モバイルSuica
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モバイルSuica(モバイルスイカ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が提供する携帯電話上のアプリケーションソフトである。
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[編集] 概要
Suicaが採用しているソニーの非接触型ICチップ「FeliCa」を搭載した携帯電話「おサイフケータイ」をNTTドコモなどが開発・販売中である。おサイフケータイを利用してカード式Suicaと同じ様に使用できる「モバイルSuica」は、2006年1月28日にNTTドコモとau(KDDI)の対応機種を皮切りにサービスを開始した。
サービス開始1年で100万人の会員獲得を目標としていたが、当初はJR東日本のクレジットカード「ビューカード」の加入が必須であった点などから加入者数は伸び悩んだ。10月1日よりは他のクレジットカードも利用可能となり、選択肢が広がった。21日からはクレジットカード不要の「EASYモバイルSuica」も開始され、2007年3月22日でユーザー数は41万人となっている。
[編集] 基本機能
カード式のSuicaと同様の自動改札機を通って電車に乗る機能や、駅構内や街中の店舗での買い物時の支払いができる機能(Suicaショッピングサービス)に加えて、携帯電話の通信機能を使ってのチャージ(入金)、定期券やSuicaグリーン券の購入、表示画面で使用履歴や残額を表示したりなどといった機能で利便性を向上させるものである。将来的には新幹線の座席を画面上で予約してそのままチケットレスで乗車できるサービスなども開始される予定である。なお、このサービスを東海旅客鉄道(JR東海)や西日本旅客鉄道(JR西日本)と共通で行う計画がある。
このサービスは会員制のため、利用するには下記の対応携帯電話機と利用者本人名義のクレジットカード(ビューカード、VISA、マスター、JCB、アメリカン・エキスプレス、ダイナースクラブ)が必要である。ビューカード(およびビュー提携カード)からモバイルSuicaにオンラインチャージすれば、ビューサンクスポイントが貯まる(「VIEWプラス」対象なので、通常の3倍である1,000円につき6ポイントが貯まる)。ちなみに、チャージ用としてみずほSuicaカードを使用した場合、みずほマイレージクラブポイントを経由してANAマイレージに交換することができる。
モバイルSuicaは、対応携帯電話機(FeliCa搭載だからといって必ずしもモバイルSuicaが使えるとは限らない)とクレジットカードを用意した後に所定のアプリケーションをダウンロードの上、会員登録の手続きを行う事でサービスを利用できる(クレジットカードの必要無いEASYモバイルSuicaについては後述)。なお、年会費はビューカード利用の場合サービス開始時から「当分の間」は無料となっており、その他のカードの場合は1,000円(但し2007年3月31日までに入会した人は2008年3月31日まで年会費が無料、2007年4月1日から2008年3月31日までに入会した人は入会日から1年間の年会費が無料)となる。JR東日本の営業エリア外に住んでいても入会は可能である。
利用可能エリアについては、相互利用も含めてカード型のSuicaと同じで、近畿圏のICOCAエリアでは乗車機能は利用できるが、定期券機能と電子マネー機能は利用できない。また、2007年3月18日からサービスを開始したPASMOについても相互利用ができ、関東地方の鉄道や路線バスに携帯電話1台で乗る事ができる。モバイルSuicaで使用中のJR線のみの定期券からPASMO事業者との連絡定期券へ切り替えることもできるが、モバイルSuicaでの利用は一部制限があることが公表されている。なお、2007年3月18日から3ヶ月間は、JR線のみの定期券からPASMO事業者との連絡定期券への変更をモバイルSuicaアプリの定期券区間変更機能により実行するとき、同機能実行中の選択操作により変更前の定期券に対して無手数料日割計算による払い戻しが適用される。区間変更の実行後にみどりの窓口またはモバイルSuicaコールセンターから払い戻し申し出証明書を入手してPASMO事業者の定期券払い戻し窓口へ提出することにより、PASMO事業者の磁気定期券を払い戻し申し出証明書発行申請日までの無手数料日割計算で払い戻すことができる。
モバイルSuicaの利用に必要となるクレジットカードは、カード発行元の所定の審査が必要となる。このため、通常これらのクレジットカードを取得できない18歳未満並びに高校生以下はモバイルSuicaの会員になる事はできない(但し、モバイルSuicaの決済に使用できるカードの中には、SURUGA VISAデビットカードの様に、中卒の15歳以上であれば取得できるカードもある。)。しかし、後述のEASYモバイルSuica会員サービスでは12歳以上(小学生を除く)ならモバイルSuicaを使う事ができる。
[編集] EASYモバイルSuica
SF(ストアード・フェア)機能に限定した、クレジットカード登録不要のサービス。12歳以上(小学生を除く)であればEASYモバイルSuicaサービスを利用できる。Suicaグリーン券の購入はできない。
チャージ方法は後述の銀行チャージかNEWDAYS・ファミリーマート・ミニストップ(Suicaショッピングサービス対応店舗)での店頭チャージに限られる(なお、これらの手段はフルサービスでも可能)。
なお、後からクレジットカード情報を登録すれば通常のモバイルSuicaのフルサービスを受けられるようになる。逆に、元からクレジットカード情報を登録している場合は、EASYモバイルSuicaに変更する事はできず、一度退会した後、EASYモバイルSuicaに入会することになる。
Suicaカードで必要な500円のデポジットが不要ではあるが、チャージが出来る箇所の制限や自動券売機・自動精算機で使えないなどのデメリットが目立つ。ただし、2007年4月12日からのPASMOカードの新規発行の一時停止に伴い、対応携帯電話機器さえ用意すれば使用開始できるEASYモバイルSuicaはPASMOカードの代用として活用できる可能性がある。
なお、2006年12月31日まではEASYモバイルSuica会員になると100円分のSFマネーが受け取れる「EASYプレゼントキャンペーン」が展開されていた。
[編集] 銀行チャージ
銀行口座からのオンラインチャージサービス。みずほ銀行・三井住友銀行・三菱東京UFJ銀行のいずれかの口座を持ち、モバイルバンキングを利用していれば携帯電話端末からの操作で1,000円単位、1回につき最大10,000円までSuicaへの入金が可能になる。このサービスは通常のモバイルSuicaサービスや上記のEASYモバイルSuica会員サービス両方で利用可能である。 このサービスの1回毎の利用に於ける各銀行の手数料は以下の通り。
- みずほ銀行 - 105円(みずほマイレージクラブの振込手数料優遇適用会員は無料)
- 三井住友銀行 - 105円(One's plusの蓄積ポイントを使用して無料にできる)
- 三菱東京UFJ銀行 - 52円(会員優遇サービスなし)
[編集] 対応携帯電話機
2007年3月21日現在、下記の64機種がモバイルSuicaに対応している。なお、非対応機種はアプリのダウンロード自体ができない。
なお、FeliCa搭載機種であっても、JR東日本側が要求する通過性能に沿わない電話機は非対応とされている(例:ドコモの902iシリーズのうちD902iは非対応。また、ソフトバンクの非対応機、904T/804SH/703SHfは不合格又は試験実施されなかったと言われている)。これは読み取りエラーが発生した場合、ラッシュ時に改札で混乱が発生する可能性があるからだという。なお、新機種のモバイルSuica対応可否については概ね当該機種の発売開始前後に発表される。
[編集] 宣伝・タイアップ
現在、NTTドコモ・au・ソフトバンクモバイル・JR東日本それぞれ独自にテレビCMやポスター広告を行っているが、それぞれのイメージとキャラクターを「相互乗り入れ」させて、モバイルSuicaばかりでなく携帯電話の販促を含め宣伝効果を最大限に活用する方策をとっている。
モバイルSuica共通のキャンペーンソングとして、松任谷由実の「虹の下のどしゃ降りで」が使用されている(現在NTTドコモのCMでは未使用)。
当初はauのテレビCMやポスターにのみSuicaペンギンが出演(仲間由紀恵と共演している。仲間はICOCAのイメージキャラクターも務める。)していたが、今ではNTTドコモのCM・ポスターでもSuicaのペンギンが出演している。
また、JR東日本のCM(ちょっとだけホームシック編)では、登場する携帯電話の違いからauバージョンとNTTドコモバージョンが存在する。
2006年10月のサービス拡大時に「いつかえる?モバイルSuicaに」というキャッチフレーズの使用を開始した。その後、翌2007年2月のPASMOとの相互利用開始直前に「モ~かえた?モバイルSuicaに」というキャッチフレーズに変更されている。現在、パスモでは携帯電話アプリケーションを使用しての同様のサービスを展開する予定は公表しておらず、PASMO圏内でも使用出来ることを強調して入会促進キャンペーンを展開している。
2006年12月からサービス展開を始めたソフトバンクモバイルについては、テレビCMは放映されなかったが、予想GUYなど強烈なCMキャラクターがいるため、Suicaのペンギンとの共演でポスターが掲出された。
[編集] 注意点
[編集] 全般
- 形態上、自動券売機や自動精算機での使用が出来ないため、チャージ手段や入出場手段が限られる。なお、有人窓口の読み取り器はカード挿入式のものから上に乗せるタイプのものに変更されている。(ただし首都圏の一部鉄道会社(PASMO事業者)では挿入式を使用しているところがあり、そこでは窓口での精算等ができないため注意が必要である。)
- 携帯電話全般に言える事であるが、電池の消耗が大きいために使用中に電池切れになる場合も少なくない。携帯電話としての使用ができなくてもバッテリーがわずかでも残っていれば、改札での通信は可能であるが、完全に消耗すると利用できなくなる。改札から入場後にこの様な状態になった場合は、SF(電子マネー)、定期券いずれの利用であっても、利用区間の運賃(必要により料金)を全額現金で支払う必要があるので、電話として使わない場合でも充電が必要である。(ただし、携帯電話の電源が電池切れにより切れても、通常はモバイルSuica(モバイルFeliCaチップ)が動作するだけの電力は残されているので、電池切れ後に何度も繰り返して再起動を試みるなどの操作をしない限り支障はない。)
- 携帯電話のアプリ用メモリ領域とは別に、モバイルFelicaチップにもアプリケーション容量があり、本体メモリのアプリ領域にまだ余裕であっても、EdyやiDなどの電子マネーや、ポイントカード関係のFeliCaアプリケーションがインストールされている状態で、モバイルSuicaのアプリをインストールしようとすると、モバイルFeliCaチップのアプリケーション容量不足のため、インストールできない場合がある。
- ドコモでは、自社が展開するiDやDCMXの今後の進展を見込んで、903iシリーズからそれらとモバイルSuicaが共存できる様に、携帯電話本体のメモリを増やすと共に、アプリケーション容量を拡大した第2世代のモバイルFeliCaチップを搭載した。
- auのau ケータイクーポン対応機も、903iシリーズと同じ大容量のFeliCaチップを搭載した。
- チャージ(入金)は携帯電話の通信機能を利用して行う事が想定されているが、駅構内のコンビニエンスストアNEWDAYSやSuicaショッピングサービス対象店舗のファミリーマートミニストップのほか、SuicaPASOMO対応のバス車内では現金によるチャージ(入金)が可能である。
[編集] 各携帯電話会社の機種
[編集] NTTドコモ
- NTTドコモのFOMAで使用する場合、以下の量のパケット通信及びパケット料金(パケットパックなしの場合)が発生する。アプリの新規ダウンロード時やバージョンアップ時は特に多いため、パケットパックの変更回数制限(同一月2回まで無料で変更できる)以内であれば直前にパケットパックを契約又は増額し、翌日に元に戻す方法で節約が可能である。
- iモード通信によるSFへのチャージ:約370パケット(約74円)
- iモード通信による継続定期券の購入:約450パケット(約90円)
- モバイルSuicaアプリver.1からver.2へのバージョンアップ:約2,600パケット(約520円)
- NTTドコモの機種では、モバイルSuicaアプリはFeliCa領域から削除する事ができるが、鉄道・バス設定アプリは端末からは削除できず、ドコモショップなどで削除してもらう必要がある。
- モバイルSuica利用時にはiCお引っこしサービスは利用できない。
[編集] au(KDDI)
- モバイルSuicaアプリをインストールするときにFelica領域が分割され、約82パケット通信するが、このときの通信料は定額サービスの上限の対象にならない。
- au(KDDI)の機種では、モバイルSuicaを退会してアプリを消去しても、Felicaチップ上にSuica専用領域が残る。auショップなどでFelicaチップのメモリをクリアしてもらう必要がある。この際、他のアプリの登録情報も削除されてしまう。
[編集] ソフトバンクモバイル
- ソフトバンクモバイルの機種では、モバイルSuicaアプリのインストール時にFelica領域に「エリアB」の領域が生成され(既存の領域は「エリアA」)、同アプリはこのエリアを使用する。「エリアB」領域の削除はソフトバンクショップで行う必要がある。
[編集] 関連項目
- Suica
- ICOCA
- TOICA(2008年度以降相互利用開始予定。日本経済新聞 2006/7/7ほかによる情報)
- PASMO(2007年3月18日相互利用開始)
- ジェイアール東日本メカトロニクス
- iD
- Edy
- ペンギン (Suicaキャラクター)
- せたまる(東京急行電鉄)
- 仲間由紀恵(auキャラクター)
- 亀梨和也(KAT-TUN、NTTドコモキャラクター)