京成3600形電車
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京成電鉄の3600形電車(3600がたでんしゃ)は、1982年(昭和57年)から導入された京成電鉄の通勤形電車である。
本稿では芝山鉄道にリースされた芝山鉄道3600形電車についても記述する。
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[編集] 概要
1982年6月から1989年(平成元年)7月にかけて6両編成9本の計54両が製造された。
車両番号の付番は、第1編成が成田空港方から3601-3602-3603-3606-3607-3608、第2編成が成田空港方から3611-3612-3613-3616-3617-3618であり、下1桁の位で編成中の組成位置を示すため、末尾9と0は欠番となっている。また、末尾4と5は8両固定編成化時の中間電動車ユニット追加製造を考慮して欠番となった。京成に限らず東京都交通局(都営地下鉄)浅草線に乗り入れる各鉄道事業者では南方(京成線内では上野・押上方)先頭車の車両番号で編成名を呼称することが多く、第1編成は「3608編成」、第2編成は「3618編成」のように呼称される。
車両番号末尾1と8の先頭車は制御車(Tc)、中間4両が2両ずつユニットを構成する電動車(M)である。
足回りは、AE形で実績のある東洋電機製造製界磁チョッパ制御を京成の通勤車としては初めて採用し、運転台のマスター・コントローラーについても京成通勤車初のT形ワンハンドル式を採用した。モーターは140kWと出力の高いものが採用され、各編成の車両番号の末尾2と3は東洋製TDK-8500-B、末尾6と7は三菱電機製MB-3276-ACで、両者は同一設計であり京成での社内制式名称はKMM8500である。駆動装置は末尾2と3がTDカルダン、末尾6と7がWNカルダンとされた。補助電源装置は電動発電機(MG)に代わって静止形インバータ(SIV)が初めて採用され、空気圧縮機(CP)とともに各編成の末尾3と7に配置された。集電装置は下枠交差式パンタグラフで、各編成の末尾2と7に2台設置された。
車体は、実用化されつつあった軽量オールステンレス構造を京成で初めて採用した。
基本的には、3500形に準じた外観デザインである。相違点を以下に記す。
- 前面が切妻から3面折妻になった。
- 前面の前照灯と尾灯が横並びになり、合わせて急行灯を左右上部に配置し、尾灯・急行灯の視認性を向上した。
- 前面貫通扉部分に種別表示器を配置し、前面上部中央の表示器は行先のみとした。行先表示器は3500形までの20コマタイプから40コマタイプになった。
- 客室側窓は大型の1枚下降式になり、窓配置が変わった。
- 側面扉部分の帯が省略された。
前面レイアウトは、1983年(昭和58年)春以降の3150形や3200形・3300形の更新でも引き継がれた。
室内のカラースキームや空調装置などは基本的に3500形に準じているが、天井部のホワイトデコラが荷棚上まで貼られたことや、先頭車乗務員室前の扇風機を廃止したことなどの相違点もある。この形式より車両間の貫通路はすべて狭幅となり、各車両の北方に扉を設置(北方先頭車を除く)した。
製造メーカーは3618・3638・3648・3688編成が日本車輌製造製であり、残りはすべて東急車輌製造製である。後者は東京急行電鉄8000系・8500系と同様に台車付近に凹凸のステンレス板が露出しているほか、屋根コルゲートの段差が目立つ。
以下に落成時期毎の相違点を記す。
- 1986年(昭和61年)6月落成の3628編成から、網棚を樹脂パイプからステンレスパイプに変更、また室内照明で1両あたり4基の充電式予備蛍光灯(停電時の)を設置する代わりに予備白熱灯を廃止した(これは1985年(昭和60年)夏以降進行していた3200形の更新でも実績あり)。それに加えて後につり革増設試験が行われたため、他編成との差異が目立っている。
- 1987年(昭和62年)6月落成の3638編成から、同年春の3200形3268・3265の更新時に試用された電子警報器を本格的に採用。
- 1988年(昭和63年)1月落成の3648編成より側灯と尾灯がLED化され、客室内の客用扉上部は手をつかめるような構造とされた。
- 1988年3月落成の3668編成では、空気圧縮機を従来の直流電源のC-2000-Mに代わり、旧・日本国有鉄道201系などで実績のある交流電源のAC-2000-Mを試用し、翌1989年6~7月落成の3678・3688編成で本格的に採用された。
- 1989年6月落成の3678編成から選択扉開閉装置が搭載された。
当初は末尾4と5の車両を増結して8両編成化する構想があったが、結局それは見送られ、その分については京浜急行電鉄1000形の1029・1037編成をリースして1991年(平成3年)まで充当することとなった。
界磁チョッパ制御で運転台のマスコンもワンハンドル式であることから、3608編成の落成から暫くは都営浅草線への入線は見送られ、自社線限定での運用であったが、1987年2月より乗り入れ運用を開始した。
[編集] 6両固定編成時代の主な改造
- 1990年(平成2年)6月以降、3608~3668編成に選択扉開閉装置が設置された。
- 1991年11月に試験的に3668編成で側面窓上部の帯をファイアーオレンジからブルーに変更。以後、1992年(平成4年)9月~1993年(平成5年)3月に3608~3638編成も変更された。これを「暫定帯色変更車」と呼ぶ。
- 1993年9月から3648編成を皮切りに暫定帯色変更に加え前面・側面窓下帯をファイアーオレンジからレッドとブルーに変更する作業が行われた。これを「現行帯色変更」と呼び、「暫定帯色変更車」を含めて1995年(平成7年)6月の3628編成を最後に完了した。
- 1994年(平成6年)11月に3618編成の警笛が電子警報器に変更された。
[編集] 8両化を主にした編成替え
[編集] 3618・3638・3648・3658・3678・3688編成の8両化
- 優等列車の8両編成化促進を目的に、1997年(平成9年)6月に3638・3648編成に3628編成の中間電動車ユニット2両を各々挟むことにより、以下の8両固定編成を組成した。これに伴い制御車の3628と3621は休車になるとともに、3636と3646の片面のパンタグラフが撤去された。
- ←上野・押上 成田空港→
- 3638-3627-3626-3637-3636-3633-3632-3631
- 3648-3623-3622-3647-3646-3643-3642-3641
- 1998年(平成10年)12月、3678・3688編成が3668編成の中間電動車2両ユニットを各々挟むことにより8両固定編成化された。これに伴い制御車の3668と3661は休車になるとともに、3667と3663の片面のパンタグラフが撤去された。
- ←上野・押上 成田空港→
- 3678-3677-3676-3667-3666-3673-3672-3671
- 3688-3687-3686-3663-3662-3683-3682-3681
- 1999年(平成11年)6月に3608編成が一旦運用を離脱し、9月に同編成の中間電動車を3618・3658編成に挟むことにより以下の8両固定編成を組成し、チョッパ車はすべて8両固定編成化された。これに伴い制御車の3608と3601が1999年8月に後述するVVVFインバータ制御編成の3668編成付随車として挿入されたほか、3607と3603の片面のパンタグラフが撤去された。
- ←上野・押上 成田空港→
- 3618-3617-3616-3607-3606-3613-3612-3611
- 3658-3657-3656-3603-3602-3653-3652-3651
8両化後も、先頭車が制御車である為、京急線には乗り入れないほか、6両が最長編成である千葉線や千原線には入線しなくなり、運用も限定されている。
[編集] VVVFインバータ制御となった3668編成
- 1999年2月に余剰で休車扱いとなっていた制御車の3621・3628・3661・3668が電動車化され、以下の4両編成を組んで営業運転を再開した。
- ←上野・押上 成田空港→
- 3668-3661-3628-3621
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- 制御装置・モーター・台車などは3700形と同一で、駆動装置はTDカルダン、東洋電機製造製GTO素子使用のVVVFインバータ、東洋製TDK-6170-Aかご形三相誘導電動機(社内制式名称KMM6170,出力140kW)、FS-547台車を新調した。3628と3668にパンタグラフを搭載した。電動発電機と空気圧縮機は廃車になった3100形と3150形の流用品で、ともに3621と3661に搭載された。電動発電機は容量475kVAタイプのCL-355-B1、空気圧縮機はAC-1000という組み合わせは赤電3200・3300形と全く同一である。以上の4両は後述する3608・3601が挿入されるまでの暫定編成で、金町線での運用もあった。加えて先頭車が電動車であることから京急線内への乗り入れも可能になった。
- 1999年8月には3668編成に3608・3601を付随車化した上で、以下の6両編成を組成した。
- ←上野・押上 成田空港→
- 3668-3621-3608-3601-3628-3661
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- 3608にパンタグラフを搭載した。電動発電機と空気圧縮機は3150形廃車流用品を3601に搭載した。空気圧縮機は在庫の関係上直流電源のC-1000であったが、2000年(平成12年)6月に交流電源のAC-1000に交換された。
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- これで当形式は界磁チョッパ車8両編成6本と、VVVFインバータ車6両編成1本の現行の構成となった。
[編集] 編成替え以後の動き・改造・特筆事項など
- 2000年9月に京成本線鬼越駅付近にて3648編成の3642が踏切上で自動車との側面衝突事故に遭い、3643-3642ユニットは復旧作業のため休車とされた。その後2001年3月に復帰し、元の8両固定編成に戻すまで以下の暫定6両固定編成で営業運用に入った。暫定編成時のみ3646に一旦撤去した箇所にパンタグラフを搭載した。
- ←上野・押上 成田空港→
- 3648-3623-3622-3647-3646-3641
- 2001年(平成13年)3月には、京成グループのCI導入に伴い、全車両の側面にK▼SEI GROUPロゴを貼付した。従来の筆記字体のKeiseiロゴを表記したプレートはそのまま存置された。
- 2002年(平成14年)1月に3618編成が定期検査に入った際、中間ユニットの3607-3606の台車に不具合が発見された。8月に復旧作業を終え、本来の8両固定編成に戻すまでの間、3618編成は落成時の6両編成で営業運用に入った。
- 2002年7~9月に全車両の前面・側面の種別表示器の字幕を10月12日の種別変更によるダイヤ改正対応のものに交換された。普通=黒、快速=ピンク、特急=赤などに各種別色分けし、前面字幕は白地に種別色文字・側面字幕は種別色地に白文字となった。文字の書体は1993年9月の3400形3418編成以降で採用されたものと同様に細ゴシック体(ナール)小文字併用英字併記タイプとなった。
- 2002年10月に3618編成は、帯色変更(ブルーの箇所をエメラルドグリーンに変更)とKeiseiロゴプレートの上から芝山鉄道の社名貼付などを行った上、芝山鉄道にリースされた。運用は京成の車両と共通運用となっている。8両編成の為、自社を走るのは朝夕に限定される。(日中は4両もしくは6両編成の運用の為)また、北総鉄道にリースされた7250形、7300形7808編成と異なり、車内の路線図、中吊り広告は引き続き京成車と同じとなっている。
- 新3000形牽引のため、2002年12月~2003年(平成15年)3月に3668編成の付随車3608・3601を抜いた上で京急線に数回乗り入れた。営業運転ではないが3600形が京急線内を自走したのは初めてのことであった。
- 2003年8月~2004年(平成16年)9月に芝山鉄道へのリース編成を含めて前面運行番号表示器を幕式からLED式に、また列車無線切り替え器に搭載されている非常発報装置が「発報弱め」スイッチ付きに交換された。
- 客室蛍光灯破損時による事故防止のため、2004年4~6月に全車両(芝山鉄道にリースされた車両も含む)の室内客室部蛍光灯すべてを従来の昼白色タイプから飛散防止形白色タイプに交換した。このため室内の色温度が低くなりイメージが変わった。
- 2006年(平成18年)5月までに吊り革が新3000形と同じタイプの耐久性の良いものに交換された。この作業は3678編成より開始され、3638編成を最後に完了した。車内マナー強化のために2005年(平成17年)12月~2006年2月に全車両の優先席付近の吊り革を輪・皮ともに黄色いタイプのものに変更された。同時に窓には優先席を表すステッカーも貼付された。
- 2006年4月には8両固定編成(芝山鉄道リースの3618編成も含む)について英語案内放送に対応するために放送切り替え器を設置した。なお、この切り替え器自体に再生装置はなく、市販品のICレコーダーをイヤホン端子に接続して再生するという方式を採っている。英語案内放送は同月29日より実施された。
[編集] 近況・現状(2007年4月9日現在)
- 前述の通り、先頭車が制御車のチョッパ8両固定編成は京急線への乗り入れができないため(先頭車は電動車に限定するという車両安全基準に抵触する為)、自社線内の特急運用に充当されることが多い。都営浅草線押上~西馬込間は入線可能であるため、ラッシュ時の西馬込発着の特急・快速、日中の押上線~都営浅草線の折り返し運用などに入ることもある。
- VVVFインバータ車の3668編成は、6両編成であることから6両編成主力の新3000形、および赤電形式の3200・3300形などとともに普通運用が主体である。
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