ユースホステル
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ユースホステル(Youth hostel、ドイツ語名:Jugendherberge)とは、青少年・少女の旅に安全かつ安価な宿泊場所を提供しようという主旨でドイツから始まった運動及び宿泊施設の世界的なシステムである。
ユースホステルの利用者をホステラー、ユースホステルを利用した旅をホステリングという。
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[編集] 概要
海外では、素泊りか朝食付で1泊が日本円に換算して約3,000円か、それ以下の廉価で泊まれるというのが魅力で、その宿泊施設が、古城であったり、帆船であったり、豪華な邸宅であったりといった予期しない楽しみも多い。世界最初のユースホステルもドイツ・ドルトムント近くのアルテナにある古城の一角に設けられた。
2005年現在では、世界の80ヶ国に約5500ヶ所の施設があり、うち約3分の2がヨーロッパに所在する。日本国内では2005年現在、約320ヶ所の施設が営業しているが、施設数は減少傾向で、1970年代から1980年代にかけては500ヶ所以上にものぼった。
基本的には会員制(会員でなくても宿泊は可能だが割増料金となる場合がある)で、日本国内の施設では宿泊料金は2005年現在で一般的に1泊2食付で約4,700円~約5,000円(会員料金)となっており、基本的に寝室は男女別相部屋である。
日本での会員数は、最も多かった1970年代には60万人以上にものぼったと思われるが、1980年代以降は減少傾向にあり、2005年現在では最盛期の7分の1程度の約8万5000人である。
元来、青少年の旅行者向けに開設された宿泊施設とはいえ、ドイツ南部のバイエルン州で原則満26歳までの利用とする年齢制限があるほかは、日本も含めて世界中の他の全ての地域・国で、利用できる年齢に上限を設けていない。
[編集] ユースホステル運動について
[編集] 歴史
ドイツの小学校教師リヒャルト・シルマン(Richard Schirrmann)が、ワンデルンシューレ(移動教室)を思いつき、児童を連れて、さかんに徒歩旅行をしていた。しかし、宿泊場所に苦労し、1909年に豪雨のために緊急避難的に小学校に避難したことからユースホステルを思いつく。
その後シルマンは、ザウワーラント山岳協会のウィルヘルム・ミュンカーの支援を受け、一代にして世界中にユースホステル運動を広げる。しかし、第一次世界大戦によりユースホステル運動は中断し、大戦後のハイパーインフレで、シルマンは全ての財産を失った。その後の国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)政権によるシルマンの追放。そして、第二次世界大戦と敗戦。爆撃と戦闘でドイツは焦土となり世界から孤立。ドイツユースホステル協会の国際ユースホステル連盟への復帰は却下され続ける。
このような絶望的な状況下からもシルマンは、何度も何度も再起し、世界中にユースホステルのネットワークを作りあげていった。
世界最初の専用ユースホステルは、シルマンが1912年アルテナ城を使って青少年が廉価で宿泊できる施設を開設したのが始まりだが、それ以前にも自身の勤務する小学校(アルテナのネッテ校)でユースホステルを臨時に設置していた。但し、アルテナ城とちがって専用ユースホステルではない。ちなみにアルテナ城内のユースホステルは現在も営業を続けている。
日本では1951年10月16日に、下中弥三郎、中山正男、横山祐吉、金子智一らが中心となって日本ユースホステル協会(JYH)が発足した。1952年に13施設と契約。以後、全国各地でユースホステルの開業が相次ぎ、1974年の最盛期には587施設とピークを迎えた。それ以降の施設は減少気味であり、2000年には332施設まで減っている。
[編集] 組織
ユースホステル運動の国際組織として、国際ユースホステル連盟(International Youth Hostel Federation、IYHF)があり、イギリス・イングランドのハートフォードシャーに事務局が置かれている。
JYHなど各国のユースホステル協会がIYHFに加盟しており、日本ではJYHの支部として、各都道府県のユースホステル協会が設けられている。
各ユースホステルはIYHFや所在する国・地域の協会の指針に基づいて運営される。
[編集] 青少年運動としての側面
都道府県のユースホステル協会で、青少年活動としての事業を行うところがある。野外活動の一部としての「歩くこと」や、少年少女の指導的な側面はボーイスカウト・ガールスカウトに通じるものもある。
[編集] 四つの誓い
ユースホステル会員やホステラーが守ることを求められる誓いが、JYHによって次の通り定められている。
- 私たちは、簡素な旅行により、未知の世界をたずね見聞を広めよう
- 私たちは、規律を守り、良い習慣を身につけよう。
- 私たちは、共に助け合い、祖国の繁栄に努めよう
- 私たちは、国際人としての教養を高め、明るい社会を建設しよう。
[編集] ユースホステルの運営と建物
[編集] 日本における運営による分類
運営の違いにより下記のように分類される。
- 直営ユースホステル:JYHが直接運営しているもの。
- 公営ユースホステル:公営の宿泊施設をユースホステルとして使っているもの。あるいは、地方自治体などがユースホステル専用として設置運営しているもの。会員でなくても身分証明があれば同じ料金で宿泊出来る事が多い。
- 民営ユースホステル:民営の宿泊施設がユースホステルとして利用できるもの。あるいは、個人などが設置運営しているもの。
[編集] 形態と建物
日本では直営ユースホステル以外、設置者(民間の個人、地方自治体など)がJYHから認定を受けた上で、JYHとの契約でユースホステルの運営が開始される。
日本の民営ユースホステルでは、建物全体が専らユースホステルとして使用されている施設だけでなく、旅館・ホテルの経営者が館内の一部を利用して兼営で営業する施設、寺院の住職等が寺院内部で宿坊等を利用して開設した施設もある。日本では木造建築の施設が多いが、鉄骨・鉄筋コンクリートの建物による施設もある。鉄骨・鉄筋コンクリートの建物の施設は、日本に限らず世界的にみて、都市部の施設に多い。
日本では、ペンション・旅館との兼業でなくユースホステル専用ながら、ペンション風や和式旅館風の建物による施設もある。そのようなユースホステルは1990年代以降、増加傾向にある。
建物が歴史的・文化的に価値のあるものなどユニークなものとして、海外では先述の通りのほか、元刑務所の建物による施設がある。日本国内でユニークな建物の施設といえば、かつては宿場町の古い町家を利用したものや合掌造りの民家を利用したものがあったが、現在日本でユニークな建物の施設は、農村・山村の古い民家を利用したもの、鰊番屋を利用したもの、廃校を利用したものが挙げられる。
日本では、1980年代以前に開設された施設では宿泊人員が数十人や100人前後かそれ以上の大規模な施設が多かったが、1990年代以降に開設された施設では宿泊人員が十数人から20人程度の小規模な施設が多い。この要因には、ユースホステル会員数の減少などユースホステルの需要が低下しており、大規模にする必要性が薄くなった事、近年ではホステラーがユースホステルに家庭的な雰囲気を求める考えが強くなった事や設置者・管理者にとっても小規模な施設であれば建物・設備の維持・管理が容易になる事があげられる。
以前にユースホステルとして営業していた宿泊施設の経営者が、JYHとの契約終了後、同一の建物で民宿またはペンションを営業している場合もあれば、民宿として営業していた宿泊施設がJYHとの契約で、全面的にユースホステルとしての営業に変わる場合もある。
[編集] 運営スタッフ
日本のユースホステルで、施設の運営の最高責任者は、管理者であるマネージャー(最近はこの呼称が使われるようになったが、古くからの「ペアレント」の呼称もよく使われる)である。民営ユースホステルでは多くの場合、設置者がマネージャーとなっている。
マネージャー夫妻が運営の中心となっている所が多いが、比較的大きなユースホステルや繁忙期には、施設運営の補助にヘルパーが登場する。ヘルパーは居候かアルバイトか分からないと思われている事が多いが、社会事業であるユースホステル運動に参加するボランティアとされる。ヘルパーの業務は館内の清掃、食事の準備と後片付け、電話応対、風呂の準備、宿泊予約の受付、チェックイン時のホステラーへの応対などの接客など、施設運営におけるあらゆる業務にわたっている。労働の対価として、ヘルパーに食事と宿泊が提供されると考えられるが、ボランティアとみなされながらも多くの場合、少額の金銭の謝礼を受ける。特定のユースホステルに行く事とその道中の観光を目的に、定期的にヘルパーに行く者も多い。
[編集] 宿泊施設としての側面
[編集] 利用の規則
男女別の相部屋が原則であり、本来は食事の配膳、食器洗い等の後片付け、寝具の準備、清掃に至るまでセルフサービスが原則である。しかし、食器の後片付けは中途半端だと却ってスタッフによる後始末が煩雑になったり、地域によっては保健所の指導などもあり、最近は洗わなくても良いとされる施設のほうが多い。
かつては朝食後の清掃もホステラーの義務であったり、義務でなくても任意で行うのが望ましいとされた施設もあったが、現在日本国内で、ホステラーが朝の出発前に館内を清掃する施設はほとんど皆無と言ってもよい。海外でも現在、ホステラーが館内の清掃を行う施設は見られないようである。
かつては日本国内の施設では、消灯時間が厳守され、午後10時にはホステラーの寝室も含めて館内の灯火をほとんど全て消し、ホステラーは寝室に引き上げる必要があった。現在でも消灯時間を設けている施設は多いが、規則は緩やかで、早めに就寝したいホステラーへの配慮から、寝室の電灯を午後10時から11時の間に消す必要があっても、食堂や談話室(談話スペース)をより遅い時間まで雑談などに利用出来る施設が普通で、中には談話室を終夜利用出来る施設もある。
かつて、日本国内では禁酒の施設が一般的であった。現在でも禁酒の施設があるがごく少数で、大半の施設で飲酒出来るようになり、ホステラーに酒類の販売を行う施設も少なくない。又、施設内にカウンターのあるバーを設けて、そこでホステラーにビールやソフトドリンクを提供する施設が海外のみならず日本でも見られる。
日本の施設で飲酒に寛容になる傾向の一方、最近の嫌煙権の主張など日本社会一般での禁煙の風潮から、近年では日本国内で全館禁煙の施設が出てきたが、まだ少数である。
[編集] 食事の提供について
夕食・朝食とも提供する施設もあれば、どちらかのみの提供となっている施設もある。又、施設によっては食事提供がなかったり、ホステラーが自炊する場合もある。
海外では自炊室を備えた施設が多いが、現在日本では自炊室を備えた施設は少ない。自炊室のある施設では、鍋・釜や食器はおおむね無料で貸してもらえる。
日本で朝食提供のある施設では、大概宿泊料金と朝食料金が別立てで朝食込みの宿泊料金となっていないが、ヨーロッパでは宿泊料金が朝食込みとなっている施設が多い。但し、日本でも海外でも、夕食が宿泊料金に含まれている施設はほとんど見られない。
日本では宿泊申込み(予約)と同時に食事の予約も行うが、ヨーロッパのユースホステルでは宿泊申込み時に夕食の申込みをする必要はない場合が多く、施設に到着後、夕食前に館内で食券を購入して施設内の食堂を利用するか、食券を購入しなくても施設内の食堂に入ってその場で夕食メニューを注文すればよい。又、宿泊料金が朝食込みでないヨーロッパの施設では、朝食は日本の施設のように宿泊申込み時に予約するのではなく、その朝施設内の食堂に入って注文すればよい。
[編集] 寝室と寝具など
ヨーロッパのユースホステルの様式では、寝室内のベッドは二段ベッドであり、その様式は日本国内の施設でも一般的であるが、日本では寝室が布団を敷いて寝る畳敷きの和室となっている施設がかなり見られる。
又、近年の日本では、寝室内に二段ベッドではなくシングルベッドを備える施設が増えている。一室の宿泊人員は、日本でも海外でも、一般的には4~8人程度である。
中には、大部屋の寝室に二段ベッドを何台も据えて一部屋の宿泊人員を多くした「マスプロ」式・「詰め込み」式で、ホステラーにとって居住性が高いとは言えない施設もある。
料金が低廉とはいえ、日本でも海外でも、寝室や廊下など館内が清潔で、相部屋ながら居住性の高い施設も多い。一方、中には衛生的とは言い難い施設もある。
窃盗などへの防犯対策では、日本国内でも近年では寝室の扉を内側から施錠出来る施設が少なくない。日本ではまだ少ないが、ヨーロッパではチェックイン時にホステラーに寝室の鍵を貸与する施設が一般的である。寝室の鍵はカードキーである場合もある。チェックイン時に鍵の保証金を徴収し、紛失・破損など問題がない限りチェックアウト時に鍵を返却の際、全額保証金を返還する施設もある。又、ロンドン・パリなどヨーロッパの都市部では、寝室の扉がオートロックとなった施設もある。さらに、ヨーロッパでは寝室内に荷物用ロッカーを備える施設が多く、その場合ホステラーがロッカーの施錠を持参の南京錠で行う事が多い。
ベッドのシーツ(スリーピングシーツ)は施設で借りてホステラー自らがベッドまたは布団にセットするが、封筒状のものが一般的である。現在の日本ではシーツは宿泊料金に含まれており、持参しても料金は割引にならない。海外では、現在でもシーツ持参で宿泊料金が割引になる国があり、特に北欧諸国では、シーツ持参と施設でのシーツ貸与の場合の宿泊料金の差が大きいようである。
朝には毛布を畳み、かつての日本ではその方向や乱れ具合を点検する事もあり、まるで刑務所か軍隊を思わせるような規律があったが、現在はそのような厳しい点検を行う事はない。借りたシーツは連泊でない限り、ベッド又は布団から外して畳み、所定の場所に返却する。
[編集] 浴場・トイレ・洗面所など
ユースホステルでは基本的に風呂(シャワー)・トイレ・洗面所は寝室になく、寝室の外に設けられ共同である。
ユースホステルの共同浴場は、海外では当然シャワー室だが、日本では沖縄など南西諸島の一部の施設でシャワー室であるのを除けば、浴槽と洗い場からなる風呂である。日本の温泉地では、共同風呂が温泉風呂となっている施設がある他、館内の風呂が温泉でなくても希望者を自動車で近くの温泉浴場に送迎する施設がある。
近年では、洗面台が寝室内に設けられた施設が日本にも海外にもあり、中には洗面台だけでなくトイレも寝室に設けられた施設がある。後述の日本のユースゲストハウス・ドイツのユーゲントゲストハウスでは、寝室にトイレ・洗面台だけでなくシャワー(バス)までも備わった施設もある。
日本でも海外でも、コインランドリーなどホステラーが有料で使用できる洗濯機・乾燥機が多くの施設に設置されている。
[編集] 「ミーティング」について
ミーティング(ティータイム)は日本のユースホステルに特有の行事で、海外の施設では見られない。
かつては、マネージャーやヘルパーが中心となって、夕食後に「ミーティング」が行われ、宿泊者同士の交流もその場を中心として行われていた。これらはユースホステル側スタッフ(ペアレントやヘルパー)とホステラーによる歌や踊りが中心で、程度問題であるが、脱線状態となり、狂喜乱舞しているユースホステルもあった。しかし、歌と踊りのミーティングは、禁酒でもあり消灯時刻もある中での制限内での騒ぎであった。
その後、ミーティングの形態も変化し、かつて程度を超えたミーティングで不評を得た事もある「歌」や「踊り」を行う施設はまれになり、それを実施するユースホステルでは逆に「売り」になっている。
現在では観光案内や、ティータイムなどの座談が中心である。
ティータイムでは参加したホステラーに茶菓を出して、ホステラー同士が旅行情報を交換したり雑談する他、マネージャーやヘルパーが観光案内を行う事が一般的であり、日常生活では出会う事のありえない人達との出会いがあって、ユースホステルの魅力の1つとなっている。
最近はミーティングやティータイムの時間を設けていないユースホステルもある。その場合は談話室に自由に集まり、雑談や情報交換が自然発生する事が多い。
[編集] ユースゲストハウス
近年では、通常のユースホステルより設備の水準が高い施設としてユースゲストハウスもある。
通常のユースホステルより高い年齢層の利用を考慮して、一部屋の定員を2~6人程度にし、寝室では二段ベッドでなくシングルベッドを備えて間取りが広いなど、設備が高級化しているため、宿泊料金も通常の施設より高めに設定され、JYHでは1泊2食付5,000円~6,500円程度とされているが、実際には2004年現在、1泊2食付で約5,400円~約5,800円(会員料金)が一般的と考えるとよく、家族部屋などがある。設備には3タイプあり、 1.洗面付(上限価格-素泊3500円) 2.洗面トイレ付(上限価格-素泊4000円) 3.洗面トイレ・風呂付(上限価格-素泊4500円) となり、日本ユースホステル協会が設定している上限価格が違っている。但し、あくまでも上限価格であり、実際には、1から3まで、どのユースゲストハウスも、価格差は殆どない。1泊2食付で約5,400円~約5,800円(会員料金)の範囲内と考えて良い。
ドイツでは一般のユースホステル(Jugendherberge)より設備の水準が高いユーゲントゲストハウス(Jugendgästhaus)があるのにならって、JYHが開設を勧めるようになった。
しかし、ユースゲストハウスと同等の高レベルの設備ながら、設置者またはマネージャーの意向で通常のユースホステルとして営業している施設もある。
[編集] ホステリングとホステラー(主に日本国内で)
[編集] ホステラー同士の交流
ユースホステルでは、寝室が相部屋で一人旅での利用が多いという特質のため、以前に面識のなかったホステラー同士が施設の館内で歓談する事が普通にあり、ホテルや国民宿舎など、他の宿泊施設には見られない特徴である。
ホステラー同士の雑談などの交流は、寝室内の他、食事時間中に食堂、ミーティング(ティ-タイム)とその前後に食堂や談話室(談話スペース)で行われ、食堂や談話室では性別に関係なくホステラー同士の雑談が気軽に行われる。会話だけでなく、ホステラー同士が時にトランプやウノなどのカードゲーム、卓球台のある施設では卓球に興じる事がある。その他、施設によっては、ダーツ、ビリヤードなども用意している。
このようなホステラー同士の交流は日本の施設だけでなく海外の施設でも見られ、民族・人種・国籍の異なる者同士が交流する事もある。そのようなホステラー同士が住所・電話番号、近年では電子メールのアドレスを交換し合う事も少なくない。知り合ったホステラー同士で次の日に観光などの行動を共にする事もある。
ユースホステルで知り合った者同士が旅行後も長く友人関係を続ける例は少なくないが、現在の日本では後述の通り、ホステラーの高年齢化が進み学生よりも社会人の利用が主なので、かつて程にそのような例は見られなくなっている。なお、ホステリング中に知り合った男女が旅行後交際を続け、さらには結婚に至った例もある。
又、日本では、施設にもよるが、ホステラーとマネージャー、ホステラーとヘルパーが互いに歓談などをすることも珍しくはない。
このようなユースホステルでのホステラー同士の交流の陰の面として、日本では、その施設を何回も利用している旧知のホステラー同士のみで食堂や談話室などに集まって歓談などをして、排他的な雰囲気を作り、他のホステラーが会話の輪に入れず疎外感を感じるなど、ホステラーが施設内で他人から不快な言動による迷惑を被る事も皆無ではない。
[編集] 移動手段
日本国内のホステリングで、かつては鉄道やバスなど交通機関での移動が最も一般的で、現在では、交通機関の利用によるホステリングもあるが、オートバイや自動車での移動が主流である。又、かつても現在も、自転車または徒歩で移動するホステラーが時に見受けられる。
最寄の鉄道駅又はバス停留所が施設から遠い場合、交通機関利用のホステラーを自動車で駅またはバス停に送迎する施設もある。
ホステラーの間では、主に北海道で、交通機関利用のホステラーを表わす「ジェーアーラー」(主にJRの鉄道線を利用するため)、自転車でのツーリングで移動するホステラーを表わす「チャリダー」(チャリンコまたはチャリ(自転車の俗語)にライダーを合わせた造語)の語が使用されていた事もある。
[編集] 日本におけるユースホステルの問題
[編集] ホステラーの高年齢化とその考察
日本では、1970年代まではホステラーのほとんどが10代後半から20代前半の学生・生徒(世代としては「団塊の世代」からその10歳前後下までが中心)で、1980年代から1990年前後までは若年の会社員・公務員の利用が多くなったとはいえ、学生・生徒の利用も少なくなかった。
近年の日本では、学生等の若者よりむしろ中高年の利用が多く、2000年代では30代がホステラーの中心的な年齢層である。又、かつてはあまり見られなかった高齢者、家族連れの利用もかなり多く見られるようになった。
海外でも、北欧では中高年や高齢者の利用が比較的多く見られるというが、利用の主体は10代から20代までの若年者のようである。
日本の施設で、ホステラーのほとんどが社会人で高年齢化が進んでいる理由としては次の事が考えられる。
- 利用者側の側面
- 少子化によって日本全体で若年者の割合が減っている事、以前に面識のなかった他人との相部屋を嫌う若者が、現在ではかつて以上に多い事。しかし、現在でもヘルパーの多くは学生・フリーター等の若者であり、ユースホステル館内のヘルパー用寝室も又ホステラーの寝室と同様相部屋であり、相部屋である事が決定的な理由でないとも考えられる。
- 日本国内の施設では、比較的年齢層の高い社会人が主たるホステラーとなっていくにつれ、学生・生徒が心理的にホステラーとして宿泊しにくくなってしまった事。しかしながら、そもそも一度もユースホステルを利用した事がない若者が多いと考えられる以上、この論は否定されるという見方がある。
- 国内の経済情勢の変化(主に悪化)により、大学生は3年次から就職活動を強いられ、卒業後も社会に出て1,2年目は遊びどころではない事。
- 「携帯貧乏」と称されるように、携帯電話などへの支出が多い生活スタイルから、若者の旅行への支出が減る傾向がある事。
- 他には、安価な国際線航空券が多く流通する事で、若者の海外旅行が多くなった事。しかし一方では、大学生などの「卒業旅行」が減る中、卒業旅行の若年化が進み、受験を終えた「中学生」「高校生」が、卒業旅行と称してユースホステルを使った旅を始めつつある状況もある事に留意する必要がある。
- ユースホステルは、他の宿泊施設に比べて一人旅での利用が多いが、30代以上がホステラーの主な年齢層となる要因の一つとして、晩婚化・非婚化も考えられる。
- 施設側の側面
- 設置者がマネージャーである民営ユースホステルにとって、比較的多くの安定した収入のある20代後半以降の会社員・公務員が主たるホステラーであれば、単に宿泊するだけでなく、年越しパーティやカヌー・ラフティングなどのツアーといった施設主催の行事に料金が低廉でなくても参加し、又、施設で販売する地酒・輸入ビールなどの安価ではない酒類を購入するなど、本来の宿泊料金以外にサービス・商品などでの収入が多額となり、学生が主なホステラーであるよりも多くの収益を見込める。又、そのような社会人が固定客となれば、安定した施設の経営に繋がりやすい。そこで、日本経済の実情からして大幅な右肩上がりの経済成長を望めない現在、日本国内のかなり多くの施設で、本来のユースホステルの設立趣旨から逸脱・乖離しながらも、学生・生徒よりも比較的年齢層の高い社会人の宿泊を主眼において経営を進めるようにもなり、そのような施設運営のあり方も、日本でのホステラー高年齢化をさらに進行させている状況が存在すると推定出来る事。
- ユースホステルの長所の一つである料金の低廉さが、近年においては格安なビジネスホテルなどの乱立により長所たり得なくなっている事。詳しくは次節を参照されたい。
しかしながら、ホステラーの高齢化が進んでいる理由は、多くの場合、単一の理由のみによってではなく、複合的な要因による事が多いと考えられ、又、地域的事情など様々な他の要因も絡んでくるので、ケースバイケースである事に留意する必要があり、さらに、全体の傾向として、ホステラーの高齢化が進んでいるという感触があるというだけで、一部には、若年のホステラーの利用が多数を占めるユースホステルが存在する事も事実である。
[編集] 施設数の減少について
日本における施設数の減少傾向の理由としては、宿泊施設の多様化と、宿泊する側の要望する水準が高くなっている事に対して、既存のユースホステルが応えきれていない事、少子化による想定した利用者人口の減少などにより、ユースホステル会員数が大幅に減少している事が挙げられる。見聞のための旅については、海外旅行が容易かつ割安となった事で、国内の施設よりも海外の施設を多く利用する日本人ホステラーが増加している事が考えられる。
少子化と海外旅行が容易になった事は、日本国内の施設数減少の要因としてだけでなく、ホステラーの高年齢化の要因としても考えられる。
一方で、施設の老朽化による閉鎖や、民営ユースホステルにおいては「後継者」問題がある。国鉄の終焉時代からはじまった赤字ローカル線廃止や、それを引き継いだ第三セクター鉄道・バス路線を国鉄・JRのかつての周遊券(ワイド周遊券など)で利用できなくなった事、JR旅客各社が周遊券を廃止して、より通用期間が短い周遊きっぷに置き換えた事などによる、その地域の公共交通機関を利用した旅行者の減少、公営ユースホステルにおける収支逆ザヤなど、様々な要因が複雑に絡み合っている。
実際には、近年でも新しいユースホステルも次々と開所しているので、閉所しているユースホステルは、表面的な減少数よりもはるかに多い。
[編集] 値段的に競合する宿泊施設の登場
以前は、ユースホステルの宿泊料金は素泊まり3000円以下、1泊2食4000円前後かそれ以下で、もっとも安い宿泊施設であったが、宿泊施設の多様化が進み、価格面でも競合相手が多数出てきている。
バブル経済期と同期してレジャーブーム、アウトドアブームが起き、数多くのアウトドア施設(テントサイト)が建設された。以前のテントサイトは、トイレさえ不十分であったが、水道・トイレ施設の充実の他、シャワールームが設置されたり、温泉露天風呂までも併設されたりした。このため、価格面だけで言えば、ユースホステルの強力な競合相手となった。
バブル経済期以降の若者のモータリゼーションの進展から、若者の旅行は、交通機関での移動からオートバイ、さらに自動車での旅行に大きく変化し、究極的には「車中泊」が最も安いが、カップルでの車旅行の場合は、郊外立地型のラブホテルもユースホステルの競合相手となった。2人分の宿泊料金と駐車場代を含めて考えればユースホステルよりも安い事が多く、時間の指定や受付の煩わしさもなく、設備も充実しているため、「カップルでの車旅行」のスタイルでは、ユースホステルが選ばれる事は稀になった。但し、入室後の出入りが自由かどうかはホテルによって違いがあるため、限定的な利用スタイルでもある。
ユースホステルと似た形態であるが、主に都市部ではゲストハウスといわれる外国人向けの低価格宿泊施設も登場している。これは、日本の宿泊費が高い事から、外国人バックパッカー向けにつくられたもので、東京・京都・沖縄などに多い。元々宿泊施設として作られたものではなく、普通の家やアパート、マンションを改装して2段ベッドなどを詰め込んだドミトリー型の宿泊施設となっており、立地条件にもよるが、1泊のみだと2000円から4000円程度である。外国人の場合、長期宿泊する事が多いため長期の割引率が高く、沖縄の場合は1ヶ月いると1泊あたり1000円以下になる所もある。外国人向けに作られたものであるが、その安さのために日本人の利用者も増加し、日本人専用のゲストハウスも出来てきている。ただし、長期利用者が多いゲストハウスでは、ルームシェアの一形態とも見なされ、ユースホステルよりも宿泊における規則が厳しくなってしまった所も出てきており、均質的なユースホステルと比べると利用しづらい面もある。
民宿においても、ユースホステルと同じく男女別相部屋を基本とし、料金もユースホステルの会員料金と同程度であり、宿によっては寝室に二段ベッドを備え、JYHと契約がない事を除けばユースホステルとほぼ同一の方式・形態で運営される宿がある。1980年代以降、北海道や信州などで開業が増えた。かつてはユースホステルより利用者の年齢層がやや高く、飲酒が可能など規律もユースホステルより緩やかだったが、ホステラーの高齢化と規律の緩和により、現在ではそのような民宿とユースホステルの実質の差はさらに僅かとなっている。そのような民宿を「旅人宿」と呼び、かつては「ユース民宿」の語も使われた。代表例では、「とほネットワーク旅人宿の会」を形成する民宿である通称「とほ宿」があり、共同で情報誌「とほ」を発行している。既述の内容と重複するが、ユースホステルがJYHとの契約を解約して同一形態のまま、そのような民宿に移行する場合もあれば、逆にそのような民宿がJYHとの契約で、民宿の頃と営業形態を変えずにユースホステルに移行する例もある。(民宿の項目を参照)
既存の宿泊形態であっても、最近のインターネットによる宿泊予約システムの普及によって、宿泊料金の低価格化が進んでいる。インターネットで予約すれば、3000円台後半から4000円台で宿泊出来るビジネスホテルが非常に増えている(予約・受付業務における人件費削減による低廉化)。もちろんこれらの施設は個室であり、部屋にバス、トイレ、テレビ、エアコン、冷蔵庫の他、インターネット設備まで取り揃えている場合もある。ロケーションも駅の前など非常に便利な所にある。さらにこの値段で朝食付きの所まである。ユースホステルが相部屋である事から考えると、ユースホステルの割高感を感じざるを得ない。
又、ビジネスホテルより豪華な一般のホテルや旅館であっても、空室にしておくよりは割引してでも満室にしておいた方が利潤があるとして、地方中核都市や温泉地を中心に、「直前割引」「当日割引」を設定している場合がある。この場合、携帯端末やパソコン対応のホテル独自のサイト、旅行会社によるサイト、当日予約専業のサイトなどから、数日前から当日の予約に限って50%近い割引がされている事がある。又、三大都市圏などでは、ネットによる当日予約で、予定チェックインの時間帯(夕方、夜、深夜)によって宿泊料金に変化をつけている事もある。これは、終電後にタクシーで帰宅する人に対し、タクシー代と競合する価格帯(5000円程度)にする事で、新たな宿泊需要を掘り起こす事を目的としている。いずれの場合も価格競争力があるため、ホテル側の設定意図とは離れて、ユースホステルと競合する事になってしまった。
以上のように、携帯電話を持って車旅行をする者にとっては、ユースホステルは価格面において独壇場ではなくなってしまった。 この例として、車による旅行者を主なターゲットとする「モーテル」(一人旅でも家族連れでも利用可能)という、低廉で気軽に利用できる宿泊施設が全国各地の町に存在するアメリカでは、個人の家庭をユースホステルとして提供している施設も含め、ユースホステルは132軒に留まる。施設数自体は日本に次ぐものの、東海岸や西海岸に集中し、内陸部は少ない。
[編集] ユースホステルの情報
ユースホステルの情報としては、入会及び継続時に配布される冊子で、各施設への行き方や住所が簡単に記述されたホステリングガイド、季刊の情報誌「とらいべる(Tryvel)」のほかに、ユースホステルを紹介する書籍が発行されているが、近年ではインターネットを利用した情報公開に移行している。
[編集] ユースホステルしんぶんから「とらいべる」へ
ユースホステルの情報源として、ユースホステルしんぶんが発行されていた。月3回発行で、PR版(1日号)、会員版(11日号)、内報版(21日号)があり、会員には会員版が送付され、事実上の月刊紙であったが、2004年度では会員版は年4回休刊し、年8回の発行となっていた。そのため、2004年度内をもって廃刊され、それに代わって2005年度以降、ユースホステルの情報の他、旅行情報を掲載した季刊の情報誌「とらいべる」となった。「とらいべる」は、創刊号だけがイレギュラーの4月1日発行だが、以後、6月1日、9月1日、12月1日、3月1日の発行予定となっている。ユースホステルしんぶん時代は、入会から初回の送付までに1~2ヶ月を要し、年8回発行といっても場合によっては6~7回しか手元に郵送されなかったが、「とらいべる」はシステム変更により、必ず4回送付される。入会直後の発行分が間に合わない場合は、会員期限(1年)が切れた後も、4回目のものが手元に届くようになる。なお、2006年度から発行日が20日に改められた。
[編集] ホステリングガイド
ユースホステルの入会および継続時に入手できる日本国内のユースホステルに関する情報及び、世界的なユースホステルに関する予約などの情報が記入されている小冊子。ユースホステルの利用のための情報、日本のユースホステルの情報、各地のユースホステルが行っている行事、会員における割引施設の情報、ホステル宿泊約款など様々な情報が得られる。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- ホステルタイムズ 世界ユースホステル&ホステル オンライン予約サイト
- 日本ユースホステル協会
- ユースホステルってどんなとこ?-YHについてのQ&A集