キッズコンピュータ・ピコ
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キッズコンピュータ・ピコ(PICO)は1993年6月にセガ・エンタープライゼス(現:セガ)より発売された電子知育玩具。2001年6月からは同性能の新型機を発売するとともに機器名称をキッズコミュニケーション・ピコに変更した。通常はピコと略称で呼ばれることが多い。
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[編集] 概要
機器の基本設計は同社のメガドライブと共通しており、形を変えたメガドライブとよく表現される(但しFM音源は省かれている)。ゲーム機と同様に本体のみでの使用はできず、テレビと接続した上で絵本ソフトと呼ばれるロムカセットを本体にセットして使用する。これらの性質から玩具ではなくゲーム機、もしくは玩具とゲーム機の中間に位置する機器として認識されることもある。
操作は主に本体に取り付けられたタッチペンを使用し、ほかにタブレット、決定を行う赤い大きなボタン、選択・方向決定を行う白(製造時期によっては黄色)、緑、橙、青の小さなボタンを補助的に使用するのみで、一般のコンピューターゲームのような複雑な操作は要求されない。
絵本ソフトに付いたページを開きタッチペンでページ内の絵や文章、アイコンに触れると、それと連動してテレビ画面のグラフィックが変化したり、キャラクターが喋ったり、ゲームが始まるなどさまざまなイベントが発生する。大半のソフトでは最後にお絵かきのページが用意されているため、タブレットとタッチペンを併用することでテレビでのお絵かき遊びが可能となっている。これらの要素の繰り返しにより幼児の想像力、判断力といった知能や、文字や数、物の名前などといった知識の発達を促し、学習の手助けを行う。
新作ソフトは2005年4月の「甲虫王者ムシキング あつめてあそぼう甲虫図鑑」を最後に発売されておらず、現在店頭では後継の『アドベンスドピコ・Beena』に代替わりしている。
[編集] その他
ピコはセガが家庭用ゲーム機事業から撤退した後も本体と新作ソフトの供給が続けられ、10年以上の長期に渡り幼児向けハイテク知育玩具の代表的地位を保った。本体の累計出荷台数は約340万台。セガが発売したハードウェアの中でも日本国内で特に成功を収めた機器と評される。
対象ユーザーを就学前の幼児から小学校低学年程度までと絞ることで、一般のゲーム機とは異なる新たな層を開拓した。また専用ソフトにはテレビアニメや特撮ヒーロー番組に登場する子供にも親しみやす人気キャラクターを採用し、簡単なゲームを挿入するなど勉強を意識させない作りになっているものが多い。このように遊びと教育を融合させた「エデュテイメント」の概念を盛り込んだこと、さらに教育専門家の推薦文をソフトのパッケージに掲載するなど従来のテレビゲームに見られたマイナスイメージを抑えたことで保護者層の支持を受け、ヒット商品となった。しかしその一方で一般のゲーム機と同様に子供が夢中になりすぎることを懸念する人々もいる。
1999年以降はセガの子会社で玩具部門を担当するセガトイズにより販売が行われるようになった。発売8周年となった2001年6月には、基本性能はそのままに省スペース化やデザインの変更などのリューアルを行った新型機を発売すると共に、機器名称をキッズコミュニケーション・ピコに改め、さらに機器マークも長年使用された四角い切手のようなデザインから地球儀を模した丸いデザインの物に変更した。
[編集] 本体の種類
ピコ本体は長期に渡る販売時期の結果モデルチェンジが繰り返され、コストダウンと低廉化が図られた。本体の種類は大きく以下の3モデルに分類できる。
- キッズコンピュータ・ピコ 初期型
- ピコ発売当初のモデル。持ち運びを容易に行うためのハンドルが用意されている。機器の主な色は黄色。絵本ソフト挿入部外側などに赤を、タブレット部外側の一部に紺色を使用。
- キッズコンピュータ・ピコ 普及型
- 1990年代末に登場したモデル。初期型に存在したハンドルとペンスタンドが省略されている。タブレット部は黄色、絵本ソフト挿入部内側は紺、外側は赤。この本体と『おためしおえかきソフト』をセットにしたピコプラスも発売された。
- キッズコミュニケーション・ピコ
[編集] 絵本ソフト
ピコ専用ソフトは絵本ソフトと呼ばれ、その名の通り絵本を模したページが数枚付いている。通常はタイトルとなる表紙と見開き5ページで構成されており、最後のページはお絵かきもしくは大規模なゲームといった内容が用意されていることが多い。
ページの角にはそれぞれ異なる切り欠きがあり、本体のページセンサーがこの有無を判断しテレビ画面に表示する場面の決定を行う。ページをめくる事で容易に場面転換を行うことができるため、一般のコンピューターゲームのように初めから順番に物語を進める必要はなく、好きなページからゲームやイベントを始めることができる。
[編集] 販売メーカー
絵本ソフトの販売に関してはサードパーティ制をとっており、セガ以外の企業からも発売されている。特にバンダイは発売当初から継続的に自社の管理するキャラクターを使用した新作ソフトの供給を行っており、セガと共に多数のソフトを発売してきた。
セガトイズやバンダイが遊びに比重を置いているソフトを発売している一方で、小学館や講談社、学習研究社はより教育に比重を置いたソフトを発売している。2000年頃からは「知育」「知能」といった語句をタイトルに添え、実際の購入者である保護者に直接訴えるようなソフトが増加した。
過去にはゼネラル・エンタテイメント、イマジニア、エポック社、タカラもソフトを発売していた。
[編集] 廉価版
過去に発売された絵本ソフトが廉価版として再販されることもあり、価格はすべて税抜2,980円で統一されている。1998年に初登場し以下のシリーズ名で数度販売が行われた。パッケージは通常版とは異なる。
- 1998年 はじめまシリーズ
- 1993年から1994年の初期に発売された6タイトルを再販。製品内に封入されている応募券を2枚送るとパーカーやリュックサックが当たるというキャンペーンを行っていた。
- 2003年 ピコ発売10周年記念ソフト
- 1995年前後の作品を中心に全10タイトルを再販。ソフトケースは赤色で統一された。
- 2004年以降 ベストセレクションシリーズ
- ピコ発売10周年記念ソフトの後継企画。ソフトケースは同じく赤色で統一。
[編集] 互換機
ピコの互換機としてヤマハからはミクストブックプレーヤ コペラ(MIXT BOOK PLAYER COPERA)が、イマジニアからは育脳塾(いくのうじゅく)が発売された。これらはいずれも1990年代半ばには本体、対応ソフトとも販売を終了している。
[編集] コペラ
ピコをベースに音楽教育に対応した機能を追加した上位互換機。ピコ用の絵本ソフトは全て使用できる上、コペラ専用に用意された音楽教育絵本ソフトミクストブックも使用できる。このミクストブックをピコで起動しても警告画面が表示されるのみで使用できない。
追加された機能は以下の通り。これらはミクストブック使用時のみ機能する。
主にヤマハの音楽教室で教材として使用されていた他、楽器店や大手スーパーでの一般販売も行われていた。しかし本体、ミクストブックともピコのおよそ2倍の価格設定を取っており割高感があったためあまり普及はしなかった。ミクストブックは全9本発売されている。
[編集] 育脳塾
基本性能や外形はピコとまったく同一で、以下のような細部の相違点が見られるくらいである。
- 本体の配色の変更
- ソフトや本体にはピコのロゴのかわりに育脳塾のロゴを使用
- タッチペンの呼称が「ハイパーペン」になっている
育脳塾ソフトはすべてピコで使用することができ、また反対にピコソフトを育脳塾で使用することもできる。
育脳塾ソフトの説明書はピコソフトの物に準じて作成されており、レイアウト等もまったく同じである。しかし掲載されている使用方法や注意文・警告文を見ると、ピコソフトでは「楽しむ、遊ぶ」となっている部分が育脳塾ソフトではすべて「勉強する、学習する」といった表現に置き換わっており、勉強を強調していることがうかがえる。
[編集] 絵本ソフトに採用されたキャラクターや題材
絵本ソフトではアニメなどで有名なキャラクターを導入役として採用することが多いが、ピコソフトのために独自制作されたキャラクターを使用したソフトや、勉強が目的であるためキャラクターが存在しないソフトもある。
本体と同時に発売されたソフトは以下の通り。子供世代、親世代の両方になじみのある有名なキャラクターが選ばれた。
[編集] 題材の一覧
- テレビアニメ
- 特撮ヒーロー
- ウルトラマン、仮面ライダークウガなどの平成仮面ライダーシリーズ、スーパー戦隊シリーズ、メタルヒーローシリーズ ほか
- ディズニー
- サンリオ-特にハローキティのみ登場するソフト、またはハローキティをはじめとした複数のキャラクターが登場するソフトが多い。
- その他のキャラクター
- バーバパパ、スヌーピー、ソニック・ザ・ヘッジホッグ、ミニモニ。(アニメ版)、きかんしゃトーマス など
- 他の玩具
- リカちゃん、トミカ、レゴブロック、プラレール、シルバニアファミリー など
- テレビ番組・雑誌・企業など
- シミュレーション-以下の行為の疑似体験は絵本ソフトに同梱された周辺機器を使用して行うことが多い。
- スポーツゲーム
[編集] イメージキャラクター
絵本ソフトにマイクを内蔵し、ピコ初の音声認識ソフトとして1996年に発売された『ゆかいな森のパケット』では既存のキャラクターではなく、このソフトのために制作された見習いピエロの「パケット」が主人公として登場する。パケットはソフト発売からおよそ3年間ピコのイメージキャラクターに採用され、店頭販促資材などにそのイラストが活用された。しかし1999年以降イメージキャラクターは「むちゅうじんピッピちゃん」に変更し、パケットのソフトは発売されていない。
[編集] 外部リンク
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据え置き型 | SG-1000(ソフト) - セガ・マークIII(ソフト) - メガドライブ(ソフト) - セガサターン(ソフト) - ドリームキャスト(ソフト) |
携帯型 | ゲームギア(ソフト) |
その他 | キッズコンピュータ・ピコ - Beena |
周辺機器 | メガCD - メガアダプタ - スーパー32X |
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