江若鉄道

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湖西線北小松駅上りホーム北端から北望　カーブする細い道が廃線跡（2006年）

江若鉄道（こうじゃくてつどう）は、琵琶湖西岸に沿って滋賀県大津市の浜大津駅から滋賀県高島郡今津町（現高島市）の近江今津駅までを結んでいた鉄道路線、およびその運営を行っていた京阪系列の鉄道会社である江若鉄道株式会社のこと。

1969年に鉄道全線が廃止されたが、会社については鉄道事業廃止後も江若交通として湖西線沿線で路線バスを営業している京阪グループの1バス会社として残っている。

[編集] 路線データ

路線距離（営業キロ）：浜大津～膳所間 2.2km、浜大津～近江今津間 51.0km
軌間：1067mm
駅数：23駅（起終点駅、および膳所駅含む）
複線区間：なし（全線単線）
電化区間：なし（全線非電化）
閉塞方式：

浜大津～膳所間は国鉄東海道本線貨物支線・京阪石山坂本線との共用区間であった。国鉄・江若鉄道は狭軌、京阪は標準軌と軌間が異なるため三線軌条となっていた。廃止まで三線軌条を使って国鉄との貨物の受け渡しを行っていた。

[編集] 概要

近江と若狭をむすぶ目的で設立され、設立時の出資者には当時の滋賀県知事や比叡山延暦寺など地元有力者が名を連ねていた。ちなみに会社発足時点では滋賀県下最大の企業であったという。1921年（大正10年）に滋賀県の三井寺下駅 - 叡山駅間の6kmで開業。10年後の1931年（昭和6年）に浜大津駅 - 近江今津駅間51kmを開通させた。これにより琵琶湖の西の約2/3におよぶ鉄道を開通させたが、以北の建設は人口希薄地帯であるため断念した。戦前にはいち早く気動車を導入するなど先進技術の導入には熱心であった。この気動車の導入は、京阪神圏から行楽客を呼び込むに当たり、電車に慣れた都市の住民に不快な思いをさせては集客に影響するという点が要因であったという。

しかしながら、浜大津～坂本間は京阪の石山坂本線とほぼ並行しており、電車によるフリークエント運転には対抗できなかった。そのため、堅田や今津など坂本以遠からの乗客が中心で、石山坂本線と棲み分けができていた。

戦後は自社オリジナル設計の戦前製ガソリンカーの機関をディーゼルエンジンに換装した車両に加え、国鉄から気動車の大量払い下げを受けて主力車とした他、最新鋭ディーゼル機関車（※）を相次いで導入したが、モータリゼーションに押される形で乗客は減少し経営は苦しくなった。合理化など経営努力で何とか生きながらえてきたが、国鉄湖西線建設が決定したため、同社の鉄道事業が圧迫されるとして、1969年に鉄道事業を廃止し、その鉄道用地を国鉄に売却した。

（※）例えばDD1351は国鉄DD13形ディーゼル機関車の先行試作車の役割を果たしたと言われ、これに先んじて就役している。

実際のところ、この江若鉄道は関西～北陸のバイパス線として将来国鉄に買い上げてもらうために建設されたものであった。湖西線建設の話が持ち上がった頃から地元の有力政治家を巻き込んで鉄道建設公団と交渉にあたり、全線のうち約31kmを湖西線に転用すること、湖西線建設の際はできる限り江若鉄道の駅を引き継ぐことで合意し、江若鉄道の廃止が決定した。ただし買い上げられた路盤の転用率は低く、実際のところ路盤の買い上げを表向きの理由とした営業補償であったようである（国鉄が一部職員の引き受けを確約したことで、交渉が妥結に向かった）。現在でも湖西線の和邇駅～北小松駅間において駅間距離が比較的短いのはその名残である。

江若鉄道の悲願であった若狭地方への鉄道延伸は、第三セクターの琵琶湖若狭湾快速鉄道が若狭リゾートラインとして計画中である。

[編集] 運行形態

1969年の廃止直前においては、浜大津～近江舞子間で毎時2本、近江舞子～近江今津間では毎時1本程度の列車が運行されていた。また朝夕には快速列車も運転された。快速の停車駅は列車によって異なっていたが、叡山、雄琴、堅田、近江舞子、北小松、安曇川、饗庭が基本であり、近江舞子以北は各駅に停車するものもあった。

また、夏季の水泳シーズンには客車（国鉄より借りたものも含む）による臨時列車も多数運行された。1950年代半ばまでは蒸気機関車、それ以後はディーゼル機関車が牽引した。

さらに、戦前には湖西北部のスキー場への輸送のため、大阪を週末の深夜に出発し、早朝に近江今津に着く臨時列車が運行されたこともある。復路は午後に近江今津を発って夜に大阪に帰着するダイヤであった。

[編集] 車両

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[編集] 蒸気機関車

4形（4~12）：部分開業時に順次払い下げを受けた、軸配置1B1の飽和式サイドタンク機関車。
C11形(C11 1,2)：国鉄C11形の同形機。1947年自社発注の1号機は「ひえい」、同年宇部油化工業専用線から転入した2号機は「ひら」と称した。2号機は1953年に三岐鉄道へ、1号機は1957年に雄別鉄道へ譲渡された。

[編集] 気動車

キニ1形：1931年川崎車両および日本車輌製ガソリンカー。近江今津延長線開業に備えて新造された、初のガソリンカー。エンジンはブダBA-6で、80人乗りであった。キニ1・2は1946年に和歌山鉄道へ譲渡されてモハ205・206となり、キニ3は1950年に客車化されてハフ3となって廃線まで使用された。
キニ4形：1931年日本車輌および川崎車両製120人乗り旅客・荷物合造ガソリンカー。日本初の18m級大型気動車である。
キハ7形：1932年に日本車輌が研究用として試作した車両を購入した、66人乗りディーゼルカー。メルセデス・ベンツ社製OM5Sを搭載したが、使いこなせず短期間で客車化され、ハフ7・8となった。
キニ9形：日本車両および川崎車両製120人乗り旅客・荷物合造ガソリンカー。車体長は約19m、流線型だった。
キハ14形：国鉄キハ41000形気動車の払い下げ車両で、エンジンはDA54形に変更されていた。キハ17は1965年に畳を敷かれ、お座敷列車として使用された（この改造はサントリーがビール拡販のため改造費用を出したもので、そのかわりに車内でビール販売を行ったという）。キハ16は御坊臨港鉄道に売却された。
キハ18形：国鉄キハ42000形気動車の払い下げ車両だが、一部に長門鉄道経由で譲受した車両が含まれる。後に一部がキニ4・9形などと共に大改装され、総括制御の「気動車列車」となった。
キハ30形：1963年に向日町の大鉄車両で製造された、最後の自社発注気動車。廃止後、関東鉄道筑波線（のちに筑波鉄道となって1987年に廃止）に売却された。
キハ51形：廃止となった熊延鉄道より譲受した、液体式気動車。ヂハ201・202の2両を譲受してキハ51・52とした。エンジンはDMH17形で、しかもTC-2液体式変速機を搭載していたが、総括制御に対応していなかった。

キニとは荷物車ではなく、国鉄におけるキハニ、つまり荷物合造車のことである。

[編集] ディーゼル機関車

DC301：1952年に新三菱重工で製造されたC型30t級液体式ディーゼル機関車。セルモーター直接ではなく、一旦セルモーターで小型ガソリンエンジンを始動して、これをディーゼルエンジン本体の始動に用いるなど、この時期の新三菱重工製ディーゼル機関車に共通する、特徴的な機構を備える車両であったが、1964年にDC251と入れ替わりで別府鉄道に売却された。
DD1351：1957年に汽車製造で製造された、国鉄DD13形ディーゼル機関車の同級機。翌年より量産が開始された国鉄DD13形第1次車の試作車に当たるとされ、ボンネット前面形状や前照灯形状を除き、外観はほぼ同様でスペック的にもほぼ同等であるが、変速機の構造が異なり、各エンジンがそれぞれ直下の台車を独立して駆動するメカニズムを持つ。このため片エンジンのみでの走行も容易であったが、ほとんどの場合、2エンジンで使用された。
DD1352：DD1351と同じく汽車製造で製造された、増備機。国鉄のDD13形111号以降と同仕様となった。
DC251：1964年に廃止となった熊延鉄道より譲受した、帝国車両製C型25t級液体式ディーゼル機関車。浜大津の入れ替え用として使用されていたDC301の置き換え用として譲受され、全線廃止まで使用された。

[編集] 歴史

1921年（大正10年）3月15日三井寺（後の三井寺下）～叡山間が開業。蒸気動力。
1923年（大正12年）4月1日叡山～雄琴間が開業。
1923年（大正12年）12月1日雄琴～堅田間が開業。
1924年（大正13年）4月1日堅田～和邇間が開業。
1925年（大正14年）4月3日新浜大津（後の浜大津）～三井寺間が開業。
1926年（大正15年）4月11日和邇～近江木戸間が開業。
1926年（大正15年）8月15日近江木戸～雄松（後の近江舞子）間が開業。
1927年（昭和2年）4月1日雄松～北小松間が開業。
1927年（昭和2年）12月15日北小松～大溝（後の高島町）間が開業。
1929年（昭和4年）6月1日大溝～安曇（後の安曇川）間が開業。
1930年（昭和5年）12月9日　ガソリン動力併用認可。気動車導入。翌年以降、当時の日本でも最大級の18m級気動車を大量導入、私鉄業界での先駆例となる。
1931年（昭和6年）1月1日安曇～近江今津間が開業。
1947年（昭和22年）1月25日浜大津～膳所間が開業。
1965年（昭和40年）7月10日浜大津～膳所間廃止。
1969年（昭和44年）11月1日浜大津～近江今津間廃止。
- 営業最終日は10月31日であったが、11月1日の午前中に運賃無料（事前の整理券配布者のみ乗車可）のお別れ列車を運行している。

1974年（昭和49年）7月20日国鉄湖西線山科～近江塩津間が開業。

[編集] 駅一覧

駅名は江若鉄道廃止時点のもの。（臨）とあるのは臨時駅で、競輪場前駅以外は夏季の水泳シーズンのみ開設された。

膳所駅 - 浜大津駅 - 三井寺下駅 - （臨）競輪場前駅 - 滋賀駅 - 叡山駅 - 日吉駅 - 雄琴温泉駅 - 堅田駅 - 真野駅 - 和邇駅 - 蓬莱駅 - 近江木戸駅 - （臨）青柳ヶ浜駅 - 比良駅 - （臨）近江舞子南口駅 - 近江舞子駅 - 北小松駅 - 白鬚駅 - （臨）白鬚浜駅 - 高島町駅 - 水尾駅 - 安曇川駅（あどがわ） - 新旭駅 - 饗庭駅（あいば） - 北饗庭駅（きたあいば） - 近江今津駅