国鉄DD16形ディーゼル機関車
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DD16形ディーゼル機関車(でぃでぃ16がたでぃーぜるきかんしゃ)は、1971年に登場した旧・日本国有鉄道(国鉄)の小型液体式ディーゼル機関車である。
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[編集] 製造の背景
当時、国鉄はディーゼル機関車による無煙化を進めていた。しかし、軌道構造の弱いローカル線(簡易線)では軸重が12tに制限されているので、DD13形やDE10形は入線できないか、たとえ入線できても大幅な速度制限を受けたため、蒸気機関車のC12形やC56形が依然として残る結果になった。そこで、これらの下級線区に残存した蒸気機関車の置換え用として、簡易線向け設計のDD16形が開発されることになった。
1971年から1975年にかけて国鉄長野工場や日本車輌製造、川崎重工業などで65両が製造された。
[編集] 構造
車体はDE10形などと同様、凸型車体でエンジンを搭載する側のボンネットが長く、運転室が中心からずれたセミセンターキャブのデザインとし、車体や台車等の軽量化によって運転整備重量48t(軸重12t)を実現している。
車両の一端に大型のエンジンを載せているが、その反対側に重量物を設置してバランスを取ることが出来ないため、運転室を車端に寄せるとともにその床下に燃料タンクを配置し、短いほうのボンネットの中は機器室として機関予熱器、蓄電池箱、制御器箱などを収めて軸重不均衡への対策としている。
台車はDD13形85号以降で用いられたDT113を軽量化したDT113Hを採用した。エンジンは出力の問題から初期不調の相次いだDD51形に搭載されていたエンジンを載せ替えて余った狭幅クランク軸受けのDML61Zを、出力を1000psから800psに落とした上で搭載して再活用している。液体変速機はDD51形と同じDW2Aであるが、出力軸側が1台車対応であったのを2台車対応に変更し、使用線区の最高速度等の面から減速比を大きくして搭載した。
なお、投入路線の輸送規模や運用形態も勘案して非重連仕様とされ、簡易線の旅客列車は気動車に置き換えられていたことから基本的には旅客列車での使用は考慮せず、列車暖房用蒸気発生装置(SG)も搭載されていない。空気ブレーキ装置はDE10形とほとんど同じであるが、非重連形であるので、重連用の機器を取り外して使用している。2基ある運転席はDE10形をモデルとした左マスコン、右ブレーキの操作系であるが、ローカル線での長時間運行も考慮して、操作卓左側が途中から45度手前に折れ曲がった準L字形の本線入換折衷型ともいえる運転台を採用し、乗務員が前方を向きやすいような配慮がなされている。
このDD16形の設計上の特色は、搭載されている機器がDD51形、DD13形、DE10形等と同一のものか、もしくは使用されているものを多少改造して搭載しており、DD16形専用に開発されたものがほとんど無いことである。これは、既存の使用実績のある機器を採用することによって製造費の低減化や部品共通化、保守共通化による保守費の抑圧を目論むとともに、現場へ導入をもしやすくしたものである(当時、当局と労組の対立が問題化し、新形式導入=労働の増加->労組の反対、ということで新機種の導入がしづらかった背景がある。例:DE50形)。
[編集] 製造番台の区分
[編集] 0番台
1971年から製造された一般型。65両が製造された。1号機と2号機は国鉄長野工場で製造されたが、国鉄工場で機関車が製造されるのは実に30年ぶりで戦後初、ディーゼル機関車としては初めてのことであった。
現在は11号機のみが在籍している。
[編集] 300番台
1979年から1983年にかけて、飯山線及び大糸線用として、2・5・4・13号の4両が両端に脱着式の単線用ラッセル式除雪ヘッドを取り付け可能なタイプに改造され、それぞれ301~304号として300番台に区分された。ラッセルヘッドは、DD15形のようにラッセル装置を機関車本体に取り付けると軸重が過大となり、またDE15形の着脱式ラッセルヘッドも軸重が13tと簡易線乗入れ規格を上回っていたため、ラッセル車キ100形を近代化させたような新設計のボギー式ラッセルヘッド車両を別途製作し、これをDD16の前後に連結する方式としている。なお、300番台への改造に際し、ラッセルヘッドから機関車本体を遠隔制御するための改造もあわせて行われ、車端部に制御回路を引き通すジャンパ栓が増設された。
この300番台は用途の特殊性から4両すべてが現存する。
[編集] 運用
投入時はC12形やC56形を置き換え、地方ローカル線の無煙化に貢献したが、1970年代後半から国鉄ではローカル線の貨物輸送廃止を推し進めたため、次第に使用線区も減少していった。そして、民営化と前後して本形式しか入線できない簡易線規格のローカル線の多くが廃線となったため、用途を失ってしまった。そのため大半の車両が国鉄分割民営化前に寿命を残したまま廃車となり、JRへの承継は北海道旅客鉄道(JR北海道)1両、東日本旅客鉄道(JR東日本)4両、西日本旅客鉄道(JR西日本)3両、九州旅客鉄道(JR九州)2両の10両のみであった。
2006年現在、現存する車両は東日本旅客鉄道(JR東日本)長野総合車両センター所属の11,301,302,303号機と西日本旅客鉄道(JR西日本)北陸地域鉄道部富山運転センター所属の304号機の5両のみとなっている。
[編集] 廃車後のDD16形
[編集] 大宮総合車両センター入換機
JR東日本大宮総合車両センターで、26号機と34号機が工場内入換用として使用されていたが、現存しない。塗装は国鉄色の橙色を青に変更したような色であった。
車籍は抹消されており、本線上を走行することはできない工場内専用の機械扱いであった。
なお、2両とも度々塗色が変更されており、以前は北斗星色や夢空間色だった事がある。
[編集] 台湾高速鉄道工事用機
台湾で建設が進められている台湾高速鉄道の工事用として20号機が番号の変更無く使用されている。軌間は標準軌に改軌されている。もとは上記の26・34号機と同様、大宮総合車両センターの入換機であった。
[編集] 保存
- 1号機 - 長野総合車両センター
- 15号機 - 三笠鉄道記念館
- 17号機 - 小樽交通記念館
- 31号機 - 青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸船内
[編集] 専用線のDD16形
入替用として、DD16形の同型機を使用している工場や専用線が存在する。
[編集] 主要諸元
- 全長:11840mm
- 全幅:2805mm
- 全高:3925mm
- 重量:48.0t
- 軸配置:B-B
- 1時間定格出力:800PS/1330rpm
- 最高運転速度:75km/h
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