高山本線
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高山本線(たかやまほんせん)は、岐阜県岐阜市の岐阜駅から高山駅、猪谷駅を経て富山県富山市の富山駅に至る鉄道路線(地方交通線)である。岐阜~猪谷間は東海旅客鉄道(JR東海)、猪谷~富山間は西日本旅客鉄道(JR西日本)の管轄となっている。
目次 |
[編集] 路線データ
- 管轄・路線距離(営業キロ):全長225.8km
- 軌間:1067mm
- 駅数:45駅(JR東海36駅、JR西日本9駅。起終点駅含む、JR東海は猪谷駅除く)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:なし(全線非電化)
- 閉塞方式:単線自動閉塞式(岐阜~猪谷間)、自動閉塞式(特殊)(猪谷~富山間)
- 運転指令所:
- 岐阜~猪谷間 東海総合指令所
- 猪谷~富山間 金沢総合指令所
※岐阜~猪谷間は東海旅客鉄道東海鉄道事業本部直轄、猪谷~富山間は西日本旅客鉄道金沢支社富山鉄道部の管轄(ただし富山駅構内のみ支社直轄)である。会社境界である猪谷駅は西日本旅客鉄道側が管理する。
[編集] 概要
飛騨高地の山間を縫って中京と北陸を結んでいるが、山間部或いは盆地である岐阜県飛騨地方へのアクセス路線としてや、沿線にある下呂温泉や飛騨の小京都高山市への観光路線としての性格が強い。久々野駅以南は木曽川・飛騨川、高山盆地南端の飛騨一ノ宮駅以北は宮川・神通川にほぼ沿って路線が走っており、日本ラインや飛水峡、中山七里など車窓からの見所も多い。なお、これらは飛騨木曽川国定公園に指定されている。
概ね国道41号のルートに沿っているが、飛騨細江駅(飛騨市)~猪谷駅(富山市)間で、国道41号が数河峠を越える越中東街道を通っているのに対し、高山本線は急勾配を避けるために宮川の流れに沿った越中西街道(国道471号、国道360号)を通っている。
国鉄時代の早い時期から、列車行き違い設備の増設やCTCの導入といった輸送近代化が行われ、列車の増発が可能になった。その後、JRに移行後は、岐阜~高山間において、行き違い可能駅で両開き分岐器(Y字ポイント)を高速通過 (110km/h) 可能な型に取り換えるなど、優等列車の高速運転が行えるように改良が行われている。なお、当線では、両開き分岐器の改良を行ったため、通過列車でも駅構内は上下別線運行となっており、他線で見られる一線スルー化は、開業当初からの蘇原駅を除いて見られない。
かつて電化計画もあり、1980年5月に着工されたが、需要減や国鉄の財政逼迫から後に中止され実現に至っていない(電化時には特急列車への381系振り子式車両の導入が計画されていた)。しかし、JR移行後の新型車両の導入により、特急列車に関しては従来の電車特急と同等に近い性能となり、高山以南では所要時間から見ると電化された場合と遜色はなくなっている。
名古屋など東海道本線木曽川駅以南の各駅と富山など北陸本線福岡駅以東の各駅との距離は、米原経由よりも高山本線経由のほうが短い。しかし、東海道新幹線が米原経由になり、あわせて北陸トンネル開通はじめ北陸本線の近代化が実現し、所要時間や列車の利便性において北陸本線に優位を譲っている。なお北陸本線の電化区間が富山まで達する前の1963年までは、大阪方面からも距離は長くなるが岐阜駅で列車を乗り継ぎ高山本線経由で行くほうが富山までの所要時間が短かったことがあった。
岐阜~鵜沼間は、名鉄各務原線と並行して走っている。同区間の距離における地方交通線の運賃表は200円区間を除き幹線と同一料率であり、名鉄より運賃が安くなっている(2006年現在)。
2014年度の北陸新幹線長野~金沢間の開業により、北陸本線金沢~直江津間は枝線を含めて経営分離されることが確定しているが、本路線のJR西日本区間の扱いはまだ決まっていない。
[編集] 運行形態
[編集] 優等列車
名古屋~高山・飛騨古川・富山間、大阪~高山間に特急「ワイドビューひだ」が運転されている。うち1往復の大阪~高山間の列車は岐阜~高山間で名古屋発着列車と併結運転を行っている。車両は名古屋車両区(愛知県名古屋市中村区)所属のキハ85系気動車を使用している。
2001年までは、鵜沼~高山間では、名古屋鉄道神宮前駅からの特急「北アルプス」が運転されていた。「北アルプス」は一時期、富山までや、富山からさらに富山地方鉄道に乗り入れて立山駅まで運転されていたこともある。車両は1991年までは名鉄キハ8000系気動車、同年からは名鉄キハ8500系気動車が使用された。
またかつては、名古屋発着の急行「のりくら」が1990年まで、大阪発着の「たかやま」が1999年まで運転されていたほか、名古屋~高山~富山~金沢~名古屋間に循環急行「しろがね」「こがね」が1972年まで運転されていた。また越美南線(現・長良川鉄道)北濃に直通する急行「おくみの」が名古屋~美濃太田間で「のりくら」に併結されて運転されていたが、「おくみの」は1982年のダイヤ改正で廃止された。
これらの急行列車は、キハ58系気動車で運行され、名古屋第1機関区(現・名古屋車両区)と美濃太田機関区(現・美濃太田車両区)所属の車両が使用された。その後には「のりくら」は名古屋車両区所属の車両のみで運行され、「たかやま」は向日町運転所(現・京都総合運転所)が受け持つようになった。「たかやま」は晩年にはアコモ改造された専用車両が投入された。
また、「のりくら」などで使用されたキロ28形グリーン気動車1両(2303号車)が、今もJR東海・名古屋車両区に保留車として留置されている。
[編集] 地域輸送
普通列車は概ね、高山駅・猪谷駅で運転系統が分かれており、全線を通しての運転はないが岐阜~猪谷間を通して走る列車はある。岐阜~美濃太田間は太多線の列車が乗り入れるため本数が多い。高山~飛騨古川間、越中八尾~富山間には区間運転列車もある。1~4両編成で運行している。全線で主に通勤時間帯以外においてワンマン運転が行われている。 2006年10月21日からは、富山市が主体となって富山駅~猪谷駅間で社会実験として列車の増発が行われている。この増発で、朝夕は富山駅~越中八尾駅間が上下毎時2本ずつ、越中八尾駅~猪谷駅間が上下毎時1本ずつ、日中でもほぼ上下毎時1本ずつの運行体制となった。この社会実験は2008年3月まで行われる。
[編集] 歴史
[編集] 概略
高山本線は南側は高山線、北側は飛越線として建設が進められた。高山線は1920年に岐阜~各務ヶ原間が最初に開業したのち、飛騨小坂駅には1933年に達した。
飛越線は1927年に富山~越中八尾間が最初に開業。こちらも順次延伸され1933年に坂上駅に達した。残る飛騨小坂~高山~坂上間が開業し高山本線が全通したのは翌1934年である。
[編集] 年表
[編集] 岐阜~飛騨小坂間
- 1920年(大正9年)11月1日 - 高山線として岐阜~各務ヶ原間が開通。長森駅、那加駅、各務原駅開業。
- 1921年(大正10年)11月12日 - 各務ヶ原~美濃太田間が開通。鵜沼駅、坂祝駅、美濃太田駅開業。
- 1922年(大正11年)11月25日 - 美濃太田~下麻生間が開通。古井駅、中川辺駅、下麻生駅開業。
- 1924年(大正13年)3月20日 - 下麻生~上麻生間が開通。上麻生駅開業。
- 1926年(大正15年)3月15日 - 上麻生~白川口間が開通。白川口駅開業。
- 1928年(昭和3年)3月21日 - 白川口~飛騨金山間が開通。下油井駅、飛騨金山駅開業。
- 1929年(昭和4年)4月14日 - 飛騨金山~焼石間が開通。焼石駅開業。
- 1930年(昭和5年)11月2日 - 焼石~下呂間が開通し、岐阜~下呂間開通。下呂駅開業。
- 1931年(昭和6年)5月9日 - 下呂~飛騨萩原間が開通。禅昌寺駅、飛騨萩原駅開業。
- 1933年(昭和8年)8月25日 - 飛騨萩原~飛騨小坂間が開通。上呂駅、飛騨小坂駅開業。
[編集] 飛騨小坂~富山間
- 1927年(昭和2年)9月1日 - 飛越線として越中八尾~富山間が開通。越中八尾駅、速星駅、千里駅、西富山駅開業。
- 1929年(昭和4年)10月1日 - 笹津~越中八尾間が開業。笹津駅開業。
- 1930年(昭和5年)11月27日 - 猪谷~笹津間が開通。猪谷駅、楡原駅開業。
- 1932年(昭和7年)8月20日 - 杉原~猪谷間が開通。杉原駅開業。
- 1933年(昭和8年)11月12日 - 坂上~杉原間が開通。坂上駅、打保駅開業。
- 1934年(昭和9年)10月25日 - 飛騨小坂~坂上間が開通し全通。高山線が飛越線を編入し、岐阜~富山間が高山本線となる。渚駅、久々野駅、飛騨一ノ宮駅、高山駅、上枝駅、飛騨国府駅、飛騨古川駅、飛騨細江駅、角川駅開業。
[編集] 全通後
- 1942年(昭和17年)6月1日 - 蘇原駅開業。
- 1945年(昭和20年)1月10日 - 飛騨金山~焼石間の橋梁で下り旅客列車の客車2両が脱線し益田川に転落。43人死亡。高山線列車脱線事故参照。
- 1952年(昭和27年)8月5日 - 焼石~下呂間に少ヶ野信号場を開設。
- 12月25日 - (仮)杉崎駅開業。
- 1953年(昭和28年)4月1日 - 少ヶ野信号場を駅に格上げし(貨)少ヶ野駅開業。
- 1955年(昭和30年)10月1日 - 飛騨宮田駅開業。
- 10月15日 - (仮)杉崎駅を正式な駅に格上げし杉崎駅開業。
- 1956年(昭和31年)6月1日 - 東八尾駅開業。
- 1965年(昭和40年)8月5日 - 名鉄から乗り入れる準急「たかやま」運転開始(1966年急行格上げ)。
- 1967年(昭和42年)3月19日 - 白川口~下油井間に鷲原信号場開設。
- 1968年(昭和43年)8月18日 - 集中豪雨により上麻生~白川口間が被害を受け、9月12日まで不通(付近では飛騨川バス転落事故が発生)。
- 1969年(昭和44年)10月1日 - 高山~富山間にCTCを導入。無煙化(高山駅にてさよならSLのセレモニーが行われる)。
- 1970年(昭和45年)7月15日 - 名鉄から乗り入れる急行「たかやま」が特急「北アルプス」に格上げ。
- 1972年(昭和47年)3月15日 - 大阪~高山間の急行「たかやま」が定期化。
- 1973年(昭和48年)4月20日 - (貨)少ヶ野駅廃止。少ヶ野信号場に格下げ。
- 1980年(昭和55年)5月27日 - 高山駅構内にて電化起工式が行われるが、結局工事は中断し、そのまま中止になる。
- 1984年(昭和59年)2月1日 - 国鉄合理化のため夜行の急行「のりくら」が廃止。
- 1987年(昭和62年)4月1日 - 国鉄分割民営化により東海旅客鉄道が岐阜~猪谷間、西日本旅客鉄道が猪谷~富山間の第一種鉄道事業者に、日本貨物鉄道が岐阜~高山間、猪谷~富山間の第二種鉄道事業者となる。
- 1990年(平成2年)3月10日 - 岐阜~美濃太田間でワンマン運転開始。急行「のりくら」廃止。
- 1992年(平成4年)3月14日 - 猪谷~富山間でワンマン運転開始。
- 1994年(平成6年)10月25日 - 高山本線60周年記念式典が行われ、イベント列車が走る。キハ82系によるメモリアルひだ号と飛越線60周年記念による鋼板客車列車が走る。12月中旬には高山~飛騨古川間にて1日2往復SLが走る。
- 1996年(平成8年)6月26日 - 特急「ひだ15号」が下呂駅南約3キロ地点の三原トンネル出口にて大雨により落下した岩石に衝突する事故が発生。5両編成中先頭の2両が脱線。負傷者16人。
- 1997年(平成9年)3月22日 - 坂祝~飛騨一ノ宮間の貨物列車設定廃止。
- 1999年(平成11年)12月4日 - 美濃太田~高山間でワンマン運転開始。急行「たかやま」を廃止し大阪発着の特急「ひだ」新設。
- 2001年(平成13年)10月1日 - 名鉄から乗り入れる特急「北アルプス」廃止。
- 2003年(平成15年)10月1日 - 高山~猪谷間でワンマン運転開始。
- 2004年(平成16年)10月22日 - 岐阜県飛騨市宮川で台風23号の大雨で線路や鉄橋が流失し、高山~猪谷間が不通になる。
- 11月18日 - 高山~飛騨古川間運行再開。
- 2005年(平成17年)10月1日 - 飛騨古川~角川間運行再開。
- 2007年(平成19年)3月17日 - 岐阜~坂祝間の貨物列車の最終運行日。
[編集] 列車の沿革
高山本線の詳細な列車の沿革は以下の項目を参照されたい。
- ひだ (列車)#高山本線優等列車沿革 - ひだ、こがね、しろがね、たかやま、おくみの、りんどう、加越、のりくら、くろゆり、うなづき、むろどう など。
- 名鉄特急#高山本線直通気動車列車「たかやま」・「北アルプス」 - たかやま、北アルプス など。
[編集] 2004年の水害による運行状況
2004年10月に発生した水害により、高山(同年11月18日からは飛騨古川)~飛騨細江・猪谷間で、代行バスによる運行が行われている。2005年2月28日までは、飛騨細江~猪谷間は1日2往復の運行となっており、さらに国道41号を経由するため、角川~杉原間の各駅には停車しなかったが、国道360号の仮復旧で2005年3月1日から1日7往復となり、角川~杉原間の各駅にも停車するようになった。
なお、JR東海は2005年4月下旬より復旧工事に着手。2005年10月1日の秋のダイヤ改正時に、飛騨古川~角川間が復旧した。残りの角川~猪谷間の復旧は2007年秋頃を目指している。工事費は約60億円。 2006年11月現在では、普通列車は角川駅・猪谷駅で折り返し、特急「ひだ」は飛騨古川~富山間を運休として飛騨古川駅での折り返し運転になっている。
[編集] 駅一覧
- 普通列車は各駅に停車。但し、岐阜駅発高山駅行きの最終列車と高山駅発岐阜駅行きの始発列車は禅昌寺駅、上呂駅、飛騨宮田駅、渚駅、飛騨一ノ宮駅を通過する。
- 優等列車については列車記事(ひだ)を参照のこと。
管轄会社 | 駅名 | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|
東海旅客鉄道 | 岐阜駅 | 0.0 | 東海旅客鉄道:東海道本線 名古屋鉄道:名古屋本線・各務原線(名鉄岐阜駅) |
岐阜県 | 岐阜市 |
長森駅 | 4.2 | ||||
那加駅 | 7.2 | 各務原市 | |||
蘇原駅 | 10.4 | ||||
各務ヶ原駅 | 13.2 | ||||
鵜沼駅 | 17.3 | 名古屋鉄道:犬山線・各務原線(新鵜沼駅) | |||
坂祝駅 | 22.5 | 加茂郡坂祝町 | |||
美濃太田駅 | 27.3 | 東海旅客鉄道:太多線 長良川鉄道:越美南線 |
美濃加茂市 | ||
古井駅 | 30.3 | ||||
中川辺駅 | 34.1 | 加茂郡川辺町 | |||
下麻生駅 | 37.9 | ||||
上麻生駅 | 43.2 | 加茂郡七宗町 | |||
飛水峡信号場 | (45.9) | ||||
白川口駅 | 53.1 | 加茂郡白川町 | |||
鷲原信号場 | (56.5) | ||||
下油井駅 | 61.7 | ||||
飛騨金山駅 | 66.7 | 下呂市 | |||
福来信号場 | (69.4) | ||||
焼石駅 | 75.7 | ||||
少ヶ野信号場 | (86.6) | ||||
下呂駅 | 88.3 | ||||
禅昌寺駅 | 93.5 | ||||
飛騨萩原駅 | 96.7 | ||||
上呂駅 | 100.8 | ||||
飛騨宮田駅 | 105.4 | ||||
飛騨小坂駅 | 108.8 | ||||
渚駅 | 115.9 | 高山市 | |||
久々野駅 | 123.2 | ||||
飛騨一ノ宮駅 | 129.5 | ||||
高山駅 | 136.4 | ||||
上枝駅 | 141.0 | ||||
飛騨国府駅 | 147.6 | ||||
飛騨古川駅 | 151.3 | 飛騨市 | |||
杉崎駅 | 153.6 | ||||
飛騨細江駅 | 156.0 | ||||
角川駅 | 161.7 | ||||
坂上駅 | 166.6 | ||||
打保駅 | 176.5 | ||||
杉原駅 | 180.5 | ||||
猪谷駅 | 189.2 | 富山県富山市 | |||
西日本旅客鉄道 | |||||
楡原駅 | 196.2 | ||||
笹津駅 | 200.5 | ||||
東八尾駅 | 205.0 | ||||
越中八尾駅 | 208.7 | ||||
千里駅 | 213.6 | ||||
速星駅 | 217.9 | ||||
西富山駅 | 222.2 | ||||
富山駅 | 225.8 | 西日本旅客鉄道:北陸本線 富山地方鉄道:本線(電鉄富山駅)、富山市内軌道線(富山駅前駅) 富山ライトレール:富山港線(富山駅北駅) |
- 凡例
- 背景が灰色の区間は運休中(上記参照)。