空中衝突
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空中衝突(くうちゅうしょうとつ)とは、飛行中の複数の航空機が接触する航空事故のこと。
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[編集] 概要
古くは1920年代からこの種の航空事故は度々発生していたが、特に第二次世界大戦後の旅客機の普及に伴う航空路の過密化に伴い、1950年代から1960年代のアメリカで多発した。
主な原因として、航空管制のミスやパイロットによる周辺確認の不十分の他、空軍などの軍用機の訓練空域と民間航空機の航空路が接近しすぎていることなどがあるが、近年は、航空管制技術や航空機の衝突防止警告機能の性能向上に伴い、アメリカや日本などの先進国における空中衝突事故は減少したものの、近年においても発展途上国やロシアを中心に数年に1回のペースで発生している。
また、事故原因は「不明」とされたものの、訓練用ミサイルや無人標的機との空中衝突などが原因と推測される事故も度々報告されている。
[編集] 主な空中衝突事故
[編集] 1930年代-1950年代
- 1935年5月18日:モスクワ上空をデモンストレーション飛行していたソビエト軍のツポレフANT-20「マクシム・ゴーリキー」が、同じくデモンストレーション飛行していたツポレフI-5戦闘機と空中衝突し墜落、45人が死亡した。
- 1942年10月23日:アメリカン航空28便(ダグラスDC-3)、アメリカ陸軍航空隊のロッキードB-34ベンチュラ爆撃機と空中衝突し、カリフォルニア州チノキャニオン付近に墜落。12人死亡。
- 1956年6月30日:トランス・ワールド航空2便(ロッキード・コンステレーション)とユナイテッド航空718便(ダグラスDC-7C)、アリゾナ州上空で空中衝突し、両機とも墜落。
- 1958年4月21日:ユナイテッド航空736便(ダグラスDC-7)とアメリカ空軍のノースアメリカンF-100Fスーパーセイバーがネバダ州スローン市で空中衝突し両機とも墜落した。44人死亡。
[編集] 1960年代-1980年代
- 1960年12月16日:ユナイテッド航空826便(ダグラスDC-8-11)とトランスワールド航空266便(ロッキード-1049スーパーコンステレーション)がニューヨーク州郊外のミラー空軍基地上で空中衝突し両機とも墜落。134人死亡。
- 1963年2月1日:MEA航空265便(ビッカース・バイカウント754D)とトルコ空軍のダグラスC-47が、トルコ・アンカラ上空で空中衝突し両機とも墜落した。乗客乗員と住人の合計87名が死亡した。
- 1969年9月20日:エア・べトナムのダグラスDC-4とアメリカ空軍のF-4EファントムII戦闘機が南ベトナムのダナン空港上空で空中衝突し、エア・べトナム機が墜落。77人死亡。戦闘機のパイロットは脱出。
- 1971年7月30日:全日空(ANA)58便(ボーイング727)、岩手県雫石町上空で航空自衛隊松島基地(宮城県)所属のF-86F戦闘機と衝突し墜落(全日空機雫石衝突事故)。その後の刑事裁判では、双方に見張り不足があったが、自衛隊機側の責任がより重かったと判断された。
- 1973年3月5日:イベリア航空504便(DC-9-32)と、スパンタックス航空のコンベア990"コロナド"が、管制ミスによりフランスのラ・プランシュ上空で空中衝突し、イベリア航空機が墜落し計68名が死亡した。
- 1976年9月10日:ブリティッシュ・エアウェイズ476便(BAeトライデント3B)とイネックス・アドリア航空550便(DC-9-32)が、管制ミスによりユーゴスラビアのザグレブ上空で空中衝突し、両機とも墜落した。この事故両機の乗客乗員全員と地上の住民1名の計177名が死亡した。
- 1977年3月27日:(地上衝突)KLMオランダ航空 4805便(ボーイング747)とパンアメリカン航空 1736便(ボーイング747)がスペイン領カナリア諸島テネリフェ島のロス・ロデオス空港で離陸滑走中に衝突。583名死亡。(航空史上最大の航空事故、テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故)。
- 1986年1月31日:アエロメヒコ航空498便(マクダネル・ダグラスDC-9)、ロサンゼルス国際空港へ着陸進入中に空路へ侵入してきた自家用機(パイパーPA-28)と衝突。82人死亡。
[編集] 1990年代-
- 1993年2月8日:イラン・エア・ツアーズのツポレフTu-154Mと、訓練中のイラン空軍のスホーイSu-24戦闘機が、カラジ空軍基地上空で空中衝突し基地内に墜落した。この事故でイラン・エア・ツアーズ機の乗客乗員全員とイラン空軍機のパイロット2名の計134名全員が死亡した。
- 1993年12月10日:エア・セネガルのデハビランドDHC-6と、ガンビア航空の日本航空機製造YS-11が、セネガルのダカール上空で空中衝突し、エア・セネガル機が墜落し乗員3名が死亡した。
- 1996年11月12日:サウジアラビア航空763便(ボーイング747-100)と、カザフスタン航空1907便(ツポレフTu-154)が、インドのニューデリー空港の北西上空を飛行中に空中衝突し、両機の乗客乗員全員計350名が死亡した。
- 2002年7月1日:バシキール航空2937便(ツポレフTu-154M型機)とDHL611便(ボーイング757-200貨物機)が、ドイツのユーバリンゲン上空でスイス管制官の管制ミスにより空中衝突し墜落。71人死亡。