グラントゥーリズモ
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グラントゥーリズモ(Gran Turismo)はイタリア語で本来「大旅行」と言う意味だが、大旅行に使える高速で快適に移動できる車を指すようになった。略称はGTで、フェラーリなどに多くこの名称が使用されている。日本では1980年代まで、自動車のグレードに「GT」をつけることが多かったが、陳腐化してしまっているのが現状である。
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[編集] 概要
明確な定義はないが、近年GTと呼ばれる(あるいは名付けられる)車の傾向としてはセダンかクーペタイプで、出力の大きめなエンジンを搭載していることが多い。
スポーツカーの定義を巡って交わされるスポーツカー論争において、典型的なスポーツカーからは外されるタイプの車がGTにカテゴライズされることがある。スポーツカー論争では、速度や運動性能にまつわる、車重、車高、駆動輪、トランスミッション形式、サスペンション形式、車体剛性やドア枚数、乗車人数などさまざまな条件が議論に取り上げられるが、GTに関しては、名前が陳腐化していることもあって、それ程微に入り細を穿った議論はなく、「普通のファミリーカーよりはスポーティな車」といった程度の印象で多くの人が納得する。
ゲームソフト『グランツーリスモ』シリーズの名前の由来でもある。
[編集] 語源
19世紀のイギリスでは、貴族階級などの裕福な家庭の子女は自宅へ家庭教師を呼び、教養や道徳などを学ぶことが一般的であった。 こうした教育課程の最終段階として、欧州への2~3年に及ぶ長期の旅行を行うことがあり、こうしたいわば長期の海外修学旅行をGrand Tour(グランドツアー、イタリア語表記はGran Turismo)と呼んだ。
なお、Gran Turismoで使用された当時の馬車は当然長期の旅行に耐えるものであり、フランスやイタリアの製作工房(カロッツェリア)のものが多用された。
こうした背景から本来のグラントゥーリズモとしては、マセラティクアトロポルテなどがあたるが、現代の日本では憧れから異なる使われ方をしていることも事実である(類似した例として、日本で鉄筋コンクリート製の4F以上の複数住居をマンションと呼ぶが、実際のマンションは、貴族や大富豪の住居として用いる広大な庭園を備えた邸宅の意味である)。
[編集] 日本における「GT」の解釈
下記に示すように、日本で最初に「GT」の称号が与えられたのは、いすゞ・ベレットGTとされるが、これは市販車でのことで、実際にはそれより前に、モータースポーツのホモロゲーション獲得用に少量生産されたプリンス・スカイライン2000GT-Bが先駆けである。
当時、日本車は世界的にもトップレベルの動力性能を誇るようになり、日産・フェアレディなど純然たるスポーツカーもあるにはあったが、交通死亡事故の急増や、暴走行為の助長に当たるのではないかとの懸念から、自動車による大旅行を楽しむという意のGran Turismoがグレード名に与えられることが多くなっていった。これ以外にも、ホンダは初代シビックのスポーティグレードにRSを設定していたが、これはRacing Sportsではなく、Road Sailingの略だった。また軽自動車にも必ずといっていいほどスポーツモデルが設定されていたが、SSなど露骨なスポーツ性を避けた表現であった。
これがいつからか高性能車を意味するようになり、大馬力エンジンにハードサスペンションを与え装備を欲張ったスポーツモデルを指すようになってしまった。1981年に発表された初代ソアラは、BMW・6シリーズに範を採った高級スポーツクーペであったが、3代目はスープラと区別がつかないほどリアルスポーツカーに振ってしまい、4代目の途中でレクサス・SCに移行してしまった。スカイラインも8代目で復活したGT-Rにイメージが引っ張られてしまい、11代目で軌道修正を図るも、8代目で獲得したファンからの反感を買う結果となってしまう。近年はステーションワゴンはともかく、ミニバンまでもがGTを謳うようになっており、本来の意味から乖離している観は否めない。
写真の日産・ローレルはGTグレードは持たないものの、R34型までのスカイラインの兄弟車であり、快適な乗り心地と高性能を兼ね備え大旅行に適したグラントゥーリズモである。GTというよりはスポーツカー的な性格の強かった当時のスカイラインに対し、グラントゥーリズモ本来の意味に近いのはこのローレルだと言えよう。このコンセプトは現行のV36型に継承されている。
[編集] GTグレードがある(あった)自動車
- ランチア・アウレリア:最初のGTカー
- トヨタ・2000GT/1600GT
- トヨタ・ソアラ
- トヨタ・スープラ
- トヨタ・マークII/トヨタ・チェイサー/トヨタ・クレスタ
- トヨタ・カムリ/トヨタ・ビスタ
- トヨタ・セリカ
- トヨタ・コロナ
- トヨタ・カリーナ(尚、EDに関しては3代目後期型になる際にグレードの大幅な整理が行われ、3S-GE型エンジン搭載車(以前の"Gリミテッド"に相当する)の名称として使われた。)
- トヨタ・カルディナ
- トヨタ・カローラ/トヨタ・スプリンター
- トヨタ・カローラレビン/トヨタ・スプリンタートレノ
- 日産・スカイライン(GT-Rも含む)
- 日産・シーマ
- 日産・フーガ
- 日産・セドリック/日産・グロリア(グランツーリスモ)
- 日産・ルネッサ
- 日産・パルサー
- 日産・ラングレー
- 日産・エクストレイル
- マツダ・ファミリア
- 三菱・シャリオ
- 三菱・ブラボー
- 三菱・ミニカスキッパー
- ホンダ・Z
- スバル・レガシィ
- いすゞ・ベレット:日本最初のGTカー
- ポルシェ
- フェラーリ
- マセラティ
- ランボルギーニ
- フォルクスワーゲン・ゴルフ
- フォード・マスタング