TOICA
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TOICA(トイカ)とは、東海旅客鉄道(JR東海)で2006年11月25日に導入された非接触型ICカード技術によるカード式乗車券の愛称である。「TOkai Ic CArd」(東海ICカード)の頭文字から採用され、2006年8月18日より同社の登録商標となっている。
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[編集] 概要
JR東海の利用時(当初は在来線のみ)、旅客がカード(財布や定期入れに入れたままでよい)を自動改札機の読み取り部に軽く触れるだけで通過できる。旅客はあらかじめチャージ(入金)しておくだけで都度乗車券の購入・乗り越し精算を行う必要がなく、財布などから定期券やカードを出す手間も省ける。
一方事業者側は利用促進に加え、同一カードの利用履歴(および記名式カードについては旅客属性)を集積できるほか、乗車券の発売回数を減らし、券片を取り込む改札機の処理動作を省略できるなど、戦略的な情報収集やシステムの稼動・保守費用縮減の効果を期待している。
先行して導入していた東日本旅客鉄道(JR東日本)のSuicaや西日本旅客鉄道(JR西日本)のICOCAと同様にソニーのFeliCa技術を採用し、サイバネティクス協議会規格にも準拠している。
[編集] 券種
区間のない前払い式普通券タイプの「TOICA」(以下本記事において便宜的に「普通券タイプ」と呼ぶ)と、TOICAに定期券機能が加わった「TOICA定期券」があり、それぞれ大人用・小児用が用意される。TOICA定期券および普通券タイプの小児用TOICAは記名式である。
- 小児用TOICA(入金残高の部分)には小学校卒業年の3月31日が有効期限として設定され、有効期限経過後は入金残高を利用できない。この場合、入金残高は身分証明書により本人(または代理人)である証明を行った上で、無手数料で払い戻しを受けられる。
[編集] デポジット(預託金)
カード発行時にはデポジットと呼ばれる500円の預託金を支払う必要があるが、預託金はカードを返却することで無手数料返金される。TOICAの使用時、預託金部分は運賃に充当できない。
- なお入金した残高部分の払い戻し時には手数料210円が必要となるが、残高が210円を下回っている場合、手数料は当該残高が限度となる。
- このため、残高が210円以下のTOICAの不要返却時、返金額は一律500円となる。また残額のないTOICAも返却でき、返金額は同様に500円である(最後の交換・乗車・支払い・入金・定期券更新利用時から10年以内に限る)。
[編集] TOICA定期券切り替え
TOICA定期券とTOICA(普通券タイプ)の券片は共通であり(記念乗車券である普通券タイプのTOICAを除く)、
- 定期券購入時に、既に購入したTOICAを提出してそのままTOICA定期券に切り替える(入金残高を引き継ぐ)。
- TOICA定期券の通用期間終了後にTOICA(普通券タイプ)に切り替える(同上)。
各取り扱いも可能である。手数料は無料である。
[編集] TOICA定期券の紛失再発行
定期券が有効期限内のTOICA定期券、また期限後となったTOICA定期券を普通券タイプのTOICAに切り替えなかった場合は、同様に次の取り扱いとなる。
- 入金残高を使用した乗車や券類の購入も記名式となり、記名した本人のみ利用できる。
- 紛失した場合、記名人に対して申し出時点の入金残高を引き継いだ再発行を取り扱う。
- この場合記名人や購入時期、区間により紛失券の特定を行うが、あらかじめ裏面にある「JC~」から始まる券番を控えておくと、カードをよりすばやく特定できるため役立つ。
- 紛失により再発行する際旅客が支払わなければならない金額は、手数料500円・新カードの預託金500円の計1,000円である。手数料・預託金の支払いは現金に限られる。
- 紛失したTOICA定期券が後日発見された場合、預託金500円は返金されるが、再発行の取り消しはできず、手数料の返金もない。
[編集] デザイン
券面は銀色に水色の2色の配色で、右下にTOICAのロゴがある。波状の塗り分け線は東海の海岸線をモチーフにしている。
公式キャラクターは「ひよこ」。キャラクターデザインを手がけたのは大野真弓である。
[編集] 利用方法
[編集] 発売額
TOICA(普通券タイプ) 無記名式・小児用の2種類があり、発売額はどちらも預託金500円を含む2,000円である。購入時に1,500円分乗車できる「SF」(入金額に相当する金銭的価値のこと。「ストアード・フェア」の頭文字から)が付いている。
TOICA定期券 大人用・小児用とも取り扱い、新たにTOICAの発行を受ける場合の発売額は、定期運賃に預託金500円を加えた額となる。次回以降(または既にTOICA(普通券タイプ)を持っている場合)は、既にある券片を書き換えて繰り返し利用できる。
- 発売時にSFの設定額はなく、あらかじめ別にチャージ(後述)することでTOICA(普通券タイプ)の機能を一緒に利用でき、あわせて定期券の区間外となる乗車を下車駅の改札機で自動精算するなどの利用ができる。
- 定期券区間と定期券区間外とに跨がって乗車した場合、定期券を併用した場合と併用しない場合とを比べて、より安い方の運賃を下車駅の改札時に自動的に判定して精算される。
[編集] チャージ(入金)
TOICAにはいつでも、チャージ(入金し、SF残高の補充を行うこと)ができる。取り扱いは自動券売機、自動精算機、専用入金機、マルスで行い、1,000円単位で何度でも、1枚につき残高が20,000円に達するまで可能である。
- 乗り越し精算時に残高が不足した際に、不足額のみを現金で支払いたい場合は有人改札での取り扱いとなる。
- チャージ専用入金機でチャージする場合は、画面下のポケットにカードを投入し、紙幣を投入してから金額指定ボタンを押すとポケットが一旦閉まり、チャージが完了するとポケットが再び開く。(履歴表示・履歴印字の場合はポケットが閉まらない)
[編集] 改札
自動改札機の乗車券投入口の上にある読み取り部にTOICAをタッチすると、信号音(ピッという音)が鳴ると共に自動改札機の扉が開き、通過できるようになる(一部の駅には扉のない自動改札機が設置される)。無人駅にもICカード専用の自動改札機が設置され、同様にタッチする事で、扉のある自動改札機と同じように利用することができる。
- 残高が0円でも入場することが出来る。
[編集] 乗車券類購入・精算
同社取り扱い区間各駅の自動券売機や自動精算機で、概ねオレンジカードと同様に乗車券類の購入や乗り越し精算に使用できる。但し、記名式となるTOICAは券売機や精算機の使用も記名人限りとなるほか、Suicaと異なりTOICAとオレンジカードの併用はできない。
[編集] 失効
TOICAは、交換・乗車・支払い・入金・定期券更新のいずれかが行われた直近の日から10年を経過した場合は失効し、SFの金銭的価値および預託金に係る権利も消滅する。
[編集] 岐阜~多治見間に関する特例
「美濃太田経由・岐阜~多治見間」の経路は、TOICAの適用線区でないが両端駅がTOICA対応駅であり、運賃計算およびTOICAの効力上次の特例により取り扱う(註)。
- TOICA(普通券タイプ)で乗車する場合またはTOICA定期券の入金残高(SF)で定期券区間外を乗車する場合、実際の乗車経路による運賃(または乗り越し運賃)に比べ、「美濃太田経由・岐阜~多治見間(高山本線および太多線)」を含む経路によって計算した運賃(同)のほうがより安くなる場合、運賃計算は美濃太田経由で行う。
- TOICA(普通券タイプとしての利用に限る)により、岐阜以遠(木曽川・西岐阜方面)~多治見以遠(土岐市・古虎渓方面)を美濃太田経由の経路で乗車できる。
- 途中下車禁止 なお、この区間の途中駅はTOICAの取り扱いを行わないため、TOICA対応駅からTOICAで乗車し、この区間の途中駅で改札を出る(または改札のない駅で下車する)場合は、乗車駅から改札を出る駅(改札のない駅で下車する場合は、その駅)までの運賃を別途現金で支払わなければならない。
- 岐阜~多治見間(美濃太田経由)を経路に含むTOICA定期券の発売は行わない。
- 註 この特例は、TOICAで入場し、普通券タイプとして利用した(乗車にあたり運賃をSFで支払った)場合にのみ適用される。TOICA適用区間である名古屋付近のJR線には東京・大阪・福岡・新潟のような「大都市近郊区間制度」の適用がないため、普通乗車券を購入する場合など一般の運賃計算は、実際の乗車経路により行われる。
[編集] 導入エリア
名古屋駅でのあおなみ線や、金山駅での名鉄線との連絡改札口においても使用可能である。なお、名古屋駅での近鉄線との連絡改札口においてもPiTaPa導入により2007年4月1日より使用可能になった。
今後は、2007年度秋に静岡駅を中心とする地域にもエリアが拡大される予定である。
[編集] モニターテスト
導入エリアのうち、次の路線・区間で2006年9月30日~10月29日の間、公募によるモニターテストが行われた。
約800名が参加し、普通券タイプのTOICAのみ利用した。なお、同期間中にJR東海及びその関連会社の社員によって定期券を含むモニターテストも行われた。
[編集] TOICAの将来
現在のJR東海エクスプレス・カードを発展させ、東海道新幹線でICカードを使えるサービスを2007年に実施する。TOICAの導入には新幹線と在来線の乗り換えをスムーズにするという目的も含まれている。
また、Suica(JR東日本など)及びICOCA(JR西日本)との相互利用が検討中である。他にも名古屋鉄道と名古屋市交通局が2010年度に導入予定のICカード乗車券や PiTaPa(近鉄線など)との相互利用が検討されている。
このほか現在、既にカードの裏面に「このカードはTOICAの表示または当社が別に定めた表示のある店舗等においてもご利用いただけます。」との文言があるが、これは将来の電子マネー化を見据え、それに先立って発行される現在のTOICA券片についてもサービス開始時そのまま移行利用できるよう、前払式証票の規制等に関する法律ほか諸法令に定める要件を具備させるべく券面に盛り込まれたものである。現時点では電子マネーサービスは行われておらず、具体的な開始時期についても定められていない。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
JRグループ発行 |
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Suica(JR東日本) ICOCA(JR西日本) TOICA(JR東海) |
北海道・東北地方の私鉄・公営交通発行 |
Doカード(道北バス) バスカード(北海道北見バス) バスICカード(福島交通) |
関東地方の私鉄・公営交通発行 |
PASMO(株式会社パスモ※関東地方中心の私鉄・公営交通) ICバスカード(関東鉄道) IC定期券(埼玉高速鉄道) せたまる (東急世田谷線) トランセカード(東急トランセ) モノレールSuica(東京モノレール) りんかいSuica(東京臨海高速鉄道) バスICカード(山梨交通) |
中部地方の私鉄・公営交通発行 |
passca(富山ライトレール) ICa(北陸鉄道) LuLuCa(静岡鉄道・しずてつジャストライン) 豊田町ユーバスカード(静岡県磐田市自主運行バス) ナイスパス(遠州鉄道) ayuca(岐阜バス) |
近畿地方の私鉄・公営交通発行 |
PiTaPa(スルッとKANSAI協議会※近畿地方・静岡市・岡山県の私鉄・公営交通) バスICカード(近江鉄道(立命館路線)) CI-CA(奈良交通) NicoPa(神姫バス) |
中国・四国地方の私鉄・公営交通発行 |
Hareca(岡山電気軌道・両備バス・下津井電鉄) IC定期券(スカイレールサービス) IruCa(高松琴平電気鉄道・ことでんバス) ICい~カード(伊予鉄道) |
九州・沖縄地方の私鉄・公営交通発行 |
ひまわりバスカード(北九州市交通局) 長崎スマートカード(長崎県交通局) 宮交バスカ(宮崎交通) RapiCa(鹿児島市交通局・南国交通・JR九州バス) いわさきICカード(いわさきコーポレーション※鹿児島県) |