底質汚染
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底質汚染(ていしつおせん)とは底質が汚染されていることをいう。底質とは海域、港湾、河川、水路、湖沼などの水底の土砂やヘドロ等のことである。狭義には底質の環境基準はダイオキシン類のみ(150pg-TEQ/g)が定められておりこの基準を超過するもの(詳しくは底質の環境基準を参照)。なお、PCBや水銀には底質暫定除去基準が定められており、対策は一旦行われた水域もあるが、日本の魚介類にダイオキシン類や水銀等の有害物質が比較的多く含まれている。また、深刻な底質汚染が今なお一般環境中に放置されており食物連鎖を通して健康リスクも懸念されている。
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[編集] 底質汚染の多いところ
- 運河 例:富岸運河
- 潮の干満の影響のある河川 例:神崎川(大阪)、鶴見川(東京)
- 港の奥の方 例:大阪港
- 化学・製紙工場等のある湾 例:東京湾、洞海湾、酒田港(山形県)、深浦港(横須賀市)、京浜横浜港(横浜市)、田子の浦港(静岡県)、新荒田川(岐阜県)、大江川(名古屋市)、敦賀港(福井県)、高砂西港(兵庫県)、高松港杣場川地区(香川県)、徳山湾(山口県)、水俣湾(熊本県)、長崎港(長崎市)、佐世保港(佐世保市)等
- 工場やゴミ焼却施設のある水路
[編集] 浚渫土問題
底質除去暫定基準によりPCBや水銀が高濃度で含まれている水域の浚渫が過去に実施された。その浚渫土は無害化されずに仮置きされたり、埋立てに利用されている。 環境リスクや人の健康被害防止の観点から十分な検討が必要であり、例えば、兵庫県高砂市では学識経験者等による検討会を開催し議論が進んでいる。
[編集] 底質浄化費用負担
底質汚染の浄化には多額の費用が必要となる。公害防止事業費事業者負担法により汚染原因者がその費用を負担することになる事例が増えている。近年では島根県の馬潟工業団地付近において廃棄物処理業者等が費用を負担している。
[編集] 各省庁の底質汚染の取組み
国土交通省:監視マニュアルや対策マニュアルを作成している。新潟港湾空港技術調査事務所が実証実験をして底質ダイオキシン類無害化に関するデーターをまとめている。河川環境課も技術資料を整理中である。鶴見川遊水地でも無害化の取り組みが進んでいる。
農林水産省:魚介類に含まれる水銀やダイオキシン類について資料を公開している。
厚生労働省:魚介類等に含まれる水銀について資料を公開している。
[編集] 各行政の底質汚染の取組み
埼玉県:古綾瀬川において委員会を組織し取り組んでいる。
千葉県:市原港で検出された底質ダイオキシン類についてデーターを公開すると共に、汚染原因についても取り組んでいる。
東京都:横十軒川などの底質汚染について対策がなされている。水銀やダイオキシン類による食品汚染調査結果を公開している。
大阪府:神崎川など大阪府が管理する河川について委員会を組織して取り組んでいる。
大阪市:市内河川や港湾部の底質汚染についてデーターを公開し取り組んでいる。
神戸市:遠矢浜北側水域の底質におけるダイオキシン類の環境基準超過について委員会を開催し、委員会内容も公開して取り組んでいる。
高砂市:高砂西港盛立地のPCB汚染土に係る技術検討専門委員会を開催し、委員会内容も公開して取り組んでいる。
島根県:馬潟団地に周辺水路において委員会を組織して、公害防止事業費事業者負担法を適用し取り組んでいる。
[編集] 底質汚染調査の問題点
国や各行政機関が底質モニタリング調査を行いそのデーターを公開しており、そのデーターは年々、底質汚染が改善されていると発表されていることがほとんどである。 しかし、時折、各行政から高濃度の底質ダイオキシン類汚染の現実が発表されている。このことは底質調査のサンプリング位置に問題がある。 換言すれば、かつて基準を超えたり、高濃度の底質汚染が検出されなかったことを継続して底質モニタリングを行っている。底質の上に川の上流から流されたきた土砂や波浪や船舶による巻上げによって底質の汚染が見かけ上改善されたような錯覚に陥るが、底質は拡散し食物連鎖により高濃度に蓄積される。このことは、海中の食物連鎖の頂点にあるマグロやサメ、さらにクジラに含まれるダイオキシン類や水銀濃度の上昇を見ると明らかである。 この大型魚類を地球上の食物連鎖の頂点にある人が摂食し人の健康被害が懸念されている。
[編集] 汚染原因の特定
ダイオキシン類の総毒性等量のみ議論だけでなく、ダイオキシン類の異性体パターンやケミカルマスバランスにより汚染物質の同定や汚染原因者の寄与率算定により汚染原因者に対し、公害防止事業費事業者負担法に従い、合法的な汚染原因者費用負担額が算定され多くの企業が応分の費用負担に応じている。
[編集] 底質汚染の取組の歴史
- 2006年 水俣病公式確認50年を迎える
- 2005年 河川、湖沼等における底質ダイオキシン類対策マニュアル(案)改定
- 2005年 国土交通省が新潟港湾空港技術調査事務所が底質ダイオキシン類分解無害化処理技術]をとりまとめ
- 2004年 国土交通省が河川、湖沼等における底質ダイオキシン類簡易測定マニュアル(案)をとりまとめ
- 2004年 国土交通省が「河川、湖沼等におけるダイオキシン類常時監視マニュアル」(案)
- 2004年 「市原港」で高濃度(12,000pg-TEQ/g)のダイオキシン類が検出され、「市原港」全域にダイオキシン類による汚染が確認された。
- 2000年 ダイオキシン類に係る底質調査測定マニュアル
- 1998年 古綾瀬川松江新橋地点の底質から過去最高濃度(当時)の720[pg-TEQ/g]が検出された。
- ダイオキシン類対策特別措置法に基づく底質環境基準の施行
- 1979年 酒田港、徳島湾、大江川、水俣湾、敦賀港、高砂西港等ので底質の除去等の対策を実施された。
- 1975年 底質暫定除去基準
- 1974年 水銀やPCB等に汚染された高砂本港、北九州市洞海湾、岩国市の地先海域等における汚でいのしゅんせつ作業が行われた。
- 1970年 水質汚濁防止法の制定
- 1969年 全国的にも汚濁の著しい東京都の隅田川、大阪市の神崎川、名古屋市の堀川、福岡市の御笠川、尼崎市の庄下川、横浜市の帷子川、和歌山市の和歌川のしゅんせつが実施された。
- 1959年 チツソ水俣工場のアセトアルデヒド生産工程が閉鎖した。
- 1958年 汚泥しゆんせつ事業が33年度に東京地区の隅田川で着手した。
- 1956年 チッソ付属病院が「原因不明の脳症状を呈する患者が入院した」と水俣保健所に報告した。
[編集] 関連項目
[編集] 関連項目
- 公害対策基本法、環境基本法、環境基準、公害防止事業費事業者負担法
- 汚染者負担原則
- 環境装置
- 環境省
- 公害等調整委員会
- アスベスト
- 環境関連の資格一覧
- 四大公害病、水俣病、水俣病関西訴訟、新潟水俣病
- チッソ株式会社、チッソ、ユージン・スミス、 宇井純、江頭豊
- 公害、汚染者負担原則、公害防止事業費事業者負担法
- 底質
- 環境問題関連の記事一覧
- 地球環境問題
- 環境学、環境法、
- 環境税、環境省
- 環境装置、*環境運動
- 環境法、環境基本法、環境基準、水質汚濁防止法、大気汚染防止法、土壌汚染対策法
- 水質汚染、大気汚染、土壌汚染、地下水汚染