改軌
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改軌(かいき)とは、鉄道における線路のレールの間隔(軌間)を変更することをいう。
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[編集] 改軌の目的
改軌を行う目的としては以下のようなものがある。
- 車両の大型化や高速化(軌間を広げる場合)
- 軌間の異なる路線との直通運転
この両方が含まれるケースもある。
改軌を行うに当たっては、対象となる路線の運行を停止し、路盤の整備・レールの移設といった手順(場合によっては鉄橋やトンネルの改修も)が必要になる。また車両の側も改造を施さなくてはならず、従来に代わる新しい車両を製造する場合もある。このため、改軌には長い準備と多額の費用を要する。列車の運行頻度が少なく、車両も少なかった戦前には改軌は頻繁に実施された。特に軽便鉄道が、輸送力と速度の向上を図るために実施したケースが多い。しかし、それらの条件が変化した戦後には実施は少なくなり、特に1971年以降はミニ新幹線の運行に伴うケースを除いて行われていない。京王電鉄京王線(軌間1372mm)が都営地下鉄新宿線との乗り入れを計画した際に、関係機関から1435mm軌間への改軌を要請されながら、その費用と効果から実施を見送っている。これは、現在の鉄道で改軌が困難なことを示す一例である。
[編集] 日本での改軌の例
現在の鉄道運営主体、鉄道路線名、駅名で記載(廃止になった線区については、廃止時点での名称で記載)。
[編集] 軌間762mmから軌間1067mmに改軌した例
- 名寄本線(遠軽駅~社名淵駅間:4.5km)1916年(大正5年)11月7日実施。
- 日高本線
- 釜石線
- 同和鉱業花岡線(大館駅~花岡駅間:4.8km)1951年(昭和25年)11月25日実施。
- 小坂製錬小坂線(大館駅~小坂駅間:22.3km)1962年10月1日実施。同時に電気運転廃止。
- くりはら田園鉄道線(石越駅~細倉マインパーク前駅間:25.7km)1955年(昭和30年)9月26日実施。
- 福島交通飯坂東線 1926年(大正15年)~1927年(昭和2年)?実施。同時に電化。
- 魚沼線(来迎寺駅~小千谷駅間:13.1km)1954年8月1日実施。※1944年(昭和19年)10月16日に休止後、復旧に際して改軌。実質的には新線。
- 上信電鉄上信線(高崎駅~下仁田駅間:33.7km)1924年(大正13年)12月25日実施。同時に電化。
- 静岡鉄道静岡清水線(新静岡駅~新清水駅間:11.0km)1920年(大正9年)8月2日実施。同時に電化。
- 遠州鉄道鉄道線(遠州浜松駅~遠州二俣駅間:?km)1923年(大正12年)4月1日実施。同時に電化。
- 福塩線(横尾駅~府中駅間:17.5km)1935年(昭和10年)12月14日実施。
- 可部線(横川駅~古市橋駅間:8.3km)1928年(昭和3年)11月9日実施。同時に電化。
- 伊予鉄道城北線(古町駅~木屋町駅~道後駅)1911年(明治44年)8月8日実施。同時に電化。
- 木屋町駅~道後駅は現在線とは別ルート。
- 伊予鉄道(旧道後鉄道線 道後駅~一番町駅)1911年(明治44年)8月8日実施。同時に電化。
- 伊予鉄道高浜線(松山市駅~高浜駅)1931年(昭和6年)5月1日実施。同時に電化。
- 伊予鉄道横河原線(松山市駅~横河原駅)1931年(昭和6年)10月6日実施。
- 伊予鉄道森松線(いよ立花駅~森松駅)1931年(昭和6年)10月6日実施。
- 伊予鉄道郡中線(松山市駅~郡中駅)1937年(昭和12年)7月22日実施。
[編集] 軌間762mmから軌間1435mmに改軌した例
- 近鉄天理線(平端駅~天理駅間:4.5km)1922年(昭和11年)4月1日実施。同時に電化。
- 近鉄湯の山線(近鉄四日市駅~湯の山温泉駅間:15.4km)1964年(昭和39年)3月23日実施。 同時に架線電圧を750Vから1500Vに昇圧。
[編集] 軌間1067mmから軌間1372mmに改軌した例
- 東京急行電鉄玉川線(渋谷駅~二子玉川園駅(現・二子玉川駅)間:9.1km)1920年(大正11年)9月11日実施。
- 京王電鉄京王線(府中駅~京王八王子駅間:16.0km)1927年(昭和2年)6月1日実施。
- 新京成電鉄新京成線(新津田沼駅~松戸駅間)1953年(昭和28年)10月21日実施。この区間は1959年(昭和34年)11月30日に軌間1435mmに改軌されている。
[編集] 軌間1067mmから軌間1435mmに改軌した例
※ミニ新幹線については該当路線(奥羽本線・田沢湖線)の項目を参照。
- 近鉄名古屋線(伊勢中川駅~近鉄名古屋駅間:78.8km)1959年(昭和34年)11月20~27日実施。
- 近鉄鈴鹿線(伊勢若松駅~鈴鹿市駅間:4.1km)1959年(昭和34年)11月23日実施。
- 近鉄志摩線(鳥羽駅~賢島駅間:25.2km)1970年(昭和45年)3月1日実施。同時に架線電圧を750Vから1500Vに昇圧。
- 近鉄田原本線(新王寺駅~西田原本駅間:10.1km)1948年(昭和23年)6月15日実施。同時に電化。
- 京都市電の旧京都電気鉄道買収区間の一部(伏見線など)※改軌時期・区間の詳細は京都市電の項目を参照。
- 西鉄天神大牟田線(津福駅~大善寺駅間:3.7km)1937年(昭和12年)10月1日実施。同時に電化。
[編集] 軌間1372mmから軌間1067mmに改軌した例
[編集] 軌間1372mmから軌間1435mmに改軌した例
[編集] 軌間1435mmから軌間1067mmに改軌した例
- 近鉄名古屋線(伊勢中川駅~江戸橋駅間:13.5km)1938年(昭和13年)12月7日実施。この区間は1959年(昭和34年)11月20~21日に再び軌間1435mmに改軌されている。
- 伊予鉄道城南線(西堀端駅~道後温泉駅)1923年(大正12年)6月30日実施。
- 本町四丁目駅~本町三丁目駅間は現在線とは別ルート。
- 伊予鉄道(旧・松山電気軌道線 江ノ口駅~本町駅)1923年(大正12年)6月30日実施。
[編集] 軌間1435mmから軌間1372mmに改軌した例
- 京浜電気鉄道(全線) 1904年(明治37年)3月1日実施。この区間は1933年(昭和8年)4月1日に再び軌間1435mmに改軌されている。