4枚、ガラスは緑ではなく黒であること、車外LED表示器のフォントの変更、集電装置として電磁鍵外し式のシングルアーム式パンタグラフの採用、5号車に6ドア車を導入し、先頭車の前面と扉上部に「6DOORS」のステッカーを貼付させるなどがあり、これらは後述の0番台に踏襲されている。ドア装置には、4ドア車にリニアモーター式装置が試験導入され(6ドア車はスクリュー式)、それが近郊タイプに採用された。但し900番台ではドア1ヶ所につき2つのリニアモーターを使用しているのに対し、近郊タイプでは1モーターによる2扉連動方式となっている。また、ATS-P型の他にATS-SN型を搭載(0番台中央・総武緩行線用はATS-P型のみ)している他、前面列車番号の表示が微妙に違い、900番台では「0601B」の様に空白の部分が0と表示されるのに対し、0番台中央・総武緩行線用は601Bと表示される。さらに登場時は「近郊形置き換え用」の位置付けから行先表示器のメモリー内に宇都宮・高崎線の駅名の一部が含まれていたことも特筆できるが、量産化改造時に削除された。
1998年10月の落成後、中央・総武緩行線を中心に性能試験などが行われ、1999年3月末に同線において営業運転を開始した。その後、E231系量産車の登場に伴い2000年6月に同900番台と改番された。形式上は「試作車」として位置付けられているが、その登場から1年半後にほぼ同一の仕様で0番台が投入されたことからも伺えるように、車両の完成度は高く、事実上の「量産先行車」であったとも考えられる(JR東日本の車両図鑑では「量産先行車」としている他、東急車輛と共に製造を担当した新津車両製作所での案内では、「量産先行試作電車」としても紹介されている。)。また、量産車両の登場を待たずに鉄道友の会2000年ローレル賞に選定されるなど、新世代車両としての技術的な先進性は高く評価された。
この編成の編成番号は、登場時は201系や当時車両不足で他線から借入中の103系「ミツ23」の続番として在籍編成では最終番号の「ミツ24」であったが、201系の運用終了後は他のE231系0番台編成と共に先頭車の車両番号に改められ、「ミツ901」になっている。
[編集] 0番台
2000年(平成12年)3月に登場した。最初は103系と201系の置き換えが急務となった中央・総武緩行線に投入され、続いて2002年(平成14年)3月からは常磐快速線(上野~取手間)と成田線(我孫子~成田間)にも投入された。
[編集] 中央・総武緩行線
- 車体の帯の色:カナリアイエロー ■
- 5号車に6ドア車(サハE230形)を連結している。座席は折り畳み式となっており、平日の初電~10時は収納状態で固定され、10時を過ぎた時点で使用できるようになっている。また、先頭車の前面と6ドア車の扉の上部には「6DOORS」のステッカーが貼付されている。
- 2007年1月現在、三鷹電車区に10両編成47本(470両)が配置されている。
- 投入開始当初は103系・201系・205系を置き換える計画であったが、2001年に中央・総武緩行線用の209系500番台2編成が京浜東北線の浦和電車区へ転属したため、その代替として2編成(26・27編成)が、また2002年12月のダイヤ改正で東西線への直通運用が削減され、301系1編成10両が廃車されたため、それを置き換える形で1編成10両(ミツ57編成)がそれぞれ追加製造された。
- さらに2006年度には京浜東北線・根岸線に209系900番台3編成の置き換え用として同区の500番台3編成が転属することになっており、その補充として3編成(ミツ80~82編成)が製造された。この3編成には車外スピーカーを設置するスペースが確保され、乗務員室内のドアスイッチにもスピーカー設置時に必要なスイッチの取り付けスペースが備えられている。また、貫通路扉が全車に設置され、「3/4閉」スイッチやデジタル無線の本設置も行われている。
- なお、今後900番台とともに全編成に自動放送の設備が搭載される予定。
- 側面のLEDは行先と「中央・総武線」の表示を交互に行う。表示内容は209系500番台と同様だが、フォントなどが微妙に異なる。
[編集] 常磐線快速・成田線(我孫子~成田)
2002年3月3日に営業運転を開始した。
- 車体の帯の色:上:エメラルドグリーン ■、下:ウグイス ■
- ※同じエメラルドグリーンの帯色を用いている常磐緩行線・地下鉄千代田線直通用車両(203系・207系900番台・209系1000番台)との誤乗防止のため、常磐線快速・成田線のE231系編成にはエメラルドグリーンの帯下にウグイス色の帯を追加している。同様の理由からE501系も帯上部が白色 □、帯下部がエメラルドグリーン ■の配色となっている(E501系は2007年3月17日をもって上野口の運用から離脱した)。常磐快速線用の第1編成(第101・121編成)の帯色は落成当時エメラルドグリーン単色であったが、営業運転開始の直前になってから帯色下部にウグイス色が追加され、同時に乗務員室のドアにもエメラルドグリーンのステッカー貼付が施された。
- ワンマン運転に対応した車両を除くとJR東日本では初めて自動放送装置が搭載され、また、車体には車外スピーカーを設置するスペースが確保されている。また、車内情報システム(VIS)の導入に伴いドア上部にあるLED式旅客案内表示器も2段化され、上段に行先と次の駅、ドア開閉方向を、下段にお知らせや列車遅延情報などを表示する。順番は運行情報→運行路線→携帯電話→テロ対策で、日本語2回→英語2回で流れるが、テロ関連だけ英語表示はない。運行情報のない時は運行路線から表示する。これは基本的には後の近郊タイプにも採用されている内容だが、常磐線快速・成田線仕様では始発駅停車中、または我孫子駅での増結作業中に主要駅までの所要時間を表示、また運行路線も行先まで表示する。新たな列車運行情報が入電された場合はアラート音が鳴る(始発駅発車時に列車運行情報が入電されている場合は発車時に鳴る)。
- 長時間停車時の車内保温を目的に各車両のドアを1ヶ所を除いて閉めることが可能な「3/4閉」スイッチが設置されている。
- また、座席のクッション材質を柔らかいものに改良しているが、これは後述の500・800番台も同様である。
- 松戸車両センターに基本10両編成17本(170両)と付属5両編成19本(95両)の合計265両が配置されている。通勤タイプとしては最長の15両編成での運用も行われている。成田線では最長10両編成で、付属編成5両のみの運用や付属編成を2本連結した10両編成もある。
- 常磐快速・成田線では、置き換え前の103系の車両数285両に対してE231系の投入車両数は265両であり、投入完了後も103系が3編成20両在籍していた。これはつくばエクスプレス(首都圏新都市鉄道)開業後の乗客変動を考慮したためで、乗客減の結果、2006年3月18日のダイヤ改正で運用本数が削減され、103系はE231系への置き換えを行わずに廃車となり、全列車がE231系による運転となった。このダイヤ改正後は15両編成で運転する列車が増加している。
- 同一路線上を走る常磐線の中距離列車のE531系には、2007年1月6日から2階建てグリーン車が順次導入されているが、E231系には連結しない。
- 側面のLEDは行先のみを表示し、他線区のE231系の様に路線名との交互表示はせず、運転種別である「快速」の表示もしない。これは、本系列での基本種別が快速のためである。また、下り電車にて我孫子駅での車両切り離しがある場合には「我孫子・成田」「我孫子・取手」という表示を15号車の前面行先表示器に表示するが、1号車は通常のまま(「取手」か「成田」のみ)である。但し、取手駅始発の上り電車に車両切り離しがある場合、15号車の前面行先表示器の表示は「我孫子」のみの表示となっている。
[編集] 500番台
定員: | 143(先頭車)/162(中間車) | ||
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起動加速度 | 3.0km/h/s(6M5T) | ||
保安装置 | D-ATC |
2002年(平成14年)1月より山手線の205系置き換え用として登場し、同年4月21日より営業運転を開始、2005年4月17日までに全編成が出揃った。
車体の帯の色:ウグイス ■
山手線は首都圏の鉄道路線の中でも最重要路線の1つであり、駅間距離が短く列車密度の高い特異な混雑路線である事から、500番台車はこの様な条件に特化した仕様となっている。
前面デザインは、0番台とは異なり白色をベースとした独自のものに変更され、車外スピーカー取り付け準備工事がなされている。車内のドア上部にはLED表示器に代わって2基の液晶ディスプレイ(LCD)が設置され、トレインチャンネルと呼ばれる車内情報サービスが提供されている。右側画面には次の駅・所要時間・ドア開閉方向・列車遅延情報などを、左側画面には主にCMやお知らせを表示し、新たな列車運行情報が入電された場合はアラート音が鳴る(始発駅発車時に列車運行情報が入電されている場合は発車時に鳴る)。動力面では、ほぼ0km/hまで電力回生ブレーキが作動する「純電気ブレーキ」が採用されている。高い列車密度と短駅間での頻繁な加減速に対応すべく、編成中の電動車(M)と付随車(T)の構成(MT比)は6M5Tと高く取られ、起動加速度も0番台の2.5km/h/sより高い3.0km/h/sとなっている。また、最新のデジタルATCも搭載されており、安全性がより高く保たれている。
205系では10号車のみ連結していた6ドア車は、この500番台では7号車と10号車の2両に連結され、さらなる混雑緩和を図っている。座席は平日の初電~10時は収納状態で固定され、10時を過ぎた時点で使用可能となる。6ドア車の扉の上部には「6DOORS」のステッカーが貼付されている。また、常磐快速・成田線の編成と同様に各車両のドアを1ヶ所を除いて閉めることが可能な「3/4閉」スイッチを設置する。
第4編成からは、冷房装置については全車能力を増強したAU726に変更となり(第1~3編成も6ドア車(サハE230-500)のみAU726)、消費電力増加に伴い5号車にも補助電源装置(SIV装置)が設置された。第1~3編成の5号車にはSIV装置の取り付け準備工事がなされているが、実際には取り付けられていない。
2007年1月現在、東京総合車両センター(旧・山手電車区)に11両編成52本(572両)が配置されている。
[編集] 800番台
定員: | 141(先頭車)/162(中間車) | ||
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起動加速度 | 3.3km/h/s(6M4T) | ||
保安装置 | ATS-P、WS-ATC |
中央・総武緩行線から帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄(東京メトロ))東西線への直通運転用の103系1000・1200番台および301系を置き換えるために投入され、2003年(平成15年)5月1日に営業運転を開始した。
三鷹電車区に10両編成7本(70両)が配置されている。当初は80両が置き換えの対象だったが、JR車の地下鉄乗入れ運用が削減され、10両が代わり前述の中央・総武緩行線用の0番台として新製された。
車体の帯の色:青・水色 ■■
東西線との直通仕様となっているため、車体幅はE231系では唯一の2,800mmであり、車体デザインは東京メトロ千代田線直通用の209系1000番台のものを基本としている。また、先頭車の前面に非常扉を装備し、運転席にはデッドマン装置を搭載する他、車外スピーカーや乗降促進ブザーも製造当初から設置している。動力面ではほぼ0km/hまで電力回生ブレーキが作動する純電気ブレーキを採用している。また、起動加速度も東西線との相互直通協定により3.3km/h/sとなっていることから、これに対応する出力・粘着力確保のため電動車比率を高く取っている(MT比6M4T)。自動放送はJRと東京メトロの両方に対応しており、東京メトロ線内では東京メトロ仕様の自動放送が放送される。なお、東西線と相互直通乗り入れを行っている東葉高速鉄道東葉高速線への乗り入れは行われていない。
また、モハE231形800番台には高尾駅以西の中央東線の狭小トンネルへも入線が可能であることを示す◆マークが付いている。営業運転を開始する直前の2003年4月には、第4編成が性能試験として三鷹駅~甲府駅~塩山駅~甲府駅~三鷹駅間を実際に走行している。
側面のLED表示器は、行先と路線名を交互に表示するが、東西線、中央・総武緩行線走行中も路線名の表示は「地下鉄東西線直通」のままである。また、車内表示器の「地下鉄東西線直通」は東西線に入る前のJR線内及び中野駅・西船橋駅停車中のみ表示される。車内表示器は行先も表示されるが、同線内の駅ナンバリングに対応していない他、同線内の自動放送は東京メトロ05系・07系とは違った内容になっている点などが特徴になっている。その他、列車番号表示器の表示はJR線内が列車番号をフル表示し、末尾のアルファベットは快速がA、普通はYである(例:500A…01K運用の午前5時台発東西線内快速列車)。対して東西線内は運用番号である○○K(01Kなど)となり、中野と西船橋で切り替える。営業開始直後の2003年5月には東西線内でもJR方式の表示が見られたことがあったが、現在では運用番号に統一されている。
この800番台ではJR東日本の一般形電車として初めて貫通扉がオートクローズ式に変更され、2003年以降に製造される他番台にも普及していくことになる。
三鷹電車区のE231系の編成としては、中央・総武緩行線用の編成と東西線直通用の編成の番号は共に「ミツ1」~で表示するため、そのままでは運用の区別ができないので、「ミツ」とは別に運用記号で中央・総武緩行線用が「B編成」、東西線直通用が「K編成」として管理されている。
[編集] 近郊タイプ
[編集] 概説
2000年6月から小山電車区(現・小山車両センター)に配置され、東北本線の上野~黒磯間(宇都宮線区間に相当)の普通・快速列車で営業運転を開始した。2001年からは高崎線の普通・快速列車でも運用を開始し、12月の湘南新宿ラインの運転開始とともに同線や横須賀線にも運用を拡大した。2004年10月16日のダイヤ改正で同センターの115系の置き換えを完了させた。
2004年からは国府津車両センターへの配置が始まり、10月より湘南新宿ライン及び東海道本線(東京~沼津)の普通・快速列車で運用を開始した。2006年3月18日のダイヤ改正で同センターの113系を完全に置き換えた。
車体の帯の色:(新)湘南色 上■、下■
通勤タイプと比較して、近郊タイプの特徴として以下の点が挙げられる。
- VVVFインバータ装置には日立製作所製の2レベルIGBT素子を採用しており、低速から中速域に加速する際に「電動機及びインバータ装置から発する変調音が一旦下がる」という独特の特徴を持つ。media:E231.ogg
- 先頭車両の運転台スペースは、踏切における衝突事故対策として前後が大型化ならびに高床化されている。
- 前面上部にはHID方式の前照灯を採用し、遠方からの視認性を向上させている。
- 湘南新宿ラインや、2011年に予定されている東海道本線~宇都宮線・高崎線の直通運転によって関東全域での運用が組まれるため、全車が寒冷地仕様となっており、客用扉はドア横にドア開閉ボタンを設置し、半自動扱いにも対応している。2007年初頭から、ドアに半自動ドアの扱いを表記したステッカーを順次貼付している。
- ドアエンジンにはリニアモーター駆動式が採用されている。
- 2003年度投入車からラジオノイズ対策が施された(SC59→SC77)。
国府津車両センター配備編成には以下の特徴がある(小山車両センターの初期配備編成との比較)。
- 運転台の速度計と圧力計が液晶モニター化された(グラスコックピット)。
- 車内ドア上のLED表示器が従来の1段式から2段式に変更された。但しK-02~42編成の6・7号車は小山車を転用したため1段式である。
- 2段式LED表示器の下段には列車運行情報やお知らせなどを表示する。順番は運行情報→運行路線→携帯電話→テロ対策である。運行情報がない場合は運行路線から表示する。また新たな列車運行情報が入電した時はアラート音が鳴る(始発駅発車時に列車運行情報が入電されている場合は発車時に鳴る)。この表示器はJR東海区間である熱海~沼津間でも作動するが、この区間では「この電車は東海道線です」と輸送障害時の運行情報(JR東日本関東地区及び新幹線)のみとなり、携帯電話とテロ対策は非表示となる。
- 駅に停車中の表示は、1段式の場合は駅名(漢字)が点滅するだけであるのに対し、2段式(K-02~42編成の6・7号車(1段式)も含む)では、駅名が漢字と英字で交互に表示されるようになった。
- 運行路線は、普通列車の場合、原則として「この電車は東海道線です」や「この電車は高崎線です」など線名のみで、さらに伊東線直通であっても「東海道伊東線」とは表示されず「東海道線」のみであるが、1本のみ存在する沼津・山北行は「この電車は東海道線沼津(山北)行と山北(沼津)行(表示する車両の実際の行先が先)です」「この車両は沼津/山北行き(実際の行先)です」となる。また途中駅で切り離しの場合は終点の後にこの車両の行先が出る(例:「この電車は東海道線伊東行きです」「この車両は国府津止まりです」など)。快速の場合は路線名+種別(+愛称)となる。
- 走行中の行先表示の方法が「○○行」(+英語表示)となった(例:小田原行→For Odawara)。小山所属車は登場時に「行先は○○」と表示され、一時期「○○行」と表示していた車両も存在していたが、2004年10月のダイヤ改正以降は英字表記も省略されている(後期製造分は国府津車と同じく「○○行」→「For ○○」(英語表記)と表示される)。
- 自動放送装置の設置(グリーン車組み込みと同時に小山所属車にも設置)
- 車内ドア上へのドアランプの設置(開閉時に赤いランプが点滅)
- 車外スピーカー設置スペースの確保
- UV(紫外線)+IR(赤外線)カットガラスを使用(但し小山車はUVカットガラス)
- 基本編成のセミクロスシート車の増加(1・2・9・10号車。但し小山車は1・2号車。)
- 基本編成普通車のトイレ位置は1・10号車(但し小山車は1・6号車)
- 電動車の位置は2・3・8・9号車(但し小山車は2・3・7・8号車)
- 普通車の冷房装置能力を48.8kW(42,000kcal/h)から58.1kW(50,000kcal/h)へ強化
- 小山車両センターに先行投入された初期車に関しては、リサイクル性の向上を狙った設計の座席を採用したが、そのクッションが硬く「座り心地が悪い」と不評だったため、それを受けて500番台以降と同等のクッション改良を施した座席に変更し、この国府津向けでは東急5000系と共通の「Sバネを使用した軟らかめの座席」を採用した。その後、小山所属の初期投入分の車両にも改良型と同等の座席に交換を行ったものが存在している。
- 2005年の新津車両製作所製の車両からは、前部スカートの形状が角度のあるものに変更
- 2005年度に新製された編成には、車内の補助送風機カバーにE531系に準じた金属製のものを採用
- 台車はヨーダンパ取り付け準備工事済み
既存の小山車両センター基本編成へのグリーン車組み込みと国府津車両センターへの新造配備は同時期に行われた。つまり、小山車両センター基本編成の4・5号車には既に組み込まれていたサハE231形1000番台に代えて新造されたダブルデッカーグリーン車2両が組み込まれた。ここで捻出された小山車サハE231形1000番台は国府津車両センター向けに新造されたE231系基本編成(1編成8両)の6・7号車として充当された。なお、既に配備されていた国府津K-01編成は、1編成10両の全車が新造されていたことから、国府津車仕様である。
2006年3月に国府津車両センターへの配備が完了した。当初はここで近郊タイプの新造を終了する予定だったが、同時期に上野駅発着の宇都宮線・高崎線のすべての中距離列車にグリーン車が組み込まれるとの発表と前後して、2~6月に再び小山車両センター向けに新造配備が行われた。新造車の基本編成には当初からグリーン車が組み込まれ、付属編成には11~15号車のステッカーを貼付した。車内仕様は2段式LED表示装置、グラスコックピットなど国府津車両センター配置車に準ずるものとなっているが、編成中のロングシート・セミクロスシート車両の構成、編成内トイレ位置などは従来の小山車仕様となっている。
[編集] 所属車両基地と運用路線
[編集] 小山車両センター
- 2007年1月現在、宇都宮線・高崎線(籠原以北の付属編成の運用はない)・上越線・両毛線(高崎~新前橋~前橋間、付属編成の運用はない)の普通・快速列車、湘南新宿ラインの横須賀線~宇都宮線系統及び横須賀線の一部の普通列車(大船発逗子行3835M・逗子発大船行3832M)に用いられている。
- 2000年~2003年に基本編成(U編成)41本410両と付属編成(U編成)28本140両の合計550両が配置された。当初は全車が普通車であったが、宇都宮線・高崎線へのグリーン車導入に伴い2004年~2005年にすべての基本編成に2階建てグリーン車2両が組み込まれ、従来の普通車は国府津へ転属となった。その後、上野駅発着の宇都宮線・高崎線のすべての中距離列車にグリーン車が組み込まれるとの発表と前後して2006年2~6月に基本編成8本80両と付属編成6本30両の計110両が追加投入され、7月8日のダイヤ改正で高崎車両センター所属の211系運用の一部を置き換え、上野駅発着の宇都宮線・高崎線のすべての中距離列車にグリーン車が連結された。また、今回改正で日中の15両運用が大幅に増加した。これは、基本編成のみの10両編成にすると、普通車がそれまでの10両から8両に減ってしまい、普通車の混雑がひどくなってしまうためである。さらに、これに合わせて石橋駅・自治医大駅・雀宮駅のホームが15両対応に延伸され、15両編成が宇都宮駅まで運用できるようになった。また、2007年3月下旬には、15両編成の運用増加に伴い、新たに東急車輛よりU-118編成が新造された。
- 2007年3月現在の配置数は、基本編成(U編成)49本490両と付属編成(U編成)35本175両の合計665両である。
[編集] 国府津車両センター
- 2007年1月現在、東海道本線(東京~沼津間)・伊東線・御殿場線(国府津~山北間)の普通・快速列車、高崎線(籠原以北の付属編成の運用はない)・上越線・両毛線(高崎~新前橋~前橋間)の一部普通列車、湘南新宿ラインの東海道本線~高崎線系統に用いられている。
- 2004年~2006年に基本編成(K編成)42本420両と付属編成(S編成)34本170両の計590両が配置された。この中には東海旅客鉄道(JR東海)所属の113系のうち東京~熱海間に乗り入れていた編成(静岡車両区所属のT編成)の置き換え分も含まれている。
[編集] グリーン車
- すべての基本編成には4・5号車にグリーン車が連結されている。
- 小山車両センター配置車両には導入当初グリーン車が組み込まれていなかったが、2004年10月16日ダイヤ改正からの宇都宮線・高崎線の一部列車並びに湘南新宿ライン全列車へのグリーン車導入のため、7月1日から順次基本編成への組み込みが行われた。組成開始からダイヤ改正によるグリーン車サービス開始までの期間、宇都宮線と高崎線ではグリーン車車両を普通車扱いとして運転し、「ただいまこの車両は普通車です」と書かれたステッカーが貼付された。なお、国府津車両センター配置車両並びに小山車両センター配置追加投入車には、製造当初よりグリーン車が連結されている。
- 宇都宮線・高崎線・湘南新宿ラインでは、グリーン車導入と同時にグリーン車Suicaシステムとグリーンアテンダントによるサービスが導入され、グリーン車の各座席の天井部にはSuicaをタッチするための装置(R/W(リーダ/ライタ))が取り付けられ、またコーヒーメーカーなどの車内販売の設備も設置されている。その後、東海道本線の東京方面発着列車では2006年3月18日のダイヤ改正からグリーン車Suicaシステムが導入され、また宇都宮線の宇都宮~黒磯間の列車にもグリーン車を連結した編成の運用が開始された。
- グリーン車の仕様は小山・国府津所属車でほぼ同一であり、ドア開閉ランプやVIS装置も設置されている。そのため、小山車であってもグリーン車車内のLED表示器はすべて2段となっており、運行情報を流すことが可能である。
[編集] 行先表示
- 通勤タイプと同様に路線名と交互に表記されるが、複数の路線を直通する場合は同時に表示される(例:東海道線・伊東線方面行→東海道伊東線、東海道線・御殿場線方面行→東海道御殿場線、高崎線・上越線・両毛線方面行→高崎・両毛線)。各線とも逆方向(上り)は「東海道線」「高崎線」(湘南新宿ライン直通列車のみ)と表示する。但し、宇都宮線・高崎線の上り上野行は路線表記はなく「上野」のみ表示されている。その他に以前は、113系・115系・211系に合わせる形で「宇都宮日光線」「高崎・信越線」「高崎・上越線」「高崎・吾妻線」の主要駅、「伊豆急下田」「伊豆高原」(以上伊豆急行線)、「三峰口」(秩父鉄道秩父本線)、「島田」「静岡」(以上JR東海エリア)などもあったが、湘南新宿ライン特別快速など系統を増やした際に消去している。この時点で宇都宮線・高崎線で運用されている211系に存在した「赤羽」や高崎線の「熊谷」が同時に消去され、以前はなかった同線の「鴻巣」が加えられている。2007年時点での最西端は「沼津」、最南端は「伊東」、最北端は「前橋」(高崎・両毛線側)と「黒磯」(宇都宮線側)である。
- JR東海管内の駅表示は、先述の「沼津」か、御殿場線については国府津~山北間のみの運用のため「御殿場線国府津」「御殿場線山北」「東海道御殿場線山北」の表示のみとなっている。
[編集] 自動放送
自動放送は英語対応で、分割案内や伊東線と御殿場線、東海道線の沼津~熱海の案内も入っている。案内は駅によって異なり、始発駅や主要駅などは路線名や種別などが放送される。普通は「次は○○です。」の放送と駅が近づくと「まもなく○○~○○~ お出口は(右or左)側です」と自動放送される。ちなみに、山手線のE231系は、「次は○○です。」だけである。乗り換え案内などは設定により省くこともできる(この設定は主に朝夕ラッシュ時に使われる)。また急停車放送もある。
[編集] 番台区分
- 寒地仕様…+1000
- 座席の形態:ロングシート車…+0、セミクロスシート車…+2000
- 運転台タイプ:衝撃吸収構造(先頭車)…+5000
- トイレの有無(中間普通車):トイレなし…+0、トイレあり…+5000
- 各車で座席形態の違う電動車ユニット:+500
※ +5000は両方搭載されている場合でも+5000とする。
例: 小山車上野方先頭車:トイレ付先頭車(+5000)+セミクロス(+2000)+寒地(+1000) =8000番台
2号車:セミクロス(+2000)+寒地(+1000)+電動車でユニット先の3号車がロング(+500) =3500番台
3号車:ロングシート(+0)+寒地(+1000)+電動車でユニット先の2号車がセミクロス(+500) =1500番台
[編集] 関連商品
Nゲージ鉄道模型はマイクロエースが最初に商品化した。2006年現在はトミーテック(TOMIX)・関水金属(KATO)・マイクロエースの3社が製品化している。製品内容は各社で異なっている。
- 通勤タイプ
- 中央・総武緩行線及び常磐快速・成田線 - KATO以外
- 500番台 - 3社すべて
- 800番台 - 製品なし
- 近郊タイプ
- 小山車両センター・国府津車両センターとも3社すべて
近郊タイプでも2005年度以降の新製分をモデルとする商品は2007年時点では出ていない。
[編集] 関連項目
- JR東日本の在来線電車 (■国鉄引継車を含む全一覧 / ■カテゴリ) ■Template ■ノート