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日本の自転車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

日本の自転車では、日本の自転車事情について説明する。

目次

[編集] 自転車の異称

俗語で「チャリンコ」と呼ばれることが多い。語源は諸説ありはっきりしない。「チャリンコ」を省略した「チャリ」は単独で使われるほか、造語力が強く「ママチャリ(女性向け軽快車)」や「チャリ通(自転車通学・自転車通勤)」、「チャリダー(自転車旅行者)」、「デコチャリ」、「原チャリ(原動機付自転車)」などの語を生み出している。「チャリンコ」やその派生語は、愛称として親しみを込めて使う人がいる一方で、自転車に対する蔑称またはなんらかの差別用語に由来するものと考え抵抗を感じ忌避する自転車愛好家・関係者も存在し、万人に受け入れられる言葉とはいえない。名古屋を中心とした中部地方の一部では、新方言で「ケッタ」「ケッタマシーン」とも呼ばれている。

バイクは、日本語ではモーターサイクル(自動二輪車原動機付自転車)を指す場合が一般的だが、英語圏で bike は自転車を指し、日本でも特にスポーツ自転車をバイクと呼ぶことがある。また「ロードバイク」や「マウンテンバイク」、「バイクパンツ」、「バイクスタンド」のようにスポーツ自転車の車種や関連用品の名称に使われる。

漢字「」には、自転車を表す用法がある。銀輪双輪という美称・雅称があるほか、「駐輪場(自転車駐車場)」、「競輪」、「輪業(自転車販売業 - 自転車店の名称に多用される)」、「輪行」、「輪界(自転車界、自転車業界、あるいは競輪界)」、「輪友会(自転車クラブの名称 - 特に日本における自転車黎明期に使われた)」などといった用例がある。

なお、自転車は「じでんしゃ」と発音、呼称されることもある。

[編集] 法令上の自転車

[編集] 自転車の定義

日本で自転車道路交通法上、「ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車(レールにより運転する車を除く。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のもの(人の力を補うため原動機を用いるものであつて、内閣府令で定める基準に該当するものを含む。)をいう。」(第2条第1項第11号の2)と定義され、「軽車両」、「車両」、「車両等」に含まれる。

道路交通法の定義により業務上過失傷害罪・重過失傷害罪等の公訴事実には、現在ではほとんど見られない手こぎ式自転車や四輪自転車と区別するため、「二輪の足踏み式自転車を運転し」等と現代でも表記される。

  • 普通自転車 - 道路交通法と関連法令で、自転車のうち、歩道を通行することのできるもののことをいう。
  • 電動アシスト自転車 - 法令では「人の力を補うため原動機を用いる」自転車、「駆動補助機付自転車」と表記され、踏力アシストの比率を一定以下に制限することで、免許のいらない自転車として扱っている。

一方原動機付自転車は、自転車に小型のエンジンを取り付けた乗り物(モペッド)を起源とするのでこの名があるが、法律上自転車に含まれない。逆に自転車は一般に二輪であることが多いが、二段停止線を除き、道路標識や道路標示において「二輪」や「二輪車」に自転車を含めることはない。

なお側車付きのもの及び他の車両を牽引しているものを除いて、二輪の原動機付自転車又は二輪・三輪の自転車を押して歩いている者は歩行者として扱われる。

[編集] 通行空間

車道左側端
  • 道路交通法において、自転車は他の車両と同様に歩道・路側帯と車道の区別のある道路での車道通行(第17条第1項)、車道においての左側通行(同条4項)が義務づけられている。さらに自転車などの軽車両は、道路の左側端を通行しなければならない旨定められている(第18条第1項)。
自転車専用道路
  • 道路法において、道路管理者は未供用で他の区間から構造上分離された道路・道路部分について、自転車交通専用に用いられる「自転車専用道路」の区間を指定できる旨定められている(第48条の13第1項)。このような形態のものは一般にバイクパスとも呼ばれる。
  • 道路構造令では、自転車専用道路は幅員を3m以上とし、「地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合において」2.5mまで縮小できる旨定められている(第39条第1項)。また各側には幅員0.5m以上の側方余裕を確保するための部分を設けるものとされており(同条第2項)、線形、勾配その他の構造についても自転車安全かつ円滑に通行することができるものでなければならないとされている(同条第5項)。
自転車歩行者専用道路
  • 自転車以外に歩行者の通行が認められる道路であることと道路幅員以外は、法令上「自転車専用道路」と同様である。日本で「サイクリングロード」「大規模自転車道」と称されるもののほとんどがこれに該当する。
  • 道路法においては自転車専用道路とは別の項が立てられている(第48条の13第2項)。
  • 道路構造令では自転車専用道路と同じ場所に規定されている。幅員は自転車専用道路より広い4m以上とされている。
自転車道
  • 道路構造令における規定
    • 「専ら自転車の通行の用に供するために、縁石線又はさくその他これに類する工作物により区画して設けられる道路の部分」と定義づけられている(第2条第1項第2号)。
    • 高速自動車国道及び自動車専用道路以外の道路のうち自動車・自転車の交通量が多い場合(第10条第1項)、または自転車か自動車・歩行者の交通量が多く安全・円滑な交通の確保のため自転車の通行を分離する必要がある場合に(同条第2項)、道路の各側に設けるものとされている。しかし何れの場合も「地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合」はこの限りでないともされている。
    • 幅員は2m以上とし、「地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合において」1.5mまで縮小できる旨定められている(第10条第3項)。また当該道路の自転車の交通の状況を考慮して定めるものとされている(同条第5項)。
  • 道路交通法では、まず道路構造令と同様に自転車道の定義がなされ(第2条第2項第3号の3)、これが設けられている道路では普通自転車は原則として自転車道を通行しなければならないとされている(第63条の3)。但し、四輪以上かサイドカーリヤカー付きの自転車は自転車道を通行できない(第17条第3項)。
自転車歩行者道
  • 道路構造令においては、定義は第2条第1項第3号において規定され、歩行者の通行が認められる点でのみ自転車道と異なる。高速自動車国道及び自動車専用道路以外の道路のうち自動車の交通量が多い場合道路の各側に設けるものとされているが、「地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合」はこの限りでないともされている(第10条の2第1項)。幅員は歩行者の交通量が多い道路では4m以上、その他の道路では3m以上とされている(第10条の2第2項)。また当該道路の自転車の交通の状況を考慮して定めるものとされている(同条第4項)。
  • 道路交通法における規定
    • 道路交通法においては自転車歩行車道の名称はなく、「歩道」として扱われる。道路管理者が「自転車歩行者道」として新設・改築した道路の部分について、交通管理者が道路標識により「普通自転車が歩道を通行することができることとする」規制(指定)をするという扱いがなされる。この道路標識がある歩道では自転車も通行できるとされている(第63条の4第1項)。
    • 普通自転車のみ通行可能で、歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等による指定があればその指定された部分 ―この部分は「歩道の自転車レーン」と俗称されることがある)を徐行しなければならないとされている。また歩行者の通行を妨げる場合は自転車が一時停止しなければならない(第63条の4第2項)。なお双方向通行を制限する規定はない。
路側帯
  • 歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によつて区画されたもの(道路交通法第二条第一項第三号の四)
  • 軽車両は、……著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、路側帯……を通行することができる(道路交通法第十七条の二第一項)
    • 白実線二重線で区切られた「歩行者専用路側帯」である場合、軽車両である自転車の通行はできない。
    • 路側帯上においては双方向通行を制限する規定はない。道路の歩道がある側の車道端にある区画線は路側帯を示すものではなく、その部分も車道扱いになる。
自転車横断帯
  • 道路標識等により自転車の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分をいう。(道路交通法第二条第一項第四号の二)
  • 自転車は、道路を横断しようとするときは、自転車横断帯がある場所の付近においては、その自転車横断帯によつて道路を横断しなければならない。(道路交通法第六十三条の六)
  • 自転車は、前条に規定するもののほか、交差点を通行しようとする場合において、当該交差点又はその付近に自転車横断帯があるときは、第十七条第四項並びに第三十四条第一項及び第三項の規定にかかわらず、当該自転車横断帯を進行しなければならない。(道路交通法第六十三条の七)
    • 車道を通行する自転車は、自転車横断帯を横断する自転車に対して譲歩優先しなければならない(道路交通法道路交通法第三十八条第一項)。

[編集] 公道を走る際の必須装備

保安部品にあたるものとして以下が挙げられる。

制動装置(ブレーキ)
道路交通法第六十三条の九第一項
  • 前後輪を制動し、乾燥した平坦な舗装路面で、制動初速度10km/hのときに制動距離が3m以内で円滑に停止できるもの - 道路交通法施行規則第九条の三
警音器
道路交通法第五十四条
  • 乗用に供する軽車両には、適当な音響を発する警音器を備えなければならない。 - 道路運送車両の保安基準第七十二条
  • 一般的に手動のベルが使われる。法令で定められた場合と危険を防止するためにやむを得ないときを除いて鳴らしてはならない
前照灯
道路交通法第五十二条第一項・道路交通法施行令第十八条第一項第五号
  • 白色又は淡黄色で、前方10mの距離にある障害物を確認できる光度のあるもの - 公安委員会規則
反射器材
道路交通法第六十三条の九第二項
  • 赤色又は橙色で、夜間に後方100mの距離から前照灯の反射光が容易に確認できるもの - 道路交通法施行規則第九条の四
尾灯
道路交通法第五十二条第一項・道路交通法施行令第十八条第一項第五号
  • 赤色で、夜間に後方100mの距離から点灯を容易に確認できる光度にあるもの - 公安委員会規則
※尾灯または反射器材は、いずれかでよい
道路交通法第六十三条の九・公安委員会規則

[編集] 日本での自転車の歴史

彦根藩士の平石久平次時光(ひらいし くへいじ ときみつ)の記した『新製陸舟奔車之記』によると、彼は1732年新製陸舟車という三輪の乗物を製作して走らせたという。これは、ペダル式自転車に相当する乗物として現時点で知られている世界初のものといえるが、残っているのはこの書物による記録のみであることから、個人的なものに留まったと考えられる。

現在の自転車の原形ができあがったのは19世紀末期で、日本では明治期にあたるが、この時期には日本への輸入も始まっている。国産化も早く進み、宮田製銃所(宮田工業の前身)が国産第1号自転車を製作したのは1890年(明治23年)である。

日本では、明治から昭和初期にかけて、自転車は一部の富裕層にしか購入できないほど高価なものであった(銀行員の初任給の数倍から十数倍の価格)。よって自転車は一種のステータスシンボルとなった。自転車競技大会なども開かれ、大変な人気を集めたという。また、当時一般的であったダイアモンドフレームの自転車はスカートなどで乗るのに適さなかったため、自転車は男性の乗物とされていた。

しかし、大正期からは富裕層の婦人による自転車倶楽部も結成されるなどし、女性の社会進出の象徴となった。戦後になって自転車が普及し、代わりにそのステータスシンボルとしての地位を自動車が占めるようになった。その後、高度成長期には日本の自転車輸出量は世界一となり、世界中で日本製の自転車が乗られていた。現在では円が強くなったことで自転車の輸出は激減し、中国製を主とした外国製自転車が日本の市場に多数出まわっている。2005年現在、自転車の輸出量は中国が世界一である。

[編集] 自転車の利用

日本では、通勤・通学に利用されるほか、日常の買い物などに利用される。通勤・通学の場合、自宅から駅までという利用も多く、放置自転車の問題も起こっている。このほか、新聞配達、郵便配達、自転車便、市場関係者、警察官などでは職業上の利用もされる。

また、近年は健康面と環境面からサイクリング自転車旅行が奨励され、その一環として都道府県などの自治体が河川沿いに自転車道を建設している。公共交通機関(鉄道や船・飛行機など)で移動する際、自転車を分解して運ぶことを輪行と呼ぶ。また分解することなしに自転車を鉄道車両に持ち込むことを認めるサービスをサイクルトレインという。このほかヤマト運輸が日本サイクリング協会と提携し「サイクリングヤマト便」という制度を運用している。扱いはトラック便の一種である「ヤマト便」になる(営業所持込または集荷のみ、宅急便取次所では扱わない)。

[編集] 自転車にかかわる問題

自転車は、運転免許不要で価格も手ごろなものがあり身近な乗り物であるが、問題も発生している。日本における主な問題には次のようなものがある。なお箇条書きで挙げた問題についてはそれぞれの項目に譲る。

[編集] 整備不良と品質低下

バルブ(電球)切れ、リフレクタ(反射器材)の損傷、タイヤの空気圧不足、ブレーキのあまりなど自転車を運行させる上で適切な整備が行われておらず、ほぼ放置状態に近いものが、タウン車を中心によく見られる。整備不良により交通事故を招くことがあり、大変危険である。自転車には車検制度がないが、自転車安全整備制度(TSマーク制度)があり、附帯する保険の期限が1年となっていることで、定期的な点検を促している。また一般的に自転車の取扱説明書には、初期点検と定期点検を「お願い」する文言がある。

一方、近年の自転車の価格競争の激化などにより、自転車自体の品質低下も問題になっている。自転車をよりよいものにするため自転車の安全基準として「BAA(自転車協会認証)」制度が導入され、不良自転車を追放する方向に向かっている。

[編集] “暴走自転車”

自転車は車両であるにもかかわらず、基本的な通行に関するルールすらも無視・軽視されることが多い。その原因としては、日本において自転車の利用にあたり教育を受ける機会が、ほとんどないことが挙げられる。加えて1970年代以降、交通法規・交通行政の上で曖昧な扱いを受け続けたことにより、車両であるとの認識が欠如していることが一般的である。なお自転車の違反行為に対しては、自動車等と同じく罰則規定が適用されることになっている。

自転車の前照灯は、車輪の回転を利用した発電機(リムダイナモ)を電源とすることが多く、点灯時は消灯時に比べ、肉体的負担が増す。このため夜間の無灯火運転が後を絶たない。自動車等の相手に視認されにくいだけでなく、歩行者や他の自転車などへの脅威となり、自転車事故の一因となっている。無灯火運転は灯火の点灯義務(道路交通法第五十二条第一項)違反であり、最高5万円の罰金が科される。

車道の左側通行(第十七条第一項、同第四項、第十八条)や並進禁止(第十九条)などの通行上のルールについても守られないことが少なくない。左側通行が不徹底であるのは、歩道・路側帯・自転車道通行時に双方向通行が認められていることとの関連が考えられる。交差点などでの左右確認の怠りや一時停止の無視、さらには信号無視なども多い。このほか、携帯電話の使用や犬の散歩をしながら、あるいは傘を差しながらの自転車の運転は非常に危険である。これらのながら運転は、安全運転義務(第七十条)違反になる場合があり、最高3箇月の懲役または最高5万円の罰金が科される。また、飲酒運転は、自動車の場合と同じで最高3年の懲役または最高50万円の罰金が科される。

キャリア(荷台)が取り付けられている自転車は、本来禁じられている二人乗りに使われることがある。二人乗りは、後輪のスポークが変形するなど自転車自体に悪影響を及ぼすほか、バランスが取れなくなり交通事故を引き起こすことも多々ある。二人乗りは第五十五条の規定に違反する定員外乗車であり、最高5万円の罰金が科される。なお、16歳以上の者が、幼児用座席を取り付けた自転車に6歳未満の幼児を乗車させる場合などの例外が、都道府県ごとに公安委員会規則により定められている。

歩道における徐行と歩行者優先の義務が遵守されないことも多い。ベルで歩行者を排除しようとする行為は、禁じられているにもかかわらずよく見受けられる。これにとどまらず、歩行者を巻き込んだ事故も発生している。自転車対歩行者の事故は1995年の563件から2005年の2,576件と、10年間で約4.6倍に急増している([1] 4ページ)。時として重傷や死亡という重大な結果を引き起こす。近年、こうした事故や危険な運転が、マスコミなどで“暴走自転車”と称され問題となっている。自転車といえども人を死傷させた場合は重過失致死傷罪(5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)に問われうる。また無保険状態では、人を死傷させた場合、巨額の損害賠償金を自己負担し、あるいは自己破産することもありうる。

[編集] 免許制度

いわゆる“暴走自転車”に代表される自転車の無秩序な通行とそれによる事故を解消するために、自転車にも免許制度を導入すべきだとの主張がなされることがある。実際に荒川区では2002年に事故防止を目的に、おもに児童・生徒を対象とした免許制度を導入した。他の自治体でも同様の実施例がある。ただし現行のものには法律上の根拠・拘束力はない。

[編集] 保険

自転車には、自動車等における自動車損害賠償責任保険にあたる保険はない。自転車総合保険については、加入義務もなく普及しているとは言い難いうえ、近年は損害保険会社の取り扱いも減っている。このほか、TSマークには1982年4月以降保険が附帯しているほか、自転車関係団体には会員を自転車団体保険の被保険者とするものがある。

[編集] 法規・行政上の待遇

「自転車も乗れば車の仲間入り」という標語があるものの、交通法令や交通行政の上では、車両というよりも歩行者に近い扱いを受けることが多い。

  • 自転車は車両であるにもかかわらず、多くの場合歩道を走ることができる。危険であるとして警察官や警察署が自転車に歩道を通るよう促すこともある。
  • 道路交通法第六十三条の七により交差点を通行する際に利用が義務づけられている自転車横断帯は、大半が歩道通行を前提に横断歩道の車道側に沿って設けられている。
  • 自転車横断帯のある交差点では、歩行者用信号機に「歩行者自転車専用」との標示板が付けられていることが多く、この場合自転車は車両用信号機ではなくこれに従うことが義務づけられている。
  • サイクリングロードなど自転車以外の車両の進入が原則として禁止されている箇所の入口に設置されている車止めに「車両進入禁止」と書かれていることも珍しくない。なお、自転車は道路交通法上の「車両」である。
  • 車両通行帯の設計や信号機の運用により直進や右折をすることが著しく困難な交差点をはじめ、自転車での通行がまったく考慮されていない箇所が車道には多い。

[編集] 通行空間の未整備

本来、自転車の通行空間は自転車道や車道の左側端とされている。しかし日本においては、自転車道の整備延長は道路延長のわずか0.9%(1999年、建設省の調査による)に過ぎず非常に遅れているのが現状である。車道を通行すると、安全な側方間隔を保たず、また徐行もせずに脇を追い抜く自動車が多く、自転車利用者は生命を含む重大な脅威を受けることとなる。加えて幅員や路面状態、適法・違法を含む自動車の駐停車や電柱といった障害物などにより自転車が安全に通行できる空間が確保されていないことが多い。こういった事情と急激なモータリゼーションにより自転車事故が多発したこともあり、自転車の安全確保を図るとして、「自転車歩道走行可の規制」が多用されるようになった。その総延長は2005年度末で68,992.6kmと、全歩道の44.2%を占める([1] 10ページ)。

また、自動車運転免許取得にあたっての学科教習と学科試験問題のうち、自転車に関する内容はきわめて少なく、自動車の利用者も自転車のルールに関する知識が十分にあるとは言い難い。そのため「自転車は歩道を通行するもの」との誤った認識が広く浸透している。自転車は、車道では自動車のドライバーからの警笛や罵声による威嚇にとどまらず、自動車等による十分な側方間隔を保たない追い抜きや幅寄せ、割り込み、合図なしの左折・進路変更といった危険行為を受けることも多い。

こういった自転車に対する認識により、現状では多数の自転車が(自転車通行の可否に関わらず)歩道に流入している。なお、自転車の歩道通行に関しては、徐行義務・歩行者を優先するための一時停止義務といった交通強者としての制限を受けるほか、かえって「自転車の歩道通行は自転車とクルマの衝突事故の重要な原因」となるという指摘がある([2] )。

以上のように、自転車は歩行者に対しては交通強者である一方、自動車に対しては交通弱者となる。自動車等の利用者が行う上述の危険・違法行為の取締・処罰はほとんど行われず、通行空間の確保や整備は不十分なまま、本来歩行者のために作られ自転車の通行には適さない歩道に押し込められ、スピードという利便性の喪失を余儀なくされるなど、交通強者としての制限を受ける一方で、交通弱者としての保護を十分に受けているとはいえない。

環境に優しい交通手段」との評価のある自転車が、不明確な位置づけの下、適切な待遇を受けていないことは、日本において今後に残された課題となっている。

[編集] 自転車をテーマにした日本の創作物

[編集] 漫画

[編集] 映画

[編集] 音楽

[編集] 脚注

  1. ^ a b 警察庁 自転車対策検討懇談会『自転車の安全利用の促進に関する提言』
  2. ^ 警察庁 自転車対策検討懇談会『自転車の安全利用の促進に関する提言 : 資料』 8ページ 資料8「自転車マニュアル等における歩道通行の危険性の指摘」

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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