トヨタ・カムリ
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カムリ (CAMRY) は、トヨタ自動車で生産されている大型中級乗用車である。かつてはビスタの姉妹車であった。また、2000年からはダイハツ工業にもOEM供給され、「ダイハツ・アルティス」の名称で販売されている。ウィンダムが統合された現在は、カローラ店の最上級車種である。
日本国内での販売台数は少ないが、北米市場では人気が高く、販売台数も多い車種である。全世界で累計1000万台以上を販売しているトヨタのベストセラーカーであり、同社の屋台骨を支える国際戦略車である。
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[編集] 歴史
[編集] 初代(1980-1982年)A40型、A50型
1980年1月登場。当初はカリーナの姉妹車として「セリカ・カムリ (CELICA CAMRY) 」の車名であり、実質的に2代目セリカの4ドアセダン版でもあった。当時はビスタ店にビスタがなかったため、その代わりとしてビスタ店でも販売されていた。キャッチコピーは「CELICA 4DOOR」。
- 型式・グレード
- 1600:「TA41」・1600LT、1600XT
- 1800:「TA46」・1800LT、1800XT、1800XTスーパーエディション
- サスペンション
- 前:マクファーソン・ストラット式コイルスプリング
- 後:ラテラルロッド付4リンクコイルスプリング
1980年8月、1800SX・2000SE・2000GTを追加。この3車種には4輪独立懸架(フロントはマクファーソン・ストラット式コイルスプリング、リアはセミトレーリングアーム式コイルスプリング)、4輪ディスクブレーキを装備。この時の2000GTのキャッチコピーが「男30、GTアゲイン」であった。
- エンジン・型式
[編集] 2代目(1982-1986年)V10型
1982年3月に登場。前輪駆動化され、セリカのサブネームが外れる。また、姉妹車のビスタが登場(このため、カムリはカローラ店専売車種となる)。キャッチコピーは「大きなカムリ」。FF化によって“当時のマークIIより広い”と評された、広い室内が売りであった。
当初は1800ccエンジン(1S-LU)搭載車のみの設定であったが、同年8月に2000cc(2S-ELU)車が、1983年8月には1800ccのターボディーゼル(1C-T)車が追加された。なお、1985年8月には、ターボディーゼル車のエンジンは2000ccの2C-T型に変更された。
余談ではあるが、スポーツツインカムで知られる3S-GE(LU)型DOHC16バルブエンジンがトヨタ製の乗用車で初めて搭載されたのもこの車種である(1984年6月のマイナーチェンジ以降)。また、日本車初のFF横置きDOHCエンジン搭載車もこのV10型カムリである。
CMやカタログには、田中邦衛がイメージキャラクターとして起用された。CMはビージーズの名曲「若葉のころ」をBGMに、田中と子供が談笑しながらドライブしている光景が映る。
[編集] 3代目(1986-1990年)V20型
1986年8月登場。キャッチコピーは「新しき、セダンの肖像。」「Grand Family Saloon.」。
エンジンは、2000ccのみトヨタ初となるハイメカツインカム(3S-FE型)エンジンが搭載された。ほかに1800cc(1S-i型)と2000ccターボディーゼル(2C-T型)、更に先代から引き続き2000ccスポーツツインカム(3S-GE型、2.0GTのみ)が用意された。
エクステリアは、カリーナEDや2代目ソアラから始まった当時のトヨタデザインのトレンドに沿い、角と丸を巧みに融合させたもので、モールやメッキ類の採用で車格感も高められている。
インテリアは先代の比較的シンプルなものから一転し、上位車種であるマークIIに匹敵する豪華なものとなった。一部の上級グレードではCDプレーヤーやクルーズコントロールがオプションで選べるなど、装備の面でもこれらに劣らない豪華さを誇った。FFのメリットを生かした広い室内は、先代からさらに拡大されている。
前期型・後期型共に、CMや広告のイメージキャラクターに2代目から続いて田中邦衛を起用した。前期型のCMは映画「風と共に去りぬ」のテーマ曲「タラのテーマ」に乗せ壮大なイメージを残すものとなった。
翌1987年4月には、新開発された2000ccV6エンジンを搭載した『プロミネント』(VZV20型)も登場。フロントグリルの形状が異なり、豪華装備がさらに追加される点などが4気筒モデルとの違いであった。
プロミネントのエンジンは2000ccV型6気筒DOHCの1VZ-FE型で、最高出力は103kw 140ps)/6000rpm・最大トルクは174Nm(17.7kg・m)/4600rpmを発揮。
直列4気筒2000cc(3S-FE型)モデルにはビスカスカップリング方式のフルタイム4WDも追加され、バリエーションが豊富になった。1988年8月のマイナーチェンジでは1800ccもハイメカツインカム化された(1S-i型OHCエンジンから4S-Fi型DOHCエンジンに換装)。同時にプロミネントシリーズのみにハードトップが追加されている。キャッチコピーは「息子と、二人で」。
海外ではステーションワゴンも存在したが、日本市場向けラインナップに追加されることはなかった。
HTのプロミネントは、北米でレクサスが発足した当初、ES250として販売された。フロントグリルなどが同時に登場したLS400(初代セルシオ)に似せた造形になっているのが国内仕様との違いであった。
ES250のエンジンは2500ccV型6気筒DOHCの2VZ-FE型で、最高出力は116kw(158ps)/5800rpm・最大トルクは206Nm(21kg・m)/4600rpmを発揮。
国内ではトヨタのFFと4WD車のラインナップ上の最上級車種として、またカローラ店のフラッグシップ車として、時の『ハイソカー』ブームにうまく乗った戦略が功を奏し、なかなかの成功を収める。その豪華さから「FF版マークII」とも呼ばれた。
ちなみに前期型のデビュー当初、CMに出演する子役を募集していたことがある。
[編集] 4代目(1990-1994年)V30型
1990年7月登場。キャッチコピーは『ゆー、ゆー』『華麗なるクルージング・サルーン』。
この代より輸出仕様は3ナンバーボディーとなり(後に「セプター」として日本国内でも販売された)、日本国内に導入されたこのモデルは国内専用車となる(後に中古並行という形でロシア等海外に流出している)。先代よりも丸みが強調されたが、初代セルシオからのデザインが生かされた張りのあるボディとなった。セダンには1800cc(4S-FE型)、2000ccの直列4気筒ハイメカツインカムガソリンエンジン(3S-FE型)、ツインカムの3S-GE型と2000ccディーゼルターボ(2C-T型)が用意された。駆動方式はFFとフルタイム4WDの2種類。FFには4WS設定モデルも存在した。
1992年にマイナーチェンジを実施。フロントグリルが大型化された。マイナーチェンジと同時に、スポーツツインカムの3S-GE搭載のGTは廃止された。
このモデルでもV6搭載モデルの「プロミネント」は存在した。しかしV6仕様にセダンはなく、ハードトップのみに一本化された。後にプロミネントにV6・2500ccモデルが追加されるがウィンダム2500ccモデルの追加と同時に消滅した。
後期型のCMキャラクターには、女優の遠山景織子(当時17歳)を起用。キャッチコピーは「父は、カムリに乗っています。」
[編集] 5代目(1994-1998年)V40型
1994年登場。当初は3ナンバーモデルになる予定で計画されていたが、バブル崩壊の影響もあり、5ナンバーサイズで再計画された。バブル崩壊の時期にモデルチェンジしたため大幅にコストダウンを強いられ、装備やインテリアが先代と比較してかなり質素なものになり、特に前期型にはエンブレムすらないというものであった。このモデルよりプロミネントは消滅しセダンのみの設定になった。排気量はガソリンが1800cc(4S-FE型)と2000cc(3S-FE型)、ディーゼルターボは2200cc(3C-T型)に拡大された。当初はガソリン2000ccモデルにのみフルタイム4WDの設定があったが、後に2200ccディーゼルターボにも設定された。キャッチコピーは「LIFE-いかに仕事するか、より、いかに幸福になるか-。」 「LIFE-いかに裕福になるか、より、いかに幸福になるか-。」CM曲にはスティーヴィー・ワンダー「STAY GOLD」を使用していた。
1996年にマイナーチェンジを実施。ヘッドライトがマルチリフレクター式に変更された。また、フロントグリルにはカムリのエンブレムが復活している。CMキャラクターに女優の篠ひろ子を起用していた。キャッチコピーは「妻子あるカムリ」。
姉妹車であるビスタは1998年に次期型へ移ったが、カムリはこの代をもってモデルが消滅し、それ以降は1997年登場の米国向けモデルのカムリ・グラシアにブランドを引き継がれることになった。
[編集] 6代目(1997-2001年)XV20型
1997年にセプター(北米版カムリ)の後継車種として「カムリ・グラシア (CAMRY GRACIA) 」の名前で登場(後のマイナーチェンジでセダンのみグラシア名が外れる)。3ナンバーとなり、エンジンも直列4気筒の2200ccとV6の2500ccエンジンを搭載する。ボディタイプはセダンとステーションワゴン(日本国内向けのカムリとしては最初で最後のステーションワゴンだった)の2種類。従来のセプターに設定されていたクーペは廃止された。ただし、北米市場には後継車種がカムリソラーラとして投入されている。
また、このモデルからセダンがダイハツ工業へ「アルティス」としてOEM供給されている。
CMキャラクターには、俳優の西田敏行を起用。キャッチコピーは、「カムリ・グラシアは、かなりグラシア。」(前期型)。また、後期型のCMでは西田のかつてのヒット曲だった「もしもピアノが弾けたなら」の替え歌が使用されていた。
[編集] 7代目(2001-2006年)XV30型
2001年9月27日登場。セダンのみとなる。日本仕様はV6エンジン搭載車が廃止され、直列4気筒2400ccのみとなった。ウィンダムと共通の車台を使用する。CMでは、男性がカムリの広告が刷られた新聞紙を折り曲げようとするが、硬くて曲げらないこと(=カムリの強い骨格)がアピールされている。形式は本来はXV30系だが、トヨタ車の形式の法則でX+Z=CとなるためACV30、MCV30(北米向けV6仕様)となる。
キャッチコピーは、「World Major CAMRY」。
[編集] 8代目(2006年-)XV40型
2006年1月30日に登場。エクステリアデザインは今までのカムリのイメージを覆すスタイリッシュでアグレッシブなものとなる。2005年末をもって生産終了されたウィンダムを統合する役目もあるため、今回のモデルではさらに上質感に磨きをかける。また、横幅がセルシオ並みに拡大され、エンジンは従来と同じ直列4気筒2400ccだが、馬力が159馬力から167馬力となった。北米仕様にはV形6気筒3500ccやハイブリッド仕様も設定されるが、日本で販売される予定はない。シフトは5速AT(4WDは4速AT)。北米仕様のV6モデルには6段AT(シーケンシャルシフト付き)が採用されている。最上級グレードGディグニスエディションは皮シートを標準装備する。キャッチコピーは「内面は、顔に出る。」「高級車の新しい空間。」。登場時のCMや雑誌広告に起用されているのは生 和寛(せい かずひろ・編集者)。
オセアニア仕様は日本同様、直列4気筒エンジンのみの設定である。ただし、カムリをベースに前後デザインを変更した上級車種がオーリオン(Aurion)として発表されており、こちらはV6のみの設定となる。また、アジア仕様(中国、台湾、東南アジア諸国に投入)のデザインもオーリオンにほぼ準じたものとなっており、日米版カムリとは大きく異なる。
直4エンジンの形式は7代目と同様の理由でACV40となるが、V6仕様はGRエンジンのため、R+X=SとなるためGSV40となる。
- 北米仕様
- 2GR-FE V型6気筒DOHC24バルブ
- 排気量 3456cc
- 最高出力 268hp/6200rpm
- 最大トルク 248lb.ft/4700rpm
[編集] レース出場
2007年からカムリをベースにしたマシンで、現在アメリカで最も人気のある自動車レース・NASCARの最高峰クラスであるネクステルカップに参戦する。また、2007年はトヨタ北米進出50周年でもある。
[編集] 車名の由来
冠(かんむり)の異表記「かむり」から。トヨタには他にもクラウン(王冠)やカローラ(花冠)といったネーミングの車種が既に発売されており、これらの流れを汲んだ命名であるとされる。
グラシアは、スペイン語で「魅力」の意味。