真田氏
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真田氏(さなだし)は信濃国の豪族である。
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[編集] 概要
江戸時代に作成された『真田家系図』に拠れば、真田氏は清和源氏の発祥で、信濃国小県郡(現在の長野県東御市)の豪族・海野棟綱あるいは真田頼昌の子とされる真田幸隆(幸綱)が小県郡真田郷を領して以後、広く知られるようになったという。近世には、大名の多くが自家の系図づくりを行い出自を名族に結びつける傾向にあり、真田氏系図も信州松代藩主家となった真田家が作成したものであり、真田氏が信濃の名族滋野氏の出であるとする説は疑問視されている。戦後には、真田郷が古代の官牧地域であることに着目し、国牧管理者の大伴氏が土豪化して真田を称したとする説も考えられている。
『大塔物語』に拠れば、室町時代の応永7年(1400年)、守護小笠原氏に対する国人領主の抵抗として起こった大塔合戦において小笠原氏の籠る城を包囲する大将根津越後守遠光の配下に「真田」の名が見られる。戦国時代のはじめころ、信州小県郡の片すみの真田というところに地名から真田幸隆と名乗る在地の小豪族がいたというところより真田氏の歴史ははじめるべきである。
幸隆は、甲斐の武田氏が信濃へ侵攻して起こった海野平合戦で滋野一族が駆逐された後、武田家に出仕して旧領を回復する。幸隆は武田家臣団に加わり、信濃や上野方面で活躍。子の信綱、昌輝、昌幸らともに武田晴信(武田信玄)に仕えた。1575年の長篠の戦いで信綱と昌輝が討死すると、武藤家の養子となっていた昌幸が真田家の家督を継いだ。昌幸は武田氏が滅んだ後織田信長に恭順した。しかし、本能寺の変で信長が横死しすると、昌幸は混乱する信濃に在って、主家を転々と変え、家を保った。その後、昌幸は豊臣秀吉の臣下に入った。後に秀吉の命で家康との和解を命じられて、その与力大名とされて名目上は徳川氏の傘下に入り、長男信幸と家康の養女小松姫(実父は本多忠勝)との婚姻が行われた(この経緯から、江戸幕府では真田氏は外様大名ではなく譜代大名として扱われた)。
1600年に五奉行の石田三成らが五大老の徳川家康に対して挙兵し、関ヶ原の戦いが起こると、昌幸とその次男信繁(幸村)は三成ら西軍に、長男信幸(信之)は家康ら東軍についた。昌幸と信繁は上田城にて、徳川秀忠率いる約2万の第2軍をわずか5千で迎え撃ち、5日間も止め、関ヶ原の戦いに間にあわさなかった。しかしその努力のかいもなく、戦いは東軍の勝利となり、戦後に昌幸と信繁は紀伊の九度山に蟄居となり、信之(信幸改め)は上田藩主となった。
大坂の陣では信繁(幸村)は大阪城に入り豊臣方として、信之は徳川方として戦った。この戦いで信繁(幸村)は討死し、信之は戦功を上げ松代藩へ加増移封となった。1634年には真田信吉が死去、子の熊之助も死去すると、信之次男の真田信政が25,000石を継承して2代藩主となり、熊之助の弟に当たる真田信利に5000石を分けた。3代藩主の真田幸道は幕府の普請事業などを務める。5代真田幸安は千曲川改修工事などを行う。6代真田幸弘は恩田民親(木工)を登用した藩政改革を行い中興の祖となる。松平定信の子である8代藩主幸貫は老中となり、佐久間象山を登用して殖産興業政策を行う。譜代大名扱いとはいえ、祖先である昌幸親子が徹底的に家康と争った過去を考えれば破格の待遇といえよう。
幕末には宇和島藩主伊達宗城の子で養子に入った真田幸民が新政府側に属して会津戦争などに従軍する。幸民は藩知事となるが、松代騒動と呼ばれる一揆が起こり隠居する。松代藩は廃藩置県で消滅し、真田氏は子爵(のちに伯爵に陞爵)となる。明治以降の当主は幸正(幸民の子)、幸治(幸正の子)、幸長(幸治の子)、幸俊(幸長の子、現当主・慶應義塾大学理工学部電子工学科助教授)
また、徳川家康は真田氏を評して「日本一の強兵」と賞した。これは家康自身が戦人として本心から真田軍の戦いぶりに絆され、褒め讃えたことと同時に、真田を日本一の強兵と賞することにより、二代将軍秀忠が関ヶ原の合戦ににおいて、真田攻めを原因に関ヶ原の合戦を遅参したという汚名を雪ぐため、「日本一の強兵が相手なら、秀忠が手こずるのも仕方無い」という政治的理由により真田を必要以上に讃えたと言われる。
[編集] 系譜
太字は当主、太線は実子、二重線は養子
幸隆 ┏┻━━━┳━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━┓ 信綱 昌輝 昌幸 信昌 信春 ┃ ┃ ┏━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━┓ ┣━━━━━━━┓ 信興 信正 信繁 信之 昌親 信勝 幸政 信勝 ┏━━━┳━━━┳━━━┫ ┣━━━━━━━┳━━━━┓ ┃ ┣━━━┓ ∥ 之親 幸信 大八 大助 信吉 信政 信重 信親 幸信 幸吉 信豊 ┃ ┣━━━┓ ┣━━━━━━┓ ∥ ∥ 辰信 熊之助 信利 信就 幸道 幸頼 信紀 ┃ ┃ ┣━━┓ ∥ ∥ ┃ 信成 信音 勘解由 信弘―→信弘 幸隆 信積 ┃ ∥ ┃ ┣━━━┳━━━┳━━━┓ ┃ ┃ 信経 権之助 信清 幸詮 信安 俊峯 忠盈 幸久 信育 ∥ ┃ ┃ ┃ ┃ 信珍 敬寛 幸弘 幸定 信緜 ┃ ∥ ∥ 信凭 幸専 幸充 ∥ ∥ ∥ 幸清 幸貫 幸徳 ┃ ┃ 幸歓 幸良 ┃ 幸教 ∥ 幸民