アルプス交響曲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クラシック音楽 |
---|
作曲家 |
ア-カ-サ-タ-ナ |
ハ-マ-ヤ-ラ-ワ |
音楽史 |
古代 - 中世 |
ルネサンス - バロック |
古典派 - ロマン派 |
近代 - 現代 |
楽器 |
鍵盤楽器 - 弦楽器 |
木管楽器 - 金管楽器 |
打楽器 - 声楽 |
一覧 |
作曲家 - 曲名 |
指揮者 - 演奏家 |
オーケストラ - 室内楽団 |
音楽理論/用語 |
音楽理論 - 演奏記号 |
演奏形態 |
器楽 - 声楽 |
宗教音楽 |
メタ |
ポータル - プロジェクト |
カテゴリ |
アルプス交響曲作品64(Eine Alpensinfonie)は、 リヒャルト・シュトラウスが作曲し、1915年に完成した単一楽章の交響曲であり、リヒャルト・シュトラウスが作曲したオリジナル管弦楽のための最後の作品である。
- 演奏時間 約50分
- 作曲時期 1914年11月1日 - 1915年
- 初演 1915年10月28日、ベルリン、フィルハーモニー楽堂でリヒャルト・シュトラウス指揮、シュターツカペレ・ドレスデン演奏
- 出版 F.E.C.ロイカルト
目次 |
[編集] 作曲の経緯
R.シュトラウスが14歳(15歳との説あり)の時に、ドイツアルプスのツークシュピッツェに向けて登山をしたときの体験が、この曲の元となっている。その後、1900年に交響詩『芸術家の悲劇』(未完)を経て、1902年には『アンチクリスト、アルプス交響曲』という名称でスケッチがされた。この題名にはフリードリヒ・ニーチェの著作、『アンチクリスト』からの影響が見て取れるといわれている。この時には4楽章形式の交響曲の構想も書かれている。
1911年からガルミッシュ=パルテンキルヒェンの山荘で『アルプス交響曲』としてのスケッチを開始し、1914年から本格的な作曲に取り掛かった。
[編集] 構成
各部分は切れ目なく演奏される。(練習番号はロイカルト社のスコアによる)
- 夜 Nacht
- B mollの下降音階が順番に重なっていく不協和音(夜の動機)により開始される。金管楽器による山の動機が静かに登場する。何重にも分かれた弦楽器により音が厚くなっていく。
- 日の出 Sonnenaufgang (練習番号7)
- A dur の太陽の動機がffで出てくる。調性を変えながらメロディーは引き継がれたあと、ゲネラルパウゼとなる。
- 登り道 Der Anstieg (練習番号11~12)
- 低音弦楽器による山登りの動機から始まる。流れるような旋律になった後、岩壁の動機が現れ、舞台裏でホルンを中心とした金管楽器のファンファーレが奏される。
- 森への立ち入り Eintritt in den Wald (練習番号21)
- 弦楽器の 16分音符の中、トロンボーンとホルンによる旋律が奏され、それに山の動機が絡んでくる。
- 小川に沿っての歩み Wanderung neben dem Bache (スコアには表記なし)
- 小川のせせらぎの音が聞こえるが、登りであるので山の動機も重ねられる。
- 滝 Am Wasserfall (練習番号40~41)
- 岩壁の動機に、弦楽器と木管楽器・ハープ・チェレスタによる滝の流れが重ねられる。
- 幻影 Erscheinung (練習番号42)
- 水の中にオーボエの旋律による幻影が見えてくる。最後にホルンの旋律が出てくる。
- 花咲く草原 Auf blumigen Wiesen (練習番号47)
- 山登りの動機が静かに聞こえてきたあと、曲は快活になる。
- 山の牧場 Auf der Alm (練習番号50~51)
- カウベルによる牛の擬音が鳴る中、牛の鳴き声とアルプホルンを模したホルンの音が聞こえてくる。その後、ホルンの旋律とともに登山者は道に迷う。
- 林で道に迷う Durch Dickicht und Gestrüpp auf Irrwegen (練習番号59)
- 山登りの動機と岩壁の動機が出てくる。そして山の動機が現れ、次へとつながる。
- 氷河 Auf dem Gletscher (練習番号67~68)
- 明るくなり、山登りの動機が現れる。
- 危険な瞬間 Gefahrvolle Augenblicke (練習番号71~72)
- 遠くから雷鳴(ティンパニのロール)が聞こえてくる。
- 頂上にて Auf dem Gipfel (練習番号76~77)
- 和音が響いた後、トロンボーンが頂上の動機を鳴らし、オーボエが訥々と旋律を奏でる。そして幻影で出てきたホルンの旋律が再び現れる。山の動機と太陽の動機が一体となる。
- 見えるもの Vision (練習番号87~88)
- 頂上の動機が和音の下から現れたあと、太陽の動機が管を追加してまた登場する。
- 霧が立ちのぼる Nebel steigen auf (練習番号97)
- ファゴットとヘッケルフォーンが不安げな旋律を奏でる。
- しだいに日がかげる Die Sonne verdüstert sich allmählich (練習番号98)
- 太陽の動機が短調で登場し、太陽が翳ってきていることを表している。
- 哀歌 Elegie (練習番号100)
- 弦楽器により、登山者は悲しげな歌を口ずさむ。
- 嵐の前の静けさ Stille vor dem Sturm (練習番号103~104)
- 遠くから雷(バスドラムとサスペンデッドシンバル)が聞こえてきて、だんだん暗くなってくる。ぽつぽつと降り出した雨(ヴァイオリン・フルート・オーボエ)は、次第に激しくなってくる。そして、風が吹き出してくる(ウィンドマシーン)。
- 雷雨と嵐、下山 Gewitter und Sturm, Abstieg (練習番号109~110)
- オルガンの和音とウィンドマシーンによる風の吹く中、登山者は下山する。これは山登りの動機を転回し、逆の順序で用いることで表されている。強烈な稲妻が光り、最後にはシュトラウス特注のサンダーマシーンにより落雷が起こる。その後はだんだん静かになってくる。
- 日没 Sonnenuntergang (練習番号129)
- 太陽の動機が転回され、日没を表している。登山者は哀歌を口ずさむ。
- 終末 Ausklang (練習番号134)
- オルガンにより太陽の動機が奏され、山登りの動機も回想的に使われ、あたりは暗くなってくる。
- 夜 Nacht (練習番号144~145)
- 冒頭部の夜の動機がまた現れ、山の動機とともに静かに終わる。
[編集] 編成
特殊楽器やステージ外の楽器が用いられている。
- フルート4(3・4はピッコロ持ち替え)
- オーボエ3(3はイングリッシュホルン持ち替え)
- ヘッケルフォーン
- E♭クラリネット
- B♭クラリネット2
- Cクラリネット(バスクラリネット持ち替え)
- ファゴット4(4はコントラファゴット持ち替え)
- ホルン8(5-8はテナーテューバ持ち替え)
- トランペット4
- トロンボーン4
- テューバ2
- ティンパニ2人
- バスドラム
- スネアドラム
- シンバル
- トライアングル
- タムタム
- ウィンドマシーン(風音器)
- サンダーマシーン(雷音器)
- カウベル(牧羊擬音)
- グロッケンシュピール
- ハープ2または4
- オルガン
- チェレスタ
- 弦5部(最小18・16・12・10・8)
- 舞台裏にホルン12、トランペット2、トロンボーン2
可能であればフルート2、オーボエ3、E♭クラリネット、クラリネット2を追加
(スコア上ではサミュエルエアロフォーンの使用を推奨している)
[編集] その他
[編集] 参考文献
- <大作曲家>R.シュトラウス:ヴァルター・デビッシュ著、村井翔訳、音楽之友社刊 ISBN 4-276-22160-9
- 作曲家別名曲解説ライブラリー9 R.シュトラウス:音楽之友社刊 ISBN 4-276-01049-7
- Richard Strauss' Alpensinfonie. Entstehung, Analyse und Interpretation. Georg Olms Verlag. 1997:Rainer Bayreuther ISBN 3-487-10261-7
- Eine Alpensinfonie Score Verlag von F.E.C.Leuckart・München 1915 F.E.C.L.7529
カテゴリ: リヒャルト・シュトラウスの楽曲 | 交響曲 | 交響詩