南海2300系電車
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南海2300系電車 |
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起動加速度 | 3.1 km/h/s | ||
営業最高速度 | 100km/h(平坦・準山岳区間) | ||
設計最高速度 | 120km/h | ||
編成出力 | 100kW×8=800kW | ||
編成定員 | 136(立席)+66(座席)=202人 | ||
全長/全幅/全高 | 17725mm/2744mm/4005mm | ||
編成重量 | 72.2t | ||
軌間 | 1067mm(狭軌) | ||
電気方式 | 直流1500V | ||
制御装置 | 東洋製IGBT素子VVVFインバータ制御 | ||
ブレーキ方式 | 電磁直通空気ブレーキ(回生ブレーキ併用、応荷重装置付) |
南海2300系電車(なんかい2300けいでんしゃ)は、南海電気鉄道に在籍する「ズームカー」の一系列。2006年時点における南海での最新系列で、2005年(平成17年)3月31日より営業運転を開始している。
目次 |
[編集] 概要
高野線の山岳区間である橋本駅-極楽橋駅間を走行可能な車体長17mの2扉車「ズームカー」である21000系・22000系・2200系の置き換え用として、1990年(平成2年)に2000系が運用を開始したが、その後、山岳区間途中駅の乗客の減少により、山岳区間を2両編成単独で運用出来る車両の導入が必要となった。
そこで、本系列2両編成4本(8両)の導入が決定された。当初はワンマン化・2連化を除き、殆ど2000系と共通化した思想で投入される予定だったが、直前に高野山が世界遺産に登録されることが決まり、それにふさわしい新車として投入されることとなった。
なお、2005年10月以降は運用が少なくなった難波までの直通運転では難波-橋本間は2000系と併結して運行し、山岳区間は直通運用も区間運用も単独でワンマン運転を行っている。
2300系のなんば乗り入れは、平日1本のみとなっており、極楽橋9:10発→なんば10:46着(急行)、折り返し、なんば11:00発→極楽橋12:40着(快速急行)が2300系での運行となっている。
[編集] 営業運転までの経緯
- 2003年 高野線山岳区間の乗客減に対し、2000系改良型の導入計画が進む。
- 2004年1月頃 南海社内で2300系導入が固まる。
- 2004年6月 南海沿線の情報誌「NATT'S」にて新型車両6両の導入を発表。
- 2004年7月 雑誌「関西の鉄道」で導入が明記される。
- 2004年8月 読売新聞にて導入発表。
- 2004年8月 南海電鉄のホームページにて2300系導入の正式なプレスリリースを発表。
- 2004年9月28日 2301F~2303Fの甲種輸送。
- 2005年2月17日 2304Fの甲種輸送。
- 2005年3月8日 南海電鉄のホームページにて運行開始日(3月31日)の正式なプレスリリースを発表。
- 2005年3月19日・3月20日 一般試乗会。
- 2005年3月31日 営業運転開始。
- 2005年10月16日 2連ワンマン運転開始。
[編集] エクステリア・インテリア
従来の2000系との違いを基本に概要を説明する。
- 塗装は従来のものとは大きく変更され、前面は一面朱色(貫通扉部分は一部銀色)、側面もステンレス無塗装を基調に、朱色のグラデーションを施した。高野山の名所である「根本大塔」にちなんだ塗装で、インパクトある新塗装となった。4編成それぞれに花の愛称をつけ、外板側面に花のデザインをあしらった。
- 窓は縦1m、横1.84mの大型一枚窓(従来より下方に100mm拡大)、車端部は換気に必要な開口部を確保するべく開閉可能の一段下降式窓を採用した。中間部の大型一枚窓はUVカットガラスとなっている。なお、ブラインド(フリーストップカーテン。ワイヤー式)も設置している。車端部が通常規格なのは、換気やロングシート部分の背もたれ拡張のため。
- 前面エクステリアの変更点として、前照灯が照射範囲拡大のため既存2000系の正面窓ガラスから貫通扉の上にも設置したこと、塗装の大幅な変更、下部前照灯と標識灯の配置を逆にしたこと、左右の窓ガラスが行き先・種別表示部分まで被らない寸法に縮小されたこと、貫通扉の窓の縮小など。
- 車内は赤色系の転換式のクロスシートで、車両中間部は2列+1列の配置。車端部は一部にロングシートを配置し、他に1列+1列のボックスシート、ごく一部は車椅子対応の折畳式シートも設置されている。運転席のすぐ後ろには2列+2列の転換クロスシートを配置した。座席形状は西日本旅客鉄道(JR西日本)の125系に近い仕様。クロスシート座席は手動転換方式、脚台は片持ち式、蹴込み板は廃した。座席下には吊り下げヒーター(一部温風暖房機)を取り付けた。座席表地は茶色系のモケット、枕カバーはサーモンピンク色。
- 車両端部の仕切り化粧板は木目調を採用した。シートピッチは900ミリと125系に比べると10ミリ狭くなっている。
- 車両の連結部分の接続貫通扉を車椅子が通行可能な幅広(600mmから800mmに)にして、バリアフリー対応とした。妻引戸手前にスロープを設けた。
- 制御装置は1C2M×4群制御で、全車制御電動車。また回路を2000系とは異なり、二重系とした。制御機能としては力行4ノッチ、抑速ブレーキ制御は山岳線走行対応として5ノッチまで装備、ベクトル制御による高精度トルク制御、インバータ出力電圧電流からに推定加速度による高速空転滑走検知を実現。既存の2000系電車と併結運転のため運転扱いをあわせた。故障その他によりインバータを解放するときの運転取扱は1群解放時は150%乗車で終日営業運転の継続が可能な性能を有する。2群解放時は100%乗車で50‰力行、抑速運転が最寄り駅まで可能で、空車で高野下~極楽橋間を走行可能な性能を有する。インバータ1群解放時は高加速1、2群解放時は高加速2のモードで限流値増機能がある。
- ブレーキ装置は2000系の併結を可能にする為、従来の電磁直通ブレーキ(回生ブレーキ併用)を採用した。作用装置内でSAP圧、空気ばね圧を電気信号に変換し、ブレーキ演算装置で必要ブレーキ力を電気演算したうえでBCに必要な圧力が込められる。
- 集電装置はシングルアーム式パンタグラフを採用した。ばね上昇空気下降式。1台/両。
- 扉開閉時のドアチャイムと、LED情報案内装置の設置。ドアチャイムの音色は西側扉と東側扉とで異なり、ドアの開く側を識別できるようにした。LED案内表示は、南海の他の車両と異なり、半角英字も表示されることがあるが、めったに利用されない(2006年現在、不審物発見時の通報を求める案内などに使用されるのみ)。ドアの開閉時に点滅するLEDランプがドア直上に設置された。これは車外からも視認し得る位置に取り付けた。ドアチャイムとランプの動作はドアを開閉する前に車掌スイッチのひねり動作でおこなう。車掌スイッチは開閉操作をする前に押し棒をひねる構造で、ひねった状態でドアチャイムが鳴動、ランプが点滅する。開閉誘導鈴はホームで扉が開いているときに継続してチャイムを鳴動させるもので、音声でドア位置を知らせる。なお、2000系と併結時に2000系側で車掌スイッチを操作した場合、ドアチャイムとランプは作動しない(開扉誘導鈴は鳴動する)。側扉はステンレス製で内側は化粧板なしの無塗装である。しかし、室内の蛍光灯はカバーつきのままである。
- 台車はボルスタアンカ付きの従来の2000系と同等のもの(FS541B)である。
- 設計最高速度は120km/h、起動加速度3.1km/h/sで、減速度は3.8km/h/s(常用)、4.0km/h/s(非常)とこちらも従来の2000系と同等である。
- 最大寸法も2000系に準じる。
- 冷暖房電源を供給する補助電源装置は、ダイレクト変換2レベルインバータ(2バンク形、並列運転方式)方式SIV(静止型インバータ)。Mc2車床下にインバータ装置とトランスリアクトルを一体化した。1台のSIV内に2台のインバータを搭載、2台を並列同期運転させる。これによりSIV故障時の受給電源装置が不要化した。制御方式はPMWによる出力電圧制御で、冷却方式は走行風を利用した自然冷却方式(ヒートパイプ方式)。2群とも健全運転時は1台が37.5kVAずつ出力、合計で75kVAを出力、2両分を給電する。片群故障時は健全側の出力内容を75kVAに上昇させる。よって補助電源故障時の空調などの負荷減処置が不要化した。
[編集] 編成愛称
本系列には、全編成に以下の愛称が付与されている。
- 「さくら」2301+2351(2004年9月29日甲種輸送完了・2005年3月31日営業運転開始・鉄道の日公開車両)
- 「はなみずき」2302+2352(2004年9月29日甲種輸送完了・2005年3月31日営業運転開始)
- 「しゃくなげ」2303+2353(2004年9月29日甲種輸送完了・2005年3月31日営業運転開始)
- 「コスモス」2304+2354(2005年2月18日甲種輸送完了・4月22日営業運転開始)
[編集] 現況
2005年3月31日より営業運転が開始され、運行ダイヤは運行開始日の発表と同時発表された。また、2304F「コスモス」については2005年度予算枠内での導入となったために落成が遅れ、同年4月22日導入となった。
10月16日のダイヤ改正より山岳区間では2両でのワンマン運行を開始した。ワンマン運転には本数が不足しているので今後の増備(又は2000系のワンマン化改造)も考えられる。
[編集] 外部リンク
現用車両 |
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南海線:50000系・10000系・7000系・7100系・9000系・1000系 高野線(大運転):31000系・30000系・2000系・2300系 高野線(区間運転):11000系・6000系・6100系・6200系・6300系・8200系・1000系 支線・鋼索線:2200系・2230系・コ11・21形 |
過去の車両(昇圧後在籍) |
南海線:旧1000系・1521系・キハ5501・5551形 高野線:20000系・21000系・22000系・8000系 貴志川線:2270系・モハ1201形・クハ21201形 |
過去の車両(昇圧前在籍) |
南海線:電7系・モハ2001形(電9系)・簡易半鋼車・モハ1501形・モハ1551形・11001系・12001系・2051系・サハ4801形 高野線:モハ561形・モハ1251形・クハ1900形・サハ3801形 貴志川線:モハ1051形 |
機関車 |
電気機関車:ED5105形・ED5121形・ED5151形・ED5161形・ED5201形 蒸気機関車:C10001形 |