豊橋鉄道渥美線
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渥美線(あつみせん)は、愛知県豊橋市の新豊橋駅から田原市の三河田原駅までを結ぶ豊橋鉄道の鉄道路線である。
渥美半島の城下町として発展した田原市や開発が進む沿線からの豊橋などへの通勤・通学路線となっている。三河田原駅で同社の伊良湖岬方面とのバスと連絡しており、豊橋駅~伊良湖岬間のバスを補完する行楽路線ともなっている。
目次 |
[編集] 路線データ
[編集] 運行形態
現在は全て普通列車で、昼間は新豊橋~三河田原間の列車が完全15分間隔で運転されている。朝は各駅の停車時間を確保する等の理由で、14~18分間隔の変則的なダイヤで、9時頃から完全15分間隔になる。行き違い駅は、小池、芦原、大清水、杉山、神戸である(早朝には高師で行き違いをする列車もある)。
また深夜22時頃から20分間隔になり、行き違い駅は小池、植田、杉山となる。
[編集] 利用状況
[編集] 輸送実績
渥美線の近年の輸送実績を下表に記す。輸送量が増加した時期もあったが、最近では若干減少している。ただし、他の中小私鉄路線で見られるような通学定期の減少があまりない上に、輸送量全体の落ち込みも他線区と比較すれば少なく、非常に健闘している。 表中、輸送人員の単位は万人。輸送人員は年度での値。表中、最高値を赤色の枠で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色の枠で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色の枠で囲んで表記している。
年 度 | 輸送実績(乗車人員):万人/年度 | 貨物輸送量 万t/年度 |
特 記 事 項 | |||
通勤定期 | 通学定期 | 定期外 | 合計 | |||
1975年(昭和50年) | 168.3 | 271.4 | 343.0 | 782.7 | 20.7 | |
1976年(昭和51年) | 147.6 | 262.0 | 329.1 | 738.7 | 22.7 | |
1977年(昭和52年) | 147.5 | 276.1 | 321.6 | 745.3 | 21.6 | |
1978年(昭和53年) | 136.9 | 288.7 | 310.3 | 736.1 | 22.1 | |
1979年(昭和54年) | 137.6 | 284.3 | 319.1 | 741.1 | 21.4 | |
1980年(昭和55年) | 135.3 | 276.5 | 330.7 | 742.5 | 14.9 | |
1981年(昭和56年) | 131.9 | 270.4 | 335.8 | 738.2 | 10.1 | |
1982年(昭和57年) | 129.6 | 243.5 | 319.9 | 693.0 | 8.3 | |
1983年(昭和58年) | 120.4 | 244.5 | 313.9 | 678.8 | 5.2 | 貨物営業廃止 |
1984年(昭和59年) | 114.7 | 229.9 | 295.3 | 639.9 | 0.0 | |
1985年(昭和60年) | 107.3 | 223.8 | 307.4 | 638.5 | 0.0 | 急行を廃止 |
1986年(昭和61年) | 107.3 | 225.5 | 323.9 | 656.7 | 0.0 | |
1987年(昭和62年) | 109.3 | 223.4 | 322.9 | 655.6 | 0.0 | |
1988年(昭和63年) | 111.2 | 233.1 | 333.7 | 678.0 | 0.0 | |
1989年(平成元年) | 112.0 | 239.7 | 345.2 | 696.9 | 0.0 | 神戸駅開業 |
1990年(平成2年) | 112.0 | 256.5 | 366.6 | 735.1 | 0.0 | |
1991年(平成3年) | 112.8 | 269.2 | 388.7 | 770.7 | 0.0 | |
1992年(平成4年) | 108.9 | 274.6 | 400.4 | 783.9 | 0.0 | |
1993年(平成5年) | 104.0 | 276.1 | 410.0 | 790.1 | 0.0 | |
1994年(平成6年) | 100.6 | 283.6 | 403.9 | 788.1 | 0.0 | |
1995年(平成7年) | 99.4 | 277.3 | 402.0 | 778.7 | 0.0 | |
1996年(平成8年) | 98.9 | 272.6 | 406.1 | 777.6 | 0.0 | |
1997年(平成9年) | 99.1 | 264.9 | 403.2 | 767.2 | 0.0 | 架線電圧昇圧 全車両冷房化 |
1998年(平成10年) | 98.6 | 266.5 | 394.4 | 759.5 | 0.0 | |
1999年(平成11年) | 93.5 | 263.8 | 386.2 | 743.5 | 0.0 | |
2000年(平成12年) | 90.7 | 272.7 | 383.2 | 746.6 | 0.0 | |
2001年(平成13年) | 91.9 | 273.9 | 377.9 | 743.7 | 0.0 | |
2002年(平成14年) | 88.9 | 274.0 | 371.5 | 734.4 | 0.0 | |
2003年(平成15年) | 84.5 | 279.5 | 369.6 | 733.6 | 0.0 | |
2004年(平成16年) | 88.3 | 271.4 | 363.1 | 722.8 | 0.0 | |
2005年(平成17年) | ||||||
2006年(平成18年) |
[編集] 収入実績
渥美線の近年の収入実績を下表に記す。最近では、収入総合計額の変動は少なく、比較的良好な運営状態といえる。 表中、収入の単位は千円。数値は年度での値。表中、最高値を赤色の枠で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色の枠で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色の枠で囲んで表記している。
年 度 | 旅客運賃収入:千円/年度 | 貨物運輸 収入 千円/年度 |
運輸雑収 千円/年度 |
総合計 千円/年度 |
||||
通勤定期 | 通学定期 | 定期外 | 手小荷物 | 合 計 | ||||
1975年(昭和50年) | 243,363 | ←←←← | 321,504 | 9,170 | 574,037 | 38,641 | 27,194 | 639,872 |
1976年(昭和51年) | 281,390 | ←←←← | 359,780 | 11,592 | 652,762 | 52,064 | 30,190 | 735,016 |
1977年(昭和52年) | 288,888 | ←←←← | 375,306 | 13,679 | 677,874 | 61,639 | 13,821 | 753,335 |
1978年(昭和53年) | 316,442 | ←←←← | 403,076 | 12,568 | 732,087 | 66,561 | 15,845 | 814,494 |
1979年(昭和54年) | 338,470 | ←←←← | 436,749 | 11,220 | 786,439 | 70,655 | 16,696 | 873,792 |
1980年(昭和55年) | 374,413 | ←←←← | 495,106 | 8,464 | 877,983 | 59,709 | 15,902 | 953,595 |
1981年(昭和56年) | 371,049 | ←←←← | 500,216 | 6,493 | 877,758 | 47,293 | 13,480 | 938,532 |
1982年(昭和57年) | 385,806 | ←←←← | 541,397 | 3,886 | 931,089 | 39,623 | 15,034 | 985,746 |
1983年(昭和58年) | 371,305 | ←←←← | 530,411 | 2,214 | 903,929 | 24,614 | 14,282 | 942,825 |
1984年(昭和59年) | 372,296 | ←←←← | 537,148 | 1,784 | 911,227 | 0 | 12,943 | 924,170 |
1985年(昭和60年) | 358,759 | ←←←← | 563,183 | 1,979 | 923,921 | 0 | 12,470 | 936,391 |
1986年(昭和61年) | 362,167 | ←←←← | 595,933 | 1,750 | 959,850 | 0 | 11,967 | 971,817 |
1987年(昭和62年) | 160,268 | 202,630 | 595,483 | 1,342 | 959,723 | 0 | 11,087 | 970,810 |
1988年(昭和63年) | 162,085 | 216,868 | 520,166 | 1,255 | 1,000,374 | 0 | 11,392 | 1,011,766 |
1989年(平成元年) | 165,246 | 224,636 | 658,010 | 1,316 | 1,049,208 | 0 | 12,520 | 1,061,728 |
1990年(平成2年) | 165,321 | 247,200 | 708,621 | 1,253 | 1,122,395 | 0 | 16,192 | 1,138,587 |
1991年(平成3年) | 165,949 | 256,767 | 753,357 | 1,223 | 1,177,296 | 0 | 16,980 | 1,194,276 |
1992年(平成4年) | 160,449 | 265,503 | 774,250 | 1,322 | 1,201,524 | 0 | 16,259 | 1,217,783 |
1993年(平成5年) | 154,090 | 267,782 | 791,882 | 1,292 | 1,215,046 | 0 | 16,432 | 1,231,478 |
1994年(平成6年) | 147,965 | 277,354 | 782,522 | 1,254 | 1,209,095 | 0 | 15,355 | 1,224,450 |
1995年(平成7年) | 145,660 | 273,111 | 779,641 | 1,294 | 1,199,706 | 0 | 17,305 | 1,217,011 |
1996年(平成8年) | 143,254 | 274,457 | 795,706 | 1,174 | 1,214,591 | 0 | 15,966 | 1,230,557 |
1997年(平成9年) | 139,996 | 265,102 | 796,366 | 1,116 | 1,202,580 | 0 | 17,472 | 1,220,052 |
1998年(平成10年) | 140,439 | 262,161 | 786,456 | 1,089 | 1,190,145 | 0 | 15,510 | 1,205,655 |
1999年(平成11年) | 138,009 | 259,496 | 772,878 | 1,115 | 1,171,498 | 0 | 16,161 | 1,187,659 |
2000年(平成12年) | 135,237 | 267,117 | 769,992 | 1,134 | 1,173,480 | 0 | 16,093 | 1,189,573 |
2001年(平成13年) | 136,050 | 268,567 | 760,794 | 1,066 | 1,166,477 | 0 | 17,250 | 1,183,727 |
2002年(平成14年) | 129,957 | 269,126 | 754,767 | 893 | 1,154,443 | 0 | 15,300 | 1,169,743 |
2003年(平成15年) | 120,999 | 276,959 | 758,996 | 876 | 1,157,830 | 0 | 20,455 | 1,178,285 |
2004年(平成16年) | 127,555 | 270,871 | 750,060 | 904 | 1,149,390 | 0 | 30,117 | 1,179,507 |
2005年(平成17年) | ||||||||
2006年(平成18年) |
[編集] 車両
現在は全て元東京急行電鉄の7200系が1800系と改称され、3両編成で運用されている。
渥美線では、代々譲渡車を使用している関係で、車両形式4桁のうち、千の位と百の位で車体長を表している(例外は7300系)。そのため、1800系は「18m車」ということを表している。
[編集] 設備
工場は高師駅構内にあり、検査等は全てここで行う。留置線は三河田原駅にもあり、夜間の停泊はここで行うことが多い。また留置線なら新豊橋~柳生橋間の花田信号所にもあるが、ここはかつて国鉄との貨物のやりとりをしていたところで、現在は車両搬入時と余剰車の疎開場所として使用され、それ以外にはほとんど使用されていない。
行き違い可能駅は、小池・高師・芦原・植田・大清水・老津・杉山・神戸・三河田原の9駅である。高師は1面2線の島式ホーム、三河田原は2面3線と留置線、その他の駅は2面2線の対面式ホームである。
[編集] 車両運用
日中は6編成使用され、残りは高師駅で検査、または留置をされている。また昼間にはたまに車両交換が行われるが、その際は高師駅で行われる。
なお、車両交換は必ず上り列車(新豊橋行き)で行う。これは、高師駅下り列車に対する場内・出発信号機が下り本線進入・進出の1進路しか無いのに対して、上り列車に対する場内・出発信号機は上り・下り本線進入・進出の2進路に対応しているためである。
[編集] 歴史
渥美半島を縦貫する鉄道として計画され、渥美電鉄により師団口(のちの高師口)~三河田原間が1924年中に開業した。豊橋への乗り入れは、市街地であるため土地取得に手間取ったものの、1927年に現在の新豊橋駅まで開業した。
路線は後に黒川原駅まで延伸されたが、資金難から黒川原以西への延長は1934年に断念。渥美電鉄は名古屋鉄道の経営傘下に入った後、1940年に合併され名鉄渥美線となった。
しかし、鉄道敷設法で「愛知県豊橋ヨリ伊良湖岬ニ至ル鉄道」として挙げられ、陸軍技術研究所(伊良湖試砲場)などもあることから国鉄線として建設することになり、黒川原~三河福江~堀切間が新設線として着工されたが、戦局の悪化から建設は中断。三河田原~黒川原間が不要不急路線として休止された。豊橋~黒川原間は渥美線を国有化する予定であったが終戦により立ち消えとなった。
名古屋鉄道は1954年に渥美線新豊橋~三河田原間を豊橋鉄道に譲渡。休止中の三河田原~黒川原間を廃止した。
- 1924年1月22日 渥美電鉄が高師~豊島間を開業。直流600V電化。
- 1924年3月8日 豊島~神戸間が開業。
- 1924年4月25日 師団口(後の高師口)~高師間が開業。
- 1924年6月10日 神戸~三河田原間が開業。
- 1925年5月1日 新豊橋(現在の花田信号所)~師団口間が開業。
- 1926年4月10日 三河田原~黒川原間が開業。
- 1927年10月1日 新豊橋~花田間が開業。これまでの新豊橋駅を花田駅に改称。
- 1930年5月29日 高師~黒川原間を軌道法による軌道から地方鉄道法による鉄道に変更。
- 1931年5月9日 新豊橋~高師間を軌道法による軌道から地方鉄道法による鉄道に変更。
- 1940年9月1日 名古屋鉄道が渥美電鉄を合併。渥美線とする。
- 1943年11月1日 師団口駅を高師口駅に改称。
- 1944年6月5日 名古屋鉄道が渥美線三河田原~黒川原間を休止。花田駅を廃止し花田操車場とする。高師口駅、谷熊駅、神戸駅など休止。
- 1947年1月10日 陸軍病院前駅を南栄駅に改称。
- 1954年10月1日 名古屋鉄道が渥美線新豊橋~三河田原間を豊橋鉄道へ譲渡。
- 1954年11月20日 名古屋鉄道が休止中の渥美線三河田原~黒川原間を廃止。
- 1959年1月16日 向ヶ丘駅開業。
- 1965年10月1日 急行を運転開始。
- 1968年4月1日 高師口駅を大学前駅として営業再開。
- 1971年4月1日 谷熊駅をやぐま台駅として営業再開。
- 1984年2月1日 貨物営業廃止。花田操車場を信号場に格下げ。
- 1985年9月1日 急行を廃止。
- 1989年7月10日 神戸駅開業(神戸信号場の格上げ)。
- 1997年7月2日 架線電圧を1500Vに昇圧。名鉄7300系(計28両)に全車置き換え、全車両冷房化。「なのはな号」と「なぎさ号」が登場。
- 2000年12月22日 元東急7200系の1800系営業運転開始(当時2編成)。
- 2002年3月31日 7300系で最後まで残った7304F(初代なのはな号)が引退(解体済み)。
- 2005年1月29日 大学前駅を愛知大学前駅に改称。
[編集] 駅一覧
運行されている列車は普通列車のみ。全駅に停車。
駅名 | 営業キロ | 接続路線 | 列車交換可能 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|
営業中の区間 | |||||
新豊橋駅 | 0.0 | 東海旅客鉄道:東海道新幹線・東海道本線・飯田線(豊橋駅) 名古屋鉄道:名古屋本線(豊橋駅) 豊橋鉄道:東田本線(駅前駅) |
愛知県 | 豊橋市 | |
花田信号所 | (0.4) | ||||
柳生橋駅 | 1.0 | ||||
小池駅 | 1.7 | ○ | |||
愛知大学前駅 | 2.5 | ||||
南栄駅 | 3.2 | ||||
高師駅 | 4.3 | ○ | |||
芦原駅 | 5.3 | ○ | |||
植田駅 | 6.3 | ○ | |||
向ヶ丘駅 | 7.1 | ||||
大清水駅 | 8.5 | ○ | |||
老津駅 | 10.7 | ○ | |||
杉山駅 | 12.7 | ○ | |||
やぐま台駅 | 14.0 | 田原市 | |||
豊島駅 | 15.5 | ||||
神戸駅 | 17.1 | ○ | |||
三河田原駅 | 18.0 | ○ | |||
廃止区間 | |||||
加治駅 | 19.5 | 愛知県田原市 | |||
黒川原駅 | 20.9 |
※駅名は廃止時点、所在地は現在のもの。