JR東日本E531系電車
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JR東日本E531系電車 | |
E531系基本編成(2007年3月18日撮影) |
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起動加速度 | 2.5km/h/s |
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営業最高速度 | 130km/h |
設計最高速度 | 130km/h |
編成定員 | 1,552 名(基本10両編成、普通車のみ) 760 名(付属5両編成) |
最大寸法 (長・幅・高) |
20,000×2,950×3,640 mm |
編成重量 | 274.5 t(基本編成 - 4M6T) 140.1 t(付属編成 - 2M3T) |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V/交流20,000V(50Hz) |
出力 | 140kW / 基 (かご形三相誘導電動機) |
編成出力 | 2,240kW(基本編成 - 4M6T) 1,120kW(付属編成 - 2M3T) |
制御装置 | VVVFインバータ |
ブレーキ方式 | 回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ |
保安装置 | ATS-SN,ATS-P,ATS-Ps(一部) |
E531系電車(E531けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の交直流一般形電車である。
目次 |
[編集] 概要
常磐線と水戸線で運用されている403・415系鋼製車の老朽化に伴う置き換え、および首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)対策としての常磐線の運転速度向上へ向けて、E501系を運用した上での反省やE231系でのノウハウを基に、開発計画が立ち上がった。
E531系については、2003年(平成15年)12月9日に常磐線上野~四ツ倉駅間および水戸線に導入すると発表された。
最初に落成したK-401編成(基本・10両)とK-451編成(付属・5両)は、2005年3月16日から公式試運転を開始し、同年7月上旬までに合わせて12編成90両(基本編成6本60両・付属編成6本30両)が落成し、同月9日のダイヤ改正から営業運転を開始した。この改正で運転を開始した新種別の「特別快速」(上野駅~土浦駅)は全列車がE531系による運用となっており、運転本数は当初は5.5往復だったが、翌2006年(平成18年)3月のダイヤ改正で6往復に増発した。日中のみの設定である。
[編集] 運用
2007年(平成19年)3月18日現在、常磐線上野~高萩間で運用されている。上野~土浦間では普通列車(上野~取手間は快速と案内)と、特別快速の全列車がこのE531系で運用されている。
2006年8月26日から2007年3月17日までは暫定的に水戸線でも、付属編成のみが6往復の列車に運用されていた。また同年2月から同年3月17日までは、従来415系で運用されていた上野~いわき間の直通列車にも使用されていた。
付属編成はE501系の検査時に代走としても使用されるため、引き続き高萩~草野間と水戸線の運用に就くこともある。
[編集] 臨時列車
2005・2006年度の「笠間deおさんぽ号」(笠間方面)と、2005・2006年8月の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』(国営ひたち海浜公園で開催)来場者の帰宅輸送用として設定した上り臨時快速の1本をE531系で運転していた。その際のLED式種別・行先表示器は2005年度が「快速」と「臨時」だったが、2006年度の「笠間deおさんぽ号」は「水戸線直通」と「笠間」が交互に表示されるタイプだった。
[編集] 諸元
E531系は交直両用電車であり、主変換装置(直流車の制御装置に相当)や主電動機の構造・出力が異なるが、車内の設計などはE231系近郊タイプがベースとなっており、「E231系グループ」としてまとめられることがある。他にも、E993系(ACトレイン)及びE653系(「フレッシュひたち」用)の経験や成果が反映されている。製造メーカーは東急車輛製造と川崎重工業(両社間では内装造作の相違あり)で、2006年にはJR東日本新津車両製作所でも製造された。
[編集] 性能
JR東日本の普通列車用車両としては初めて営業運転での最高速度130km/h対応となった。速度種別はA21で、これはE231系近郊タイプが湘南新宿ラインで運用される際の速度種別と同一である。2桁数字の前に付与する「A」は時速100キロを意味し、10‰での均衡速度が121km/hであることを示す。
130km/h走行時の蛇行動防止のため、台車はE231系のフレームが水平のものではなく、E653系とほぼ同じフレームが弓形になったものが採用され、台車には「ヨーダンパ」、軸バネ部分には「オイルダンパ」が取り付けられている。
[編集] 車体
車体はE231系などと同様の軽量ステンレス製で、常磐線中距離電車のラインカラーである青の帯を巻く。
主電動機は東洋電機製造製で、1時間あたりの定格出力は140kW、歯数比は16:97=1:6.0625、起動加速度は2.5km/h/s(主変換装置にあるスイッチで加速度の切り換えが可能)、主変換装置は日立製作所製でIGBT素子によるVVVFインバータ制御、補助電源装置(静止形インバータ)は東洋電機製造製。ブレーキは回生ブレーキのほか全電気ブレーキも装備する。定速制御・低定速制御・抑速ブレーキも装備する。
直流区間と交流区間を隔てるデッドセクションでの主回路の切り替えは、E501系と同様に常磐線ではATS-P地上子により自動で行われるが、水戸線は専用地上子を設置していない関係で、切り替えボタンを操作しての手動切り替えになっている。手動切り替えは常磐線においても可能である。また車内照明は直流電源による。デッドセクション通過時には蓄電池からの供給に切り替わるため、基本的に消灯しない。
E231系とはパンタグラフの位置が逆で、E501系と同位置の水戸・高萩方にある。交流・直流の双方に対応するための電気機器を搭載する関係で、車重を均等化する意味でこのようになった。運転台には通常及び非常用のパンタグラフ降下スイッチが設置されている。
2004年度以降に新製したE231系近郊タイプと同様に、運転台の速度計も液晶表示式である(グラスコックピット)。
K-407・K-457編成よりデジタル列車無線機器とATS-Ps表示器が設置された。ただしATS-Pで運転する際はATS-Ps表示器は消灯する。
LED式種別・行先表示器は従来通りの赤・緑及び2色を組み合わせたオレンジの3通りで、列車種別と行先表示を独立させたが、外見は今まで通り一体型である。
[編集] 内装
- ドア付近
客用ドアは片側に4か所。常磐快速線・成田線用のE231系と同様のリニアモーター式だが、開閉時の動作音が低減された。ドアスイッチの設置を伴う半自動機能付きで、車内から見て右側に開閉ボタン(外部には開ボタン)を設置した。開閉ボタンはE231系よりも多少低い位置に設置されている。半自動機能は冷房および暖房使用時に交流区間での始発駅や途中駅の特急待避、長時間の列車交換待ちの停車時にセットされる。また、各ドアにはドアスイッチの使用方法が表記されたステッカーが貼付されている。
ドア上部にはLED式2段の旅客案内表示器、ドアチャイム、ドアランプ(開閉時に赤く点滅)を設置している。このうち案内表示器には2段目の右端に号車を表示すると共に、走行中は「運行情報」(平常時は表示されない)→「行先」→「携帯電話/優先席(一方のみ、1駅毎に交互)」→「テロ対策」の順に表示する。また新たな運行情報が入電した時はアラート(チャイム)が鳴る(始発駅発車時に列車運行情報が入電されている場合は発車時に鳴る)。また、視覚障害者への配慮のため、扉中央部の車内側には黄色のテープが高さいっぱいに、また床には黄色の滑り止めも兼ねた点字ブロックがそれぞれ貼付されている。運行情報は2007年1月下旬より、東京地下鉄(東京メトロ)と東京急行電鉄各線に輸送障害が発生した場合の運行状況も表示されるようになった。
- つり革
つり革は黒く、クロスシート上とロングシート上とで長さが異なり、ロングシート上は上下に長い二等辺三角形、その他は正三角形に近い二等辺三角形である。さらに枕木方向のつり革の個数がE231系の2個に対して3個に増設している。また、車両両端部のつり革は少し低い位置に付いている。
- 座席
2005年の登場時から2006年12月まで、基本編成の1・2・9・10号車と付属編成の13~15号車の7両がセミクロスシート、それ以外の8両がロングシートであったが、2007年1月からの基本編成の4・5号車へのグリーン車組み込み(後述)に伴い、9号車にはロングシート車が組み込まれた編成がある。 座席表地の色は茶色がかった色である。1人あたりの座席幅はE231系より10mm広い460mm、床面高さはE231系より35mm低い1,130mmとなっている。そのためホームとの段差がさらに小さくなっている。なお、2006年12月26日から中央快速線に投入されたE233系も同様の寸法を踏襲する。
- トイレ
15両編成中3か所(1・10・11号車)に車いす対応のより大型化されたトイレ(真空吸引式)を設置。これに伴いトイレ脇のドア位置が左右非対称になり、トイレ側の第3ドアと第4ドアの間はロングシート車(10・11号車)では6人掛けに短縮され、セミクロスシート車(1号車)では第4ドア寄りの2人掛けロングシートがない。また基本編成に組み込まれたグリーン車のうち5号車サロE531形の上野寄り車端部にも洋式トイレおよび洗面所が設置されている。
- 放送
自動放送装置および車外スピーカーを搭載する。自動放送では日本語と英語による行先や次の停車駅、ドア開閉方向の他、ドアの半自動設定時の「ドアを開ける際にはボタンを押して下さい」、非常ブレーキ時の「急停車します、ご注意下さい」のメッセージもある。車外スピーカーではドアの半自動設定時の「ドアを開ける場合はボタンを押して下さい」、乗降促進メッセージである「ドアが閉まります、ご注意下さい」や、車掌からの放送や発車メロディの再生が可能である。これにより、発車メロディ操作スイッチのない駅でもメロディを再生することが可能になった。
- その他
- 荷棚は従来のステンレスパイプ製のものからアルミの板状のものになった。
- 補助送風機である天井横流ファンの噴き出し口は、灰色のプラスチックから他鉄道事業者の車両にも見られる端から端まで連続した銀色のアルミ素材に変更された。
[編集] 編成
基本編成10両(1~10号車)+付属編成5両(11~15号車)の15両編成、付属編成5両+付属編成5両の10両編成、基本編成のみの10両編成、付属編成のみの5両編成の4パターンの組み方で運行可能としている。基本編成の編成番号はK-401~、付属編成の場合はK-451~である。
編成中の電動車(M)と付随車(T)の構成(MT比)は基本編成が4M6T、付属編成は2M3Tである。先頭車前面に貫通扉のあった403・415系とは違って非貫通構造としたため、走行中の編成間の通り抜けはできなくなっている。連結位置が固定される基本編成と違い、付属編成の車体側面には号車番号ステッカーは貼付されていない。
- (注)付属編成5両+付属編成5両の10両編成に関しては営業運転での例はない。2005年度の「笠間deおさんぽ号」に使用された車両を土浦へ回送する際は5両+5両で運行した。
常磐線は上野~土浦間が15両または10両編成、土浦~高萩間は10両または5両編成での運転である。2006年8月26日から2007年3月17日まで暫定的に運用していた水戸線(後述)では全線5両編成であった。同線のうち従来プラットホーム有効長が4両編成分しかなかった小田林駅と東結城駅は、5両編成が停車できるように有効長を延伸した。
[編集] 導入計画
2003年時点での計画では、2006年度の秋までに140両を新造して403系および415系鋼製車を置き換え、さらに60両を新造して最終的には290両の陣容となる予定としていたが、グリーン車導入への計画変更により付属編成5両を2本追加製造し、基本10両編成22本220両と付属5両編成16本80両の計300両の陣容とされた。
E531系の登場により、勝田車両センター所属の403系・415系鋼製車が2007年3月17日までに順次置き換えられた。グリーン車を正式に営業開始した2007年3月18日ダイヤ改正後の運用区間は、当初と異なり常磐線上野~高萩間のみに計画が変更された。また、ステンレス車の415系1500番台については、2007年3月18日ダイヤ改正後は水戸線および常磐線友部~原ノ町間で運用されている。
103系を含めた3系列の置き換えが完了した後は、常磐線上野口ではE231系・E501系とあわせて4ドア車両に統一する予定であったが、すべての中距離電車にグリーン車を組み込むこととなったため、当初の計画が変更され、E501系も置き換えられることとなった。E501系は、置き換え終了後は常磐線土浦~草野間と水戸線で限定運用されている。これに併せてトイレも新設された。
[編集] グリーン車
2007年3月18日のダイヤ改正から、上野駅を発着する常磐線中距離電車の全列車でグリーン車の営業が開始された。JR発足後、首都圏での普通列車のグリーン車連結は東海道本線・横須賀線・総武快速線に限定されていたが、2004年10月に湘南新宿ライン・宇都宮線(東北本線)・高崎線に連結列車を拡大したところ利用客が順調に増加したことを受けて、常磐線への導入決定に至った。
グリーン車はE217系やE231系と同一のダブルデッカー構造で、連結位置もE231系と同じ基本編成の4・5号車である。なお、グリーン車は2007年1月6日から順次既存車両に組み込まれ、同年3月17日までは2004年10月15日までの宇都宮線・高崎線と同様に普通車扱いとされたため、客用ドアの横に普通車扱いを示すステッカーを貼付していた。
前記したがグリーン車の組み込みによりE531系の新製計画は変更となり、E501系の運用区間を常磐線土浦~いわき間および水戸線に変更することに伴うトイレ設置などの改造を含めて、既存車両へのグリーン車の組み込み、捻出した車両の他編成への組み換えなどのスケジュールが加わった。一部の付随車を順次グリーン車組み込み予定の編成に組み替える暫定的な措置が行われた他、2006年7月に落成した基本編成のK-413編成からは、付随車4両を抜いた6両編成での配給輸送が行われた。なお、2006年11月をもって製造メーカーからの甲種車両輸送および新津車両製作所からの配給輸送は完了した。
組み替えに備えて落成した車両も、一部は運用されずに我孫子駅の留置線や尾久車両センター・高萩駅構内などに留置されていた。基本編成に各2両連結する44両のグリーン車は、11月16日から東急車輛製造および川崎重工業から順次勝田車両センターに甲種車両輸送された。
2006年11月17日に勝田車両センターにてK-411・K-422編成にグリーン車を連結し、K-411編成が23日に、K-422編成が12月13日に試運転を実施した。その後郡山総合車両センターでK-401編成より順次グリーン車を連結した。これに伴い、2005年に登場した初期基本編成の4・5号車に組み込まれていた普通車は、グリーン車を連結した増備編成の6・9号車への組み替えが行われ、9号車にはロングシート車とセミクロスシート車の編成が存在することとなった。
また、K-410編成に組み込まれているサロE531-14・サロE530-14については不具合の修繕は完了したが、2007年4月時点では当該編成は勝田駅に留置されており、営業運転には使用されていない。
[編集] E531系ギャラリー
運転台。グラスコックピット |
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[編集] 関連商品
- Nゲージ鉄道模型で、関水金属(KATO)より製品化されている。また、Bトレインショーティーでも製品化されている。
[編集] 関連項目
- JR東日本の在来線電車 (■国鉄引継車を含む全一覧 / ■カテゴリ) ■Template ■ノート
[編集] 外部リンク
- 常磐線中距離電車に新型車両を導入!E531系交直流電車(PDF)
- 常磐線普通電車(中距離電車)におけるグリーン車サービス開始及び宇都宮・高崎線におけるグリーン車サービス拡大について(PDF)
- 東洋電機製造・東日本旅客鉄道株式会社E531系電車電気品(PDF)
- 常磐線普通電車(中距離電車)におけるグリーン車のサービス開始予定(PDF)
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