74式戦車
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観閲式の74式戦車 |
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74式戦車 | |
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性能諸元 | |
全長 | 9.41 m |
車体長 | 6.70 m |
全幅 | 3.18 m |
全高 | 2.25 m |
重量 | 38 t |
懸架方式 | 油気圧式 |
速度 | 53 km/h |
行動距離 | 300 km |
主砲 | 51口径105mmライフル砲L7A1 |
副武装 | 74式車載7.62mm機関銃 (主砲同軸) 12.7mm重機関銃M2 (砲塔上面) |
装甲 | |
エンジン | 三菱10ZF22WT 空冷2ストロークV型10気筒 ターボチャージド・ディーゼル 720 hp / 2,200 rpm |
乗員 | 4 名 |
74式戦車(ななよんしきせんしゃ)は61式戦車の後継として開発された第二世代戦車で、総計873輌が生産された。現在では、北海道に配備されている74式戦車が90式戦車へ更新されていく一方で、90式戦車と74式戦車の後継の新戦車(TK-X)の開発が進められている。
目次 |
[編集] 開発経緯
74式戦車は旧ソビエト連邦のT-72に対抗して開発された。T-72戦車の能力を凌駕するため、駐西ドイツ防衛駐在官堀栄三によりもたらされた情報に基づいて、1964年に開発を開始した。
当時、複合装甲は未だ試行錯誤の段階で、そのため単純な防弾鋼による装甲を採用しており、同様の思想で設計されたレオパルド1、AMX-30と共通した外観を持つ。対戦車ミサイルなどの対戦車火器については、流線的装甲による避弾経始(ひだんけいし:装甲などに傾斜を与えて弾などを跳ね返りやすくしたもの)と機動力でこれをかわすというのが74式戦車を代表とする第二世代戦車の思想であった。
エンジンについては三菱製空冷ディーゼルエンジンを搭載しているが、日本ではトランスミッションの技術が立ち遅れていたため、この点は他の第二世代戦車と比較し見劣りがする。
射撃統制装置についてはレーザー測距儀や弾道コンピューターを搭載し開発当時の最新技術を注ぎ込まれた。
開発には十年の月日がかかり、1974年に完成し制式化、翌75年から三菱重工業による生産が開始された。
[編集] 特徴
乗員は車長、操縦手、砲手、装填手の4名。主砲には英国ロイヤルオードナンス社の51口径105mmライフル砲L7A1を日本製鋼所がライセンス生産した物を装備しており、105mmライフル砲用の砲弾は当初APDSとHEPを使用していたが、現在ではAPFSDSとHEAT-MPを使用している。
74式戦車は車高の低減による俯仰角の不足を、油気圧サスペンションを採用し車体を前後左右に傾けたり車高を上下させることで解決している。また、これにより容易に稜線射撃を可能としている。これはスウェーデンのStrv 103のものを参考にしたといわれている。両国の国土は共に起伏に富んでおり、地形を利用した待ち伏せ防衛を考えると現実的であり実用的かつ有効な手段であるといえる。興味深いことに同様の地形、同様の運用条件の元に開発された筈の本車は出来上がってみると形状が著しく異なっていた。これはより生存性に徹したStrv 103と、それ以前に計画当時の主力戦車のスタンダードに追従し、可能な限り用兵側の要望である汎用性を付加した本車の設計思想上の相違が顕著に顕れたものといえる。
このサスペンションの走破性能をして丘陵地、傾斜地の多い国土での戦車部隊運用を可能にしていることが示すように陸上自衛隊にとっては画期的かつ必要不可欠な実用的技術になった。そしてそのことが本車をして「登山戦車」と世界に知らしめることになる大きな特徴となっている。この機構は当然90式戦車にも引き継がれているが、前後方向への傾斜のみに簡略化されており本車より可動面での自由度が小さい。もっとも90式戦車の場合は、弾道コンピュータ、レーザー測距器に代表されるベトロニクスの発達で、命中精度における水平維持の重要性が大きく薄れている。74式戦車は水平を出すことが命中精度の前提であったが、90式戦車では水平傾斜の誤差をFCSが吸収している。
完成当時、この戦車を見たイスラエル武官が『これでは砂漠では戦えない』と述べたというが、もちろん日本には砂漠は無い。74式戦車の輸出は始めから考慮する必要がなかったため、山がちで斜面が多い日本の国土に合致するよう特化された設計であれば事足りた。先に挙げた油圧による姿勢制御もまたこれに重点を置いた技術である。
風説であるが、配備当初の北海道地区所属部隊の74式戦車が真冬の早朝、全車シャコタン状態になっていたという目撃談が各方面から聞かれたという。一般にいわれるような都市伝説の類ではなく、サスペンション内の油圧オイルの凍結不良回避処置として、当時、油圧を抜いて格納しておくよう指示されていたからである。現在では、オイルの凍結防止成分が向上されたため油圧を抜かずとも凍結せず通常姿勢で格納しているという。
特徴的な油気圧サスペンションは実は姿勢制御機能の副産物でストロークが大きく、悪路での走破性能が他の国の戦車に比較して良い。また、2サイクルツインターボのエンジンはパワーバンドが狭いが一瞬のダッシュ力に優れるため、結果としてこれも悪路の機動性に寄与している。
皮肉なことに、当時のオートマチックトランスミッション開発技術の後れで採用したセミオートマのパワーシフト式の遊星歯車ミッションはトルコン・スリップがないので、操縦手の感性に基づいた操縦が可能となってる。
また、水密構造で2 m強の潜水渡河が可能であり、その密閉効果を利してABC汚染地域はフィルターを通して車内をある程度与圧して汚染物質を防護する構造である。
砲塔の制御は手動の他、すべて電動で行うのでエンジン始動の必要が無く、即応性と隠密性に優れる。
直線的なスタイルの90式戦車よりスマートであり、配備数も多い事から基地祭の人気者としてファンや国民から親しまれている。戦車隊員からも、「単純、軽快で信頼性が高く、乗っていて楽しい」という声が多く、74式戦車ファンが少なからずいるという。
現在は旧式化し、次世代戦車への置き換えを待つ身ではあるが、90式戦車が北海道での運用及びソ連機甲部隊との機甲戦闘を考慮して開発された装備であり、冷戦終結や主要装備の縮小など伴い一年あたりの調達数が減らされている。このため退役過程にあるものの事実上の主力戦車が本車であることは当面は揺るぎそうにない。それでも耐用年数などの面で見るとギリギリに近い本車の後継戦車は急がれるべきであると言われており、90式戦車と同等以上の戦闘力も持ち全国的配備を目指した40t級の新戦車(TK-X)を開発中である。
[編集] 改良
現状に於ける本車の実状は、車体の経年劣化や旧式化によって、改造による延命よりも新型投入が急がれる。その為、次期主力戦車が開発中であることは前述までの通りである。
しかしながら、登場以来、外見上の大きな改修が加えられていないように見えるため、一般には「一度も改良を加えられていない」として誤解されがちであるが、15年にわたって生産された車両でもあり、小規模な改修によりおおむね5つのロットに分けられているといわれる。前述の通り火器管制装置の近代化と使用可能な新型砲弾の追加により火力は大幅に増強されている。防御に関する不足が取り沙太されているが、車内、砲塔内への高分子ライナー貼付等の外見から判別できない強化は行われている。
また、増加装甲の代名詞のように用いられている爆発反応装甲に関しても経年変化試験まで完了しており技術的には即座に増設が可能であるが、被弾時の周囲の歩兵への影響、及び、装備時の重量増大に伴う発動機の換装を含む大規模な走行系の改修を必要とするため装備が見送られている。
冷戦下の74式戦車にも改良計画が考案され、1993年には遅蒔きながら現実に試作として4輌が74式戦車(G)として改修された(一般には「74式戦車改」と呼ばれる)。従来の74式戦車にパッシブ式暗視装置やレーザー検知装置(発射発煙装置が連動)などを装備、また、サイドスカートも装着可能となり、現状に於いて究めて現実的であり即全車両に改修可能なプランとの評価を受けた。しかし全車を改修するには時期を逃した感は否めず、採用されることはなかった。費用の面で折り合いや、旧ソ連の崩壊による外的脅威が一時的とはいえ過去の物になったという当時の国際情勢が関わっていると言われている。
改修が話題にされるとき、まず取り沙汰されることがその有効性に対する否定論である。その場合、概ねカナダ軍の事例(第一線で第三世代主力戦車に対抗出来るようにレオパルド1を改修しようとし失敗した事例)などを例に挙げる。確かに各国での第二世代戦車を電子機器や動力、防御、攻撃面でのアップグレードを重ね、第一線での任務を果たせるよう試みは第三世代主力戦車に比べれば見劣りする部分もある。
しかし、次善の策とはいえ、イスラエルやサダム・フセイン政権下のイラク、アパルトヘイト下の南アフリカ共和国で行われた旧式車両や鹵獲車両のアップグレードは新型兵器を購入できない事情(該当国への武器輸出制限や新型購入資金の不足)や有事(もしくはそれに準ずる場合)等には数を揃える上でとても有効な手段である。またそもそも改良を前提として余裕在る仕様の場合は、しばしば新技術のプラットフォームに流用されたりもする。
ドイツ本国に於けるレオパルド1の様にA3以降確立した技術的成果を新規開発したレオパルド2に引き継がせた(中空装甲技術の応用で複合装甲技術を開発した)事例がそれであり、かつそれが運用面でも有効だった例の一つに上げられる。従って、これまで各国が行った延命改修の全てが無駄であったとは言い切れない。
そもそも、74式戦車の場合、制式化時点で先進国の第二世代の主力戦車としては既に最後発であり、他国の第二世代戦車(AMX-30、レオパルド1等)の近代化改修要点の殆どが開発時の仕様要求の内容に盛り込まれていた。従って現在の第三世代戦車と比較すれば見劣りするも、第二世代としては及第点以上であった事もあり、敢えてコストを掛けて外見から判別できる大規模改修に踏み切る必要性がなかったことが理由の1つであると考えられている。
[編集] 派生型
[編集] 伝説の試作車
74式戦車の開発途上では車体のみのST-B1に続き、何輌かの形になった試作車であるST-B2~が製作された。
この試作車はコストの妥協無くエンジニアがワンオフで開発した高性能車であり、結局対費用効果等で採用されなかった、戦車長がリモコンで車内より操作する対空機銃、半自動装填機、バックギアが2段変速等、数々の意欲的な機能が搭載されていた。
また、細部の構造が量産車と異なる。
当時、ST-Bを見たことがある、または関係していた人物の多くは「量産車とはエンジン音からして違った(軽かった)」「細部の作りが丁寧で、綺麗だった」「砲塔の内部は量産車と違い近未来的だった」等の伝説が聞かれる。
また、車体のみのST-B1はテスト時に100 km/hを記録した等、74式戦車の試作車に関わる伝説は多い。
[編集] 登場作品
- 配備数の多い戦車であるため、多数の特撮映画やその他の映像作品に登場している。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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