東武50000系電車
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50000系電車(50000けいでんしゃ)は、東武鉄道の通勤形電車。
2005年(平成17年)3月16日から東上線系統で営業運転を開始した。
本稿では2006年(平成18年)3月18日から本線系統で営業運転を開始した50050系電車(50050けいでんしゃ)、東上線系統に導入予定の50070系電車(50070けいでんしゃ)についても記述する。
50000系の営業運転の様子(東上線ときわ台駅にて2006年4月22日撮影)
50050系の営業運転の様子。(東急線鷺沼)で撮影。2007年2月18日
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目次 |
[編集] 概要
日立製作所の鉄道車両製作システム「A-train」を採用したダブルスキン構造を持つアルミ車体である。モジュール化した普通鋼製の前面をボルトで固定する工法は、同じ日立製「A-train」である西武鉄道の20000系と同様である。
東武鉄道では100系「スペーシア」でアルミ車体を採用していたが、通勤車で採用したのは50000系が初であり、同時に初のアルミ無塗装車となった。前面フロントガラス下や戸袋部分にオレンジ色のブロックシールを貼付する。
また、30000系(半蔵門線・田園都市線直通用)と同様に客用ドアの開閉時にはドアチャイムが鳴動し、客用ドア上部にLED式の旅客案内表示器を千鳥配置で設置している。案内表示器のないドアには「半自動」という小さな表示がある。これは長時間停車時にドアを手動で開閉することができる場合に点灯する。
ドアが開いている時、ドア付近のスピーカーから「ポーン」という音が一定の間隔を置いて鳴動する。これは視覚障害者にドアの方向を知らせるサインである。
ドア開閉システムはリニアモーター方式を東武では初めて採用した。他社車両での採用事例では東日本旅客鉄道(JR東日本)の松戸車両センター配置車以降のE231系と勝田車両センター所属のE531系などが挙げられる 。
客室側窓は同じ日立製「A-train」である首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)TX-2000系と同様にその多くが固定式で、紫外線を96%カットするグリーンガラスを採用するとともに、巻き上げカーテンを設置する。また、ドア脇の手すりは従来のパイプ式のものは省略され、代わりにアルミの凹材が設けられている。
2004年度に10両編成1本が東上線に登場しており、2005年度は東上線に10両編成1本と本線系統に50050系6本60両の計70両を順次導入した。2006年度はさらに合わせて8本80両を導入する予定である。そのうち2本20両は東上線に導入予定の50070系である(後述)。
[編集] 系列別概要
[編集] 50000系
東上線に10両編成2本(20両)を配属している。
[編集] 概説
冷房装置室外機に集中式を採用した。
運転中にマスコンハンドルを「P2」位置にすると定速運転になるが、これは東武では初めて採用された。また、東上線に所属する車両としては初めて集電装置にC-PS27型シングルアーム式パンタグラフを採用した。
車体外観については、1次車である51001Fは正面が非貫通式で、HIDを用いた灯類は下部に大きく下げられ、運転台窓を1枚とし、窓下部にオレンジ色が入る。2005年度新製の51002Fでは非常用貫通扉を助士席側に設置し、運行番号を表示するスペースも準備した。これは将来の東京地下鉄(東京メトロ)有楽町線・副都心線・東京急行電鉄東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線への直通運転を視野に入れたものとされている。側面は戸袋の部分にオレンジ色が入ったデザインとなった。前面と側面の行先表示器はLEDを採用し、側面のものは停車中に行先表示のみならず号車表示も可能になっていて、走行中は消灯する。また、車内の旅客案内表示器にも次駅案内の際に号車を表示する。この号車表示は池袋方のクハ51000形を1号車としている。
足回りは台車がモノリンク式軸箱支持のボルスタレス空気ばね台車、制御装置が日立製作所製の全電気ブレーキ付き2レベルIGBT素子使用のVVVFインバータ制御となっている。
車内放送は、本線系統に配属する30000系に続いて女声の自動放送を採用した。加えて、東武鉄道の通勤電車では初めて東上線内において英語放送を採用した。
2006年12月23日に森林公園検修区で開催された「東上線クリスマスイベント」において、外観の異なる2編成が並んで撮影会用として展示されていた。
[編集] 50050系
50050系の試運転の様子。(伊勢崎線花崎駅にて2005年11月3日撮影)
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2007年3月時点で伊勢崎線・日光線に10両編成10本(100両)を配属している。
[編集] 概説
外観と仕様は50000系第2編成に準じている。ただし「営団(現・東京地下鉄)11号線(半蔵門線の正式名称)、東急田園都市線、東武伊勢崎線直通車両規格仕様」を満たすために、車体幅は2,770mmとなっており、50000系の2,800mmより30mm小さくなっている。30000系が6両+4両の分割編成であるのに対し、50050系は10両固定編成のため浅草・業平橋方面や館林・南栗橋以北には入線できない。
自動放送は50000系同様に女声・英語放送付である。
号車表示は50000系とは異なり、半蔵門線・田園都市線に合わせて浅草・押上方のクハ51050形を10号車としている。
51051F以外の30000系を置き換えた編成は、置き換え対象の30000系から供出した乗り入れ用機器を搭載した。乗り入れ用機器を供出した30000系は2005年12月から宇都宮線や伊勢崎線などの地上運用に転じている。今後も50050系の増備時に順次供出する予定である。
2007年2月時点での置き換え状況は以下の通り。地下鉄乗り入れ編成は30000系6編成・50050系10編成の計16編成となり、平日、土曜・休日共に14編成が運用される。
置き換え時期 | 機器供出元編成 | 機器供出先編成 | 機器供出先編成の営業開始日 |
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増備車 | 新品 | 51051F | 2006年3月18日 |
2005年7月 | 31613F+31413F | 51052F | 2006年3月21日 |
2006年4月 | 31612F+31412F | 51056F | 2006年5月3日 |
2006年5月 | 31611F+31411F | 51053F | 2006年5月30日 |
2006年6月 | 31614F+31414F | 51054F | 2006年6月20日 |
2006年6月 | 31601F+31401F | 51055F | 2006年7月11日 |
2006年10月 | 31608F+31408F | 51057F | 2006年11月12日 |
2006年11月 | 31602F+31402F | 51058F | 2006年12月12日 |
2007年2月 | 31607F+31407F | 51059F | 2007年2月25日 |
2007年2月 | 31603F+31403F | 51060F | 2007年3月23日 |
[編集] 50070系
東京メトロ有楽町線および2008年(平成20年)度開業予定の副都心線への直通運転に対応する系列である。最初に落成した編成(51071F)は同年3月3日に山口県下松市の日立製作所笠戸事業所より熊谷貨物ターミナル駅へ甲種車両輸送され、同月5日寄居から終電後自力回送にて森林公園検修区に到着した。行先表示器は50000系・50050系での三色LED式から、9000系の車両修繕において採用されたフルカラーLED式に変更されている。また、第2編成(51072F)は同月24日から甲種車両輸送され、同月26日に寄居に到着した。
[編集] 仕様
- 構成:10両固定編成(5M5T)
- 車体構造:オールアルミダブルスキン(FSW溶接)
- 戸閉装置:電気式ユニット戸閉機(マイコン制御式)
- 各扉に設置したドア制御装置はモータ電流の検知により戸挟み検知を行い、モータのオン/オフにより戸閉力を弱める。リニアモータを用いた駆動方式であり、乗客や荷物が挟まれたときは容易に脱出できるよう戸閉力を弱める自己診断機能、位置制御学習機能、状態監視機能を備える。異常時などに手動でドアを開閉する場合、電気式を採用したため車外、車内鴨居部の解錠ハンドルを操作すれば可能である。車両電源がある状態で乗務員室車掌ユニットの総括一斉解錠スイッチを操作すれば片側の全ドアが、各車車内妻部にある解錠スイッチを操作すれば当該車両の全ドアが、それぞれフリーとなり手動で開閉出来る。
- 運転最高速度:100km/h(東武線)/80km/h(半蔵門線)/110km/h(田園都市線)
- 設計最高速度:120km/h
- 主幹制御器:T型ワンハンドル式
- 制御装置:IGBT素子VVVFインバータ制御装置 型番不明(日立製2レベル)
- ブレーキ装置:回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ (HRD-A) 、純電気ブレーキ
- 駆動装置:CFRP製TD継手式平行カルダン
- 主電動機:三相かご型誘導電動機 TM-03 165kW×4
- 補助電源装置:東芝製 IGBT素子静止形インバータ 170KVA
- 空調装置:集中式58.1kW (50000kcal/h)
- 歯車比:6.53
- 起動加速度:3.3km/h/s
- 減速度:3.5km/h/s[常用]/4.5km/h/s[非常]
- 保安設備:東武形ATS・営団形CS-ATC(50050系のみ)・東急形CS-ATC(同)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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