ラジオ体操
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ラジオ体操(ラジオたいそう)は、国民の体力向上と健康の保持や増進を目的とした一般向けの体操の一つである。または、その体操用音楽をピアノ伴奏にのせて指導を行う、NHKのラジオ番組。
目次 |
[編集] 概要
ラジオ体操自体は、1928年に当時の逓信省(現在の日本郵政公社)簡易保険局が制定したのが始まりで、同年11月1日に天皇の御大典記念事業の一環として放送を開始した。正式名称は国民保健体操。1925年3月にアメリカのメトロポリタン生命保険会社が、健康増進・衛生思想の啓蒙を図るために考案され、広告放送として放送されていた(世界初の)ラジオ体操がもととなった。NHKで放送を担当したのは江木理一アナウンサー。彼は初回からブリーフパンツ一枚でマイク前で体操していたのであるが、「照宮成子内親王もラジオ体操に御執心なり」と聞き及ぶや、濃燕尾服に蝶ネクタイを締め、正装に身を包んだ上で放送に臨むようになった。
現在の標準的な番組構成では、ラジオ体操の歌(藤浦洸作詞 、藤山一郎作曲 早朝の回のみNHK東京児童合唱団の合唱による)のあと、ラジオ体操第一が流れ、ピアノ演奏を伴う首・手足などの若干の軽い運動のあと、第二体操が行われる。第一体操と第二体操の間の演奏曲は定まっておらず、短い時間に季節に合わせた色々な曲が演奏される。
放送としては、国内向けAMラジオ2波で合わせて1日4回放送されているほか、テレビでも「テレビ体操」として地上波2波で合わせて1日2回放送されている。このほか、テレビでは1999年制定の「みんなの体操」単独の番組が存在する。テレビ・ラジオとも、国際放送NHKワールドでも放送されている。
学童の夏季休暇中は、全国で早朝に町内会や自治会が主催するラジオ体操の会が催されており、会への皆勤賞として昔ながらに鉛筆などが出されることがある。(最近ではお菓子や図書券などが出される地域もある)また、全国各地を指導者が巡回してリスナーとともに体操を行う「夏季巡回ラジオ体操 みんなの体操会」も開かれており、全国に公開生中継される(台風などで生中継ができない場合は通常のスタジオ収録のものを放送)。日本の夏の風物詩の一つ。特に、中央行事として、「1000万人ラジオ体操・みんなの体操祭中央大会」が行われている。この模様は、総合テレビや衛星第2テレビでも実況中継される(原則として8月第1日曜日6:30~6:45)。夏季休暇中以外でも主として土・日曜日や祝日で「特別巡回ラジオ体操 みんなの体操会」がおこなわれることもある。ちなみに「巡回ラジオ体操 みんなの体操会」の挨拶は「会場の皆さん、全国の皆さん、そして海外でラジオをお聴きの皆さん、おはようございます」である。
ラジオ第1放送は、地震、台風などの大災害が発生した場合は大幅に番組の構成を変更して報道主体の体制になるが、朝6:30のこの番組が中止されたり時間を変更されたりする事は殆ど無い。ただ、番組の途中で地震情報、気象警報、交通情報(主に高速道路の通行止や鉄道路線の不通区間)が放送されることはある。また、オリンピック中継の最中であっても休止することなく予定通りの時刻で放送される。但し、例外もある。
- 1989年1月7日、昭和天皇危篤の臨時ニュースを放送したため、午前6時30分からのラジオ体操の放送が中止された。そのまま崩御関連の特別番組になったため、ラジオ第1では放送されなかった。
- 1989年1月8日、前日の昭和天皇崩御に関連した特別番組を放送する関係上、ラジオ体操の放送は行われなかった。テレビ体操は、通常編成に戻された教育テレビで行われた。
- 2006年7月5日、北朝鮮のミサイル発射ニュース放送に伴い、2006 FIFAワールドカップ準決勝「ドイツ×イタリア」が総合テレビから教育テレビに差し替えた上、さらに延長戦に入ったため、テレビ体操も5分遅れで放送した。
[編集] 種類
[編集] ラジオ体操第一
- 1951年制定。同年5月6日放送開始。現在の体操は3代目(初代は1928年11月1日~1946年4月13日(但し、1945年8月15~22日は放送中止)、2代目は1946年4月14日~1947年8月31日)。
- 小学校から工場などの職場まで広く使われており、一般的にはラジオ体操といえば第一のことを指すことが多い。事務職向けの体操と言われている。
- 作曲:服部正
[編集] ラジオ体操第二
- 1952年制定。同年6月16日放送開始。現在の体操は3代目(初代は1932年7月21日~1946年4月13日(但し、1945年8月15~22日は放送中止)、2代目は1946年4月14日~1947年8月31日)。
- ややテンポの速いメロディで、第一より運動量が多い。
- 主に小学校高学年~高等学校で使われている。作業などを行なう現業向けの体操と言われている。
- 作曲:團伊玖磨
- 最大の特徴はボディビルダーを連想させる独特のポージングがあげられる。
[編集] ラジオ体操第三
- 1939年に制定されたもの(同年12月1日放送開始。1946年4月13日をもって放送中止(1945年8月15~22日の間も放送中止))と、1946年(同年4月14日放送開始。翌年8月31日をもって放送中止)に制定されたものがある。
- 前者は1946年新第三が制定されるまで行われ(終戦まで軍で行っていたと思われるが)、後者の新第三に代わったが、1947年にはラジオ体操の放送自体が、1951年に現在の第一が制定されるまで中断された。現在では利用されていない。
- また、テレビ体操で放送される「みんなの体操」(1999年制定)が、初期にラジオ体操第三と呼ばれたことがあった。
[編集] 指導
[編集] 2007年04月現在
- 長野信一(ながの・しんいち。1981年(昭和56年)~。現在指導チーフ)
- 多胡肇(たご・はじめ。1998年(平成10年)~)
- 西川佳克(にしかわ・よしかつ。2001年(平成13年)~。「みんなの体操」の副音声解説も兼任)
- 岡本美佳(おかもと・みか。2003年(平成15年)~)
[編集] 過去の担当
- 柳川英磨(やながわ・ひでまろ。~1984年(昭和59年))
- 青山敏彦(あおやま・としひこ。1971年(昭和46年)~1999年(平成11年))
- 輪島直幸(わじま・なおゆき。1984年(昭和59年)~1998年(平成10年))
- 上田容子(うえだ・ようこ。1983年(昭和58年)~2003年(平成15年)。アシスタントから昇格して初の女性指導者だった)
[編集] アシスタント
テレビ体操において欠かすことができないのが、実技披露を行う女性アシスタントの存在である。
通常はテレビで実際の動きを見せるが、学校の夏休み期間などに行われる「巡回ラジオ体操」では、手分けして現場での実技披露を行う。「1000万人中央大会」では、全員が出席する。
基本的には、大学の体育学部の女子学生の中から選ばれるが、後述の有賀暁子は、体育学部の学生以外から初めて起用された。また、上田容子と岡本美佳は、アシスタントから指導者に起用され、女性のための「リズム体操」の指導にあたっている。
任期は人それぞれだが、指導者よりは短い。退任後も、ラジオ体操の普及指導にかかわったり、母校や地域での体育指導などに携わる人が多い。
[編集] 2007年04月現在
- 大橋美加(おおはし・みか)
- 大江紗由(おおえ・さゆ)
- 金子梨沙(かねこ・りさ)
- 有賀暁子(あるが・あきこ)
- 横川道乃(よこかわ・みちの)
- 家根本織永(やねもと・おりえ)
[編集] 過去
- 上田容子(指導者就任まで)
- 岡本美佳(上に同じ)
- 田村恵美(たむら・えみ)
- 小森由紀子(こもり・ゆきこ)
[編集] ピアノ伴奏
[編集] 2007年04月現在
[編集] 過去
- 大久保三郎(おおくぼ・さぶろう)
[編集] 放送日時
[編集] ラジオ体操
- ラジオ第1、NHKワールド・ラジオ日本
- 毎日 6:30~6:40(日本標準時、以下同じ。「ラジオあさいちばん」の枠内。ラジオ体操・みんなの体操祭中央大会当日は6:45まで延長)
- ラジオ第2
- 月曜日~土曜日 8:40~8:50、12:00~12:10、15:00~15:10
[編集] テレビ体操
- 総合テレビ
- 月曜日~金曜日(平日のみ) 14:55~15:00(「お元気ですか日本列島」に続けて)
- 火曜日は長野信一チーフの担当でラジオ体操を、木曜日は岡本美佳の担当でリズム体操を、みんなの体操の一部と併せて行う。
- 教育テレビ
- 毎日 6:30~6:40
- 前半はみんなの体操、後半は月・水・金曜日にラジオ体操第一、火・木・土曜日はラジオ体操第二の構成。日曜日は随時構成変更。
- 「みんなの体操」の放送時間はその項を参照。
- 国際放送は、NHKワールドTV、NHKワールド・プレミアムの両方で放送されている。
[編集] その他
- 総合テレビで放送されたバラエティー「謎のホームページ サラリーマンNEO」で、「テレビ体操」のパロディーコーナー「テレビサラリーマン体操」が放送された。
- ゆずのコンサート開演前にはメンバー・スタッフ・観客全員でラジオ体操第一を行うのが恒例となっている。
- 東京ディズニーシーで開催されているステージショー「オーバー・ザ・ウェイブ」で、ドナルドダックが船上イベントの一環として、ラジオ体操第一のメロディーに合わせて体操するシーンがある。
- TBSラジオの平日朝帯ワイド番組「大沢悠里のゆうゆうワイド」の金曜名物“お色気大賞”にて、色艶話の演出で大沢悠里がラジオ体操第一の冒頭の曲をオーバーに語っている。もちろん金曜の相棒さこみちよは大笑いしている。ちなみにNHKはこの件で抗議していないそうである。
- アサヒ飲料の缶コーヒー「ワンダ・モーニングショット」のCM曲として水前寺清子歌唱の「ラジオ体操の歌」が使用されていた。
- 2006年まで開催されていたプロ野球パ・リーグオールスター東西対抗では、試合前に外野席の東軍・西軍応援団が合同で、ラジオ体操第一を行うのが恒例となっていた。
- 1979年に、ラジオ体操第一をディスコアレンジした『ディスコ体操ナンバー・ワン』(歌:アスレチック・ピープル)というレコードが発売された。アレンジャーは長戸大幸。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
カテゴリ: 体操 | 日本放送協会ラジオ番組 | 健康法