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新幹線300系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

第33回(1993年
ローレル賞受賞車両

カテゴリ / テンプレート

新幹線300系電車(しんかんせん300けいでんしゃ)は、東海道新幹線の「のぞみ」用として1990年平成2年)に試作車が登場した、東海道・山陽新幹線の第三世代の車両である。デザイン(量産タイプ)は手銭正道、戸谷毅史、松本哲夫、木村一男による。

新幹線300系電車
(2006年7月11日撮影)
(2006年7月11日撮影)
両数 16両
起動加速度 1.6km/h/s
営業最高速度 270km/h
設計最高速度 285km/h
編成定員 1,123人(普)+200人(グ)=1,323人

1,148人(普)+200人(グ)=1,348人

全長 26,050(25,000)mm
全幅 3,380mm
全高 3,650 3,600mm
編成重量 711t
軌間 1435mm
電気方式 交流25,000V 60Hz
編成出力 300kW×40=12,000kW
駆動装置 三相交流誘導電動機
制御装置 VVVFインバータ制御(GTO)
ブレーキ方式 回生併用電気指令式空気ブレーキ(応荷重装置付き)、渦電流ブレーキ
保安装置 ATC-1型ATC-NS
備考 ※は9000番台 (2007/3/31付で廃車)

Template(ノート 解説)鉄道PJ

目次

[編集] 概要

安定した高速走行を実現するために、車体の空力特性の向上と軽量化を行なった。東京駅新大阪駅間を約2時間30分で結んだ。登場当初、新横浜駅のみ停車して名古屋駅京都駅を通過する「のぞみ301号」は話題を呼んだ。(「名古屋飛ばし」も参照)

1993年(平成5年)度以降は1975年昭和50年)の博多駅開業時に製造した0系を置き換えるために新製した。

1993年(平成5年)に「のぞみ」の運転区間を博多駅に延長し、東京~博多間を5時間4分で結んだ。西日本旅客鉄道(JR西日本)も3000番台(F編成)を投入した。

製造数は東海旅客鉄道(JR東海)のJ編成61本・976両とJR西日本のF編成9本・144両を合わせて70本・1,120両であるが、J編成の中には500系の製造終了後に落成した編成もある。JR東海所有のJ52以降の編成は700系の量産先行車、C1編成より後に落成した。また、量産車トップのJ2編成は100系G編成のうち一番最後に落成したG46編成より先に落成したが、G46編成は既に廃車になっているのに対し、J2編成は営業運用に使用している。

なお、量産先行試作車のJ1編成は、2007年3月28日廃車回送され、同年3月31日をもってその車籍が抹消され、4月初頭には4号車が解体され、もう、原型をとどめていない模様。

[編集] 構造

新幹線で初めてVVVFインバータ制御を採用した車両である。スイッチング周波数の低いGTO素子のVVVFインバータ装置を採用したため、発車時と停車時にモータからの磁励音が目立つ。交流モータの採用により、100系直流モータと比較して出力は約30%アップしながら質量は約50%になっており、車両全体の軽量化に寄与している。

また、VVVFインバータ制御を利用して電力回生制動も新幹線車両として初めて装備し、ブレーキ性能を強化した。ただし、モータのない付随車は電力回生制動が装備できないため、渦電流ブレーキを装備する。この300系からブレーキ制御に応荷重装置を追加したが、これは車体の軽量化により編成全体に占める旅客質量の比率が高まったためである。

ユニットは2M1Tの3両を一組とする構成で、質量配分の平均化を狙い2両の電動車(M)が1両の付随車(T)の両端を挟むM+T+Mという独特な配列を採用している。この構成は日本国内では300系のみで他系列での採用例はないが、日本国外では、イタリアのETR460、ドイツICE3での採用例がある。このため、博多方先頭車(323形、1号車)はユニットに属さない車両になっている。

車体は、東海道・山陽新幹線用車両では初めてアルミニウム合金を使用し、車体質量を大幅に軽減した。また、空気抵抗低減のために車体断面が縮小し、車高は100系より40cm程低くなった。さらに低重心化のため100系までは天井にあった空調装置を床下に移動した。そのため窓間の柱内のダクトを経由して送風する構造になった。また、パンタグラフにはカバーを設置した。走行中の騒音を大幅に軽減し、営業時の最高速度を270km/hとする事が可能となった。初期の車両(J1~J15編成とF1~F5編成)については、空気抵抗低減のためにドアを閉めた際に車体との段差のないプラグドアを採用していたが、構造が複雑でトラブルが多かったこと、またコストに比較して空気抵抗低減による騒音への影響が少なかったことから後期の車輌では通常の引き戸に変更した。

後期車の引き戸タイプのドア
後期車の引き戸タイプのドア
初期車のプラグドア
初期車のプラグドア

ただし、前述のアルミボディ採用による軽量化は、付随車においては渦電流ブレーキ装置の質量がモータより重く、さらに機器の中で最も質量のある主変圧器を搭載していた事も相まって、モータ装備の電動車よりも付随車の方が重くなる結果になった。その後開発された500系では付随車採用時の質量増を避けてすべて電動車とし、700系ではブレーキ装置の軽量化と機器配置の最適化によって電動車と付随車の質量を同等とした。先行試作車は1990年に303km/hを記録しており、1991年(平成3年)2月28日の深夜には325.7km/hを記録し、国内最高速度記録を国鉄時代以来十数年ぶりに更新している。

台車鉄道総合技術研究所(JR総研)が開発した9023EF形台車をベースとした、新幹線の車両で初採用となるボルスタレス台車で軽量で曲線通過性に優れるという特徴を持っている。軸箱支持方式は270km/h走行時の安定性を高めるため、0系以来のIS方式を改良し円筒ゴム併用方式を採用した。形式はM車がTDT203形(3000番台はWDT203形)でT車がTTR7001形(3000番台がWTR7001形)である。質量はTDT203形が6689kg、TTR7001形が6914kgで、100系のDT202形の9800kg、TR7000形の9225kgから大幅な軽量化を達成した。

1999年(平成11年)度からは、700系で採用された低騒音化技術を反映して、シングルアームパンタグラフ碍子カバー、直ジョイントを搭載する改造を実施している。

さらに2004年(平成16年)9月29日、JR東海は乗り心地向上のため比較的状態の良い編成(主にJ19編成以降)にN700系量産先行試作車で採用した改良型セミアクティブサスペンションを1・6・8~10・12・16号車の7両に、改良型左右動ダンパを残りの9両に搭載し、700系で採用された非線形空気ばねとヨーダンパを全車両に搭載することを発表した。それ以外の編成(主にJ18編成以前)はN700系への早期置き換え対象のため、施工対象外であり、2006年(平成18年)2月までに完了予定としている。車体間ダンパーについては、装着のために必要な車体端部の改造補強がアルミ製で容易でない事から見送られている。

[編集] 居住性

16両編成で8~10号車がグリーン車、他は普通車である(この車両構成は後の16両編成の新幹線でも採用されている)。100系と異なり2階建車両やグリーン個室はない。グリーン車は2列&2列の座席配列で読書灯を各席に設置し、イヤホン式のオーディオサービスや毛布貸出しなどのサービスがある。また、パーサーによるおしぼり弁当の注文取り次ぎサービスもあり、それ以降のグリーン車のサービスの標準となった。普通車は3列&2列の座席配列でシートピッチ(座席の前後間隔)は広い。この300系から食堂車が消滅し、代わりに7・11号車に車内販売準備室も兼ねてサービスコーナーを設置したが、ワゴンサービスの充実により2003年9月で廃止した。定員はグリーン車200名、普通車1,123名の計1,323名であり、これがそれ以降の東海道新幹線車両の標準定員となった。なお、JR東海のJ編成はブラウン系の配色で車内はまとめられているのに対し、JR西日本のF編成はグレー系の配色でまとめられている。J編成とF編成は外観ではパンタグラフカバーの色(J編成はグレーに対しF編成は白)とJRマークの色でしか見分けが付かない。

「のぞみ」としての高速運転を達成する事を第一優先にして開発された車両であるだけに、居住性は犠牲になっている事は否めない。車体断面が縮小により居住空間が狭くなった事もさる事ながら、高速運転に伴い、振動が大きくなってしまった。300系の導入当初は、座席前のテーブルに置いたコーヒーがこぼれたとか、サンドイッチが手も触れないのに丸ごと床に転落した、などの苦情が相次いだ。 

また、前述の空調装置の移設に伴ってダクトを壁内に納めた事によって外部での気温変化や直射日光の照射の影響を受け易くなってしまった。これは、軽量化のため外壁が極端に薄いシングルスキン構造である事も影響するが、夏は日光に暖められ冷房の効きが悪く、冬は外気温で冷やされて暖房の効きが悪くなるというように、300系は冷暖房の効きがあまり良くない車両となってしまっている。

300系は新技術を数多く採用・実用化し、新幹線高速化の第一歩となった。そのため技術的には高く評価される車両だが、居住性という点で見た場合、乗客の300系に対する評価は低い事が多い。

この事を反省し、JR東海では後継系列である700系の開発には高速運転性能のみならず、居住性を含めたアメニティ重視の姿勢をとった。振動低減・居住快適性アップなど利用者にはその成果を支持されている。これは、新幹線に限らず近年のJR各社の在来線新型特急車両の開発の際にも重視されるようになった。

[編集] 運用

導入以来「のぞみ」専用であったが、増備が進むにつれて「ひかり」にも運用するようになった。500系や700系の導入により、2001年以降「のぞみ」の定期運用から離脱し、引き替えに東海道新幹線の昼間の「こだま」にも入るようになった。2006年(平成18年)現在は「のぞみ」(不定期列車のみ)・「ひかり」・「こだま」の運用に入る。また、東海道新幹線内での運用が中心であり、定期列車で岡山以西に入線するのは「ひかり」1往復(F編成使用、博多総合車両所への入・出庫を兼ねる)と「こだま」1往復(三原駅まで、2006年3月までJ編成使用、現在はF編成)のみである。従ってJ編成は原則的に岡山駅以西に入線する事はないが、運用調整のためF編成の運用に充当する場合がある他、最近では臨時「のぞみ」で博多まで入線する機会が多い。すでに廃車となっている試作車のJ1編成は山陽区間への入線ができなかった期間があった(試験で入線した実績はある)。不定期列車の「のぞみ」は、時刻表では300系使用(現在は特に何も書かれていない場合が普通)と記載があっても700系で運行する場合もある。

[編集] 今後の去就

2007年7月1日より300系の一部編成の置き換えも兼ねて開発されたN700系が営業運転を開始することになり、デビュー時点で予備編成を含めて6本のN700系の量産車が揃うので、それまでに車齢15年を超えた300系最初期の量産車(J2~J5)が廃車となる可能性が高い。さらにN700系は大量に量産されるため、それに付随して300系の廃車も急ピッチで進むことが予想される。なお、量産先行試作車のJ1編成は2003年度より営業列車への運用から除外され、N700系の設計にデータを提供するための事業用車として使用されていたが、前述したように2007年3月31日付で廃車された。

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