伊豆急行8000系電車
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伊豆急行8000系電車 | |
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伊豆高原駅停車中の8000系(2005年3月30日撮影) | |
両数 | 2,4両 |
起動加速度 | 2.0km/h/s |
営業最高速度 | 100km/h |
設計最高速度 | 120km/h |
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大)
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全長 | 20,000mm |
全幅 | 2,800mm |
全高 | 4,145mm |
車両重量 | 30.8t(クハ8000形)~37.5t(クモハ8150形) |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V |
モーター出力 | 130kW |
歯車比 | 1:5.31 |
駆動装置 | 中空軸平行カルダン駆動方式 |
制御装置 | 電動カム軸式抵抗制御+分巻界磁チョッパ制御 |
ブレーキ方式 | 回生制動併用全電気指令式電磁直通空気制動 |
保安装置 | ATS-Si.P |
8000系電車(8000けいでんしゃ)は伊豆急行が保有する電車。
目次 |
[編集] 概要
伊豆急行では、これまで通勤・通学輸送に東日本旅客鉄道(JR東日本)から購入した200系を使用していたが、元々老朽化していた車両であり、代替となる車両を必要としていた。そこで、2004年(平成16年)と2005年(平成17年)に、親会社の東京急行電鉄(東急)から廃車となった8000系19両と8500系1両を譲受し、改造・整備の上で導入することとなった。
[編集] 形式
以下の5形式が用意された。系列名は東急時代の「8000系」を踏襲(※)するが、車両ごとの番号は基本的に新しく付け直されている。
- クモハ8150形(※)
- デハ8100形から改造された伊豆急下田向きの制御電動車。制御器やパンタグラフを搭載し、クモハ8200形とユニットを組んで使用される。当初は電動機4個永久直列で登場したが、その後クハ8050形をクモハ8200形に改造することで電動機4個×2群直並列回路を復元した。
- クモハ8200形
- クハ8000形から改造された伊東向きの制御電動車。空気圧縮機 (CP) および補助電源装置として静止形インバータ (SIV) を搭載し、クモハ8150形とユニットを組んで使用される。改造当初は制御車クハ8050形であった(後述)。
- モハ8100形
- デハ8100形から改造された中間電動車。制御器やパンタグラフを搭載し、モハ8200形とユニットを組んで使用される。
- モハ8200形
- デハ8100形から改造された中間電動車。パンタグラフの離線対策などのためにデハ8100形の車体(パンタグラフ付き)にデハ8200形(パンタグラフなし)の床下機器を移設することで、デハ8200形相当の車両に改造されている。パンタグラフ、空気圧縮機、SIV、トイレを搭載し、モハ8100形とユニットを組んで使用される。
- クハ8000形
- クハ8000形から改造された制御車。静止型インバータを搭載する。伊豆急下田向きの車両は8001~、伊東向きの車両は8011~の車番が与えられている。
- クハ8050形
- クハ8000形から改造された制御車。MGやSIVを搭載していた。既に消滅。
- ※種車に8500系デハ8700形が1両存在するが、改造時に他車と同じクモハ8150形に編入された。
[編集] 改造点
導入に際し、4両の基本編成(編成番号T1~)と2両の付属編成(編成番号T11~)の2種類が用意された。8000系に制御電動車は存在しないので、付属編成のクモハ8150形は中間電動車を先頭車に改造することで賄われている。増設された先頭部は上部の通過表示灯(急行灯)はないものの、それ以外の形状は近い。オリジナル車に残る通過表示灯は東急時代に使用が停止され、伊豆急行でも使用していないので、運行に支障はない。また、改造には一部他の8000系が解体された時に発生した部品が使用されている。
すべての先頭車に障害物対策で排障器(スカート)を、連結作業対策で電気連結器が設置された。車体外部の帯は、東急の赤色に代わって濃淡2色の水色(ハワイアンブルー)が巻かれ、一旦は消滅していた100系のカラーリングが復活した。
外部はさほど変化がないものの、内部は徹底的にリニューアルされ、居住性が大幅に向上している。
- 海側の座席をクロスシートに変更。西武鉄道10000系のリニューアル工事の際に不要となった物の再利用で、ボックス状に配置されたので回転やリクライニングは行えない。
- 長距離の乗車を考慮し、基本編成のモハ8200形の車端部にトイレ(洋式)を設置。
- バリアフリー対策として、基本編成のモハ8200形に車いすスペースが設けられる(トイレの向かいのスペースを活用)。
- 乗車案内やバリアフリー対策で、ドア上部にLED式の旅客案内表示装置と開閉を知らせるチャイムが千鳥状に設置される。
その他の改造点としては、ワンマン運転への対応や伊東線への乗り入れ装備の追加(JRのATS-Pや列車番号設定器などの設置)が行われている。なお、ワンマン運転時には前面貫通扉窓の上部に「ワンマン」の看板が取り付けられる。一部の車両にはさらに塗油器も設置された。
制御装置などは基本的に東急時代のままだが、ATSと減速度の関係により、東急時代の運転最高速度110km/h、起動加速度3.3km/h/s(6M2T編成=MT比3:1の場合)から、最高速度が100km/h、起動加速度2.0km/h/sに抑えられている。なお、回生ブレーキは東急時代と同様単独車は45km/h(現在は存在しない)、ユニット車は25km/hで失効する。
[編集] 営業開始後の改造
伊豆急行では、電動機に流す電流の量である「限流値」を上げることでM(電動車)・T(付随車)同数でも2.0の加速度を維持している。限流値を上げると空転が起こりやすくなるが、基本編成は先頭車が制御車であることから空転しにくいことと、直並列制御をするため単独車よりも限流値を低くすることができることで対応できていた。
しかし、付属編成には特に対策が施されなかったので多発する空転が問題となっていた。これを改善するため、2006年に付属T-11編成の制御車クハ8050形を電装する改造が行われている。全電動車であり、東急時代の限流値では3.3km/h/s以上の加速になるため、限流値は抑えられているものと思われる。
具体的な改造点は、パンタグラフの搭載とモーターの取り付け、モーターの制御方法の単独電動車方式からユニット電動車方式への変更である。新設されたパンタグラフは8000系初のシングルアーム式となった。また、パンタグラフ設置部分にあったクーラーが干渉を防ぐために小型の新品に取り替えられている。
この結果、付属編成は全電動車となり、使用停止されていた主回路直並列制御が復活した。雨天・積雪時などの空転滑走による遅延・立ち往生が減少し、運転上の問題が減少したことから、これ以後増備された付属編成は当初から全電動車で伊豆急行に入線している。
[編集] 運用
伊豆急行所属の他の車両同様、伊東線熱海駅~伊東駅~伊豆急下田駅間で運用される。そのため、元大手私鉄の通勤車両がJRの路線で運用される珍しいケースとなった。
[編集] 編成表
←伊豆急下田 | 基本編成 | 伊東→ | ||||||||
編成番号 | 形式 | クハ8000 | モハ8200 | モハ8100 | クハ8000 | ← | クハ8000 | デハ8100 | デハ8100 | クハ8000 |
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T-1 | 車番 | 8001 | 8201 | 8101 | 8011 | 種車 | 8011 | 8111 | 8112 | 8012 |
T-2 | 8002 | 8202 | 8102 | 8012 | 8029 | 8129 | 8130 | 8030 | ||
T-3 | 8003 | 8203 | 8103 | 8013 | 8043 | 8151 | 8150 | 8044 | ||
T-4 | 8004 | 8204 | 8104 | 8014 | 8037 | 8153 | 8157 | 8034 |
←伊豆急下田 | 付属編成 | 伊東→ | ||||
編成番号 | 形式 | クモハ8150 | クモハ8250 | ← | デハ8100 | クハ8000 |
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T-11 | 車番 | 8151 | 8251(8051) | 種車 | 8155 | 8035 |
T-12 | 8152 | 8252 | 8723※ | 8049 |
※8723は8500系デハ8700形
- この書体は東急時代に更新工事を受けた車両。ドア間の座席が仕切りで4人掛けと3人掛けに区分けされているなどの特徴がある。詳しくは東急8000系電車#更新の項目を参照。ピンクは2代目トランバガテル塗装編成(T-1・2・11編成)。
[編集] 投入計画
8000系は最終的に50両が導入される予定で、伊豆急行では200系の全車と2100系「リゾート21」1~3次車の置き換えを予定している。これに対し沿線在住でない一部のファンからは「4扉のステンレス車両では旅情が感じられなくなる」などの批判を受けているが、沿線住民からは「クロスシート部の座り心地が良くなった」「ラッシュ時の混雑が緩和された」など好意的な声もある。
[編集] その他
- 1990年代後半に100系の老朽取り替えに際し代替車両の候補としてまず東急8000系が挙がった。しかし当時8000系に廃車予定はなく、車内サービスを維持するために2扉に改造する必要があり、JRとの直通運転に適していないとのことで、JRより提示された113系および115系を200系として導入した経緯がある。
- 東急は伊豆急行との提携で2005年7月に東横線と横浜高速鉄道みなとみらい線で臨時急行「伊豆のなつ号」を運転した。この時使用された8000系8007Fは車体外部が伊豆急行8000系同一カラー塗り替えられていたが、運転終了後は伊豆急行ではなく、そのままの帯色でインドネシアへ売却された。また、翌2006年の同月には再び田園都市線と東京地下鉄(東京メトロ)半蔵門線・東武鉄道伊勢崎線・日光線で「伊豆のなつ」号が運行されているが、こちらは東急8500系8614Fが伊豆急行8000系と同一カラーに塗り替えられている。なお、こちらは現在も同一カラーのままで運用されている。
- 譲渡開始前に長津田車両工場で8049-8723(元8500系)が2両編成化の試作車として改造されたが、2004年度の譲渡車リストには掲載されず、しばらく長津田検車区に留置され続けていた。この編成は塗装変更やクハ8050形の電装などの再改造が行われた上でT-12編成として2006年に入線している。8723は現在伊豆急行8000系の中では唯一の元8500系である。
- T-1・2・11編成は、水色帯の下に紺色塗装を施し、中間車に桃色の花をあしらった「トランバガテル」というラッピング電車として運用されている。
[編集] 外部リンク
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