快速列車
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快速列車(かいそくれっしゃ)とは、途中の駅の一部を通過し、主要駅のみに停車することで目的地駅への速達サービスを提供する列車をいう。
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[編集] 言葉としての「快速」
通例、この言葉は「心地よい速さ」、「快適な速さ」という意味合いで使用されることが多く、とりわけ速達性・即応性を重視するもの・サービスの場合に「快適なスピード」といった意味合いで使用される。この点では「特急」と同じ意味である。しかし、列車種別の場合では、運行国・運行会社の違いにより、意味合いが大いに変わる。また、下を見れば判るが、列車種別として付加することで、「速達性を重視した列車種別」という意味合いも生まれてくる。
[編集] 日本
途中の駅の一部を通過し、主要駅のみに停車することで目的地駅への速達サービスを提供する列車では、急行列車と同じであるが、JRや一部の私鉄で運行されている利用にあたって急行料金の支払いが必要となる速達列車に対して、料金不要の普通列車の一種として解される。JRグループでは正式には普通列車である。一部の私鉄において「特急」・「急行」・「準急」等と称される料金不要の速達列車も快速列車の一種ということができよう。
なお、、JR東日本の快速列車ではRapid Service trainと表記するなど、快速の英訳には"Rapid (Service)"が当てられるのが普通である。ただし、英語で「RAPID」は快速という意味ではなく、迅速なという意味であり、正確な英語表記は"High-SPEED train"が最も近い。また、"Rapid"という単語はフランス語では特別急行列車を表す言葉で、日本でのこの表記は、フランス人に混乱を招いている。イタリア語でも同様の意味である。ドイツ語では快速列車のことは"Eilzug"という。
[編集] JR
JRにおいては、急行列車に乗車するには、乗車券のほかに急行券等の特別料金が必要だが、快速列車は、普通列車のうち、いくつかの駅を通過して速達輸送を行う列車という意味あいがある。なお戦前の国有鉄道を運営していた鉄道省においては、同種の列車を「準急列車」・「快速度列車」と呼んでいた。
なお、かつて都市内の速達列車で急行料金の支払いを要さない「急行電車」と名乗っていたものないしは、複々線工事に伴い快速線・列車線で運行される「(区分上の「電車」を含む広義の)普通列車」を、急行料金の支払いを要する列車と区別するために「快速電車」と称する事がある。なお、快速電車(旧・急行電車)は各駅停車(緩行電車)に対する快速であり、快速列車は普通列車に対する快速である。
また、一部区間は快速と同じ停車駅に停車し、後は各駅に停車する区間快速・準快速、快速より停車駅を少なくした特別快速・新快速、ラッシュ時のみに運転される通勤快速、休日にのみに運転されるホリデー快速等、細分化された種別もある。また、同じ列車種別の名前を名乗っていても、休日やラッシュ時には停車駅が変わる事もある。
この他、並走する他の列車に合わせる形で「快速」として運転される例がある。京阪神地区の快速と常磐線中距離列車(普通列車)の快速は時刻表上では「快速」の表記はなく普通列車扱いとなっているが、実際は快速運転区間においては「快速」、各駅停車となる区間は「普通」として案内されている(常磐線においては2004年10月の改正以降。車両の方向幕にも「快速」の表記はない)。また、本来は普通列車に相当するものでありながら並走する線区の一部に停車駅の相違があるために当該区間を「快速」として運転しているケースもある。具体的には湘南新宿ラインが該当し、横須賀線(~宇都宮線)系統の列車が停車する西大井駅・新川崎駅・保土ヶ谷駅・東戸塚駅を東海道本線(~高崎線)系統の列車は通過するため、品川駅経由の列車では普通列車に相当する停車パターンながら(川崎駅は通らないので停車しないが)、後者を「快速」として運転する。この例では時刻表にも「快速」の表記がある。
また、都市間をまたがって走るものや、観光地に向かう列車については、一部の車両、または全車を指定席車とし、乗車券の他に指定席券を必要とするものもある。
JRの場合、特急や急行とは違い、国鉄時代からの慣習で本来列車愛称はつけないのが普通である。しかし、JR北海道では殆どの快速に愛称がつけられている。(例えば、「きたみ」など)また、他の地域でも「とっとりライナー」などの様に愛称付きの快速が運転されている例も少なからずある。なお、「マリンライナー」・「はまゆり」など座席指定席を有する列車は、指定席発券システムの管理に際しては、列車番号ではなく列車愛称毎に番号を振り分けていることから必ず号数(例:マリンライナー○○号)が与えられる。一方、「うみかぜ」など、合理化のために廃止された名称もいくつか存在する。
その他、もともと普通列車であったものの、乗客はわずかしかいないうえ、早朝・深夜の列車は全く乗り降りする客がいない駅が存在するので、そのような駅については通過とした普通列車も存在する(JR西日本のローカル線などに多く見られる。例えば中国山地地域の閑散区間など)。ただこのような理由で通過駅を設ける場合でも、JR北海道やJR東日本では通過駅を持たせたまま普通列車扱いにすることが多く(「普通列車#運行実態による使い分け」も参照)、一概には言えない。
[編集] 私鉄
一部の私鉄においても快速という列車種別の列車が運行されるが、運行形態、位置づけはさまざまである。
- 例えば、停車駅についても以下のように会社によっても異なる。
- 西武池袋線では、「急行」と「準急」との間に位置する。
- 京王線や相鉄本線の様に「準急」を採用してない路線では、「急行」と「各駅停車」との間に位置する。この場合、JRと同じと見ることが出来る。
- 京成押上線、神戸電鉄有馬線、東武伊勢崎線では、「急行」より停車駅が少ない、上位という位置づけとなっている。そのためか、本来の快速の英語名(Rapid)の方が急行(Express)よりも速いという逆転現象が生じている。ただし神戸電鉄においては、方向幕上での快速の英語表記はRapid Expressと、快速急行の英語表記と同じとなっているため、「快速急行」を縮めて「快速」と呼んでいるものと考えられる(近鉄大阪線では「区間快速急行」を縮めて「区間快速」と呼んでいる例がある)。
- 京成本線は「快速」の設定と同時に「急行」を廃止したため、「特急」・「通勤特急」と「各駅停車」との間に位置する。
- 首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線・東京メトロ東西線はJRとの関係が深いため「急行」を採用せず、「快速」を停車駅が少ない最上位列車として位置付けられている。
- 東京モノレール羽田線では過去に「快速」が運転されていたが、「空港快速」「区間快速」に再編され、「空港快速」が最上位に位置している。
- 東急田園都市線・阪急京都線では過去に「快速」が運転されていたが、前者は速達化・利便化のため、後者は上位種別の停車駅増加のため、両線共に「急行」に統合され廃止されている。
[編集] 快速列車を運行する鉄道会社および路線
この書体でかかれた路線は線内に通過駅のあるもの
- 京王電鉄
- 京成電鉄
- 芝山鉄道
- 東武鉄道
- 西武鉄道
- 相模鉄道
- 東京地下鉄(東京メトロ)
- 東葉高速鉄道
- 東葉高速線(東葉快速のみ同線内を通過運転)
- 東京モノレール
- 東京モノレール羽田線(空港快速という名称だが快速的な役割を担っている。)
- 首都圏新都市鉄道
- 関東鉄道
- 会津鉄道
- 北越急行
- 神戸電鉄
[編集] 快速に類する列車を運行する鉄道会社および路線
この書体でかかれた路線は線内に通過駅のあるもの
- 通勤快速
- 区間快速
- 特快速
[編集] 接頭辞としての「快速」
特急や急行の頭に快速を付ける列車種別もある。頭に快速をつけると、その列車より停車駅が少ない事を意味する。
[編集] 快速特急・快特
- 京浜急行電鉄では快特および“エアポート快特”という特急より停車駅が少ない列車を運行している。以前は快速特急・“エアポート快速特急”の名称であったが1999年より、登場時からの略称だった「快特」・「エアポート快特」が正式呼称となり、現在に至る。
- 東京都交通局(都営地下鉄)浅草線では、エアポート快特を1998年に運行開始している。
- 阪急電鉄では、2001年3月より、京都本線で快速特急を運行していたが、2007年3月のダイヤ改正により特急・通勤特急に整理の上運行を終了している。
- 名古屋鉄道では、名古屋本線、常滑線、空港線で、特急より停車駅が少ない快速特急を2005年1月29日より運行している。また犬山線・広見線・各務原線でも運行されるが、停車駅は特急と同じである。
- 京成電鉄では、2006年12月10日よりそれ以前の通勤形電車による特急列車の種別変更に伴い、快特の列車種別の運行を開始した。
[編集] 快速急行
西武鉄道・近畿日本鉄道・名古屋鉄道・小田急電鉄・阪急電鉄・南海電鉄・西日本鉄道等では、急行列車より速いという意味で快速急行という列車が運行されている。
近鉄大阪線にはさらに、快速急行よりやや停車駅が多く運転区間の短い「区間快速急行」という種別があり、更には縮めて「区間快速」と呼ばれることがあって、方向幕や駅での案内は「区間快速」と表記されている。
変わったところでは、東武日光線系統で運行されていた「快速急行」がある。これは、使用車両こそ料金不要の速達種別である同線の快速で使用される6000系→6050系電車や既に波動輸送に用いていた5700系を用い、座席指定制の急行券を要する従前の急行列車と同じ客扱いを行っていたことや、同社の伊勢崎線で格上とも言うべき急行「りょうもう」が運行されていたことにより、その差別化を計るため「急行列車」と同格に扱われた。但し、速達性・居住性などは並走区間で「りょうもう」と比べると劣ることから、「りょうもう」より格下と見なされる事例もままあった。なお、急行「りょうもう」の車両交代を機に改修を経た上で日光線快速急行列車に宛がわれたことにより、再び急行列車に種別を変更している。→東武日光線「快速急行」・スペーシアを参照されたい。
[編集] 快速準急
かつて小田急電鉄で使われていた種別。昼間時の準急を速達化したもので、準急と急行の間の位置付けだった。1971年廃止。
[編集] 海外
海外では、中華人民共和国(香港含む)の鉄道で急行列車に相当する「快車」が運行される。
一方、台湾では区間快車(英語表記:Local Express)が運行されているが、これは日本の快速列車に相当する。