グレイハウンド (バス)
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グレイハウンド(Greyhound Lines, Inc.)は、アメリカ合衆国で最大規模のバス会社である。また、同社が運行する長距離バスそのものを指すこともある。アメリカ合衆国全土(アラスカ州とハワイ州を除く)とカナダ、及びメキシコの一部の都市を結ぶ膨大な数の路線を持ち、アメリカ合衆国内においてだけでも3,100路線以上が存在する。
1914年にミネソタ州ヒビングにて設立され、1926年にグレイハウンド・コーポレーションとなる。現在はテキサス州ダラスに本社を構えている。社名、およびロゴマークはドッグレースにおいて最も速い犬種であるグレイハウンドに由来する。
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[編集] 沿革
[編集] 黎明期
今日のグレイハウンド社があるのは、100年に渡る経営拡大と既得権益獲得の成果といえる。本社となった場所は現在のダラスに至るまでにミネソタ州ヒビング、ダルース、ミネアポリス、イリノイ州シカゴ、アリゾナ州フェニックスと遷移してきた。
1920年代から1930年代にかけての短い期間で急速に成長したため、ICC(州際通商委員会)は独立している小さい企業が彼らの競争相手となるようにNTBS(全米路線バスシステム)を構築した。グレイハウンド社と異なり、約100の協会からなるこれらNTBSの関連企業は、グレイハウンド社の大いなる競争相手になった。
[編集] グレイハウンド社の設立
1887年にスウェーデンで生まれたカール・ウィックマンは1914年にアメリカに移住した後、ミネソタ州ヒビングとアリス間を15セントで運行するバスサービスを始めた。1915年にヒビングとダルース間で同じようなサービスを展開していたラルフ・ボーガンと共同でメサバ交通会社(Mesaba Transportation Company)を設立、初年度において8千ドルの利益をあげた。
第一次世界大戦が終わる頃、ウィックマンは18台のバスを所有し、その年収は4万ドルに達していた。1922年になるとオルヴィル・シーザーの経営するホワイト・バス・ラインズ社(White Bus Lines)と事業を統合し、さらにその4年後にはアメリカ西海岸の2つのバス事業であったピックウィック・ラインズ(Pickwick Lines)とパイオニア・イェローウェイ・システム(Pioneer Yelloway System)との合意に達し規模を広げた。
1926年にウィックマンのバス会社は「グレイハウンド・ラインズ」として知られるようになり、社長であった彼は事業の拡大を続け、1927年にはカリフォルニアからニューヨークまでの大陸横断旅行が出来るほどにまでなっていた。
ウィックマンのビジネスは、世界恐慌を迎えた1931年の時点で100万ドル以上の負債があったが、経済成長の恩恵もあり、グレイハウンド社は再び繁栄することになる。 1935年になると800万ドルもの利益を上げることが出来た。第二次世界大戦が開戦した頃、グレイハウンド社は4,750のターミナルと1万人近い社員を抱えるほどになっていた。 1946年にウィックマンは社長を退き、後任にはこれまでのパートナーであるオルヴィル・シーザーが就くこととなった。1954年、カール・ウィックマンは67才でその生涯を閉じた。
第二次世界大戦後、国内高速道路網が広まった1956年になると、米国内での自動車(自家用車)の所有と観光業の多様化、さらには都市間輸送の空路への移行などもあり、鉄道など一般的な公共輸送が下落したのと同様に、グレイハウンドの利用者とバス路線は段々衰退していくようになる。 グレイハウンド社は時代の情勢を見ながら様々な事業の展開を行い、1970年代には巨大な多角化経営企業となり、アーマー精肉会社(Armour & Co.)からダイアル石鹸会社の全ての権利、トラベラーズ・エクスプレスの為替事業、MCIバス製造会社(Motor Coach Industries)、さらには航空機の貸し出しまで手がけるようになっていた。
1984年後半に、グレイハウンド社では、オハイオ州ザネスビルで起こった死亡事故をきっかけとした大規模な運転手によるストライキが発生した。3年後に再びストライキが発生した結果、グレイハウンド社は当時NTBSの幹部役員でもったフレッド・カレイによって分社化され、グレイハウンドのバス事業は独立することとなった。元の会社はダイアル会社と名称変更された。
[編集] 分割
1987年、カレイによる新たな指揮の下でグレイハウンド社はまもなく、最大の競合相手でありNTSBの会員でもあったコンチネンタル・トレイルウェイズ社(Continental Trailways)の買収を行ったことにより、バス事業は競合相手がいなくなったともいえ、NTSBの2つの企業であったカロライナ・コーチ社(Carolina Coach)及びサウスイースタン・トレイルウェイズ社(Southeastern Trailways)とバスの運行などについて協議を行ったが、これらの企業と多くの小規模の企業は事業の撤退を余儀なくされた。
それから3年後に、新たな賃金ストライキが起こることになる。これは多角化経営から離れたことによる企業の体力が低くなったことと、労働法違反によるものであった。このことが元となり、1990年代前半にグレイハウンド社は倒産することになる。同時期にサウスウエスト航空など低価格の航空会社の台頭により、長距離バス事業はこれら航空会社との低価格路線による競争を強いられることになる。
1997年にグレイハウンド社は、NTSB最大の企業であったカロライナ・トレイルウェイズ社(Carolina Trailways)を買収した。現在もカロライナ・トレイルウェイズの名称で運行しているが、それ以外のNTSB創成期の企業のいくつかはグレイハウンド社と歩調を併せ、通常運行の路線やチャーター便やツアーを廃止したり、事業そのものを廃業したりした。
[編集] レイドロー社による経営と2度目の倒産
1998年、カナダのオンタリオ州ハミルトンを基盤としている輸送事業の複合企業であったレイドロー社がグレイハウンド社(アメリカ合衆国)、グレイハウンド・カナダ、カロライナ・トレイルウェイズとその他関係各社の経営権を取得した。しかしグレイハウンドへの多額の投資や多角化経営への投資などにより多額の損失を被ったレイドロー社は2001年6月、連邦倒産法第11章適用による法的倒産手続を申請することとなった。
イリノイ州ネイパービルを拠点にするレイドロー・インターナショナル社は2003年2月10日にニューヨーク証券取引所にレイドロー社の株を取得し、2003年6月23日にレイドロー社の再生に関わることを明らかにした。
[編集] 21世紀におけるグレイハウンド
グレイハウンド社は米国北西部、および北中央部における主要路線の運行本数の削減といくつかの長距離路線の削減を2004年度中に行う発表を行った。2005年度内にはその他の国においても同様の措置を行う予定である。過去数年の間でグレイハウンド社はチャーター便と観光事業の拡大を行っており、主要市場における最大のものとなっている。すでに経営権は所有していないものの、車体の大半はMCIバス製造会社によって引き続き製造されている。
利用層は、低所得者層(ヒスパニックや黒人など)が多いといわれている。
[編集] 重大な事件及び事故
これまでに起きた重大な事件及び事故の中には以下のようなものがある。
- 1972年にテネシー州ビーン駅において、トレーラーの先頭にシーニック・クルーザー型(Scenicruiser)のグレイハウンドが衝突し、乗務員を含めた15人が死亡した。
- 2001年10月3日の現地時間午前4時15分に乗客の1人であったダミール・イグリックは乗っていたバスの運転手の喉を切り裂いた。テネシー州マンチェスター付近でバスは高速道路で横転しイグリック本人と5人の乗客が死亡、32人の重軽傷者を出した。この事件の発生時期は9月11日にニューヨークで発生した同時多発テロ事件から間もなかったこともあり、当初テロによる犯行だと疑ったグレイハウンド社は全ての路線を運休した。グレイハウンド社、およびFBIによる調査の結果、事件はイグリックの単独犯によるものということが確認され、バスの運行は午後になって再開された。
[編集] 運賃
グレイハウンドの乗車券は全米内にある営業所、バス・ステーションにて購入する。有効なクレジットカードがあればインターネット上でも購入することが出来る。(ただし日本など国外からのインターネット購入には制限があるらしい)
グレイハウンドの乗車券は一定の条件を満たすことで割引価格で購入することが出来る。以下に割引の条件を記載する。
- チャイルド・ディスカウント(子供運賃)
- 2才未満の子供が15才以上の乗客と同乗する場合は運賃が無料になる。ただし、他の乗客と同じく座席を使用する場合は40%割引での乗車券を購入しなければならない。
- 12才未満の子供の場合で、同乗する乗客が通常料金で乗車券を購入した場合、通常の40%割引が適用される。
- 2才から11才までの子供同士でかつ、行き先が同じ(往復の場合は往復先も同じ)場合、それぞれ通常価格の40%割引が適用される。
- スチューデント・ディスカウント(学生割引)
- 20ドルのスチューデント・アドバンテージ・ディスカウント・カードを購入することにより、以下の割引を受けることが出来る。
- アメリカ国内の数千に及ぶ路線で通常料金の15%割引が適用される。
- グレイハウンド・パッケージエクスプレス(Greyhound PackageXpress)を使ってアメリカ国内に荷物を送る場合、通常送料の半額で送ることが出来る。
- ミリタリー・ディスカウント
- 現役、退役軍人及びその家族は10%割引が適用される。また、最大198ドルを払うことでアメリカ国内を周遊することが出来る。
- ベテランズ・ディスカウント
- 上記ミリタリー・ディスカウントと類似するが、こちらはベテランズ・アドバンテージ・ディスカウント・カードを所持することにより、15%の割引が適用される。対象となるのは現役、退役軍人、国家警備隊、及び予備隊とその家族であり、39.95ドルの1年プランまたは99.95ドルの3年プランがある。
- パーソナル・ケア・アテンダント(PCA)・ディスカウント
- 搭乗者が身体に障害を持っている場合で必要条件を満たす場合に、同乗する介護者の乗車券は50%割引が適用される。ただし、予約制で24時間前(車椅子の場合は48時間前)に予約をしておく必要がある。
- シニア・ディスカウント
- 62才以上の大人には5%割引が適用される。なお、購入の際には有効な身分証明書が必要になる。
また、ディスカバリー・パス(Discovery Pass)といって、ある一定期間乗り放題となるクーポンがある。これは7日間から60日間の間、グレイハウンド、及び提携する会社のバス、鉄道などを利用することが出来る。ディスカバリー・パスには次のような種類がある。
- アメリパス(Domestic Ameripass) - 7・10・15・21・30・45・60日
- カナダパス(Domestic Canada Pass) - 7・10・15・21・30・45・60日
- カナダ・北アメリカパス(Domestic North America CanAm Pass) - 15・21・30・45・60日
- カナダ・東アメリカパス(Domestic Eastern CanAm Pass) - 10・21日
- カナダ・アメリカ西海岸パス(Domestic West Coast CanAm Pass) - 10・21日
アメリパスは、日本の一部大手旅行会社でも販売しているが、ウェブサイト[1]からもカナダ・アメリカ共通の「Discovery Pass」が購入可能のようである。やや割高にはなるが、現地バスターミナルで国内在住者(domestic)用のチケットを購入する手もあるらしい。
[編集] 乗降場所
グレイハウンドのバスの発着する場所はバスターミナル、バスディーポ、およびバスストップの3種類に大別することができる。そのほか、既存の店舗などを利用したバス乗降場もある。
- バスターミナル - 主に中規模以上の都市に存在し、発券カウンター、駐車場、休憩施設を備えている。休憩施設に各種売店や飲食店が入っていることも多い。多くのバスターミナルは24時間営業である。
- バスディーポ - 前述のバスターミナルとの明確な線引きはないが、規模が小さく、24時間営業でないものが多い。中小都市に多く存在する。
- バスストップ - 小さな町村に多い。バスターミナルやバスディーポとは異なり、発券カウンターなどは持っていない。道路わきにグレイハウンドのロゴがついたバス停が設置してあるだけで、停車便数も少ない。空港ターミナルやアムトラック駅に設置してあることもある。
- その他の形態 - マクドナルドなど既存の店舗を休憩施設として利用、およびその駐車場をグレイハウンド兼用とし、発券カウンターだけを持っている、というものも存在している。
これらのバス乗降場は空港などとは異なり、ダウンタウンにあることが多い(テキサス州オースティンやニューメキシコ州サンタフェなど、例外的にダウンタウンから離れているバス乗降場もある)。従って交通に至便である一方で、乗降場付近の治安が悪いことも少なくない。また、ほとんどのバス路線は州間高速道路(インターステート)を通るため、特に規模の大きいバスターミナルは州間高速道路のランプ付近に位置していることが多い。
また、「総合交通ターミナル」として、市の路線バスや近郊電車のターミナルを兼ねているバスターミナルやバスディーポもある。
[編集] 利用上の注意点
- バスターミナルやディーポなどの乗降場はダウンタウンにあることが多く、一般にアメリカの都市では中心部がスラム化している場合があるために、周辺の治安・環境が悪いことも少なくない。ターミナル内部の警備の強化や、チケットを持っている利用客しか入れないエリアを設置するなど、グレイハウンド側でも対策を講じてはいるが、到着時間が必ずしも日中とは限らないことから、大都市や犯罪発生率の高い都市のバスターミナルでは夜遅くには周辺を歩かないなど、特に注意が必要である。周辺の環境に注意が必要なバスターミナルには次のような例がある。
- カムデン(フィラデルフィア郊外) - 全米で最も危険な都市。
- セントルイス - ノース・カウンティ(North County)と呼ばれるスラム街に近い。
- デトロイト - そもそもダウンタウン・デトロイトの治安が良くない。
- ニューヨーク - メインのターミナルはポート・オーソリティ・バスターミナルであり、ニューヨーク自体の治安の近時の改善により、以前よりは危険性は下がっているが、ターミナルがあまりに大きいために監視の目の届かない場所も多く、スリなどに注意が必要。ターミナルより東側は繁華街であり、夜中まで人通りが絶えないが、西側は寂しいエリアになる。
- マイアミ - 空港近くとダウンタウン、2ヶ所にターミナルがあるがどちらも周辺の治安は良くない。
- ロサンゼルス - ダウンタウンの東外れにあり、周辺の環境は同市のダウンタウン付近としては最悪の部類に入る。
- ワシントンD.C. - D.C.で最も危険な北東部に位置する。
- また、バスターミナル・バスディーポ内においても、トイレなど監視の目の行き届かない場所もあり、貴重品は肌身離さず持っておくなど注意が必要である。防犯のためにドアを取り払ってあるトイレもある。
- 大都市のバスターミナルではバス車内の清掃や乗務員の交代・休憩などを行うことが多く、停車時間が長くなる。従ってスケジュール面では十分な余裕を持つことが望ましい。また、夜行バスにおいては、容赦無く起こされて長時間待たされることも覚悟しておく必要がある。
- 24時間営業でないディーポやバスストップでは、発着時刻にも留意すること。
- 車内にもトイレはあるが、狭くて利用しづらいためバスターミナル・バスディーポで済ませておくことが望ましい。
- 車内は喫煙・飲酒厳禁。違反すると車外に放り出されることもある。なお酒類以外の飲食は自由である。
- 冷房が強い傾向がある。羽織るものがあったほうが良い。
- 利用客は、短距離路線を除き、ヒスパニックや黒人などの低所得者層が多いため、日本など国外からの旅行者が利用する場合、身の危険を感じることもある。いずれにしても、日本の高速バスの感覚では利用できない。
[編集] クレジット
翻訳/ Greyhound Lines 3/9/2006 3:10(UTC)の版。
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[編集] 関連項目
- グレイハウンド・カナダ
- アムトラック(アメリカにおける長距離列車の運行主体)
- グレイハウンド・パイオニア(オーストラリア)
[編集] 外部リンク
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