ドアカット
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ドアカットは、鉄道駅において、列車の一部のドアを開けず、限られた車両又はドアからのみ乗降させる措置のこと。ドア非扱いともいう。
大きく分けて、駅のプラットホームが短いことによるものとワンマン運転によるもの、特別急行列車やホームライナーなど乗車に際して座席・車両の指定がなされていることから乗車時の検札を行うため、それに夏季や冬季において外気を遮断し車内温度を保つために実施されるケースがある。
なお、半自動ドアを使用している場合には「ドアカット」とは呼ばない。
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[編集] 駅ホームが短いためのドアカット
[編集] 類型
駅ホームでのドアカットはおおむね以下のような場合に行われる。
- 駅のホームの前後が踏切やトンネルに挟まれていたり、カーブの途中にあったり、都市部などで用地の収容が困難であったりして、連結車両数の増加にも拘らずホーム有効長延伸がままならない場合
- 長い編成数の列車が停車することがあっても(短い編成数の列車より)本数が少なく、ホーム有効長の延伸をする程の投資効果が得られない場合
- ホーム工事中で、早期に営業を開始するため、工事終了までの期間をドアカットで対応することになった場合
- その他
通常の例 |
ドアカットの例 |
上 - 通常の事例。ドアをすべて開ける。 下 - ドアカットの事例。プラットホームが短く、後の車両はドアを開けない。 |
ほとんどの場合、専用のスイッチ回路を設けて簡単にドアカットが行われる様に対処しているが、JR各社の車両ではスイッチ盤の操作により行っているケースもある。また、箱根登山鉄道の風祭駅は、非常用ドアコックによるドア扱いを行っている珍しい例である。
なお、下記に挙げる例には、臨時列車のみドアカットを行うケースは含まれていない(6両編成の「ホリデー快速」が富士急行線に乗り入れる場合、線内では河口湖駅を除く全ての停車駅でドアカットがある例など)。
[編集] 駅ホーム問題のためドアカットを実施している駅
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- ホームが1両分しかないため、富良野方面行の列車は先頭部のみドアを開け、他のドア部はホームからはみ出た状態で閉じている。3駅とも駅のすぐ南に踏切があり、旭川方面行きの列車は踏切を塞いで止まることになる。
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- ホームが6両分しかないため、特急白鳥が2両増結で8両編成になった場合、進行方向後方の車両のうち2両を超えた分をドアカット。なお、当駅に停車する白鳥は、増結を行わない場合の編成は6両である。
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- ホームが2両分しかないため、4・6両編成の列車が来た場合、先頭車両をホームに合わせて後方車両をドアカット。
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- 1番線は8連が停車可能だが、急カーブになりホームと電車の間が広く開いてしまい危険なため、業平橋寄り40mにわたって安全柵が設置されている。このため、8両編成の場合は業平橋寄り2両をドアカット。
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- ホームが4両分しかなく、両側を踏切に挟まれているため、6両編成では横浜寄り2両をドアカット。
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- ホームは3両分しかないため、全列車(5両編成)共大井町寄り2両をドアカット。
- 九品仏駅(東京急行電鉄・大井町線)(類型1)
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- ホームは4両分しかないため、全列車(5両編成)共二子玉川寄り1両をドアカット。
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- ホームが40mほどしかないため、4両編成では鎌倉寄り1両をドアカット。以前はホームが25mしかなく、4両編成では鎌倉寄り2両では全くドアが開かなかった。
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- ホームが45mしかないため、全列車(20m車4・6両編成)箱根湯本寄りの1両(4両編成は7号車・6両編成は1号車)のみ駅員や車掌が非常用ドアコックを使用してドア扱い、それ以外の車両はすべてドアカット。箱根駅伝開催日など多くの利用者が見込まれる場合には、2両目(4両編成は8号車・6両編成は2号車)のドア扱いを行うこともある。なお、線路の有効長は150mほどあるが、かつては線路有効長も短かったので、2400形「HE車」では上下列車とも前から2両目(上り列車の場合は箱根湯本寄りから3両目)だけでドア扱いを行っており、箱根湯本寄り先頭車は踏切にはみ出していた。
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- ホームは3両分しかないため、4両編成では後部1両をドアカット。
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- 下り線のホームは4両分しかないため、6両編成では後部2両、8両編成では後部4両をドアカット。上り線のホームは6両分しかないため、8両編成では後部2両をドアカット。
- そのため、名鉄名古屋駅の構内放送(中部国際空港方面の電車が到着するとき)では6両の電車が到着するとき、古見でお降りの方は前4両にご乗車ください。と何度も放送されている。
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- 早朝に運転される8両編成の急行3本(いずれも名鉄名古屋方面)では後部2両をドアカット。その際青山駅寄りの踏切は閉じたまま。
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- ホームの有効長が4両編成分しかないため、6両編成の場合は後部2両がドアカットになる。4両編成+2両編成の増結された列車で後部2両から前への通路がない場合は、各駅で前4両に乗るように案内される他、間違って後ろ2両に乗ったまま駅に着いてしまった場合には、車掌室のドアから降ろしてもらう場合がある。
- 各務原線はかつては急行が6両編成、普通が4両編成だったため、急行停車駅のみが6両分、急行通過駅は4両分のホームであった。その後に6両の普通列車(途中駅から急行になるなど)が設定され、急行通過駅のホームも順次6両分に延長されたが、これらの駅は構造上の理由でホーム延長ができなかった。
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- 3番線(降車ホーム)が5両分しかないため、梅田側先頭車はドアカット。
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- 3番線が5両対応のため、直通特急など6両編成の列車は山陽姫路方1両をドアカット。2・4番線も4両までの対応。
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- 七軒茶屋と上八木についてはホーム長が3両分しかないため、4両編成で運行する列車は広島寄り1両をドアカット。梅林、中島、可部についてはホーム長自体は4両分あるものの、車掌の取り扱い不注意による事故(誤って七軒茶屋、上八木でも4両目のドアを開けてしまう事故)を防止するために、2005年10月のダイヤ改正以降はこの3駅においても広島寄り1両のドアカットを実施するようにした。
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- ホームが5両分しかないため、5両編成以上は大牟田方5両以外ドアカット。
- 櫛原駅(西日本鉄道・天神大牟田線)(類型1)
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- ホームが3両分しかないため、4両編成は大牟田方1両をドアカット。5両編成以上は福岡(天神)方1両のみドア開閉を行う。
- 矢加部駅(西日本鉄道・天神大牟田線)(類型2)
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- ホームが3両分しかないため、先頭車以外をドアカット。
[編集] かつて駅ホーム問題のためドアカットを実施していた駅
- 北海道などの仮乗降場(国鉄)、ないしはそれが昇格した駅(北海道旅客鉄道)(類型1)
- ホームが簡易であり、1両分の長ささえないものが多かったため、ドアカットが実施されていた。該当する駅のある線区のほとんどがワンマン化されたため、現在は後述の「ワンマン運転のためのドアカット」に該当する。
- 群馬大津駅・袋倉駅(東日本旅客鉄道吾妻線)(類型1)
- ホームが4両分しかなく、185系7両編成の普通列車では後部3両をドアカットしていた。185系7両編成の停車列車がなくなったため解消。
- 大山駅(東武鉄道東上線)(類型1)
- 6両分のホームしかなかったため、8両編成の電車が停車する際には2両分をドアカットしていた(大山対策車という特別の編成が用意されていた)。池袋寄りの踏切は地下化され、ホーム延伸により解消。
- 神泉駅(京王電鉄井の頭線)(類型1)
- ホームが3両分しかなく、吉祥寺寄り2両をドアカットしていた。ホーム延伸により解消。
- 代官山駅(東京急行電鉄東横線)(類型1)
- 中目黒寄りのトンネルと渋谷寄りの踏切に挟まれホームが18m車8両分しかなかったため、20m車8両編成では中目黒寄り1両をドアカット。踏切の廃止とトンネルの改造によるホーム延伸により解消。
- 鵜の木駅(東京急行電鉄目蒲線(当時))(類型1)
- ホームが3両分しかなかったため、4両編成の目蒲線時代は目黒寄り1両をドアカット扱いしていた。多摩川線になると編成が3両に短縮されたため解消。
- 菊名駅(東京急行電鉄東横線)(類型1)
- ホームが18m車8両分しかなかったため、20m車8両編成では渋谷寄り1両をドアカット。はみ出し部分には踏切があったが、優等列車退避を行なう駅でもあったため、踏切の閉まる時間が日中でも非常に長かった。菊名駅~大倉山駅が一部高架化された際に踏切を廃止してホーム延伸となり解消。
- 横浜駅(国鉄東海道本線)(類型2)
- 戸塚駅(横浜市営地下鉄1号線(ブルーライン))(類型3)
- 1987年(昭和62年)5月24日の開業時は仮設駅でホームが4両分しか設けられず、後部2両がドアカットとなっていた。1989年(平成元年)8月27日の本開業により解消。
- 根府川駅(東日本旅客鉄道東海道本線)(類型1)
- ホームが12両分しかなかったため、15両編成では後部3両をドアカット。ホーム延伸により解消。
- 片浜駅(東海旅客鉄道東海道本線)(類型1)
- ホームが10両分しかないため、11両以上の編成では先頭1両をドアカット。11両以上の列車の乗り入れ自体が消滅したため解消。
- 学校前駅(名古屋鉄道広見線)(類型2)
- ホームが2両分しかなく、3両編成以上の列車はドアカットしていた。また乗降客数が少ないことから、各駅停車の半数も通過していた。2005年(平成17年)の同駅廃止と共に解消。
- 手力駅・市民公園前駅・苧ヶ瀬駅・羽場駅・鵜沼宿駅(名古屋鉄道・各務原線)(類型2)
- 上記の各務原線のドアカット実施中の各駅と同じく、もともとは4両編成分のホームしか無い急行通過駅であったが、それまで4両だった普通列車が一部6両になったためドアカットを実施した。その後にホームの延長工事が行われ、現在は解消。
- 新羽島駅(名古屋鉄道・羽島線)(類型4)
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- 現在はホーム長が4両あるためドアカットをしていないが、一時冒進事故の後、安全対策上ホーム長を短縮し、4両編成では笠松寄り2両をドアカットしていた。現在は解消。
- 六地蔵駅・宇治駅(1995年(平成7年)6月17日までの旧駅)(京阪電気鉄道宇治線)
- 西院駅・大宮駅(阪急電鉄京都本線)(類型1)
- ホームが7両分しかなく、梅田寄り1両をドアカットしていた。ホーム延伸により解消。
- 春日野道駅(阪神電気鉄道本線)(類型3)
- 相対式ホームの改良の際に仮供用での開始となったため、平日朝の下り準急(6両編成)のみ、神戸方1両をドアカット。ホーム本供用開始により解消。
- 飾磨駅(山陽電気鉄道・本線)(類型1)
- 1番線が4両編成分しかないため、6両編成の場合は後部2両をドアカットしていたが駅舎改良工事(橋上化)とホーム延長工ことにより現在は解消。
- 香西駅・讃岐府中駅・八十場駅・讃岐塩屋駅(いずれも四国旅客鉄道予讃線)(類型1)
[編集] ワンマン運転のためのドアカット
ワンマン運転では、バスと同様に後方のドアから乗り、前方のドアから降りるのが一般的だが、2両以上連結して運転する場合、有人駅以外では2両目以降の車両について開・閉扉しないことが多い。
最近では、不正乗車防止のため、また後乗り・前降りを徹底させるためか、単行(1両)運転であっても無人駅では車両後方内側の開扉ボタンを利かないようにするなど、後方から降りられず前方から乗れない様にするある種のドアカットが見られる。しかしながら、大荷物を持って無人駅から無人駅まで乗車する場合、出口となる車両先頭まで狭い車内通路を通り抜けなければならないなど、あまりに杓子定規にすることでの問題も生じている。
このほか、JR北海道のワンマン列車は前乗り・前降りで、最前部の扉以外は開かない。これは冬期に後部ドアのミラーによる確認が難しいという事情があるためとされる。
[編集] 車内保温のためのドアカット
大手私鉄の一部やJRの一部で、冬季や夏季において通過列車待ちや始発列車などで停車時間が長くなる場合に、冷暖房の効果を上げるためや省エネのためにドアを閉め切るケースがある。かつてはすべてのドアを閉め切るものが多かったが、近年は1車両につき1ヶ所のみ開ける例もある。
1箇所以外のドアを締め切る事例。この事例では、いったんドアをすべて開いて乗降が終わったのち、車内保温のため中央部以外のドアを締め切っている。 |
[編集] 検札のためのドアカット
- 東武鉄道では一部の特急停車駅で2号車・5号車以外の車両をドアカットしている。スペーシアの春日部駅、りょうもうの東武動物公園駅・久喜駅で実施している。
- 京成電鉄では、スカイライナー、モーニングライナー・イブニングライナーで日暮里駅などにおいては一部の扉のみドアカットをしている。
- JR東日本の特急スーパービュー踊り子では、編成の半分のドア(窓ガラスが入っていないドア)は終点以外では開かない。但し、これは同列車に使用する251系電車の運用に際してであり、同車両を用いる臨時列車でも同様な運用事例がある(なお、おはようライナー新宿・ホームライナー小田原で運用される際は検札を行うおはようライナー新宿の小田原、ホームライナー小田原の新宿・渋谷を除く全駅で全車両のドアを開く)。
- JR東日本のライナーでは、乗車を取り扱う駅においてドアを1か所のみ開け、そのドアの前で、その駅から乗車する全乗客に対して検札を行う場合がある。
- 小田急電鉄の特急ロマンスカーでは、1999年までは乗車改札を行うため、一部の扉を除いて締め切りしていたが、車内改札システム変更と同時に、全てのドアを使用して乗車扱いする方法に変更された。
- 京浜急行電鉄の京急ウイング号では、品川駅で乗車改札を行うため、一部の扉を除いて締め切りしている。
- 近畿日本鉄道では特急列車乗車の際に1999年までは特急券回収などの関係上、一部の扉を締め切りしていた駅があったが、特急券回収方法の変更により現在は行っていない。
[編集] その他の理由によるドアカット
- JR東日本吾妻線では、1991年10月28日の群馬県民の日に、通常は115系3両編成の列車を増結扱いで6両編成にした際に、スイッチ盤操作を省略するため、有効長に余裕のある上越線内も含めて全区間で後部2両のドアカットを行い、全ての停車駅で4両編成の停車位置に停車させた。途中駅の案内も、乗車位置は全て4両編成としての案内であった。吾妻線内でホームが4両分しかない駅があり、フリーきっぷ利用で県内の小・中学生及びその家族が列車利用となることによる大混雑のため、運行中の乗務員の車内移動が困難なための措置。余談であるが、この年の群馬県内JR各線の列車の増結扱いは、通常107系2両の列車が165系6両や185系7両になるケースもあり、予備車や波動用車両ををフルに活用して混雑をさばいていた。
- 西武鉄道狭山線の西武球場前駅では、コンサート等のイベントがあった際の定期列車の折り返しにおいて、降車客が少ない場合、最前部だけのドアを利用して降車客を降ろしてから全てのドアで乗車を扱うことがある。分類としては「乗客整理のためのドアカット」になると思われる。これとほぼ同じことが大阪市営地下鉄四つ橋線の住之江公園駅でも行われている。
- 一時期、小田急電鉄江ノ島線の片瀬江ノ島駅では、線路の有効長が140mあり、編成長が70mの2400形が2本留置できたが、ホーム長が120mしかないため、後から到着した列車についてドアカットを行っていたことがある。これはホーム長のためのドアカットの事例の変形(通常の運用では発生しないドアカットのため)と考えられる。