山形新幹線
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山形新幹線(やまがたしんかんせん)とは、ミニ新幹線方式により福島駅から新庄駅までを結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の路線及びその路線を走行する新幹線列車の通称である。正式には奥羽本線の一部であり、新幹線ではなく在来線の特急列車である。
また、この区間を走る普通列車には山形線の愛称がついている。東京駅から福島駅まで東北新幹線に直通運転されるため広範囲的にはつばさが走る東京駅~山形・新庄駅間が山形新幹線と別名で呼ばれる。在来線は最高速度160km/hまでだが、踏切があるため最高時速は130km/hである。
目次 |
[編集] 歴史
- 1992年(平成4年)7月1日 山形新幹線開業、東京駅~山形駅の直通運転開始。400系営業運転開始(200系と併結)。
- 1999年(平成11年)12月4日 山形~新庄間が延長開業。E3系投入。
- 2001年(平成13年)9月21日 併結相手が200系から、E4系(Maxやまびこ)のみとなる。
- 2007年(平成19年)3月18日 健康増進法第25条により、全車両の禁煙を実施。
山形~新庄間の延伸(約61キロ)にあたっては、総事業費351億円全額を山形県観光開発公社(現在、社団法人山形県観光物産協会)が事業主体のJR東日本に全額無利子貸し付けする形式をとった。地元が必要と思うものを地元の資金で造るという画期的な形式での新幹線整備であったが、この方式で建設されているのは2006年時点ではこの区間のみである。
[編集] 運行形態
朝と夜の一部の列車を除いて、東北新幹線内(東京~福島間)は、やまびこ号と併結して走る。尚、山形新幹線の運転開始当初は併結相手は200系だったが、2001年9月21日以降、併結相手はE4系(Maxやまびこ)のみとなっている。
車体色は銀色に緑のライン。開業当時はそれまで白やクリーム色といったイメージがあった新幹線の中で際立って目立っていた。
尚、福島駅での連結・切り離しは東北新幹線と奥羽本線を結ぶ連絡線とホームを下り側に1本しか作らなかったため、上り・下り共に14番線(下り用のホーム)でのみ行う。そのため、上りの連結相手のやまびこ号も福島駅の北で一旦下り本線を渡って14番線ホームまで来なければならない。連結したあと、再び下り本線を渡って上り線に合流する。そのため、ダイヤ改正時は必ず緻密な計算が求められており、東北新幹線は福島駅がダイヤ作成上の大きなネックとなっている。
山形新幹線の線路では地域輸送のための普通列車も走っており、地域輸送についての告知では「山形線」と呼ばれる。なお、この区間を走る普通列車専用車両は、新幹線の軌道幅である標準軌に合わせ、JR線では初めて標準軌用として製作され投入された。なお、山形新幹線は関根~羽前中山間(北赤湯信号所付近を除く)と山形~新庄間のほとんどが単線となっており、新幹線が普通列車を待ち合わせするという珍しい風景も見られる。
ちなみに、お盆や年末年始の帰省ラッシュでは、毎度のようにつばさ号が最高乗車率になるとニュースで伝えられるが、これはつばさ用の編成が少ないため利用客に見合った本数を増やせないこと、はやて号やこまち号が全車指定席なのに対して自由席が2両ありそれに集中すること、一般の新幹線車両の普通車が2+3の座席配置に対し、山形新幹線は2+2配置で1両あたり20人分ほど座席が少ないこと、などが理由と見られている。
[編集] 編成
山形新幹線つばさ号で使用されている車両は以下の通り。
-
- 400系とE3系は運用上の区別はされておらず、共通の運用となっている。
通称「山形線」の車両は以下の通り。
- 719系5000番台 …2両編成12本(計24両)
- 701系5500番台 …2両編成9本(計18両)
全ての車両が山形車両センター(旧山形電車区)に在籍している。
除雪・救援に用いるディーゼル機関車等は、在来車を改軌して転用した。
[編集] 停車駅
駅名 | よみがな | 東京からの営業キロ | 福島からの営業キロ | 2005年度乗車人員 | 接続路線 | 所在地 | |
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福島駅以南は東北新幹線を参照 | |||||||
福島駅 | ふくしま | 272.8 | 0.0 | 15,274 | 東北新幹線、東北本線、福島交通飯坂線、阿武隈急行線 | 福島県 | 福島市 |
米沢駅 | よねざわ | 312.9 | 40.1 | 2,526 | 米坂線 | 山形県 | 米沢市 |
高畠駅 | たかはた | 322.7 | 49.9 | 839 | 東置賜郡高畠町 | ||
赤湯駅 | あかゆ | 328.9 | 56.1 | 1,550 | 山形鉄道フラワー長井線 | 南陽市 | |
かみのやま温泉駅 | かみのやまおんせん | 347.8 | 75.0 | 1,970 | 上山市 | ||
山形駅 | やまがた | 359.9 | 87.1 | 11,096 | 左沢線(フルーツライン左沢線)、仙山線 | 山形市 | |
天童駅 | てんどう | 373.2 | 100.4 | 1,828 | 天童市 | ||
さくらんぼ東根駅 | さくらんぼひがしね | 380.9 | 108.1 | 1,161 | 東根市 | ||
村山駅 | むらやま | 386.3 | 113.5 | 1,336 | 村山市 | ||
大石田駅 | おおいしだ | 399.7 | 126.9 | 1,082 | 北村山郡大石田町 | ||
新庄駅 | しんじょう | 421.4 | 148.6 | 1,960 | 奥羽本線、陸羽西線(奥の細道最上川ライン)、陸羽東線(奥の細道湯けむりライン) | 新庄市 |
なお、特別急行券については東北新幹線との乗り継ぎ料金制度がある。
[編集] 需要
交通需要について国土交通省が2000年に調査した都道府県間鉄道旅客流動データによると、山形県を目的地とする鉄道旅客のうち、東北新幹線沿線(東京都、埼玉県、栃木県、福島県)からの年間旅客数は99.9万人であった。これらの各出発地のうち最も旅客数が多かったのは東京都の66.5万人、次いで埼玉県の18.3万人、福島県の11.4万人である。一方、山形新幹線沿線(山形県)を出発地として東北新幹線沿線(福島以南)を目的地とする年間旅客数は113.3万人であった。これらの各目的地のうち最も旅客数が多かったのは東京都の75.4万人、次いで埼玉県の20.3万人、福島県の14.7万人である。
沿線各都県間の旅客流動状況(2000年)は以下のとおり。
山形新幹線沿線各都県間旅客流動状況(2000年)
目的地\出発地 | 東京圏* | 栃木県 | 福島県 | 合計 |
山形県 | 1,242 | 37 | 114 | 1,393 |
出発地\目的地 | 東京圏* | 栃木県 | 福島県 | 合計 |
山形県 | 1,472 | 29 | 147 | 1,648 |
(単位:千人/年)
*東京圏:東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県とする
また、秋田県湯沢市・横手市など、秋田県南部からの需要も多い。東京方面ヘは秋田新幹線大曲駅を利用した方が速く、本数も多いが、山形新幹線新庄駅経由の方が数千円安く東京へ行くことができるためである。このため、夏季や年末年始の帰省客が多い時期は「つばさリレー号」が秋田県側から運行される。国道13号に面している新庄駅東口には1,500台の無料駐車場があるため、秋田県南部からのパークアンドライド利用者もいる。
[編集] 問題点
山形新幹線にはミニ新幹線方式が採用されたため、開通させるにあたり、狭軌(軌間1067mm)だった奥羽本線が標準軌(同1435mm)に改軌され、奥羽本線から仙山線・左沢線等への直通が不可能になるという犠牲を伴った(山形~羽前千歳を除く)。このように軌間の違いは運転系統に大きな制約を与えているものであり、このような問題を解決する手段として軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の実用化が期待されている。
開通当時、踏切事故が起こったとき、テレビによって「新幹線踏切事故」と大げさに報道された。「新幹線」とはいえ、奥羽本線内は在来線の速度規制(130km/h)であるのだが、テレビ局はそれを知ってか知らぬか、余り詳しくない人間にはあたかも時速200km/hの高速度で踏切事故を起こしたと誤解しかねないような報道ぶりであった。このように踏切事故を起こすと新幹線のイメージダウンが著しいため、各踏切には他の在来線には無い、ゲート状の大掛かりなものに改良されている。
[編集] 新庄以遠の延伸問題
新庄から酒田まで陸羽西線を改軌・電化した上で延伸する検討が山形県内部で行われていた。高橋和雄前山形県知事(2005年の県知事選挙で落選)や山形県庁内部では置賜地方から庄内地方までを一本の鉄路で直結することによる県土軸の構築が図れるとして推進する意見が強かった。しかし、当の庄内地方では、推進派の酒田市に対し、鶴岡市はむしろ羽越本線高速化(ミニ新幹線ないしフリーゲージトレイン導入、在来線改良)に積極的と、内部で意見対立があった。
2006年3月、山形県は山形新幹線庄内延伸、ならびに新潟県と共同で行っていた羽越本線高速化調査の最終結果を公表、費用対効果では羽越本線を高速化し、新潟駅新幹線ホームでの対面乗り換えが有効との結論を下した。羽越本線高速化では、新潟県にも費用分担を求めることが可能であり、国の幹線鉄道活性化事業に認定されれば補助金が受けられるのに対して、山形新幹線延長では県単独の事業となり、国からの補助も見込めないこともネックとなった。
また、新庄から大曲までの延伸が沿線自治体の一部で論議されており、新庄駅構内に期成連絡会の事務所が構えられているが、現実問題として財源負担や時間短縮効果について問題点が多く、実現可能性が低いと見られている。 山形新幹線延伸早期実現期成同盟会と山形新幹線大曲延伸推進会議が実現を訴え、秋田県の「あきた21総合計画」で奥羽南線の高速化の2010年までの着手が盛り込まれているが、山形新幹線機能強化検討委員会の調査では大曲延伸に530億円の費用がかかり採算性が厳しいとされている。
奥羽本線改軌に使われた機械も、田沢湖線改軌に使われたあと、もう使う予定は無いため、JR東日本はタイに売却してしまった。
[編集] 関連項目
現行路線 |
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東北新幹線・上越新幹線・北陸新幹線(長野新幹線)/ミニ新幹線 : 山形新幹線・秋田新幹線 |
東海道新幹線・山陽新幹線・九州新幹線 |
整備新幹線 |
北海道新幹線・東北新幹線・北陸新幹線・九州新幹線 |
基本計画線 |
北海道新幹線・北海道南回り新幹線・羽越新幹線・奥羽新幹線・中央新幹線・北陸・中京新幹線 |
山陰新幹線・中国横断新幹線・四国新幹線・四国横断新幹線・東九州新幹線・九州横断新幹線 |
未成線 |
成田新幹線 |
現行列車 |
はやて・やまびこ・なすの・とき・たにがわ・あさま/新幹線直行特急 : つばさ・こまち |
のぞみ・ひかり(ひかりレールスター)・こだま・つばめ |
廃止列車 |
あさひ・あおば |
営業用車両 |
0系・100系・200系・300系・400系・500系・700系・N700系・800系・E1系・E2系・E3系・E4系 |
試験用車両 |
1000形・951形・961形・962形・WIN350・STAR21・300X・FASTECH 360 S・FASTECH 360 Z・軌間可変電車 |
事業用車両 |
911形・912形/ドクターイエロー・East i |
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車両形式・編成記号 |
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元となる計画 |
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