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国鉄C11形蒸気機関車 - Wikipedia

国鉄C11形蒸気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

C11形蒸気機関車(C11がたじょうききかんしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)の前身である鉄道省が製造した過熱式のタンク式蒸気機関車である。

Cのチョンチョンという愛称で呼ばれることもある。

C11 1(2006年5月14日撮影)青梅鉄道公園
C11 1(2006年5月14日撮影)青梅鉄道公園

目次

[編集] 誕生の背景

昭和初期、それまで使われていた明治時代の旧式雑型機を整理するために国産の技術を駆使して新型のタンク機が作られた。その先駈けとなったC10形機関車の欠点である、軸重が重くなって使用線区が限られるという点を改良して製造された。

[編集] 製造

1932年(昭和7年)から1947年(昭和22年)までの16年間に381両が汽車製造会社川崎車輛日立製作所日本車輌製造の各社により生産された。生産時期によって1~4次までのバリエーションがある。C10形に比べると溶接部分が多く、除煙板(デフレクター)が装備されているなどの特徴がある。

また、民間向けに製造されたものも少なくなく、10社へ計18両が納入されている。

  • 1次形(C111~23)
    本形式の基本型で、ボイラー側面の重見式給水加熱装置と、第1缶胴上に設けられた蒸気ドームが特徴である。重見式給水加熱装置は、期待した性能を発揮できなかったため、後に撤去された。
  • 2次形(C1124~140)
    アーチ管が取付けられ、1次形では第2缶胴上にあった砂箱と蒸気ドームの位置が互いに入れ替わった。
  • 3次形(C11141~246)
    貨物列車牽引に対応して軸重増加を図るため、水槽容量を増大したため、側水槽の下端が運転室床面より低くなり、背部炭庫の上辺が水平となった。重見式給水加熱装置は、最初から取付けられていない。
  • 4次形(247~381)
    資材と工数を節約した戦時設計機で、除煙板は木製となり、砂箱と蒸気ドーム被いはかまぼこ形となった。後年の装備改造で3次形までと同様の形態に改められたものが多いが、砂箱と蒸気ドーム被いは原形のまま残ったものがある。

製造年次ごとの番号と両数は次のとおりである。

  • 1932年 - C111~22(22両)
  • 1933年 - C1123~43(21両)
  • 1934年 - C1144~55,57~58(14両)
  • 1935年 - C1156,59~84(27両)
  • 1936年 - C1185~98(14両)
  • 1937年 - C1199~125(27両)
  • 1938年 - C11126~140(15両)
  • 1940年 - C11141~200,215~226(72両)
  • 1941年 - C11201~208(8両)
  • 1942年 - C11209~214,227~238(18両)
  • 1943年 - C11239~251,267(14両)
  • 1944年 - C11252~266,268~281(29両)
  • 1945年 - C11282~311(30両)
  • 1946年 - C11312~370(59両)
  • 1947年 - C11371~381(11両)

製造所別の番号と両数は次のとおりである。

  • 汽車製造(60両)
    • C111~8,30~34,55,56,66~68,76~78,84,133~170
  • 川崎車輛(88両)
    • C119~16,24~29,35~44,49~54,59~65,72~75,81~83,93~98,113~120,171~200
  • 日立製作所(53両)
    • C1117~21,45~48,79,80,85~92,99~101,105~109,121~125,201~214,247~251,*266,*267
  • 日本車輛製造(180両)
    • C1122,23,57,58,69~71,102~104,110~112,126~132,215~246,252~265,268~381
(*) 266,267は、宇部鉄道および樺太庁鉄道へ割当ての予定であったが、直接鉄道省に編入された。

[編集] 民間向けの同形機

前述のとおり、10社へ18両が納入されている。

  • 日本炭鉱高松鉱業所 - ここの2両は、除煙板を装備していなかった。
    • C1101 - 1941年・日立製作所
    • C1102 - 1943年・日立製作所
  • 松尾鉱業
    • C118 - 1942年・日立製作所→1952年譲渡・雄別鉄道C118(1970年廃車)
  • 樺太人造石油
    • C111 - 1942年・日立製作所(ソ連接収後の消息不明)
    • C112 - 1944年・日立製作所(同上)
  • 宇部油化工業
    • 101 - 1944年2月・日立製作所→1947年譲渡・江若鉄道ひら」→1950年改番・C112→1953年5月譲渡・三岐鉄道C111→1955年1月譲渡・羽幌炭礦鉄道C111(1970年12月廃車)
  • 内淵人造石油(樺太)
    • 4~6 - 1944年・日本車輛製造(ソ連接収後の消息不明)
  • 東武鉄道
    • C112 - 1945年・日本車輛製造(奥多摩電気鉄道発注。1963年廃車)
  • 雄別炭礦尺別専用鉄道 - 砂箱が角形、蒸気ドームが丸形、除煙板も角張った戦時形
    • C1101 - 1944年7月・日本車輛製造→1944年11月譲渡・三菱鉱業大夕張鉄道(1972年9月30日廃車。長島温泉SLランドに保存後解体)
  • 江若鉄道
    • ひえい」 - 1947年・日本車輛製造→改番C111→1957年譲渡・雄別鉄道(埠頭線)C111→1970年譲渡・釧路開発埠頭C111
  • 三井鉱山芦別鉱業所専用鉄道→三井芦別鉄道
    • C11-1~3 - 1947年・日本車輛製造→1950年8月10日移動(3)、1953年9月6日移動(1,2)・三井鉱山砂川鉱業所奈井江専用鉄道
  • 同和鉱業片上鉄道
    • C11-101 - 1947年5月・日本車輛製造(1968年10月29日廃車)
    • C11-102,103 - 1949年・川崎車輛(1968年4月1日廃車)

[編集] 運用

最初は主に西日本の都市近郊や主要支線で活躍し始めたが、やがて活躍の場を広げほぼ全国各地に配属され、主にローカル線の列車牽引に活躍した。気動車が普及するにつれて余剰となるものも出始め、1960年頃から廃車が少しずつ出たが、使いやすさには定評があり、貨物列車用や入換用として蒸気機関車の末期まで数多くが残り、その姿を見ることができた。

[編集] 譲渡

本形式の払下げは、雄別鉄道への3両とラサ工業宮古工場専用鉄道への1両(C11247)の計4両のみである。

雄別鉄道へは、C1165が1961年(昭和36年)、C11127が1962年、C113が1964年(昭和39年)に国鉄から払下げられ、江若鉄道からのC111、松尾鉱山鉄道からのC118とともに5両体制で1970年の廃止まで貨物列車の牽引用に使用された。

[編集] 主要諸元

(1次車の諸元を示す。)

  • 全長:12650mm
  • 全高:3900mm
  • 軸配置:2-6-4(1C2)
  • 動輪直径:1520mm
  • 弁装置:ワルシャート式
  • シリンダー(直径×行程):450mm×610mm
  • ボイラー圧力:14.0kg/cm²(のち15.0kg/cm²)
  • 火格子面積:1.60m²
  • 全伝熱面積:103.0m²
    • 過熱伝熱面積:29.8m²
    • 全蒸発伝熱面積:73.2m²
      • 煙管蒸発伝熱面積:63.2m²
      • 火室蒸発伝熱面積:10.0m²
  • ボイラー水容量:3.8m³
  • 大煙管(直径×長サ×数):127mm×3200mm×24本
  • 小煙管(直径×長サ×数):45mm×3200mm×87本
  • 機関車運転整備重量:66.05t
  • 機関車空車重量:51.90t
  • 機関車動輪上重量:36.96t(運転整備時)
  • 機関車動輪軸重(最大):12.40t(第3動輪上)
  • 水タンク容量:6.8m³
  • 燃料積載量:3.00t
  • 機関車性能
    • シリンダ引張力:
    • 粘着引張力:
    • 動輪周馬力:

[編集] 保存機

[編集] 動態保存

小型で運転線区を選ばず扱いやすいことから、2006年現在、日本の動態保存中の蒸気機関車としては最多の6両が各地で保存運転を行なっている。

[編集] 真岡鐵道 325号機

SL会津只見号としてJRへ出張運転をする真岡鐵道のC11325。2006年10月9日 只見線 会津蒲生-会津塩沢にて
SL会津只見号としてJRへ出張運転をする真岡鐵道のC11325。2006年10月9日 只見線 会津蒲生-会津塩沢にて

1946年(昭和21年)3月28日:日本車輌熱田工場にて落成。1943年から1947年にかけて合計135両と最も多く製造された4次形の1両として、製造された。本機が製造された時期は日本にとって、苦難の時代であった。戦争のため物資の不足や徴兵による熟練工の不足、空襲による生産設備破壊など過酷な環境下で生産が行われた。このため、木製除煙板や角形(かまぼこ形)の蒸気ドーム・砂箱など「戦時設計」「戦時工程」による大幅な簡素化が図られた。325号機も、戦時設計による角型のドームを有していた。

本機はまず、東海道本線の茅ヶ崎機関区に配属され、相模線南武線、入換などに用いられた。21年後の1967年(昭和42年)3月、奥羽本線の米沢機関区へと転出し、米坂線左沢線で使用された。1972年(昭和47年)、左沢線でSL運行が終了されるにあたり、本機が「SLさよなら列車」を牽引し、その後廃車とされた。翌1973年(昭和48年)、新潟県水原町(現:阿賀野市)水原中学校に無償譲渡、静態保存されることとなった。

1996年(平成8年)、C12 66により「SLもおか号」を運行していた真岡鐵道が、予備機として使用するため、3月27日に水原中学校から真岡鐵道:真岡駅前に移設された。翌1997年(平成9年)11月より、JR東日本大宮工場(現:大宮総合車両センター)にて動態復元工事が行われた。この復元工事にあたり、元の設計の1次形にならい、戦時設計だった角(かまぼこ)型ドームを通常の丸型ドームに付け替えた。翌1998年(平成10年)9月に動態復活を果たし、10月に真岡鐵道に引き渡された。同月9日より試運転が行われ、この時「SLもおか号」を牽引していたC12 66との重連での試運転が幾度か行われた。11月1日、全国の第三セクター鉄道による「ふるさとレールフェスタ」に併せて、C12 66を従えて初の営業運転に投入された。

その後は、ホームグラウンドである真岡鐵道での「SLもおか号」のC12 66の予備機、及び重連運転用としての使用のほか、2001年(平成13年)にはJR東日本への貸し出され、出張運転も実現した。以下は、本機の出張履歴である。

  • 2001年10月6~8日・2004年2月7・8日 只見線会津若松~只見「SL&DL会津只見号
    • 只見線全線開通30周年を記念しての特別復活。この時は帰りの会津若松行きをDE10形牽引。
    • 2004年運転は、初の冬季運行。豪雪の中を運転。
  • 2002年10月12~14日他 只見線会津若松~只見「SL会津只見号
    • 只見駅の転車台を整備して復活。以後、毎年運行につき、省略。
  • 2003年4月1~4日 八戸線八戸~久慈「SLうみねこ号
    • 北東北デスティネーションキャンペーンのオープニングイベントとして運行。
  • 2003年9月27・28日・2004年7月19日 陸羽西線新庄~酒田「SLもがみ号
    • 別称「SLおしん号」。帰りの酒田→新庄はバック運転。
    • 翌年は「おいしい山形デスティネーションキャンペーン」の一環としても再運転。
  • 2004年2006年 磐越東線郡山~いわき「SLあぶくま号
  • 2004年7月1~4日・2005年9月17~19日 左沢線山形~左沢「SLおいしい山形号
    • 「おいしい山形デスティネーションキャンペーン」のオープニングを飾った。32年ぶりの里帰り運転。
    • 好評のため、翌年にも「秋祭り号」として臨時運転。
    • 2007年6月9・10日は「SLさくらんぼ号」として臨時運転を予定。


[編集] JR北海道 171号機と207号機

冬の湿原号として活躍するJR北海道のC11171・207。2002年1月20日 釧網本線 美留和-川湯温泉にて
冬の湿原号として活躍するJR北海道のC11171・207。2002年1月20日 釧網本線 美留和-川湯温泉にて

1995年(平成7年)惜しまれながら運転終了となったC62ニセコ号から4年半を経た1999年(平成11年)に、「SLすずらん号」として171号機が動態復元されることとなった。

171号機は1940年(昭和15年)川崎車両にて製造。1942年(昭和17年)から廃車まで、北海道を出ることなく過ごしていた。廃車後、標茶町の桜町児童公園にて静態保存されていたが、JR北海道からの要請で苗補工場にて動態復元がなされた。「SLすずらん号」としての運転開始を皮切りに、「SL函館大沼号」「SLふらの・びえい号」、「SL冬の湿原号」など道内のSL列車に用いられた。

207号機は1941年(昭和16年)日立製作所笠戸工場にて製造。171号機と同じく、一生を北海道で過ごした機関車である。濃霧の多い線区で使用されたため、ヘッドライトが除煙板のステー上に2個装備されている、「カニ目」と呼ばれる独特なスタイルとなっている。207号機は2000年(平成12年)に動態復元されたが、復活1年目は車軸の異常な発熱により、まともに走ることが出来ず、翌年になって本領を発揮。「SLニセコ号」を中心に、「SL冬の湿原号」などにも使用され、時折171号機と重連運転も実施している。


[編集] 大井川鐵道 190・227・312号機

大井川で一番新しいC11190。撮影年月日不明 千頭駅
大井川で一番新しいC11190。撮影年月日不明 千頭駅

大井川鐵道では、3両のC11が動態保存されている。いずれも「SLかわね路号」として、大井川本線:金谷~千頭を1往復している。桜の時期やゴールデンウィークは臨時増発も実施され、C11が全車稼動することがある。2007年2月現在で状態的に良好なのは、2003年(平成15年)に大井川鐵道で一番新しく復活させた190号機、次いで1976年(昭和51年)からずっと走ってきているパイオニアの227号機、調子が悪いのが、現役時代会津若松で活躍していた312号機と言われている。しかし、227号機は年々傷みが目立ってきているため、こちらも安泰とはいえない。

[編集] 参考文献

  • 小沢年満「C11 190号機 復活への道程」
交友社『鉄道ファン』2002年8月号 No.496 p168~p170
  • 白井昭・橋本英樹「大井川鐵道C11 190号機の復元工事状況」
交友社『鉄道ファン』2002年7月号 No.495 p126~p129
  • 種村直樹「大井川でC11 190号機復活運転 提供者、社員、ファンの総意が実る
鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』2003年10月号 No.444 p64~p69


[編集] 静態保存

新橋駅前のSL(2003年12月22日撮影)
新橋駅前のSL(2003年12月22日撮影)

国鉄を代表する蒸気機関車の一つであるC11形は廃車後、全国各地で静態保存された。このうち1号機は青梅鉄道公園に、64号機は梅小路蒸気機関車館に保存されている。

また、ニュース番組などで「新橋のSL広場前から…」と言う事があるが、その新橋駅SL広場にあるのは本形式の292号機である。

  • 北海道地方
    • C11209 - 北海道標津郡中標津町「中標津町郷土館」
    • C11224 - 北海道標津郡標津町「公民館」
    • C1165(雄別鉄道) - 北海道釧路市「炭鉱と鉄道館」
    • C11133 - 北海道苫小牧市「苫小牧市科学センター」
  • 関東地方
  • 中部地方
    • C1146 - 新潟県魚沼市「湯之谷児童公園」
    • C11217 - 富山県高岡市「高岡市民体育館」
    • C11296 - 愛知県幡豆郡幡豆町「愛知こどもの国」
    • C11265 - 愛知県半田市「半田市民ホール」
    • C11155 - 岐阜県大垣市「スイトピアセンター」こどもサイエンスプラザ
  • 四国地方
  • 九州地方
    • C11131 - 福岡県直方市「直方市石炭記念館」
    • C11260 - 福岡県中間市「垣生公園」
    • C11257 - 福岡県糟屋郡須恵町「皿山公園」
    • C1161 - 福岡県八女郡黒木町「黒木公園」
    • C11259 - 佐賀県武雄市「東児童遊園地」
    • C11270 - 大分県玖珠郡玖珠町「三島公園」
    • C11191 - 宮崎県宮崎市「総合福祉センター」内交通公園

[編集] ギャラリー

[編集] 関連商品

国鉄C11形蒸気機関車はNゲージ鉄道模型として関水金属(KATO)及びマイクロエースからそれぞれ製品化されている。ちなみにマイクロエースでは207号機が製品化されているが、これは「C11-207 2ツ目」という商品名で、国鉄時代の姿をプロトタイプとしたものである。偶然にもその後実車がJR北海道によって動態復元されたため、それに合わせて実車同様の仕様変更を施した「C11-207 復活ニセコ」が製品化された。

また、プラレールでも製品化されている。

日本国有鉄道鉄道院・鉄道省)の制式蒸気機関車
タンク機関車
9601000II・1070・1150B10B202700II・2900・3500C10C11C124100・4110E10
テンダー機関車
6700・67506760B50
86208700880088508900C50C51C52C53C54C55C56C57C58C59C60C61C62C63(計画のみ)
90209550・958096009750・9800・9850D50D51D52D60D61D62

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