Netscape Navigator
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
開発元: | Mercurial Communications for AOL |
---|---|
最新版: | 8.1.3 / 2007年4月3日 |
対応OS: | Windows 98 / Me / 2000 / XP |
プラットフォーム: | Windows |
種別: | ウェブブラウザ |
公式サイト: | browser.netscape.com/ |
Netscape Navigator(ネットスケープ・ナビゲーター)はジム・クラークとNCSA Mosaicの開発を抜けたマーク・アンドリーセン、ジェイミー・ザヴィンスキーらによって開発されたネットスケープコミュニケーションズのウェブブラウザ。省略してNNやネスケとも呼ばれる。
バージョン4以降はNetscape Navigator単体での配布以外にメーラー、ウェブページ作成ソフトなどをまとめたNetscape Communicator(ネットスケープ・コミュニケーター)としても配布されるようになった。なお、Netscape Communicatorはバージョン6から名前がNetscapeに変更され、同時に旧版のNetscape Navigatorも名称をNavigatorに変更されている。またバージョン8では名称がNetscape Browserへと変更された。しかし認知度はいまいち低く、特に6,7、時折8も初期版の名称"Netscape Navigator"で呼ぶユーザーが存在する。
セキュリティーホールの修正は、修正パッチが配布されるInternet Explorerに対し、Netscape Navigatorはバージョンアップすることで対応していた。
目次 |
[編集] バージョン1から4
最初のリリースは1994年。この年にベータ版として公開され、同年の暮れには、修正を経た1.0が公開されていた。当初はシェアウェアとして販売され、非常な人気を博し、ネットスケープコミュニケーションズのIPOなどの基盤となる。当初は「Mozilla」という名前でリリースされる予定だったが、マーケティングの理由により、「Netscape」に変更されている。ただし、コードネームは「Mozilla」のままであり、「Netscapeと書いてMozillaと読む」などといわれた。
1995年には、クッキーやフレーム[1]、JavaScriptなど独自の拡張を多く備えたバージョン2.0がリリースされる。当初、JavaScriptは「LiveScript」という名称であったが、サン・マイクロシステムズと提携して「JavaScript」という名称に変更している[2]。
1996年には、バージョン3.0をリリース。このバージョンは、「Standard Edtion」と「Gold Edtion」にわかれ、後者はメーラーとWYSIWYGのHTMLエディタを備えていた。このころには、利用者シェアが70%にまで達していた。
ところが、このころになると、しばらく前から開発されていたマイクロソフトのInternet Explorerが機能を強化し、ブラウザ戦争と呼ばれるシェアの争奪戦が始まる。時を同じくしてブラウザの将来性を見越した当時のAOL(現在のタイム・ワーナー)がネットスケープコミュニケーションズ買収を行い、現在も傘下に当たる。
1997年には、バージョン4.0をリリース。JavaScriptの大幅な機能強化を経るなど、ブラウザとしての機能は高くなっていったが、一方でバグや普及し始めていたCSSの解釈ミスなど、勢力を高めつつあったInternet Explorerとの競争に徐々に敗れていくようになる。実際、オープンソースになる前の1998年初頭には57%にまで落ち込んだ。
Internet Explorerがブラウザ戦争に勝った理由として、同社のPC販売網への不当な圧力(確定ではない)により同ソフトをオペレーティングシステムに抱き合わせたこと[3]や、Windows98以降、同ソフトがOSのシェルに統合されたために、PCを導入してすぐに使える(プリインストールされている)ため、他のブラウザソフトを新たに導入する機会自体が減ったことも大きい(詳細はInternet Explorerを参照)。
さらに1997年にアップルコンピュータがマイクロソフトと資本提携した為、Mac OSでもInternet ExplorerがインストールCD-ROMに収録されるようになり、Ver8.5以降ではこちらが標準となった[4]。
また、Webサイトを作成する側でも、レンダリングの違いから、Webサイトの製作コストを引き上げる要因でもあった。この為、管理コストを考えずに安価なWebサイトを欲するWebマスターの中にはバージョン4の頃にはWebサイトを設置しても、見る側が1割程度であればコストを掛けてNetscapeNavigatorに合わせる必要がないと判断したWebマスターも相当数存在したため、NetscapeNavigatorでは意図通りの表示の出来ないWebページが続出しシェアを下げる要因の一つともなった。1998年1月22日には、Netscape Navigator ブラウザと Netscape Communicator Standard Editionの無償化を発表し、また、バージョン4ながら、大幅な機能強化を行ったバージョン4.5を10月19日に発表するが、シェアの巻き返しからは程遠かった。
同年、ネットスケープコミュニケーションズは大きな決断をする。それは、Nestacapeのバージョン5.0に相当するソースコードを公開し、ライセンスを付け、オープンソースソフトウェアとして開発するというものだった。これは、勢力を広げつつあったLinuxなどのオープンソースソフトウェアに影響を受けたもので、プロジェクト名は「Mozilla」と呼ばれるようになり、開発は「Mozilla Organization」という非営利のグループで行われることとなった。その後、1998年暮れにネットスケープコミュニケーションズはAOLに買収されることになるが、プロジェクト自体は続行されることになった。
バージョン4.0のものは、後述のバージョン6などと並行して開発を続けられ、細かなバージョンアップをするが、2002年に、4.8をリリースして以降、このバージョンは開発を停止している。また、このバージョンは、オープンソースになったコードは使われていない。
[編集] 幻のバージョン5
Netscapeのバージョンは、4.8から6まで飛んでいる。これは、もともと5.0のソースを使ってMozillaを開発する予定であったが、余りの問題の多さに、途中でソースコードの利用を断念し、一からMozillaの開発を行う方針を立てたことによる。このことによって、旧来のNetscapeとはまったく異なるブラウザが誕生することになるが、一方でソースコードのつながりはまったく失われてしまう。そこで、マーケティング的な意図も含めて、バージョンのナンバリングを進め、バージョン6がリリースされることとなり、5は幻となった。
ちなみに、そのソースコードは「Mozilla Classic」と呼ばれ、現在でもMozilla Foundationのサイトからダウンロードすることができる。
[編集] バージョン6と7
市場シェアの回復を目指しネットスケープコミュニケーションズが先頭に立ってMozillaプロジェクトを進め、それを元に複数のプラットフォームへの対応やW3C勧告への準拠などに注力したバージョン6が出された。しかしながら、Mozillaプロジェクトの遅れから元になったものはMozilla 0.6とバージョン1にも満たない未完成なものだったため、起動時間の長さをはじめとした動作の緩慢さや数多くのバグ、また新たにこのバージョンに対応した拡張プラグインを作成するメーカーが減ったため、市場シェアはほとんど回復しなかった。
米国時間の2003年6月30日、Mozilla 1.4をベースに、バージョン7.1がリリースされた。これが、Netscapeという名の最後のウェブブラウザになるとメディアは報じ、Netscape ブラウザの継続リリースを求める署名活動が起こった。
Mozilla 1.4 以降で見つかったセキュリティーホールは、Netscape 7.1にも存在している[5]。
2001年にネットスケープコミュニケーションズの日本法人が撤退したため、日本語版はNetscape 7.1で更新がストップ、ホームページの更新もストップしている。ただし、有志者により非公式的に翻訳された7.2日本語版は存在する。
2004年4月、Mozilla 1.7をベースにしたNetscape新バージョンが発表される可能性があることをメディアが報じ、そして2004年8月にNetscape 7.2として英語版をリリース。7.2では、Mozilla 1.7.2までに存在する脆弱性が修正された[6]。
[編集] バージョン8
2005年2月17日、Netscape 8 Betaがリリース予定だったが、いくつかのバグを修正するため3月3日まで遅れる事となった。名称をNetscape Browserへと変更し、動作環境をWindows、ユーザインタフェースに用いる言語を英語に限定して配布している[7]。デフォルトで2種類のデザインをパッケージに含み、そのうちのFusionと呼ばれるテーマはタイトルバー部分をWindowsのLunaやClassicなどに依存しない独自のスタイルでデザインした特徴的なものとなっている。
2005年3月3日、Netscape 8 Betaがリリース。同年5月20日にはFirefox 1.0.3をベースに正式版が発表されたが、Firefox 1.0.4で修正された脆弱性に未対応だったため、公開の数時間後にアップデートが行われている。しかし、8.0.1には、エンジン切り替え機能に不具合があり、Internet ExplorerのXML関連機能に障害を発生させることが確認された。この不具合は8.0.2で修正済み。その後Firefox 1.0.5で修正された脆弱性の中で特に重要度の高い脆弱性に対処した8.0.3.1が公開されたが、左クリックによるダウンロードが正常に作動しない不具合があったため、8.0.2に戻された。そして8月9日、各バグを取り除いた最新版、8.0.3.3が公開された。なお、正式な日本語版が存在しない関係から国内での注目度が下がってきているためか、2006年9月のバージョン8.1.2のリリースはほとんど日本で報道されていない。
Mozilla Firefoxをベースに作られており、またWeb表示上の互換性問題を解決するために、これまでNetscape/Mozillaが使ってきたGeckoエンジンとTridentとを切り替えて使うことができるようになっている点を大きな特徴とする。サイトコントロール機能も追加され、ドメインごとにセキュリティ設定やブラウザエンジンを指定することが出来るようになった。しかしこの機能はActiveXコントロールを用いてIEのブラウザエンジンを呼び出しているものであるため、基本的な機能はIEのブラウザエンジンに依存する。
天気予報の機能も利用できるが、日本国内での利用を想定しているわけではないため日本国内の天気予報は利用できない。
廃止されたメール機能は代わりにウェブメールとしてNetscape Webmailボタンのツールバーに組み込む形で提供され、ブラウザからのツールバーのボタンを押せば直接Netscape Webmailのページに移動できるようになっている。
8.1以降はセキュリティセンター機能がブラウザに実装され、パスワード漏洩やスパイウェアの進入を防御できる機能も追加されている。
バージョンの変遷
- 8.0 - ファーストリリース (2005年5月20日)
- 8.0.1 - Firefox 1.0.4の脆弱性等に対処 (2005年5月20日)
- 8.0.2 - Internet ExplorerのXML関連障害の問題等修正 (2005年6月16日)
- 8.0.3.1 - Firefox 1.0.5の脆弱性等に対処 (2005年7月25日)
- 8.0.2 - 8.0.3.1の配布停止に基づく差し戻し (2005年7月29日)
- 8.0.3.3 - 左クリックによるダウンロードが正常に動作しないバグ等の修正 (2005年8月9日)
- 8.0.4 - Firefox 1.0.7の脆弱性等に対処 (2005年10月20日)
- 8.1 - スパイウェア対策機能などを追加 (2006年1月25日)
- 8.1.2 - RSS機能の強化など(2006年9月27日)
- 8.1.3 - Mozilla Firefox 1.5.0.8相当の脆弱性に対処(2007年4月3日)
※公式な日本語版は存在しないが、非公式日本語パックが有志により作成され、公開されている。尚、この日本語化パック作者は世界最初の公認テーマ作者でもある。
[編集] バージョン9
2007年1月23日にNetscape 8の次期バージョン9に関する情報が開発元のブログにおいて公開されている[8]。それによるとNetscape 9はMozilla Firefox 2.0.0.xの拡張機能をサポートし、またバージョン8でサポートされなかったMac OS XやLinux環境もサポートする予定だという[9]。
[編集] 推奨ブラウザとしてのNetscape
第一次ブラウザ戦争以前はNetscapeが圧倒的な市場シェアを占めていた為、Webサイトで推奨ブラウザに指定するブラウザといえばNetscapeのことであった。第一次ブラウザ戦争で市場シェアを逆転されるが、それまでの知名度の高さなどを理由に現在も推奨ブラウザとされることが多い。
Netscapeは7.1まで日本語版が存在しているが、バージョン8には日本語版が存在しない。そのため日本国内においては推奨ブラウザにNetscape7.1までのバージョンが指定される事が多い。またMac版においてはバージョン8そのものが存在しないことも7.1を指定する理由となっている。
しかし、Netscape7.1が登場してから日本語版でのセキュリティホールは数年間放置されており、ネットスケープコミュニケーションズの日本法人が撤退している関係から日本語版の更新も見込めなくなっている。現状では、Netscape日本語版を推奨ブラウザとするのはセキュリティ面で問題が多い。
また英語版のNetscape 8.1は、セキュリティフィックスが終了しているFirefox 1.0.xをベースとしているが、Firefox 1.5.xベースへの移行は1.5のサポート終了期限が発表された今でも尚できていない、アップデートの頻度そのものも長いなど、素早いセキュリティフィックスができているとは言いがたい状況である。
このため、セキュリティフィックスが継続されている他のブラウザ(Firefox、Caminoなど)への乗換を推奨されることが増えつつある。
余談だが、NetscapeがFirefoxをNetscape風にすることが出来るプラグインを「Netstripe」を開発、Mozillaなどで配布している[10]。
[編集] 脚注
- ^ ウィンドウを複数の領域に分割し、それぞれの領域ごとにリソースを表示する形態。HTMLのframe要素などで構成される。
- ^ 当時注目を浴びていたJava言語にあやかろうとした名称である。詳細はJavaScriptの項目を参照。
- ^ ただし、これはNetscape側も行っていた。当初Mac OSの標準ブラウザとしてNetscape Navigatorが無償収録されていた。
- ^ ただし、この現象は従来からの熱狂的なMacintoshユーザー、所謂「Macer」には不評であった。
- ^ http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/ITPro/SEC_CHECK/20040120/1/
- ^ http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0404/17/news009.html
- ^ 日本語のウェブページを表示することは可能である
- ^ The Netscape Blogを参照。
- ^ http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0702/06/news013.html
- ^ Netstripe :: Firefox Add-ons